沿岸国の権利・義務と海底に眠る資源

国連海洋法条約に基づく大陸棚に対する沿岸国の権利・義務

沿岸国は大陸棚を探査し、大陸棚にある天然資源を開発するため、主権的権利を行使することができます(国連海洋法条約第77条1項)。沿岸国が大陸棚を探査・開発しない場合であっても、沿岸国の同意なしに勝手に他国がその大陸棚に入って探査・開発活動をすることはできません(下記の図1を参照)。
沿岸国は、200海里の大陸棚までは、何もせずとも、このような権利を行使することができます。200海里を超える部分については、 大陸棚限界委員会に必要なデータを提出し、委員会からの勧告に基づき、大陸棚の外側の限界を設定すれば、その限界線は「最終的かつ拘束的」(国連海洋法条約第76条8項)なものとなり、200海里以内の大陸棚における権利と同様の権利を沿岸国は行使できます。(*1)

ただし、 200海里以内の大陸棚と、200海里を超えて延長された大陸棚では、異なる点があります。それは、 200海里を超えて延長された大陸棚における非生物資源(石油・天然ガス等の鉱物資源)の開発については、その資源開発から得られた生産量や生産額に応じて、一定の金額や資源を国際海底機構(ISA)に拠出し、ISAが開発途上国に配分することになっている点です(国連海洋法条約第82条)(下記の図2を参照)。
この制度は、国連海洋法条約の起草過程において、広大な大陸棚を得ようとする沿岸国グループに対し、大陸棚を有さない内陸国や狭い大陸棚しか有さない国等が反発したため、両者間の妥協として作られたと言われていますが、実際に実施するためには多くの課題があります。 (*2)
公海における資源開発の場合も同様に、ISAを通じて、開発途上国への利益の配分の制度があります(国連海洋法条約第11部。なお、第11部は国連海洋法条約発効の際、第11部実施協定により実質上修正されています)。

(*1)  200海里を超えて延長される大陸棚の国際法上の位置づけや特徴については、当財団が2008年2月に実施した大陸棚セミナーにおいて、アレックス・オウデ・エルフェリンク 博士(オランダ、ユトレヒト大学海洋法研究所上級研究員)より、詳細な報告が行われました。オウデ・エルフェリンク博士の報告(英文)は、当財団サイト内の下記ページに掲載されています。

(*2)  第82条の利益配分制度については、当財団が2008年2月に実施した大陸棚セミナーにおいて、兼原敦子立教大学教授により、詳細な報告が行われました。兼原教授の報告(英文)は、当財団サイト内の下記ページに掲載されています。


図1 大陸棚にある天然資源に対する沿岸国の権利

 


図2 国際海底機構を通じた利益配分制度
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