海洋安全保障情報旬報 2017年12月1日-12月31日

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121日「インドの潜水艦建造計画―インド紙報道」(The Times of India.com, December 1, 2017

 インド紙、The Times of India(電子版)が121日付で報じるところによれば、インドは現在、急速に潜水艦建造計画を進めている。それによれば、最終的には、6隻の攻撃型原潜(SSN)、4隻の弾道ミサイル搭載原潜(SSBN)及び18隻の通常型潜水艦(SS)が建造される。現在、インド海軍の潜水艦戦力は、13隻の旧式SS1隻の国産SSBNINS Arihant2016年就役)、及びロシアからリースした1隻のSSNINS Chakra、国際条約により核弾頭ミサイルの搭載不可)からなる。4隻建造予定の国産SSBN2番艦がビシャカパトナムで建造中であり、2018年に進水予定である。更に、2015年初めに安全保障閣僚会議で承認された、6隻の国産SSNの建造に着手している。

記事参照:Eye on China: India steps up naval deployments, kicks off nuclear submarine project

123日「イランのチャーバハル港、開港」(The Times of India.com, December 3, 2017

 イラン南東部のオマーン湾に面した戦略港、チャーバハル港の第1期拡張工事が完了し、123日にローハニ大統領が出席して、開港式典が行われた(第1Shahid Beheshti港)。34,000万ドルの経費でイラン企業によって行われた第1期拡張工事によって、同港の貨物取扱量は、年間250万トンから850万トンに増強された。拡張工事によって5本の埠頭が建設され、その内2本は10万トン級のコンテナー船が接岸できるコンテナーターミナルである。同港は、パキスタンの戦略港、グワダル港と国境を隔てて約80キロの位置にある。チャーバハル市には、国際空港とイラン海、空軍の基地もある。

 インドは20165月に、2本の埠頭建設と周辺の経済特区を含むチャーバハル港の開発整備に5億ドル、また同港からアフガン国境に近いザーヘダーンまで、そこから更にアフガン国内までの650キロの鉄道や道路の関連インフラ建設計画に16億ドルを投資する計画である。チャーバハル港を通じて、インド国内からアフガン、中央アジア諸国に直接アクセス可能になり、既にインドは10月に、同港経由でアフガンに輸出する13万トンの小麦の一部を積載した最初の貨物船を出港させている。

 なお、イランのメディアが1228日付で報じたところによれば、イランは、チャーバハル港とパキスタンのグワダル港とのリンクを求める中国からの要請を受けたことを明らかにした。報道によれば、中国はグワダル港からの物資を域内の各地に輸送するためにチャーバハル港を利用することに関心を持っていると、イランに伝えたという。(Iran Front Page.com, December 28, 2017

記事参照:Iran inaugurates new extension to its main Arabian Sea port

125「『インド太平洋条約機構』の結成を検討すべき秋―インド専門家論評」(South Asia Analysis Group, December 5, 2017)

 インドのシンクタンクSouth Asia Analysis Group顧問Dr Subhash Kapilaは、125日付のSouth Asia Analysis Groupのサイトに、"Indo Pacific Treaty Organisation Emerges Asia Security Imperative in end-2017"と題する長文の論説を寄稿し、「インド太平洋条約機構」の結成こそが、中国の脅威から「インド太平洋」の平和と安定を維持する鍵であるとして、要旨以下のように述べている。

1)「アジア太平洋」概念に替わる地政学的概念としての「インド太平洋アジア」は、中国のアジア戦略における戦略的構成が2008年から2009年頃から「ソフトパワー」の行使から「ハードパワー」の行使に転換したこと―それ以来、中国のアジア戦略は高圧的な軍事的瀬戸際政策としての著しい特徴が見られる―に併せて、大きく注目されるようになってきた。ヒマラヤ山系から南シナ海に至る中国の高圧的な軍事的瀬戸際政策への対応を巡る論議において、アジアの安全保障に対する中国の増大する脅威は、1つの統合された全体としての太平洋戦域とインド洋戦域を跨ぐ、より広範な地理的次元からの思考を促してきた。また、地政学的概念としての「インド太平洋」は、インド亜大陸とインド洋地域においてだけでなく、西太平洋地域においても、その安全保障と安定に対して貢献する、より広い役割を果たし得る「台頭する大国」として、更には「指導的大国」として、インドの位置づけを大きく高めることにもなった。インド自身も、地域の安全保障の提供者として、次第に意識し始めている。

2)アメリカを中心とした既存のアジア太平洋地域の安全保障構造は基本的に、日本と韓国との2国間安全保障条約、更にはフィリピンとの安全保障条約と、米軍の前方展開戦力を中心に構成されている。このアメリカの安全保障構造は、旧ソ連との冷戦、そして冷戦後の軍事的に台頭する中国に対する抑止力として、時の試練に耐えて生き残ってきた。しかしながら、この10年間、対テロ戦争や国防予算の削減などによって、アメリカの西太平洋における抑止力は明らかに低下してきた。2017年末の時点において、太平洋からインド亜大陸そしてインド洋地域に至るアジアの安全保障は、中国とパキスタンや北朝鮮の核保有国による厳しい挑戦に直面している。今のところ、中国が主導するこの共産主義・軍事独裁主義の結び付きは、「インド太平洋アジア」における「勢力均衡」を維持し、確保する、正式な安全保障連合として統合されたものではない。しかしながら、一方で、唯一の地域機構としてのASEANは、中国の策動によって事実上分裂させられ、ASEAN地域での安全保障や安定を提供する能力がない。また、アメリカ、日本、インド及びオーストラリアによる「3カ国連携構想」や「4カ国連携構想」は復活したばかりで、「インド太平洋アジア」を揺るがす中国の戦略に対して消極的である。

3)以上のような状況を踏まえて、本稿の筆者(Subhash Kapila)は、「インド太平洋条約機構」(Indo Pacific Treaty Organisation: IPTO)を結成することで、中国の脅威を相殺する必要があると考える。歴史的に、諸国家間の軍事同盟は、侵略的な国家の台頭による脅威に対抗する自然な行動であった。このような軍事同盟は、平和と安定を目指す志を同じくする国家間の有志連合であった。これまで、アメリカもアジア諸国も、アジアの安全保障に対する責任ある利害関係国として中国が登場することを期待していたが、今やそうした期待は裏切られた。冷戦期のSEATOなどはイデオロギー対立に基づいて結成されたが、現在、IPTOの結成を促すようなイデオロギー対立はない。2017年末の時点において、IPTOの結成を促すのは、超大国の座を追求する習近平主席の「夢」がもたらす潜在的な中国の脅威に対抗する、「インド太平洋」の志を同じくするアジア諸国が共有する懸念である。

4IPTOの結成は、既に4カ国連携の枠組みのメンバーであるアメリカ、日本、インド及びオーストラリアによって先導されるべきである。これらの4カ国が纏まれば、「インド太平洋」における中国の軍事的冒険主義に対する強力な対抗勢力となる。これら4カ国がIPTOの中核を形成すれば、中国に大きな懸念を抱く、韓国、ベトナム、インドネシア及びフィリピンなどの域内の他の主要国も参加することになるであろう。また、IPTOの潜在的メンバーとして、ミャンマー、バングラデシュそしてアフガニスタンも排除すべきではない。

5IPTOの結成に関連して、2つの疑問が生じる。第1に、そして最も大きな疑問は、IPTOが結成されたとして、中国の軍事的冒険を阻止する可能性があるかということである。第2の疑問は、インドが、その(非同盟主義による)歴史的な嫌悪感を克服して、多国間安全保障機構の積極的なメンバーになるかということである。第1の疑問に答えれば、中国の行動がIPTOの結成によって抑止されないと信じる如何なる理由もない。中国には、アジアにおいて、かつてのワルシャワ条約機構に似た対抗連合を結成する如何なる選択肢もない。中国にとっての自然な同盟相手は、ならず者の核保有国家として認識されている北朝鮮とパキスタンだけである。もっとも、IPTOに対抗することを目論んで中国が主導する連合に、ロシアが参加するかどうかは議論の余地がある。第2のインドの参加意思についてみれば、21世紀のインドはもはや、戦略的パートナーシップや、多国間安全保障機構あるいは安全保障志向の機構に参加することに対する、(非同盟主義を信奉する)ネルー主義者に悩まされることはない。そうでなければ、インドは、アメリカとの戦略的パートナーシップを構築したり、4カ国連携構想の復活に関する協議を再開したりしなかったであろう。この2つは何れも、暗黙裏に増大する中国の脅威を視野に入れたものであるからである。また、西太平洋における合同軍事演習への参加を含む、インドの「アクト・イースト政策」も、インド洋における益々増大する中国海軍の活動に対する積極的な対応以外の何物でもない。更に、インドの玄関先における軍事色の強い「中国・パキスタン枢軸」の出現は、南アジアのチェスボードにおける中国のあからさまな脅迫的行動を相殺するために多国間安全保障機構を結成し、参加するための、インドにとってもう1つの大きな触媒になるはずである。

