海洋安全保障情報旬報 2020年6月1日-6月10日

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6月1日「米海軍にはグレーゾーン戦略が必要-米海軍士官論説」(Proceedings, June 1, 2020)

 6月1日付のThe U.S. Naval Instituteが発行する月刊誌Proceedingsのウエブサイトは、米海軍少佐Andrew Kramer、同Martin Schroederの“The Navy Needs a Gray-Zone Strategy”と題する論説を掲載し、ここでKramerとSchroederは中国などの現状変更勢力に対応するため米海軍はグレーゾーン戦略を確立する必要があるとして要旨以下のように述べている。
(1) (想定されるシナリオ)2022年夏、香港独立運動と世界的景気後退に伴う内乱に対する弾圧への国際的非難を受け、中国共産党は南シナ海における国際的な対立を通じて国民の関心を外に向けようとする。日本との歴史問題を契機に国民の憤りを再燃させた後、中国は尖閣諸島の領有権と2013年に策定した東シナ海防空識別圏に関する主張を再開、こうした動きは「愛国市民」のサイバー攻撃で日本の警戒監視無人機2機が無効化され、奪取されたことで更に激化する。そして中国のトロール漁船団が「山東」空母戦闘群に護衛されて尖閣諸島を取り囲むのと同時に、2隻の米駆逐艦が寄港地でCommand Triad(抄訳者注:米海軍において指揮官、副長、最先任上級曹長の三者の連携を意味する用語)のメンバーが不祥事を起こしたことで、既に対処能力の限界にあった在日米軍は即応態勢の急激な低下を知ることとなる。後者は外国の手先が関与した疑いもあったが、ソーシャルメディアの映像を伴ったキャンペーンは、米国に対する抗議を引き起こし、調査が完了するまでの間、両艦は港内に留めおかれることとなった。このような想定は、米国の敵対者が過去数十年にわたり実施して来たグレーゾーン戦略の継続を前提としたものである。中国、イラン、北朝鮮及びロシアは直接的な軍事対立では米国に敵わないため現状変更という目標を達成するには軍事行動の閾値以下で活動しなければならない。彼らが採用するこうした戦略、戦術はグレーゾーン作戦と呼ばれている。米海軍は今後数年、数十年にわたって発生するであろうそのような作戦に効果的に対応することは困難である。
 (2) グレーゾーン作戦は、サラミスライス戦術と呼ばれる一連の小さな動きによる現状変更を目指しており、巧妙な宣伝を併用する。グレーゾーンの行為者は意図を偽り、軍以外の存在(抄訳者注:海上民兵などを念頭に置いたもの)を利用したりするほか、メディアを利用して国際仲裁や国際社会の同情を集めるような宣伝を伴うこともある。グレーゾーン作戦は当該地域での展開にとどまる可能性が高く、これが米国本土から遠く離れた地域にとどまる場合、それは敵対者の行動が比較的抑制されたものであるということを意味している。そしてこうした軍事行動を誘発せずに現状に変化をもたらす能力の増大は、「21世紀の海軍力のための協力的戦略」にリストアップされた以下のような海軍にとっての必須の機能を脅かすことになる。
a. 全領域対処(All domain access)
b. 抑止力
c. シー・コントロール
d. パワープロジェクション
e. 海洋安全保障
(3) グレーゾーン脅威に対抗する処方箋は決して簡単な話ではなく、少なくとも部隊編成、戦術及びプロパガンダの戦略的使用といった点については改善を図る必要があるだろう。海軍の水上艦艇、潜水艦及び航空機は、海軍同士の持続的な戦闘作戦のために構築されているが、今日、そのような戦争に備える重要性は相対的に低下している一方、海軍に求められている上記のような活動への対応は必ずしも十分ではない。最も深刻な問題は海軍の艦艇の隻数であり世界の海域で「航行の自由」を確保するには不十分である。米海軍が南シナ海や黒海で侵略を持続的に阻止することは困難である一方、使用する兵力としては駆逐艦であってもパワープロジェクションには大き過ぎ、余りにも貴重で高価である。「海外沿岸警備隊」を立ち上げるということも一つの解決策であろう。これは低コストで死活的に重要な海域に展開可能なように設計された軽武装の巡視船を整備するということであり、これら艦船は戦闘を期待される物ではなく高い攻撃力を有する必要もない。また、もう一つの提案としては、駆逐艦に割り当てられている任務を担任するフリゲートをより低コストで調達し、これらの任務から駆逐艦を解放して海軍の抑止力を高めるということである。 