6)以下、結論として、IPTOの結成に当たって考慮すべき主要点を列挙する。

a.2020年代の中国の脅威は、南シナ海、東シナ海、そして中国占領下のチベットとインドのヒマラヤ国境にまで及ぶ中国の示威的な軍事的瀬戸際政策による、「今そこにある脅威」である。

b.中国の脅威は、中国が超大国としての台頭を目指す大戦略的な動きを強めるにつれて、陸上と海洋の両面で顕在化している。この「偉大なる中国の夢」の追求は、アジアにおいて中国の軍事的冒険主義を一層強めていく可能性が高い。

c.アメリカとその2国間安全保障関係による既存の体制は、中国による近隣諸国やその周辺に対する高圧的な瀬戸際政策を阻止することができなかった。

d.アメリカ単独では、NATO型の多国間安全保障同盟がない場合、中国の脅威に対抗するための選択肢と戦略が限られている。アジアは、脅威に晒されているアジアの安全保障を担う、多国間安全保障機構を必要としている。

e.故に、「インド太平洋条約機構」(IPTO)の結成は、急速に増大する中国の脅威に対抗するとともに、中国のヒトラー的衝動が歴史上の同じような惨禍をもたらすことを確実に回避するために、2020年代における戦略的要請なのである。NATOがヨーロッパにおいて現在にまで続く平和を維持できたことを考えれば、IPTOの結成が「インド太平洋」とう広大な地域に同じような平和を保証することを疑う、如何なる理由もない。

記事参照:Indo Pacific Treaty Organisation Emerges Asia Security Imperative in end-2017

129日「スリランカ、ハンバントータ港を中国に99年間貸与」(South China Morning Post.com, December 10, 2017

 スリランカ港湾庁(SLPA)は129日、中国国営招商局港口控股有限公司(CMPort)との間で、ハンバントータ港の運営権を99年間貸与する協定に調印した。CMPortは、SLPAとの間で合弁企業を立ち上げ、株式の70%を保有する。CMPortの出資額は112,000万ドルで、同港整備のために更に6億ドル出資する。これは、スリランカの60億ドルの対中負債を肩代わりする計画の一環である。ハンバントータ港は、2010年に15億ドルの費用を投入して開港されたが、商業活動がほとんどないことから、負債を抱えていた。

スリランカ中央銀行が1226日に公表したところによれば、CMPortの出資額は112,000万ドルの内、第1回分、29,210万ドルが払い込まれた。(Colombo Page.com, December 26, 2017

記事参照:Sri Lanka hands over running of Hambantota port to Chinese company

Photo: The Hambantota port on Sri Lanka's southern coast.

129日「対北朝鮮、米本土ミサイル防衛網の課題」(The National Interest, December 9, 2017

 アメリカの軍事専門家Sébastien Roblinは、米誌、The National Interestのブログに129日付で、"THAAD Can't Destroy North Korea's ICBMs (but the Navy Might Have a Way)" と題する論説を寄稿し、北朝鮮の弾道ミサイルから米本土を防衛する上での課題について、要旨以下のように述べている。

1)アメリカのミサイル防衛システムとしては、大気圏外を飛翔中のICBMを迎撃するために、既にアラスカとカリフォルニアに地上配備型ミッドコース(中間段階)防衛システム(GMD)の発射基地がある。しかし、GMDの発射実験での目標命中率は半分を少し越える程度である。対照的に、「終末段階高高度防空」(THAAD)システムは、弾道ミサイルがその弾道終末段階において目標に向かって大気圏に突入した時にこれを撃破するよう設計されている。1回のミサイル迎撃実験では失敗しなかった。しかし、ほぼ全ての情報源は、THAADは短距離か中距離弾道ミサイルを撃破するよう設計されたもので、ICBMではないということで一致している。大半の専門家によれば、ICBMに対する信頼に足る命中精度を持つには、THAADは迎撃スピードも高度も未だ十分ではない。北朝鮮の最新の「火星15」ロケットは、米本土を横断して飛翔するのに十分な射程距離を持っていることを示した。THAADの有効迎撃範囲は約20キロであり、朝鮮半島のような地理的に限られた地域を防衛するのには十分だが、広大な北米大陸では、全ての主要な市周辺にTHAADを展開しないのであれば、国全体を防護するにはあまり役立たない。

2)では、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に対して、米西海岸を防衛ことについてはどうか。北朝鮮は、何度かの実験失敗の後、20168月に特別に設計された新浦級潜水艦からの「北斗星1SLBMの発射試験に初めて成功した。「北斗星1」の正確な能力は不明だが、せいぜい準中距離弾道ミサイルと見られる。準中距離弾道ミサイルは、THAADの設計において迎撃対象としたミサイルである。更に、米沿岸に近接して発射されたSLBMは、ミッドコース迎撃を行うためには防衛側により少ない時間しか与えられず、終末段階で迎撃するミサイルが望ましい代替手段である。とはいえ、新浦級潜水艦は旧式のディーゼル潜水艦で、太平洋を横断するには苦労するであろうし、推測される航続距離はわずか1,500カイリで、限られた水中持続力と音響上の隠密性しか持たない。現在の型式の新浦級潜水艦は、グアムのような太平洋に所在する米軍基地に対しては脅威となるかもしれないが、米本土を攻撃圏内に入れる海域にまで進出できるとは思われない。もっとも、ヒョンヤンは、間違いなく潜水艦とミサイルを改良しつつあり、新型でより大型の新浦C級潜水艦は2017年後半に建造中の写真が撮影されており、改良型の「北斗星3」も開発中と見られる。

3)北朝鮮の弾道ミサイルが米本土の大都市に命中した場合には甚大な被害が予想されるので、議会で検討されている案の1つは米西海岸に第3GMD基地を建設することであるが、専門家は限られたメリットしかないと見ている。もう1つの方法は、米本土防衛のために海軍のSM-3BlockA迎撃ミサイルを導入することである。SM-3は最近、海軍の巡洋艦や駆逐艦、そして日本の護衛艦にも搭載されている。その地上配備型Aegis Ashoreは、日本と東欧防衛のため配備されることになっている。SM-3は、準中距離弾道ミサイルや中距離弾道ミサイルに対する防衛を狙いとするものだが、SM-3 MKATHAADのほぼ2倍の速力マッハ15で飛翔し、射程は遥かに大きく200キロを超える。国防省ミサイル防衛局(MDA)や一部の専門家は、SM-3が最高点を過ぎて、大気圏に突入する前の中間段階の終わりにあるミサイルを攻撃する、対ICBM任務は潜在的に実行可能と見ている。ある分析によれば、SM-3を搭載した弾道ミサイル防衛(BMD)能力を持つ戦闘艦を3隻から4隻あれば、ほぼ米本土全体を覆域とするBMDを提供できるかもしれないという。もちろん、常に完全な迎撃に成功するというわけではない。

記事参照:THAAD Can't Destroy North Korea's ICBMs (but the Navy Might Have a Way)

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「米国防省ミサイル防衛庁、上昇・加速段階での迎撃を視野に」(USNI News, December13, 2017

 米国防省ミサイル防衛庁(MDA)副長官ジョン・ヒル少将は1213日、戦略国際問題研究所(CSIS)と米海軍協会共催の海洋安全保障対話での講演で、現時点で米本土は安全だが、MDAは深化し続ける脅威からどのように防衛するかに焦点を当てつつある、と述べた。 更にヒル少将によれば、北朝鮮やイランのようにミサイル技術を強化しつつある国があることから、MDAの目標は、衛星と連携した戦闘艦配備と地上配備のレーダーと迎撃ミサイルによる強固で重層的な防衛システム網を構築し、維持することである。同少将は、弾道ミサイル防衛(BMD)が成功するためには、ミサイル発射データの早期収拾が不可欠であり、MDAは、ミサイル駆逐艦に搭載されたイージス・レーダー・システムによって敵のミサイルが発射された時には、非常に早い段階でこれを探知する能力を有しているとして、「もしBMD能力を持つ戦闘艦を適切な場所に前方展開すれば、早期に探知し、地上配備のミサイル防衛を発動できる」「前方展開した戦闘艦はきわめて速く(敵のミサイルを)探知し、きわめて多くの迎撃ミサイルを発射できる」と強調した。

記事参照:Missile Defense Agency Looking to Intercept Ballistic Targets Earlier During Boost Phase

1218日「新たな大国抗争時代における海洋戦略―米専門家論評」(Hudson Institute, December18, 2017

 米シンクタCenter for American Seapower所長Seth Cropseyと副所長Bryan McGrath,は、1218日付の米シンクタHudson Instituteのサイトに、"Maritime Strategy in A New Era of Great Power Competition"と題する長文の論説を寄稿している。本稿の筆者らは、その序で「アメリカは海洋国家として、遠隔地での危機に対処し、その危機がアメリカや同盟国、パートナー諸国の安全保障を損ねることを予防し、そして脅威が自国国境にまで及ぶ紛争に拡大しないように地理的に局限しておくために、海軍力を最も有用な手段として活用してきた。海洋における防衛は海洋戦略を必要とする。本稿は、海洋戦略の必要性を検証し、その選択肢を議論し、政策策定者に提言するものである」と述べている。以下は、本稿の要旨である。

1)アメリカは、数十年間世界の無敵のリーダーであったが、再び大国間の抗争に直面している。アメリカが主導してきた戦後秩序の制約の中で苛立ってきた、中国とロシアは、今やその軍事力を強化するとともに、アメリカの同盟国を含む周辺地域に侵略的な行動をとりつつある。その上、中ロ両国は、アメリカの国益としばしば緊張関係にある自国の国益増進を狙いとして、自国の沿岸から遠く離れた海域での海軍作戦を重視しつつある。過去数十年の間、アメリカの国家安全保障戦略は大国との抗争に備える必要がなかった。今日の国際システムは、不均衡な多極化に向かいつつある。不幸なことに、現在のアメリカは、そのような国際環境を管理する準備ができていない。もしアメリカが世界の大国としての地位を維持したいのであれば、アメリカは今や、不可避的に直面することになる事態に対して戦略的に備え始めなければならない。

2)アメリカ国民は、凋落するアメリカを見たいとは思っておらず、強力な軍事力を維持することによってアメリカの大国としての地位を維持したいと考えている。アメリカの経験に内在する矛盾は、アメリカが単なる大国ではなく、力と同程度に理想を重視する例外的な大国であることである。アメリカ国民は、対外公約を嫌悪しているにもかかわらず、両大戦、冷戦そして9.11の時のように、時に応じて立ち上がり、明白な脅威に対応することができる。従って、政策策定者の任務は、アメリカが大国の地位に留まることを確実にすることであり、そうすることによって、事が起これば、例外的な大国として行動することができるのである。

3)アメリカの政治指導者は、大国間の抗争が強まって行く環境下で、アメリカの地位を護り、高めていくことについて、より戦略的に考え始めなければならない。本稿は、このような目標追求に役立つ戦略は必然的に、この国の優れた地理的優位を国力に転嫁する、海洋に求めることになろう、と考える。アメリカの陸上国境はわずかに2カ国と接しているだけであり、しかも両国ともアメリカに友好的である。そして他の大国とは広大な海洋によって隔てられている。アメリカは、他の国にどの国とも違って、安全な地理的位置を享受している。西半球におけるアメリカと同じような支配的地位を占める、卓越した大国がアジアやヨーロッパにおいて台頭しないことを確かなものにしておくことが、この1世紀以上にわたって語られざる(しかし、粘り強く追求されてきた)アメリカの国家安全保障目標であった。 アジアやヨーロッパにおけるアメリカの国益を護り、維持することはアメリカの政策の優先課題であり、海洋戦略は、そのための効果的なツールである。海洋戦略は大戦略の一部であり、米海大のJohn B. Hattendorf教授の定義によれば、両者の関係は以下のようになる。「最も広い意味で、大戦略は、特定の国家目的を達成するための力の包括的な指針である。この枠内で、海洋戦略は、海洋における国益に関する国力の全ての領域に対する指針である。海軍はこの目的に貢献するが、海洋戦略は、純粋に海軍分野だけではなく、国力のその他の機能―即ち、外交、海上通商の安全と防護、漁業、EEZの資源開発・環境保護・規制・防衛、沿岸防衛、国境の安全確保、沖合島嶼の防衛などが含まれる。」

4)広大な海洋に囲まれた世界の支配的海軍国、アメリカにとって、首尾一貫した海洋戦略を開発し、実施することは全く適切なことである。大国間の抗争が再び生起してきた現在にあっては、それは不可欠であるが、不幸にも、現在のアメリカの海洋戦略はその役割を果していない。現在の海洋戦略は、大国間抗争を十分に視野に入れていない―何故なら、①大国間戦争を抑止するために通常戦力の重要性が高まっていることを認識していない、②大国と大国に相応しい目標にとって適切な通常戦力による抑止理論を持っていない、③効果的な抑止力として行動する海軍の戦力態勢を提示していない、④現在の戦略に由来する兵力組成はあまりに小さく、また効果的な後方支援が不足している、⑤伝統的にパートナーではないが、地理的に重要な国との海軍協力に十分な価値を置いていない、そして⑥適切な戦略を生み出し得る海事産業基盤への国の投資の必要性について沈黙している、からである。

5)本稿は、海洋戦略について新しい思考を主張する。この新戦略は、自由世界のリーダーであるとともに、世界で政治的、軍事的、経済的そして外交的首座にある大国としてのアメリカの責任とは矛盾しないものである。この戦略は、復活した大国間抗争において、これらの首座としての地位を護り、維持することを追求していくことになろう。アメリカは、中国とロシアによる侵略的な重商主義、地域拡張主義、そして確立された世界秩序の軽視に対抗するために、首尾一貫した決意を以て行動しなければならない。本稿は、抑止の新理論を主張する。即ち、ソ連の大規模な通常戦力による攻撃は核戦争へのエスカレーションの脅威によって抑止されてきたとする、冷戦期のアプローチを見直すことである。この論理では、当然にアメリカの通常戦力による抑止は戦略核抑止力に依拠しているということになる。しかし今日、「青天の霹靂」のような核攻撃は冷戦期に考えられていた以上にあり得ず、もし大国間の核の応酬が考えられるとすれば、行き詰まった通常紛争から核戦争に続く可能性の方が高いということになる。従って、核戦争を抑止するためには、通常戦争を抑止しなければならない。超大国間の核戦争あるいは通常戦争の何れをも抑止するためには、アメリカの軍事戦力の中で、シーパワー以上に重要な戦力はない。

6)アメリカの軍事力は、世界中で(敵を)壊滅させる態勢でなければならない。こうした態勢で配備された戦力は、敵が既に獲得した戦果を覆すためにより重装備の部隊が駐屯地や港湾から出撃する前に、(現在想定されている)ある程度の抵抗を試みるより、むしろ侵略の代価をつり上げながら、中国やロシアが限定的な侵略から成果を得ることを遅延させたり、拒否したりすることができる。これら部隊は、十分な能力と、最も可能性のある侵略目的の達成を遅延させたり、拒否したりするのに必要な特殊な能力を持つ、作戦地域の特性に適した仕様でなければならない。冷戦後における米海軍の戦力投射能力の重視は、この数十年間、比較的軽視されてきたシーコントロールも同様に重視される、均衡のとれたアプローチに拡充されるべきであり、従って、そのために必要とされる戦力組成は、これを反映するように計画され、取得されなければならない。

7)首尾一貫した海洋大戦略は大国間の抗争に備えるために膨大なコストを必要とするが、このコストは、2つの大国を抑止するという課題に必要なレベルまでの強さを実現するために、何十年にもわたって負担していかなければならない。アメリカは、大戦略の目的を達成するために、海事産業や国防産業を含む、経済の各部門を再編成しなければならない。更に、 海洋大戦略は、アメリカの同盟国との関係も、これら諸国の地理戦略的影響の重要性(既に軍事的に重要でない国もある)を確認し、促進することを含め、再評価しなければならない。世界の通商ルート、海上交通路そして海洋のチョークポイントは全て、アメリカの外交、国際関係の中において重視されなければならない。アメリカは豊かな国であり、効果的な海洋戦略を遂行する上で必要な資源は自ら賄うことができる。しかしながら、アメリカの大戦略の目的を追求するために十分な強さを獲得し、維持するためには政治的意志が不可欠であり、そしてその政治的意志は、行動することによって得られる利益と行動しないことによる代価を明確に説明できる、断固とした指導力を併せ持ったものでなければならない。歴史は、短期的な財政政策が海洋大国の衰退を導いた有益な事例を提供してくれている。

記事参照:Maritime Strategy in a New Era of Great Power Competition

1218日「米トランプ政権、初の『国家安全保障戦略』公表」(The White House, December 18, 2017

 トランプ米大統領は20171218日、同政権初の「国家安全保障戦略」を公表し、包括的な国家安全保障政策を打ち出した。報告書は、アメリカの重要な国益の4本柱として、①国土、国民及び生活様式の防衛、②アメリカの繁栄の促進、③力を通じた平和の維持、④アメリカの影響力の促進、を挙げている。以下、同報告書の主な内容を紹介する。

1)「力を通じた平和の維持」については、「強化され、刷新され、そして再生されたアメリカは平和を保証し、敵対行為を抑止する」として、以下の諸点を指摘している。

a.我々は、世界最強の軍事力を維持するために、アメリカの軍事力を再建する。

b.アメリカは、新たな戦略的抗争の時代において、国益を護るために、外交、情報、軍事及び経済を含む、国家のあらゆるツールを活用する。

c.アメリカは、宇宙とサイバー空間を含む、多くの領域における能力を強化するとともに、これまで無視されてきた能力を再活性化させる。

d.アメリカの同盟諸国とパートナー諸国は、我々のパワーを拡充し、共有利益を護る。我々は、これら諸国に対して、共通の脅威に対処するために、より大きな責任を共有することを期待する。

e.我々は、世界の主要地域―インド太平洋、ヨーロッパ及び中東におけるバランス・オブ・パワーをアメリカ優位に維持していく。

2)「アメリカの影響力の促進」については、「アメリカは、我々の国益を促進し、人類の利益に資するために、その影響力を行使していく」として、以下の諸点を指摘している。

a.我々は、アメリカ国民を護り、我々の繁栄を促進するために、海外における我々の影響力を引き続き強化していく。

b.アメリカの外交努力は、我々の国益を護り、アメリカにとって新たな経済的機会をもたらし、そして我々の抗争相手に立ち向かうために、2国間、多国間そして情報分野など、あらゆる分野において、より良い成果を上げるために最善を尽くすであろう。

c.アメリカは、自由市場経済、民間部門の成長、政治的安定そして平和を促進するために、志を同じくする諸国と連携していく。

d.我々は、強力で、安定し、そして繁栄した主権国家を尊重する、法による支配と個人的権利を含む、我々の諸価値を護る。

e.アメリカ・ファースト政策は、平和で繁栄した社会の発展のための環境整備に貢献し得る積極的なパワーとして、世界におけるアメリカの影響力を推し進めるものである。

3)中国とロシアについては、以下の諸点を指摘している。

a.歴史における不変の要素はパワーを巡る抗争である。現代世界も同様である。アメリカとその同盟諸国、パートナー諸国に対して積極的に挑戦しているのは、主として3つのチャレンジャー―即ち、修正主義パワーの中国とロシア、ならず者国家のイランと北朝鮮、そして特にイスラム原理主義テロリストなどの国境を越えた脅威集団である。

b.中国とロシアは、アメリカの価値観と国益とは正反対の世界を構築することを望んでいる。中国は、インド太平洋地域からアメリカを駆逐し、国家主導の経済モデルを国境を超えて拡大し、そしてこの地域を自らに有利な方向に再編しようとしている。ロシアは、大国の地位を回復し、その国境周辺に自らの影響圏を確立しようとしている。

c.この数十年間、アメリカの政策は、中国の台頭と、その戦後国際秩序への統合を支援することが中国を自由化することになるとの信念に根ざしたものであった。我々の期待とは裏腹に、中国は、他国の主権を踏みにじってそのパワーを拡大してきた。中国は、アメリカに次ぐ、世界で最も能力のある潤沢な資金に裏付けられた軍事力を構築しつつある。中国の核戦力は増強され、多様化しつつある。中国の軍事力の近代化と経済的拡大は、1つには、アメリカの世界水準の大学を含む、そのイノベーション経済へのアクセスの賜である。

d.ロシアは、世界におけるアメリカの影響力を弱体化し、同盟諸国やパートナー諸国と切り離すことを狙っている。その主戦場は、NATOEUである。ロシアは、アメリカに対する現在最も深刻な脅威となっている核戦力を含む、新たな軍事能力に投資している。

e.今や、大国間抗争が復活した。中国とロシアは、地域的にも、また世界的にも、自らの影響力を再び拡大し始めた。今日、両国は、有事においてアメリカのアクセスを拒否するとともに、平時において重要な通商活動の自由を妨害し得る、軍事力を配備しつつある。要するに、中国とロシアは、我々の地政学的優位に挑戦するとともに、国際秩序を両国にとって好ましい方向に変えようとしているのである。