(4) 新たな部隊編成には新たな運用構想を適用する必要がある。より安価で小型の戦闘艦艇は港湾(基地)による支援と防護を必要とする。仮想の黒海艦隊はマリーナより少し大きい程度の港湾に展開可能な12隻の巡視船で構成可能であるが、これらを通信機器で連接することにより、海上で予期せぬ事態が発生した場合には陸上司令部からの指揮統制が可能となる。こうした巡視船の存在は重要であり、同時に6隻を配備できれば、戦闘指揮官は担任区域内での海上グレーゾーン作戦への対応が必要になった場合、どこにでも所要の巡視船を展開することができるようになるだろう。もっとも、このような新型艦船や戦術をもってしても敵のグレーゾーン作戦を阻止するのには十分ではない。海軍は情報発信(抄訳者注:原文はcreating and conveying a narrative)にも熟達している必要がある。焦点は他の国家の行動に対する迅速で簡潔な対応である。仮にロシアと米国の軍艦が衝突したような場合に、調査が行われている2週間、沈黙している余裕はない。その結果が発表されるまでに、国際社会はロシアからの情報発信に主導されることになるだろう。必要に応じ米国の情報発信がニュースサイクルを支配する必要がある。海軍は既に有能な広報スタッフを有しているが、海軍はその活用を、空母戦闘群の運用や諸外国海軍との演習と同様の重要度に引き上げなければならない。
(5) 米国の敵はグレーゾーン作戦の機会を伺っている。ある地域で米国のプレゼンスに対抗する圧力を徐々に高め、こうしたプレゼンスのコストを引き上げ、肯定的な、あるいは曖昧なナラティブ(抄訳者注:近年、情報発信に際して形成される一定の意図に基づいた説明のラインがこのように称されている)を紡ぐことによって、自らを危険にさらすことなく行動の自由を生み出すことを企図している。敵対的な新たな脚本がジョージア、クリミア、スプラトリー諸島、尖閣諸島、シリアなどでの最近の成功事例に基づいて構築されるに伴い、新たな、より創造的な戦術も出現するかもしれない。海軍は効果的な対グレーゾーン作戦の部隊と独自の戦略を開発し、グレーゾーン作戦という新たな脅威に対抗するためにただちに行動する必要がある。
記事参照:The Navy Needs a Gray-Zone Strategy

6月2日「1992年コンセンサスは意義を失いつつあるのか―米国防専門家論説」(The Diplomat, June 2, 2020)

 6月2日付のデジタル誌The Diplomatは、米シンクタンクRAND Corporationの国防専門上級アナリストDerek Grossmanの“Is the ‘1992 Consensus’ Fading Away in the Taiwan Strait?”と題する論説を掲載し、ここでGrossmanは中台関係においてこれまで微妙な安定をもたらしてきた1992年コンセンサスが最近意味を失いつつある兆候があるとして要旨以下のとおり述べている。
(1) 1992年、中国と台湾(当時国民党の李登輝総統)の間で、原則としては「ひとつの中国」が存在するという合意が結ばれた。この「92年コンセンサス(以後、92年合意と言う)」を中国政府は台湾海峡における平和と安定の維持のための唯一の基盤と主張してきた。しかし92年合意に基づく微妙な安定は、もはや過去のものになったかもしれない。
(2) 2020年5月22日、中国の全人代で李克強首相によって政府活動報告が行われたが、そこで92年合意について言及されることがなかった。それはここ9年間で初めてのことであった。ただし23日と26日の活動報告では再びそれについて言及し、中国の方針が変わっていないことを示唆した。他方、台湾は再選した蔡英文総統が5月20日の就任演説で、92年合意について触れなかった。2016年の就任演説では3段落にわたって92年合意について自身の見解を説明していたこととは対照的である。