4)インド太平洋地域については、以下の諸点を指摘している。

a.世界秩序に関する自由なビジョンと抑圧的なビジョンとの地政学的抗争が、インド太平洋地域において進行中である。この地域は、インド西岸から米本土西岸にまで広がる広大な地域で、世界で最も人口が多く、経済的にダイナミックな地域である。自由で開かれたインド太平洋におけるアメリカの関心は、建国期にまで遡る。

b.アメリカは中国との協調を求めているが、中国は、域内諸国を自国の政治及び安全保障アジェンダに留意するよう仕向けるために、経済的褒賞とペナルティー、影響力の行使、そして暗黙の軍事的威嚇などの手法を行使している。中国のインフラ投資と貿易戦略は、その地政学的野心を強めている。南シナ海における中国の人工島の造成とその軍事拠点化は、重要な通商を危険に晒し、他国の主権を脅かし、域内の安定を損ねている。中国は、この地域へのアメリカのアクセスを規制し、それによって中国が域内でフリーハンドを得ることを狙った、急激な軍事的近代化を推し進めてきた。域内諸国は、主権と独立を尊重する域内秩序を維持する共同努力における、アメリカの持続的なリーダーシップを求めている。

c.域内のアメリカの同盟諸国は、北朝鮮などの共通の脅威に対処し、インド太平洋における相互利益を維持する上で、不可欠の存在である。我々は、重要な同盟国である日本の強力な主導的役割を歓迎し、支持する。我々は、主導的な大国として、また強力な戦略防衛パートナーとしてのインドの台頭を歓迎する。我々は、日本、オーストラリア及びインドとの4カ国協力の強化を求めていく。

記事参照:Full Report: National Security Strategy of the United States of America

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「『国家安全保障戦略』、シーパワーにとっての含意―米専門家論評」(Texas National Security Review, Hudson Institute, December 21, 2017

米シンクタンクCenter for American Seapower 副所長Bryan McGrath は、Hudson InstituteWebサイトに1221日付けで、"The National Security Strategy's Implications for Seapower " と題する論説を寄稿し、1218日に公表されたトランプ政権初の「国家安全保障戦略」がアメリカのシーパワーにとって如何なる含意を持つかに焦点を当て、要旨以下のように述べている。(文中の数字は「国家安全保障戦略」の引用頁を示す)

1)シーパワーの唱道者は長年に亘って、海洋の自由と、その自由こそが安全と繁栄という恩恵をもたらしてきた、と主張してきた。「国家安全保障戦略」(以下、2017 NSSと表記)は、「アメリカは長年に亘って、情報と通商が自由に流れる相互に連結した世界がもたらす恩恵を認識してきた」とした上で、「しかしながら、開かれているということは、コストを必要とする。何故なら、敵対勢力は、アメリカに害を及ぼすために我々の自由で民主的なシステムを利用するからである」と述べている(7)。ここに、アメリカのシーパワーを世界的に展開することで提供している世界規模での海洋の自由と、アメリカはしばしば利用されているというトランプ政権の視点との間には、基本的な緊張がある。この緊張は2017 NSSでは満足が行くようには解決されていない。

22017 NSSは、中国とロシアを名指しして、新しい大国間の抗争の時代に入ったことを認めている。中国とロシアによる脅威とその目標を理解することは、軍事計画立案が部隊の適正な規模と組成を決定するのに役立つ。特に、「中国は、インド太平洋地域からアメリカを駆逐し、国家主導の経済モデルを国境を超えて拡大し、そしてこの地域を自らに有利な方向に再編しようとしている」(25)との記述は、注目される。インド太平洋地域からアメリカを駆逐するのは容易な任務ではないが、中国がこの目的を達成するために継続的に必要とする軍事力は海洋戦力である。もしアメリカが駆逐されないことを望むなら、アメリカのシーパワーは大き過ぎる重荷を背負わなければならない。2017 NSSは、アメリカのシーパワーにとって重要な意味を持つ、新たな通常戦力による抑止態勢について、次のように述べている。「もし敵対勢力がアメリカを攻撃すれば、我々は、彼らに懲罰を与えるだけではなく、彼らを打ち負かすことができ、またそうする意志があることを、彼らに納得させなければならない。我々は、潜在的な敵が軍事力の行使や、あるいは他の侵略的手段によってその目的を達成することはできないと彼らに納得させる、即ち(的の目的達成を)拒否することで抑止する能力を確実なものにしなければならない。」このことは、懲罰的抑止の重視から、拒否的抑止の重視への移行を示唆している。現在の通常戦力による抑止に対するアプローチは、中国やロシアがその近傍で達成可能な多くの重要だが限定された軍事目的に対しては効果がないであろう。言い換えれば、懲罰の脅威は抑止力としては不十分であり、敵に強いる侵略の代価をつり上げるためには、これらの地域における米軍部隊の侵略を拒否し、あるいは遅滞させる能力は増強されなければならない。これは理解しがたい変化ではない。事実、拒否的抑止は、迅速に(敵の)死命を制するように展開できる部隊を(事象の発生した)近傍に必要としている。これは、アメリカの前方展開シーパワーが有する基本的特性である。

32017 NSSはまた、軍事力に関しては規模が重要であるとして、前政権を批判して、以下のように述べている。「我々はまた、我々の削減された能力―即ち、軍事的優位に立ち、戦果を固め、そして我々の望む政治的目標を達成するために十分な部隊を配備する能力―を技術で補完し得る、と間違って考えていた。我々は、全ての戦争は遠隔地から、そして最小限の犠牲で闘い、そして迅速に勝利するであろう、と自らから確信していた。」(27)米海軍艦隊の増強に対する何年にも亘る批判は、個々の艦艇の性能が過去の艦艇のそれよりも格段に向上しているとして、少ない隻数でも十分であるという考えに依拠していた。2017 NSSは、「隻数か、性能か」という誤った選択に反対し、その両方がともに重要であると主張している。但し、軍事力の全てのスペクトラムにわたって、量と質ともに重要かどうかは疑問である。2017 NSSは、「統合軍は、アメリカに対する全ての領域の脅威を抑止し、撃破できる能力を維持しなければならない」(29)と述べている。一見、この主張には異論がないであろう。もちろん、米軍部隊は、脅威の全領域を抑止し、打ち破ることができなければならない。しかし、このことは、厳しい選択をし、難しい質問に答えるのを回避するための隠れ蓑となるかもしれない。即ち、全ての脅威は同じように危険で、差し迫ったものなのか、そして我々はこれら脅威を同時に抑止し、打ち破ることができなければならないのか。これら質問に対する答えは「もちろん、否」である。

42017 NSSは、戦略核戦力と核抑止力の重要性について論じている。戦略核抑止力の重視は、コストと優先順位が問題となる。興味深いことに、海軍部内では、優先順位については問題がないようである。リチャードソン海軍作戦部長は、弾道ミサイル搭載原潜に対する予算増は最優先事項である、と繰り返し述べてきた。しかしながら、通常戦力による抑止よりも核抑止力を優先することには、問題がある。先に本稿の筆者(Bryan McGrath)は同僚のSeth Cropseyとともに、「新たな大国抗争時代における海洋戦略」と題する論説を発表した。そこで、我々は、以下のように述べた。「抑止の新理論を提起する。即ち、ソ連の大規模な通常戦力による攻撃は核戦争へのエスカレーションの脅威によって抑止されてきたとする、冷戦期のアプローチを見直すことである。この論理では、当然にアメリカの通常戦力による抑止は戦略核抑止力に依拠しているということになる。しかし今日、「青天の霹靂」のような核攻撃は冷戦期に考えられていた以上にあり得ず、もし大国間の核の応酬が考えられるとすれば、行き詰まった通常紛争から核戦争に続く可能性の方が高いということになる。従って、核戦争を抑止するためには、通常戦争を抑止しなければならない。超大国間の核戦争あるいは通常戦争の何れをも抑止するためには、アメリカの軍事戦力の中で、シーパワー以上に重要な戦力はない。」(前掲論説、1218日「新たな大国抗争時代における海洋戦略―米専門家論評」参照)故に、通常戦力による抑止の新理論を重視することで、戦略核戦力の近代化が通常戦力により賢明に投入されるべき資源を過度に圧迫しないように配慮しなければならない。歴史的に見れば、世界中で影響力を発揮するための国家にとって最も効果的なツールの1つは海軍力であった。艦隊は、同盟国に対して我々が関与していることを思い起こさせ、潜在的敵に我々には護るべき利益があることを警告し、そして外交と、世界の人口の大半が住む沿岸域の開発とを支援する能力を提供する。しかし、2017 NSSでは、こうした考えは事実上、無視されている。