(3) 中国の立場の微妙さ、台湾の方針転換は何を意味するのか。2019年に習近平国家主席は、「台湾同胞に告げる書」の40周年演説において、台湾に関する「一国二制度的」な解釈を示した。そのうえで李克強が5月22日に92年合意に言及しなかったのは、中国がもはや「ひとつの中国」をめぐる理解について、台湾側の合意を必要としないことを示唆していたのではないだろうか。その後再び92年合意に言及したので中国の意図ははっきりしないが、今後注視が必要であろう。
(4) 台湾において92年合意は論争的なテーマで、特に蔡英文総統が所属する民進党内ではそうであった。だが、蔡英文総統は当初、92年合意が存在したことは「歴史的事実」だと認め、それに基づく調整を試みてすらいた。しかし上述の習近平国家主席による演説に蔡総統は拒絶反応を示した。
(5) それは当時92年合意を結んだ国民党にとってもそうであった。国民党にとって92年合意は、「ひとつの中国」に関して中台それぞれが解釈を有する、というものであった。しかし習演説によって92年合意は「一国二制度」を意味するようになってしまった。また「一国二制度」のもとに置かれていたとされる香港の状況が、よりそれに対する反発を強めることになったであろう。国民党ですら92年合意を「一国二制度」的なものという解釈を否定せざるを得なくなった。
(6) 92年合意がまったく意味を失ったわけではない。しかし中国はもはや、それについて台湾側に配慮することに関心を失いつつあるように思われる。もし国民党が政策綱領から92年合意を削るようなことになれば、台湾海峡をまたいだ政治的交渉の望みは消える。いずれにせよ現在の兆候は中国が台湾に関する「一国二制度」的理解を、より強圧的に進める可能性を示唆していよう。
記事参照:Is the ‘1992 Consensus‘ Fading Away in the Taiwan Strait?

6月3日「戦略的チョークポイントというものはない-米専門家論説」(Center for International Maritime Security, JUNE 3, 2020)

 6月3日付の米シンクタンクCenter for International Maritime Security のウエブサイトは、米海軍退役大佐Jamie McGrathの“There Are No Strategic Chokepoints”と題する論説を掲載し、ここでMcGrathは兵器、センサー技術、艦船の性能の向上などによって現代には戦略的チョークポイントは存在せず、注目すべきは戦略的海域であり、米海軍はそのシー・コントロール、シー・ディナイアルに焦点を当てるべきであるとして要旨以下のように述べている。
(1) 海軍の理論家Milan Vegoは、英国のJohn Fisher第1海軍卿の「世界には5つの要所がある。ドーバー海峡、ジブラルタル海峡、スエズ運河、マラッカ海峡と喜望峰である。そして、我々はその1つ1つを掌握している」という言葉を引用している。Fisher第1海軍卿は英国中心の視点から述べているが、彼の指摘は要衝となるチョークポイントを支配することは国家の戦略的利益を支配することに等しいということの証左である。しかし、武器体系とセンサーの技術が進展し、世界経済が相互に結びつくようになった後の世紀でもそのような主張は可能なのだろうか。交易の自由な流れによる国際的な利益が沿岸国の利益を上回る海峡は100以上もある。これら海洋でのチョークポイントの重要性は全て等しいわけではない。これらチョークポイントは本当に戦略的なのか?おそらく、どのようなチョークポイントの戦略的価値も大げさに言われている。これらのチョークポイントを真に「支配する」可能性は、近年の海洋における脅威の下で低下している。焦点は戦略的海域に置かれるべきで戦略的海域をつなぐものではない。
(2) 戦略的海峡の考え方を放擲する前に、海洋地理の戦略的重要性と作戦上の重要性の違いについて共通の理解があるはずである。海洋戦略とは国家軍事戦略を支える海洋における力の源である海軍、そして海軍以外の源を使用する科学と術である。「(敵に)多大な損害をもたらし、機敏で、抗堪性のある部隊の組成と運用」や「行動が戦略的にますます柔軟で自由であることを要求する世界的戦略環境」と相まって、致死性、抗堪性、そして同盟や提携の基盤における致死性に力を入れることはチョークポイントのような地理的に固定された位置は米国の戦略との関係が減少してきていることを示している。海軍作戦は、作戦目的を達成する目的で主要海軍作戦を計画し、準備し、実行するための理論と実践と定義される。チョークポイントの作戦上の価値は一時的なもので、特定の作戦の時間、空間、部隊に依存している。国家の政治目標を達成するために他の選択肢がある場合には、高い作戦上の価値を有するチョークポイントは限られた戦略的価値しかないか、全く価値がないかである。