5)アメリカ国民に国家の軍事力の再建を納得させるのであれば、大統領は指導力を発揮して国民を説得しなければならない。ほとんどのアメリカ人は2017 NSSを読むことはないが、大統領の発言には多くが耳を傾けるであろう。そうであるが故に、モスクワと北京の修正主義体制が及ぼす脅威について、大統領が控え目な発言を続ける限り、そしてその権威主義的指導者を温かく迎え入れる限り、大統領の言動と彼が発表した2017 NSSに見られる認識との矛盾は解消されず、従って、軍事力の再建も達成されないであろう。いずれにしても、2017 NSSは現実を物語っており、トランプ大統領がこれを承認したことは素晴らしいことである。

記事参照:The National Security Strategy's Implications for Seapower

1220日「インドと『4カ国連携構想』―インド専門家論評」(RSIS Commentaries, December 20, 2017

インドのシンクタンクThe Institute for Peace and Security特別研究員Tara Kartha は、シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)の 1220日付のRSIS Commentariesに、"India and the QUAD: Deli's Balancing Act?"と題する論説を寄稿し、インドの日米豪印「4カ国連携構想」に対する複雑な姿勢について、要旨以下のように述べている。

1)アメリカ、日本、インド及びオーストラリアの当局者が1112日に行った会合、「4カ国連携構想」("Quad")を巡り、メディアや有識者間で様々な憶測が飛び交っている。就中、注目されたのは、インドはついに多正面からの中国の攻勢に対抗する「ビッグリーグ」に加わったのではないか、という見方であった。2007年に登場した同じ構想は、オーストラリアが中国の圧力に屈して陣営から離脱したため、結局失敗に終わった。更に、11月の会合から、2つの疑念が浮かんでくる。第1に、各国代表は政治指導者ではなく、官僚であった。第2に、共同声明は出されず、各国が個別に声明を発表したが、各国の声明では、アメリカとオーストラリアだけが「4カ国」("quadrilateral")という表現を使った。日本、アメリカそしてオーストラリアの声明は、以下の8項目ほぼ全て―即ち、①アジアにおけるルールに基づく秩序、②航行と上空通過の自由、③国際法の尊重、④連結性の強化(これについては、日本は言及しなかった)、⑤海洋安全保障、⑥北朝鮮の脅威、⑦核不拡散、⑧テロリズム―に異口同音に言及していた。

2)一方、インドの声明は短い上に、慎重さが見られた。インドを除く3カ国の声明では、航行と上空通過の自由に言及していたが、インドの声明では、「自由で開かれたインド太平洋地域」という大まかな表現が使われ、また協力分野から「安全保障」の文言が削除された。インドは、連結性の強化の必要性を強調しながらも、アメリカが用いた、中国の「一帯一路構想」の搾取的な性質を際立たせる用語である、「慎重な融資」との文言を使用しなかった。この点については、日本もオーストラリアも同様な慎重さを見せた。予測に違わず、インドの短い声明は、自国の主要問題であるテロリズムへの懸念を強調するとともに、事実上の核保有国としての地位を明確にし、「核拡散ネットワーク」の危険性を力説するものであった。インドは、同盟関係で結びついた他の3カ国と轡を並べることには、慎重な姿勢を見せた。インド以外の3カ国の声明が将来に向けて「協力の深化」を謳う中で、インドの声明は、「アクト・イースト」政策がインド太平洋地域への関与の要となるであろう、と記述するに止まった。

3)一見したところ、インドの声明は、自国の懸念事項を強調したもので、十分に妥当なものに思える。テロリズムについては、インドが参加するほぼ全ての2国間や多国間フォーラムで、パキスタンを念頭に置いて強調してきた。「核拡散ネットワーク」は、ミサイルと核物資に関するパキスタンと北朝鮮の繋がりに関する、各機関の情報や公刊資料に基づくものである。「核拡散ネットワーク」については、インドは現実の危険と受け止めている。何故なら、北朝鮮が核実験やミサイル発射実験で得られたデータをパキスタンに有料で提供している疑惑があるからである。「インド太平洋」地域という用語は、現在のインドの国益に合致するものであろう。もっとも、一部のインド政府当局者やメディアには、インドはインド洋と太平洋における米中間の影響力抗争に巻き込まれるべきではない、との懸念がある。

4)しかしながら、11月の声明で慎重な姿勢を示したとはいえ、インドが11月の会合では避けた問題を2国間文書で表明することには躊躇していないことは重要である。例えば、2015年の印米共同声明は、航行と上空通過の自由への関与や、海洋安全保障対話の開始、そして国際法に基づく責任ある海底資源開発の呼びかけなど、何れも中国に向けられた思われる事項に言及している。2017年の印米共同声明は、航行と上空通過の自由への関与を改めて表明し、インド太平洋地域における地域的連結性の強化に当たっては、「責任ある債務負担慣行」の必要性を呼びかけた。この時の印米協議は、ドクラム高地における印中対峙の最中に行われた。この問題が終結から1カ月後の日本との共同声明では、更に踏み込んで「ルールに基づく秩序」を呼びかけた上、海洋安全保障対話を大幅に強化した。また、この共同声明で注目されるのは、特に日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」と、インドの「アクト・イースト」政策との連携に言及したことであった。これに先立つ20174月のオーストラリアとの共同声明は、両国が海洋における法的秩序を尊重することに共通利益を有していることを認め、海上交通路の安全確保と、「ルールに基づくシステム」の必要性を強調した。

5)最後の疑問は、11月の共同声明での「アクト・イースト」政策への言及である。インド対外関係省の文書によれば、その政策目標は「2国間レベル、地域レベルそして多国間レベルでの継続的関与を通じて、アジア太平洋地域諸国との経済協力や文化的絆を深化させるとともに、戦略的関係を発展させることであり、そうすることでアルナーチャル・プラデーシュ州を含む北東部の陸封諸州との連結性を強化する」ことにある。アルナーチャル・プラデーシュ州を特記したことは、中国が同地域の領有権を主張しているという点からも興味深い。というのも、インド政府高官が同州を訪問することさえも、北京の反発を呼ぶからである。インドの「4カ国連携構想」に対する感情は、最近のインド首相のASEANサミットにおける演説からもうかがえる。モディ首相はこの演説で、「地域の利益と平和的な発展を最大限に保障する、ルールに基づいた地域安全保障構造の構築に向けた着実な支援」を保証した。要するに、インドは、中国の怒りを惹起しかねない多国間フォーラムでは明確な関与を拒みつつも、2国間対話で意思表示することを選択したように思われる。換言すれば、インドは、対中「陣営構築」と受け取られかねないプロセスからは距離を置き、もって対中関係改善の余地を残そうとしながらも、一方では、2国間の文脈では「4カ国連携構想」も是認することを選んだのである。結局、インドは、過去に完全には信頼性を証明できていない4カ国グループではなく、自国の必要性に基づいた独自路線を選択したのである。

記事参照:India and the QUAD: Delhi's Balancing Act?

1221日「中国は南シナ海を支配しつつある―米専門家論評」(The National Interest, December 21, 2017

 米誌The National Interest前編集主任Zachary Keckは、1221日付の同誌のブログで、"China Is Gaining Control of the South China Sea (Thanks to North Korea)" と題する論説を寄稿し、今や中国は南シナ海を支配しつつあるとして、要旨以下のように述べている。

1)アメリカが北朝鮮の核問題に気をとられている間に、中国は、南シナ海の支配を固めつつある。衛星画像から中国の南シナ海における人工島の建設状況を追跡している、米戦略国際問題研究所(CSIS)「アジア海洋透明性イニシアチブ」(the Asia Maritime Transparency Initiative: AMTI)は、最近公開した衛星画像*から、2017年は北京にとって実りの多い年であったと報告した。AMTIによれば、過去何年かに及んだ人工島造成のための浚渫作業がほぼ完了し、中国は、これら人工島を軍事的に運用可能な前進基地に作り替えることに注力し始めた。AMTIは、「北京は、次の段階―即ち、より大規模な前進拠点における全ての機能を備えた空、海軍基地に必要なインフラ建設に専念して」おり、中国は2017年を通して「地下貯蔵施設と管理棟から大規模なレーダー、センサー群に至る」あらゆる施設を建設してきた、と指摘している。更にAMTIによれば、最も大規模な造成工事は南沙諸島のファイアリークロス礁(永暑礁)で行われ、造成面積は27エーカー(11万平米)に達した。中国はここに、既に建設済みの滑走路近くに大型の格納庫群を完成させ、弾薬と補給品を貯蔵すると見られる大規模な地下通路の建設を継続しており、また、この人工島の各所にミサイル用の硬化シェルターとともに、通信やセンサーのアンテナ群や施設群が建設されつつある。他方、 スービ礁(渚碧礁)でも、同じような軍事施設が見られる。特に、AMTIは、「中国がスービ礁でもレーダー能力とSIGINT能力を持続的に強化する構えである」と述べている。AMTIは、西沙諸島のツリー島(趙述島)、ノース島(北礁)、トリトン島(中建島)での建設工事についても公表した。

2)しかし、南シナ海の支配を主張する中国の努力は、陸上での建設作業に限らない。中国の新華社は最近、北京が南シナ海を常時監視するため、今後数年間で同海域上に10個以上の衛星の打ち上げを計画している、と報じた。それによれば、中国は2019年に3個の光学衛星を打ち上げ、これに続いて「中国は、南方海域で24時間態勢のリモート・センシングを実施するため、別の3個の光学衛星、2個のハイパースペクトル・カメラ(抄訳者注:可視光から近赤外線までを細かい波長帯域に分解し、その波長スペクトルを入手して、肉眼では識別できないものの識別を可能にしたもの)を搭載した衛星、2個の合成開口レーダーを搭載した衛星を新たに打ち上げ、2021年までに衛星群計画を完成させるであろう」と述べている。新華社は民需に必要な衛星としているが、これら衛星は明らかに軍事的機能を有している。

3)人工島の軍事化と衛星による監視態勢の強化は、南シナ海を支配するという中国の目標実現に近づける。前進基地の存在は、中国軍が本土からしか行動できない場合には困難な、南シナ海における常続的な空、海哨戒活動の実施が可能になる。同様に、衛星による監視覆域の拡大は、前方展開部隊による現地における様々な脅威の識別を可能にするであろう。そして、南シナ海における常続的な哨戒態勢を維持することは、南シナ海のほぼ全域に対する中国の主権主張を勢いづかせることになろう。

4)南シナ海における北京の活動は、戦略的好機をもたらしている。まず、伝統的にベトナムとともに南シナ海紛争に関して中国に対する最も辛辣な批判者であったフィリピンは、ドゥテルテ大統領が2016年に就任して以来、中国に対して融和的な姿勢をとってきている。同じように、アメリカはこの1年間、北朝鮮の核計画を制止することを優先してきた。更に、トランプ大統領は、中国との2国間通商関係を、これまでの政権よりも優先しようとしてきた。しかし、他方で、トランプ政権は、南シナ海における航行の自由作戦(FONOP)をオバマ政権時よりも頻繁に実施してきた。20175月から10月までの5カ月間に、米海軍は中国の主権の主張に対抗して南シナ海で4回のFONOPを実施した。それでも、北朝鮮の核問題と米中通商問題が、トランプ政権の米中2国間関係の優先課題であることに変わりはなかった。中国政府はまた、ASEANとの南シナ海行動規範(COC)交渉を継続に同意することで、人工島における活動に対する批判を積極的に緩和しようとしてきた。COC交渉を通じて、どのような結果が出るにせよ、COCが南シナ海全体の支配を強固なものにしようとする北京の究極の目標を変えさせることはなさそうである。

記事参照:China Is Gaining Control of the South China Sea (Thanks to North Korea)

備考*A Constructive Year for Chinese Base Building

https://amti.csis.org/constructive-year-chinese-building/

Asia Maritime Transparency Initiative, CSIS, December 14, 2017

1222日「南シナ海における中国の強引な行動の背後にあるもの―チェコ専門家論評」(The Diplomat.com, December 22, 2017

チェコMendel University准教授Richard Q. Turcsanyiは、Web誌、The Diplomat1222日付で、 "What's Really Behind Chinese Assertiveness in the South China Sea?" と題する興味深い論説を寄稿している。本稿の筆者(Richard Q. Turcsanyi)は最近(201710月)、Chinese Assertiveness in the South China Seaを上梓し、「中国の強引さ」("Chinese assertiveness")、「中国のパワー」(China's power)をキーワードに、これらが最も顕著に表れている場所としての南シナ海の事例から、「中国の強引さ」という概念を定義し、どのような政治行動がそれに含まれるかを識別し、何故中国がこうした行動をとっているのかを説明している。筆者はこの論説で、自著の内容を要約紹介する形で、南シナ海における中国の行動と「中国のパワー」について、要旨以下のように述べている。

1Chinese Assertiveness: What, When, and Where

1)まず、「強引な」行動(an "assertive" action)とは、(この事例では)中国が、例え他のアクターの利益と相対立しても、自らの利益を積極的に追求し、その目的達成のためには大胆な行動も辞さないことをいう。中国の強引な行動は、他の国の行動や、これまでの規範から著しく異なっていなければならない。従って、中国の強引さについて語るとき、我々は、他国の振る舞いとは質的にも、そして/あるいは量的にも異なる、中国の新しい、独特の振る舞いについて語ることになる。

2)南シナ海において、こうした基準を満たす政策事例を探してみると、2009年から2010年にかけての事例はそうした基準に当てはまらず、2011年以降に中国が強引な行動をとった事例を発見できる。拙著では5つ事例―即ち、①ケーブル切断事件(抄訳者注:20115月、中国公船がベトナム資源探査船のケーブルを切断)、②スカボロー礁での対峙(同:20124月、中比両国の政府公船同士が対峙、比公船撤退後も中国公船が居座り、現在まで実効支配)、③セカンド・トーマス礁での対峙(同:比が実効支配下する同礁の前進拠点の修復と補給を中国が妨害)、④石油掘削リグ事案(同:201452日に中国が石油掘削リグをベトナムEEZ内に設置、中国は艦艇、公船を周辺海域に展開、ベトナム公船に衝突、放水を繰り返した)、そして⑤人工島の造成とその軍事化―を取り上げた。

3)これら5つの事例は、南シナ海において中国がどのように、そして何故「強引な」("assertively")行動をするのかを研究するための論拠となろう。

2China's Power and Its Role

1)中国が何故強引な行動をするのかについては、これまで様々に説明されてきたが、厳密な検証はされてこなかった。中国の増大するパワーが強引な行動をとらせてきたとする説明は最も影響力のある論理であり、拙著の核心でもある。拙著はまず、包括的で多面的なパワーモデル―これには、国際、国家及び地方の3つのレベルと、軍事、経済、国家的能力、国際的な制度設計、地政学的環境、国際経済における地位、国内的正統性及びソフトパワーという8つのパワーの淵源が含まれる―を構築している。

2)前掲の5つの強引な行動事例を見れば、1つの事例だけが、新たに獲得した能力が中国を行動に駆り立てている。それは石油掘削リグ設置事案で、中国は新たに取得した先進的な深海掘削技術を装備した掘削リグを動員した。残りの4つの事例は、何年も、あるいは何十年も前と同じ手法である。更に、こうした強引な振る舞いをした時期には、既に大幅に中国のパワーが増大していたにもかかわらず、アメリカに追いつくには依然ほど遠いレベルであった。言い換えれば、中国のパワーは、「強引さ」段階(the "assertive" era)を画する如何なる特別な敷居をも踏み越えてはいない。しかも、中国国内の議論を子細に観察してみると、中国指導層も、また世論も、中国がアメリカに追いついているとは見なしていない。故に、「パワーシフト」("power shift")は全く起こっておらず、中国における受け止め方も概ね現実に沿ったものである。

3Alternative Explanations: Toward the Theory of 'Reactive Assertiveness'

1)前掲の5つの事例の内、「パワーシフト」は1つの事例だけで説明できることを見た後、拙著は、2つの仮説を検討している。1つは、国内政治―即ち、習近平の役割、中央指導部による統制の欠如、(国民の目を)国内問題から逸らす試み、あるいは高まるナショナリズムなどが、中国の強引さを説明するために様々な方法で引用されてきたということである。これらはいずれも、説得力のある説明とはならない。強引な振る舞いは既に胡錦濤時代から始まっている。同時に、南シナ海紛争の重要性と習近平への権力集中を考えれば、中央指導部がこの地域で進めている成果を手放すことは想像できない。利用可能な調査データからも、中国国内の世論の満足度も非常に高いレベルを示している。高まるナショナリズムだけが強引さを加速しているが、それへの引き金になったと見るのは難しい。

2)他方、前掲の5つの事例の内、4つの事例について妥当と見られる別の説明がある。これら何れの事例も、中国は、新たな事態の進展と見なしたものに(強引に)対応してきた。こうした対応の直接的な引き金となったものには、南シナ海仲裁裁判所の裁定、スカボロー礁(特に海軍の展開)とセカンド・トーマス礁(前哨拠点の修復の試み)におけるフィリピン行動、そして新たな海洋調査であった。更に、中国の強引な行動は、アメリカが「アジアへの軸足移動」("pivot to Asia")―中国は自らの地政学的立場を悪化させると見た―を宣言した後にとられたものである。

3)従って、本稿の筆者(Richard Q. Turcsanyi)は、少なくとも南シナ海での事例について見るならば、中国の「受け身の強引さ」論(the theory of China's "reactive assertiveness" )を主張する。但し、この論は、中国がそのような行動をとることが正当かどうか、あるいは他の領有権主張国とその行動が熟慮されたものかどうかについては、何もいっていないことを強調しておかなければならない。本稿の筆者が強調しておきたいのは、大半の強引な行動を見れば、中国はそのような行動をとることが可能なパワーを得る(と判断する)や直ちに強引な行動を取り始めたのではなく、中国がそのような行動を必要(あるいは可能)とする状況にあると見た時に、その能力を行使することを選択している、ということである。しかしながら、もう1つの疑問が残っている。それは、既に、アメリカのパワーに負の影響を及ぼしてきていると評価し得る、この地域のパワーの力学が、トランプ大統領の就任によって今度どのように動いていくかであろう。

記事参照:What's Really Behind Chinese Assertiveness in the South China Sea?