(3) チョークポイントの支配は長い間、特定の海域への出入りを支配する主たる方策であった。信頼できる推進力を与える卓越した風と定期的な補給を可能にする基地に依存していた帆船時代には、チョークポイントの通航は重要であり、チョークポイントの支配は商船の運航と艦艇の動きを統制することを保障してきた。蒸気推進装置の発達は貿易風への依存を取り除いたが、帆船時代に確立された基地へは給炭場所としてますます依存するようになった。したがって、Fisher第1海軍卿の時代には彼の主張は正しかった。しかし、第2次大戦以降、補給のための陸上基地への依存は減少した。米海軍は第2次大戦中に洋上補給を完成し、商船は無補給の航続距離を著しく延伸してきた。両者とも、陸上基地への依存を減少し、結果として特定の海上交通路への依存を減少させた。チョークポイントは部隊を集中させることで海軍の戦いにおける作戦面あるいは戦術面を単純化している。チョークポイントに接近する方法は限られている。限られた海域は偵察され、防護されていなければならないので、チョークポイントは偵察と防護の問題を限られたものにしている。したがって、チョークポイントを支配する側は部隊を集中できるか、あるいは限られた兵力をより効果的に利用することができる。日本海海戦の事例はいかにチョークポイントが偵察を単純化しているかを示している。石炭を燃料とする推進機関の限界は給炭可能な場所を得ないで1,000海里以上を航海するためにはロシア第2太平洋艦隊にとって対馬海峡しか選択肢はなかった。しかし、洋上補給システムは海軍部隊に戦略的海域に侵入するより大きな柔軟性を与えている。
(4) チョークポイントを保持することは2つの基本的な目的に役立つ。1つはシー・コントロールとシー・ディナイアルに根付いている。シー・ディナイアルの場合、チョークポイントを支配することによって敵はチョークポイントの向こう側の海域に出入りできないことを含んでいる。シー・コントロールの場合、チョークポイントの支配は理論的には海峡によってチョークポイントと訳された海域内である国が選択した時と方法により海軍部隊を運用することができる。もし、国家がチョークポイントを支配すれば、その国の裁量で海軍部隊も海上交易も自由にチョークポイントを通ることができることを意味する。昨今の海洋における脅威の環境では、チョークポイント近傍の陸上あるいは海域を支配することは最早、チョークポイントを支配する独占的な手法ではない。武器の射程が水平線をわずかに越える程度の時には戦略的チョークポイントに焦点が当てられてきた。今日、敵は彼らの使用を拒否する戦略的に重要な海域への地理的な入り口を支配する必要は最早ない。地理的チョークポイントを「保持」することは最早、チョークポイントのどちらの側の海域であってもその使用を保障するものでも、チョークポイントそのものの安全な航過を確実にするものでもない。したがって、米海軍は過去の戦略的チョークポイントではなく戦略的海域を支配し、あるいは敵が利用することを拒否する能力により広く焦点を当てるべきである。
(5) 戦略的チョークポイントに価値を与える今1つの要素はその海峡を航過する交易量である。伝統的に、封鎖と海洋における交易の戦いは大きな戦略的効果をもたらすものとしてチョークポイントの支配を使用してきた。今日、このような行動が同じような戦略的効果を生むだろうか?今日、大きな交易量は確かに海峡に経済的価値を与えている。なぜなら、これらチョークポイントは生産地から市場へ最短の航路を示しており、したがって輸送費を最も安くしている。しかし、海峡を通る交易を支配することは実現可能な戦略的目的だろうか?米海大のChristopher J. McMahonは海洋における交易の戦いは今日の世界的経済の中では効果がないとし、提示した多くの理由の中でチョークポイントの閉鎖は世界規模の交易では現実の影響はないと述べている。