1222日「ジブチにおける中国初の海外基地―米専門家論評」(China Brief, The Jamestown Foundation, December 22, 2017

中国、アジア問題のコンサルタントJohn Feiは、1222日付の米シンクタンクThe Jamestown Foundationのサイトに、"China's Overseas Military Base in Djibouti: Features, Motivations, and Policy Implications"と題する論説を寄稿し、ジブチに開設された中国初の海外基地はインド洋地域における中国海軍の更なる野心の先駆けとなるであろうとして、要旨以下のように述べている。

1)中国軍は、11月末にジブチで重要な実弾軍事演習を行った。国連決議に基づく海賊対処活動とは無関係な外国領土において地上で演習を実施したことは、人民解放軍の海外活動における重要な転機となった。同じ時期に、ジブチ大統領が訪中し、中国との間で経済、技術協力協定を締結した。中国のアフリカへの外交的、軍事的進出は、7月にジブチに初めての海外軍事基地が開設されたことによって、更に進展するであろう。一部の報道が伝えるように、中国がアフリカとインド洋地域に新たな軍事基地を開設するならば、ジブチ基地は、インド洋地域における中国海軍の更なる野心の先駆けとなるであろう。

2)「アフリカの角」の先端に位置するジブチ基地は、スエズ運河とアデン湾の間の戦略的な位置にある。中国の36ヘクタールの施設には、数千人の兵員の受け入れが可能で、艦船とヘリコプターの修理施設を持つことになろう。約23,000平米の大規模な地下貯蔵施設を示唆する幾つかの証拠がある。中国の基地は、ジブチのDoraleh多目的港地区の近くにあり、米軍のCamp Lemonnierの北西約7マイルに位置している。フランスと日本もジブチに施設を賃借しており、これらの拠点はアメリカと中国の基地の周辺に位置している。

3)ジブチにおける中国の軍事基地は、長年に亘って拡大する経済、海洋安全保障利益と、北京の「海洋シルクロード」の一部としてのアフリカとインド洋地域における戦略的関与の深化の前兆を象徴するものである。この基地の目的の一層の理解のためには、①アフリカへの中国人の移民とアフリカ大陸への北京の外交的関与の増大、②海洋軍事力の重視と海外在住市民の安全確保、そして③「一帯一路構想」(BRI)の3つの視点が有益である。

a.ジブチの中国基地は、アフリカにおける中国の外交努力を支えるとともに、アフリカでの増加する中国市民を支援するための出先機関となる。最近のあるデータによれば、アフリカ大陸全体で1万社以上の中国ビジネスが営業しており、この内90%が民間企業と推定されている。アフリカでの中国の経済的関与の増大は、対外援助を伴う外交努力と、2,000人以上の中国人兵士の国連平和維持部隊への派遣によって裏付けられている。中国は、ジブチの基地を、これら部隊の兵站補給施設そして海賊対処部隊の海軍施設とすることを意図している。

b.ジブチの基地は、海洋軍事利益の高まる重要性を反映している。中共中央と軍は近年、海洋パワーを重視し、在外中国市民の保護を優先し始めた。

c.ジブチ基地は、BRIの「一帯」、海洋シルクロードに沿って重要な位置にある。BRIは、ユーラシア大陸でより広範な地域協力と経済発展を促進するとともに、中国と東南アジアを北インド洋沿岸、アフリカそして地中海に連結させる、壮大な事業である。アフリカでは、中国は、エチオピアとジブチを結ぶ鉄道建設に投資しており、またこれら両国間に天然ガスパイプラインを建設する計画もある。中国政府は、BRIを、経済的繁栄を拡大する平和的努力としているが、中国以外の専門家は、よくいえば北京にとっての新たな影響圏の構築するための手段、悪くいえば軍事的影響力を強める漸進的な手段と見ている。

4)中国は、今後数年間、アフリカや中東に新たな海軍拠点や施設を建設することを意図している。ジブチ基地は、こうした中国の支援施設ネットワークを構築する野心の第一歩である。ジブチにおける中国初の海外軍事基地は、アメリカの政策担当者にとって、機会とリスクの両方をもたらす。海軍基地の主な目的―即ち、中国の平和維持活動、対テロリズム、海賊対処活動、人道救援活動や災害救援活動のプラットフォームとしての機能は、米軍にとって、中国軍との信頼醸成訓練に参加する機会を増やすことになろう。同時に、一方では海洋での誤算、誤解が増える可能性もある。中国の情報収集能力は、アフリカに長期的プレゼンスを維持することで、間違いなく強化されるであろう。このことはこの地域におけるアメリカの軍事活動および情報収集活動にとってリスクとなり、アメリカの諜報機関と国家安全保障共同体は、一層大きな警戒心を必要としよう。

記事参照:China's Overseas Military Base in Djibouti: Features, Motivations, and Policy Implications

1226日「ASEAN、今こそ団結の秋―RSIS専門家論評」(The Diplomat.com, December 26, 2017

シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)上級アナリストLee YingHuiは、1226日付のWeb誌、The Diplomatに、"Chinese Construction in the South China Sea: Should ASEAN Be concerned?"と題する論説を寄稿し、ASEANは南シナ海紛争を巡って域外からの支援を期待できないとして、要旨以下のように述べている。

12017年は、過去数年に比して南シナ海を巡る緊張が比較的緩和した年であった。中国とASEAN諸国の激しい外交上の応酬は、双方が平穏で協力的な環境醸成を切望したこともあり、ニュースのヘッドラインから消えていった。フィリピンのドゥテルテ大統領は就任以降、一度ならず対中経済協力の深化と引き換えに、南シナ海仲裁裁判所の裁定を棚上げするとの意思表示をしてきた。中比両国は1215日、南シナ海における協力促進を図るべく非公開の安全保障当局者高官協議を開催した。ベトナムも、対中関係改善を図る兆候を示している。11月の習近平主席の訪越時、中越両国は、南シナ海問題への平和的対処に合意した旨の共同声明を発表した。同時に、北京も、責任ある地域大国としてのイメージを改善すべく積極的に動いた。北京は、圧倒的な経済力を用いて、東南アジア諸国を経済協力と「一帯一路構想」(BRI)を通じた支援で懐柔しようとしてきた。東シナ海でも、北京と東京は12月、約10年に及ぶ交渉の末、東シナ海周辺での意図しない衝突に対処するためホットラインの設置で合意した、と報じられた。一部の専門家は、南シナ海と東シナ海における昨今の現状打破は近隣諸国との緊張関係の修復を図る北京の誠実さを意味する、と見ている。

2)しかしながら、一方では、最近の報道はあまり明るくない未来像を示しているように思われる。米戦略国際問題研究所(CSIS)「アジア海洋透明性イニシアチブ」(the Asia Maritime Transparency Initiative: AMTI)が最近公開した衛星画像によれば、南沙諸島と西沙諸島における中国の基地建設活動は依然として続いている。AMTIの画像によれば、北京は2017年半ば以降、新たな人工島の造成活動を行ってはいないものの、既存の基地において軍民共用インフラの建設を継続している。北京の建設活動は今更驚くべきものではない。何故なら、専門家は、南沙諸島と西沙諸島における海空軍基地確保と建設こそ、中国の南シナ海における接近阻止/領域拒否(A2/AD)戦略の要であると見なしてきたからである。こうしたインフラ施設は、中国海軍が第1列島線を超えてその能力を投射することを目指していることから、外洋海軍建設という中国の野望にとっても不可欠のものである。また、中国の海運の60%以上が南シナ海を通航するため、このシーレーンの安全確保は経済的見地からも極めて重要で、中国の野心的なBRIと相まって、その重要性はかつてなく高まっている。

3)南シナ海における拡張と建設は平和目的に基づいたものである、と北京はしばしば主張してきているが、その主張が正しいか否かは現時点において不明である。しなしながら、中国が占拠する人工島などに建設されたインフラの多くは軍民共用が可能であり、中国の意図に対する域内諸国の疑念が解消されることはないであろう。とはいえ、以前の南シナ海における中国のインフラ建設を巡る出来事とは異なり、最近のAMTIの画像に対して、これまでのところASEAN諸国は、表立って中国に反対や懸念を表明していない。ASEAN諸国の沈黙は、北京のBRIに基づく経済協力の代償としての融和姿勢を反映している。

4)しかし、ASEAN諸国は、北京の行動を注視し続けなければならない。

a.第1に、中国のBRIによる互恵的経済発展の約束は見かけほど素晴らしいものではない。11月には、パキスタンが中国のプロジェクトに対する融資条件を受諾できないと申し立て、「中国パキスタン経済回廊」(CPEC)からDiamer-Bhashaダム建設プロジェクトを除外するよう要請した。129日には、スリランカが中国との協定に基づき、戦略的要地であるハンバントータ港の管理権を99年間、中国に正式に貸与した。報道によれば、貸与に関する協定は、コロンボが北京に対して負う80億ドルの債務返済を救済する目的でなされたものである。スリランカの野党は合意を国家主権の喪失と非難している。一連の出来事は、東南アジアの指導者に警鐘を鳴らすものである。中国と経済協力を進める一方で、地域諸国は、中国から多額の融資を受ける協力プロジェクトに注意を払う必要がある。何故なら、負債の返済能力欠如は、南シナ海を含む地域における中国の更なる影響力拡大につながるからである。

b.第2に、北京のCOC交渉開始に向けた合意は、遅滞戦術と見なせる。中国の南シナ海の人工島における継続的なインフラ建設は、北京がASEANとのCOC交渉に示す善意をその野望の実現に利用している、との一部専門家の懸念を裏付けているように思われるからである。彼らが予想するように、COC交渉が引き伸ばされ、COCが最終的に法的拘束力のないものになるようなら、ASEANの南シナ海領有権主張国は、中国がちらつかせた「空手形」を掴まされる羽目になりかねないからである。その間、中国は、現状を自国優位に変更してしまっているであろう。

c.その一方で、国際社会は朝鮮半島で高まる緊張に巻き込まれている。トランプ政権は、最新の国家安全保障戦略において、中国を(ロシアと共に)「アメリカの国力や影響力、利益への挑戦国である」と断じた。とはいえ、アメリカにとって中国は朝鮮半島で高まる緊張と核の脅威を管理する上で欠かせないパートナーである。トランプ大統領の就任以降、アメリカは南シナ海において何度かの「航行の自由作戦」(FONOP)を実施してきたものの、彼の「アメリカ第一」政策はこの地域にアメリカのアジアへの関与を巡って懸念を生じさせた。アメリカ同様に、日本も北朝鮮の核の脅威に対して懸念を有している。

5)結局、ここ1年で地域の2大プレイヤーの意識から南シナ海はほとんど消えてしまった。ASEAN諸国が南シナ海で中国に対抗するには域外国のみを当てにできず、またそうすべきでもない。昨今の対中関係改善は大いに歓迎すべきだが、それを所与のものとすべきではない。それ故に、ASEAN諸国は、2012年のプノンペンでの失態を繰り返さないよう団結を維持し続けなければならない。

記事参照:Chinese Construction in the South China Sea: Should ASEAN Be Concerned?