最も頻繁に取り上げられる戦略的チョークポイントの1つがマラッカ海峡である。なぜならマラッカ海峡をそれほど多くの世界の海上交通が通航するからである。しかし、マラッカ海峡が閉鎖されると世界の交易にどれほどの影響が出るだろうか?確かに、世界の海運市場におけるシンガポールの役割に影響を及ぼすだろう。しかし、スンダ海峡あるいはロンボック海峡を通航しなければならなくなることで世界の海運網は深刻な負担を負うことになるだろうか。船賃は値上がりするだろうか?するだろう。しかし市場が値上がりした船賃を調整すれば、海運はそれが機能する方法を見出すだろう。マラッカ海峡が閉鎖されたことによって太平洋の交易が迂回しても世界の交易における価格へは最低限の影響しか及ぼさないだろう。
(6) チョークポイントの戦略的価値が終焉したことは過去の伝統的な戦略的チョークポイントを見れば明らかである。英国はドーバー海峡を支配することでヒトラーの独海軍を北海に封じ込めたかもしれない。しかし、ドイツはフランスを占領し、ドーバー海峡に拘束されないブルゴーニュ地方に基地を建設し、英国の優位を無効にした。確かにドーバー海峡は独商船や艦艇が本国に帰投するのを妨げてきた。しかし、戦略的海峡の支配は独Uボートの支配を意味しなかった。チョークポイントは迂回することができる。冷戦期、GIUK Gapは戦略的チョークポイントであった。米国に脅威を及ぼそうとするソ連の弾道ミサイル搭載潜水艦はGIUK Gapを通過しなければならなかったからである。後に射程の長い潜水艦発射弾道ミサイルの開発は、弾道ミサイル発射のために潜水艦は北極圏に留まることができることを意味した。チョークポイントは射程の長さでしのぐことができる。今日、復活した中国は南シナ海を自国の内水との主張を展開している。先に述べたようにマラッカ海峡は伝統的に南シナ海を支配する鍵であり、したがって欧州とアジアの間の交易にとって戦略的に重要であった。しかし、マラッカ海峡だけが南シナ海への出入り口ではない。より広いバシー海峡やインドネシアやフィリピンの群島内の多くの航路を経由して出入りが可能である。中国はこの点を認識し、チョークポイントの支配に依存しない支配のメカニズムを適用してきた。その代わりに、長射程の接近阻止/領域拒否兵器と南シナ海における過剰な軍事化した島嶼に焦点を当ててきた。南シナ海における中国の接近阻止/領域拒否戦略は2つの理由から重要である。第1に、チョークポイントの物理的支配はチョークポイントの使用を保証するという仮定は中国の接近阻止/領域拒否兵器およびセンサーの前では無効である。米国およびその協調国はマラッカ海峡のいずれかの側の陸上を保持し、海峡を哨戒するのに十分な海軍部隊を保有しているが、中国はそれにもかかわらず対艦弾道ミサイルや長射程の退艦巡航ミサイルを使用してマラッカ海峡の自由な通航を阻止することができるだろう。さらに、中国本土あるいは南シナ海の中央部に配備されたこれら長射程兵器は南シナ海につながる他の海峡に異議を申し立てることもできる。逆に、商用であれ、軍用であれ海運の予測可能な交通路は敵に支配されたとなれば容易にマラッカ海峡を迂回することができる。チョークポイントは置き換えが可能である。
(7) 問題は「何が今日の戦略的チョークポイントか」ではなく、代わって「何が今日の戦略的海域か」である。チョークポイントの支配は海域を支配するための1つの方策に過ぎない。Vegoは、海軍の争いには2つの主要な海域がある、開豁な海域と狭隘な海域であると述べている。開豁な海域と狭隘な海域を分ける多くの特徴があるが、主なものの1つは陸地からの近さである。狭隘な海域では、陸地は海軍艦艇の運動能力から地上配備の兵器からの脅威まで海軍の戦いの多くの側面に影響を及ぼす。艦船がはるか洋上に出れば、運動できる空間は開豁になり、地上からの脅威は消滅するか、艦船はそのように判断しそうである。ミサイルであれ、航空機であれ地上に配備された兵器の脅威の外側の開豁な海域に置いて自由に行動する海軍部隊の能力は、最近の脅威の環境下では減じつつある。このことは、全ての側面においてではないにしても、これまで狭隘な海域と考えられてきた海域が拡大してきたことを意味する。狭隘な海域が世界の海のかなりの部分を占めてきているとすると、かつて戦略的と見なされてきた(海上交通を)制約するチョークポイントはその妥当性の多くを失うことになる。チョークポイントを支配する説得力のある理由はあるのかもしれない。しかし、宇宙に配備されたセンサーと長射程のミサイルの拡散の時代にチョークポイントの戦略的価値は大きく減少した。チョークポイントの支配はFisher第1海軍卿の時代のように「世界の鍵」をもはや意味しなくなった。チョークポイントを支配するために時間と部隊を消費しても求められる戦略的優位を得られないかもしれない。さらに悪いことに作戦上、機動力が必要なときに部隊は地理的な位置に固定されてしまうかもしれない。米国は、戦略的チョークポイントという時代遅れの考えに焦点を当てるよりむしろ戦略的海域でより軽快で、より機能的なメカニズムを実行するほうが良いだろう。
記事参照:There Are No Strategic Chokepoints

6月3日「南シナ海を人の住める場所にしようとする中国の意図―米海軍協会報道」(USNI News, June 3, 2020)

 6月3日付のU.S. Naval InstituteのウエブサイトUSNI Newsは、 “New Air Bases, Baby Cabbage Key to Chinese Long-Term Claims in South China Sea”と題する記事を掲載し、南シナ海への進出を強める中国の動向に関連し、同海域上空の防空識別圏の設定や、西沙諸島での農作物生産などの行動が持つ意味について要旨以下のように報じている。
(1) 中国が南シナ海における自国の領土的主張を強める行動を進めている。ひとつには、その軍事的能力を高め、西沙諸島や南沙諸島上空における防空識別圏(以下、ADIZと言う)の設定を宣言すること、もうひとつがその海域に建設してきた人工島に人が住めるようにしていくことである。
(2) 最近の報道によれば、台湾政府関係者が中国によるADIZ設定による脅威について警告を発したという。中国は南シナ海の大部分を覆う「九段線」の存在を主張している。国際法に、とりわけ1982年の国連海洋法条約(以下、UNCLOSと言う)に基づくものではないが、中国はその海域における自国の権利を主張し、その主張を裏付ける既成事実を少しずつ積み重ねてきた。中国はこれまでも南シナ海上空にADIZを設定することを匂わせてきた。
(3) しかし専門家の見立てでは、中国はしばらくの間その地域にADIZを設定する意図もなければ、その能力もないとのことである。中国の指導者層は、ルールに基づく国際秩序からかけ離れた行動をとることにはなお慎重であるし、本土から遠く離れたその海域(西沙諸島および南沙諸島周辺)においてそれを宣言するだけの能力を持たないのだ。そう主張するのは、CSISのAsia Maritime Transparency Initiativeの主任Greg Polingである。Polingによれば、中国は東シナ海においてADIZを設定したが、実際にそれを実行する能力を有していない。
(4) 確かに南沙諸島のファイアリー・クロス礁やスビ礁、ミスチーフ礁にある空・海軍基地は、理論的には中国にADIZを実行できるだけの航空戦力を提供するものであるし、早晩南沙諸島に戦闘機が配備されることになろう。しかし、その基地を維持することはきわめて膨大な労力を必要とするのである
(5) Polingによれば,中国が西沙諸島に限定してADIZの設定を宣言する可能性はあるという。ごく最近、西沙諸島を通行するアメリカの「航行の自由」作戦が実施されたが、それは中国の行動に対するアメリカの対抗的な活動である。
(6) ニューデリーを拠点に活動するNational Maritime Foundationの事務局長Sarabjeet Parmarは長期的観点から、その軍事的意義を超えて西沙諸島の重要性が増していると主張する。つまり、最近西沙諸島で農作物が収穫されたというのである。中国共産党の環球時報英語版が報じた。
(7) それが重要な意味を持つのは、UNCLOSの第121条の「人の居住や経済生活を維持できない岩礁は、排他的経済水域や大陸棚を持たない」という条文ゆえであるParmarも農作物をつくることは「主権の印」のひとつだと述べている。こうした事実が積み重ねられることで、中国の主張の根拠がより確固としたものになっていく可能性があるのだ。今後、諸国がCOVID-19のパンデミックから何とか回復しようというとき、今後12ヶ月の動向が決定的になるだろうとParmarは述べている。