1227日「ASEANにおける日本のハードパワーとソフトパワーの現状―東大教授論評」(RSIS Commentaries, December 27, 2017

東京大学公共政策大学院教授Yee-Kuang Henは、シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)の1227日付のRSIS Commentariesに、"Japan's Hard and Soft Power in ASEAN"と題する論説を掲載し、ASEANに日本のハードパワーとソフトパワーの現状について、要旨以下のように述べている。

1)戦後の日本は、軍事、安全保障分野における自国のプレゼンスに対する否定的な反応を懸念して、アジアではマラッカ海峡協議会(MSC)を構成する海運業界、あるいは国際協力機構(JICA)や海上保安庁(JCG)といった文民機関に大きく依存してきた。これらの文民機関は、幾度かの重要な発展を経て今日も重用されている。

2JCGとフィリピンの沿岸警備隊は、2015年にフィリピンで戦後初めての合同海賊対処訓練を実施した。JCGの練習船「こじま」は、3カ月にも及ぶ洋上哨戒活動やこの地域における各種訓練プログラムへの協力に従事した。日本の開発協力大綱は2015年に、援助を国益に一層合致する形で活用できるよう改定された。東京の長年に渡る海賊対処への支援は現在も続いており、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)は2016年に10周年を迎えた。更に、20179月には日本で初めての世界海上保安機関長官級会合が開催された。他方、日本とASEAN間の防衛交流は、1990年代初頭から徐々に進展し、今日の東南アジアにおける自衛隊の存在感が高まっている。実際のところ、自衛隊を巡っては、歴史的に、そして戦略的な重要性において、幾つかの「初めて」が付いて回った。日本の漸進的で慎重に検討されたアプローチは、依然として日本のASEANに対する関与の特色である。

3)日本はこの地域において積極的で目に見える役割を果たすとする、安倍政権の宣言政策は明確で一貫している。安倍首相は、2014年にオーストラリア議会で「こと国家安全保障に関する限り、日本は長らく内向きでした...我々は、日本を、太平洋からインド洋に及ぶ広大な海と空を、オープンで、自由な場とするため、法の支配に基づく国際秩序を構築するために努力する国にしたい...」と言明した。日本初の国家安全保障戦略は、自国を「開かれ安定した海洋の維持、発展」を志向する「法の支配の擁護者」としている。2014年のシャングリラ対話において安倍首相が発表した、いわゆる安倍ドクトリンは「日本は、ASEAN各国の、海や、空の安全を保ち、航行の自由、飛行の自由をよく保全しようとする努力に対し、支援を惜しみません」と明言した。ラオスで表明された「ビエンチャン・ビジョン2016」は、初めて日本の対ASEAN防衛交流における原則を定め、現在と将来の重点領域を示した。

420176月には、戦後最大の護衛艦「いずも」が、東南アジアで注目を集めた航海を行った。日本は、20162月に東南アジアでは初めてフィリピンとの間で防衛装備の移転協定を結んだ。これに基づき5機の海上偵察機TC-90が、フィリピン海軍に貸与された。その他、「初めて」の画期的な出来事は、20155月に南シナ海で初の日比合同海上演習が実施されたことである。20164月には、海上自衛隊の潜水艦「おやしお」と同行の護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」が、訓練目的でフィリピン・ルソン島のスービック湾に入港した。海上自衛隊の潜水艦がフィリピンを訪問するのは15年ぶりであった。「ありあけ」と「せとぎり」は、戦後初めてベトナムの戦略的要衝であるカムラン湾にも寄港している。海上自衛隊の輸送艦「くにさき」は、アメリカ主導の国際人道支援活動「パシフィック・パートナーシップ2014」の指揮艦となった。米海軍艦艇以外が指揮をとったのは、「くにさき」が初めてであった。また、自衛隊は2013年、フィリピンに損害を与えた台風ハイエンが去った後、同地に戦後最大規模の支援部隊を派遣した。2014年には、行方不明となったマレーシア航空370便を捜索すべく、P-3C対潜哨戒機が派遣された。

5)東南アジアにおける自衛隊のプレゼンスの増大と並行して、日本のソフトパワーによる影響力も相当大きなものになっている。シンガポールは、東南アジアで初めての「ジャパン・クリエイティブ・センター」を受け入れた。これは日本がポップカルチャーや伝統的芸術・工芸品を用いて、地域における影響力と誘因力を拡大するソフトパワー戦略の一環だとされている。また、シンガポールとジャカルタでは毎年アニメフェスティバルが開催されており、日本国外では最大規模のイベントとなっている。さらに日本の高品質な商品と生活スタイルのトレンドを紹介する、という日本政府後援のクールジャパン戦略に基づき、三越伊勢丹は2016年に新旗艦店をマレーシアのクアラルンプールにオープンした。文化的魅力に加え、日本の規範的ソフトパワーが持つ潜在力は、ASEAN共通の課題に取り組む能力にまで拡大している。また、2014年以降、ASEAN・日本アクティブイエジング地域会議が毎年開催されている。日・ASEAN健康イニシアチブに基づき健康的なライフスタイルと疾病予防を促進すべく、日本は5年間にわたり8,000人の人材育成を支援することになっている。ASEANで都市化が進むにつれて、そこから生じる共通の課題への対処で協力の余地が生まれている。東京水道サービス(現在のTSS TOKYO Water)は、バンコクと給水設備の維持、とくに水漏れの検知と補修に関する契約を締結した。JICAも交通渋滞緩和を目的とするマニラ地下鉄事業を支援している。

6)これまでのところ、ASEANは、日ごとに増す自衛隊のプレゼンスに対して否定的反応を見せていないが、幾つかの障害が残っていることも事実である。安倍首相が2013年に行った靖国神社参拝は、他の分野では親密なASEAN諸国から否定的な反応を招いた。シンガポール外務省は、「こうした参拝は古傷を開き、地域において信用と信頼を築く試みを損なうものである」と声明を出した。日本の高齢化対策や下水処理技術に対する関心は、必ずしも日本のより広範な外交や安全保障課題と合致するわけではない。こうした分野では、未だ具体的な成果に繋がるには至っていない。

記事参照:Japan's Hard and Soft Power in ASEAN

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

1. Regional Security Outlook 2018

http://www.cscap.org/uploads/docs/CRSO/CSCAP2018WEB.pdf

Council for Security Cooperation in The Asia Pacific, December 5, 2017

2. MORE MONEY ON THE HORIZON?: ANALYSIS OF THE FY 2018 DEFENSE BUDGET REQUEST

http://csbaonline.org/uploads/documents/CSBA6306_%28FY_2018_Defense_Budget_Report%29_web.pdf

The Center for Strategic and Budgetary Assessments (CSBA), December 5, 2017

Katherine Blakeley, a Research Fellow at the Center for Strategic and Budgetary Assessments

3. What are the differences between China's two aircraft carriers?

http://www.scmp.com/news/china/diplomacy-defence/article/2123610/what-are-differences-between-chinas-two-aircraft

South China Mourning Post.com, December 11, 2017

4. Maritime Territorial and Exclusive Economic Zone (EEZ) Disputes Involving China: Issues for Congress

https://fas.org/sgp/crs/row/R42784.pdf

Congressional Research Service, December 12, 2017

Ronald O'Rourke, Specialist in Naval Affairs

5. China Naval Modernization: Implications for U.S. Navy Capabilities--Background and Issues for Congress

https://fas.org/sgp/crs/row/RL33153.pdf

Congressional Research Service, December 13, 2017

Ronald O'Rourke, Specialist in Naval Affairs

6. A Constructive Year for Chinese Base Building

https://amti.csis.org/constructive-year-chinese-building/

Asia Maritime Transparency Initiative, CSIS, December 14, 2017

7-1. Building Allied Interoperability in the Indo-Pacific Region: Discussion Paper 1

Command and Control

https://csis-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/171215_Shearer_BuildingAlliedInteroperability1_Web.pdf?h6YrwMDqrUIeWDbujuW0.xZzh0wm3Ta.

CSIS, December 15, 2017

7-2. Building Allied Interoperability in the Indo-Pacific Region: Discussion Paper 2

A Case Study in Joint Command and Control for the Japanese Self-Defense Forces

https://csis-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/171215_Shearer_BuildingAlliedInteroperability2_Web.pdf?cXXeciMvhLuTmLviegkHoHvuznRhCorc

CSIS, December 15, 2017

Trent Scott, Military Fellow, Alliances and American Leadership Project, CSIS

Andrew Shearer, Senior Adviser on Asia Pacific Security and Director, Alliances and American Leadership Project, CSIS

8. Navy Ford (CVN-78) Class Aircraft Carrier Program: Background and Issues for Congress

https://fas.org/sgp/crs/weapons/RS20643.pdf

Congressional Research Service, December 22, 2017

Ronald O'Rourke, Specialist in Naval Affairs

9. Navy Force Structure and Shipbuilding Plans: Background and Issues for Congress

https://fas.org/sgp/crs/weapons/RL32665.pdf

Congressional Research Service, December 22, 2017

Ronald O'Rourke, Specialist in Naval Affairs

10. Southeast Asian countries vie for port supremacy

https://asia.nikkei.com/Business/Trends/Southeast-Asian-countries-vie-for-port-supremacy?page=1

Nikkei Asian Review.com, December 31, 2017