記事参照:New Air Bases, Baby Cabbage Key to Chinese Long-Term Claims in South China Sea

6月3日「米中冷戦を熱戦に変え得る3つの発火点―米専門家論説」(The Diplomat, June 03, 2020)

 6月3日付 のデジタル誌The Diplomatは、The Asia Society Policy Institute副所長で、Obama政権下で東アジア太平洋担当国務次官補や大統領特別補佐官、National Security Councilアジア担当上級理事を務めたDaniel Russelの“The 3 Flashpoints That Could Turn a US-China ‘Cold War’ Hot”と題する論説事を掲載し、ここでRusselは香港、南シナ海、そして台湾に関わる米中対立が制御不能な事態を招く危険性があることを認識すべきであるとして要旨以下のように述べている。
(1) 世界中の政府がCOVID-19への対応の準備ができないまま感染が拡大していった。感染は地政学的な大きなリスクを伴う米中関係の悪化を激化させている。米国務長官から中国の「戦狼外交官」(編集注:強硬な主張をする中国の外交官を指す俗語)まで、非外交的な舌戦が繰り広げられている。両国国民の敵対的感情は高まり、それが2020年の米大統領選の中心的な議題を形作りつつある。今日の米中対立は両国間の潜在的な地政学的リスクを秘めている。そのリスクは、COVID-19への対応のように準備が整っていない状況の下で顕在化しつつある。既に顕在化しているリスクは、香港、南シナ海、そして台湾である。
(2) 中国全国人民代表大会は「香港国家安全維持法案」を提出した。SARSの流行した2003年、同様の法律案が議事に上がったが香港の民主化支持市民の抗議により廃案となった。2019年に犯罪人の本土への引き渡しを可能とする法案が提出された際には大規模な抗議デモを引き起こした。米国議会が香港人権民主法を可決し中国に対する制裁を可能とする中で、北京政府は法案議決に舵を切った。「香港国家安全維持法」執行のために軍事力が行使されることがあるだろうか?
(3) 中国の「サラミスライス」戦術によって南沙諸島の前哨基地の建設が進み、国際法を無視した権利の主張がまかり通りつつある。中国は2016年の仲裁裁定を無視して南シナ海における主張を押し通そうとしている。過去3年間、米中両国は南シナ海での軍事作戦を増大させてきた。2020年に入って米国は「航行の自由作戦」をハイペースで実行し、中国はベトナム漁船を沈没させ、南シナ海の大部分に行政区を設立するとともに空母打撃部隊を配備した。2001年の中国軍による米国EP-3電子偵察機墜落の後に実施されていた米中のハイレベル戦略対話と軍事交流は過去3年間で縮小し、危機管理メカニズムはその機能を奪われている。戦略的な不信感と対話チャネルの断絶によって軍事衝突の危惧が高まっている。
(4) 台湾は民主的な法の支配と権威主義との断層線に位置する。また、米中両国の利益、影響力、軍事のせめぎ合いの交差点でもある。米国の多くの人々にとって台湾は象徴的な重要性を持っている。一方、中国にとって台湾統一は中国共産党のアイデンティティと正統性において不可欠のものである。習近平国家首席はこの1年で深刻な挫折を経験した。蔡英文総統の再選と香港民主化運動への支持が台湾内で「一国二制度」に対する不信感を増大させている。台湾における新型コロナウイルス感染対応への国際的な称賛は、世界保健機関会議(WHO)から台湾を締め出す中国の姿勢に反発を呼ぶことになった。米国は台湾メーカーがアリゾナ州に120億ドルの最先端半導体製造工場を建設すると発表し、また、米海軍艦艇の台湾寄港や米海兵隊員の配備などを検討しているとの報道もある。中国政府の指導者たちは力によって台湾統一を果たす能力があるか否かを正しく評価することができるであろうか?米中両国は、軍事衝突の前に危機を予期することができるであろうか?
(5) 米中関係における不安定な均衡は小さな行動でさえ戦争の触媒となることを見逃してはならない。米中間の貿易戦争やCOVID-19発生源などに関する非難合戦から耳を逸らしてはならない。ワシントンと北京の間の慢性的な問題が突然的に極めて深刻で制御不能なエスカレーションをもたらす危険性があることを認識すべきである。
記事参照:The 3 Flashpoints That Could Turn a US-China ‘Cold War’ Hot

6月4日「インドとオーストラリアが相互兵站支援協定に署名―印紙報道」(Financial Express.com, June 4, 2020)

 6月4日付の印日刊英字ビジネス紙Financial Express電子版は、“India – Australia: Indo-Pacific maritime powers ink MLSA for access to military bases”と題する記事を掲載し、近年のインドとオーストラリアの関係の深化について要旨以下のように報じている。
(1) 6月4日、インドとオーストラリアは兵站支援のための軍事基地への両国のアクセスを可能にする画期的な合意についに署名した。これは、インドとオーストラリアとの間で行われた史上初の二国間オンライン首脳会談の終わりに署名された7 件の協定中の1 つだった。「インドとオーストラリアの関係は、特に海洋領域において将来的に大きな可能性を秘めている。両国の地理的な位置関係は、広大な帯状のインド太平洋に対する効果的な海洋状況把握(Maritime Domain Awareness)のための能力をもたらす」と、ある専門家は見解を述べている。この相互兵站支援協定(Mutual Logistics Support Agreement:MLSA)は、相互運用性の助けになると期待されており、それぞれの軍の兵器輸送・配備用の航空機・潜水艦などが両国において支援と物資を受けるのに役立つだろう。
(2) この会談では、インド、日本、米国及びオーストラリアが参加している4カ国安全保障対話(以下、Quadと言う)についても話し合った。会談後に発表されたNarendra Modi首相とオーストラリアのScott Morrison首相の共同宣言では、「双方は、ルールに基づいた海洋秩序を支持することを確約している。これは、主権と国際法、特に国連海洋法条約の尊重に基づくものである」と述べた。両国は、海洋の安全保障と治安の拡大に意欲的であり、そのために、両海軍は協力を深め、情報交換を通じて成し得る、インド太平洋地域における海洋状況把握のさらなる強化に向けて取り組む。
(3) 印海軍退役准将Anil Jai Singhは、「インドとオーストラリアというインド太平洋の海洋国家は、民主主義的価値観とルールに基づいた国際秩序への献身を共有しているにもかかわらず、それを有意義な二国間関係に結びつけることができたことはほとんどない。しかし、この5年間インドは、この関係を発展させるための主導権を取っている。今日の首脳会談で、この二国間関係を『包括的な戦略的パートナーシップ』に格上げし、2+2の閣僚レベルの対話を導入する意志を決定したことは、過去5年間に行われた前向きな進展を示している。オーストラリアとインドは、Quadを構成する2つの国であるが、中国の影に阻まれて、これまでのところ実質的な成果を上げることができなかった。これはまた、オーストラリアが、現在インド、米国及び日本の 3 カ国が参加するマラバール共同訓練への参加を認められていない理由かもしれない。これは分離して考えれば、不協和音の印象を与えるかもしれないが、二国間関係の発展を反映したものではない」と述べている。マラバールの数カ月後、2019年春にベンガル湾で開催された最新の2年に1度の二国間の印豪海軍演習(AUSINDEX)の活動領域の拡大は、両国が関係の強化に取り組んでいることを再確認し、また、恐らくこのような間接的なメッセージを地域全体に送ったのだろう。「両国は現在、COVID-19の パンデミックによってさらに悪化している、経済的な抑制に直面している。おそらく、この地域の小国や貧困国において可能性の高い、パンデミック後の社会経済的な苦境による将来の悪影響は両国が能力強化を通じてこれらの問題のいくつかに対処するために協力する機会を提供する可能性がある。標準作業手順と通信規約が共有される兵站支援に関する共通認識と基本的な合意は、増大する脅威に対するこの地域の効果的な監視だけでなく、この地域に多く存在する海洋安全保障に対する非伝統的な脅威との戦いに向けて、両国が彼らの資源を最大限に活用することを可能にする」とSinghは述べている。
記事参照:India – Australia: Indo-Pacific maritime powers ink MLSA for access to military bases

6月4日「戦略とはいえない北極圏でのロシアのプロジェクト―ユーラシア専門家論説」(Eurasia Dairy Monitor, the Jamestown Foundation, June 4, 2020)

 6月4日付の米シンクタンクThe Jamestown Fondationが発行するEurasia Daily Monitorのウエブサイトは、ユーラシア大陸における民族的・宗教的問題の専門家であるPaul Gobleの“Delays, Disasters and Cost Overruns Plague Putin’s Projects in Arctic”と題する論説を掲載し、ここでGobleはロシアの北極圏に対するプロジェクトは希望が先行しているが、そのための資源が伴わず戦略と呼べるものではないとして要旨以下のように述べている。
(1) Vladimir Putin大統領は10年以上にわたり、北極海航路の開発をより広範な北極圏の沿岸部や海底の開発と同様に彼の国策の焦点としてきた。しかし実際には、極域におけるPutin大統領の主要プロジェクトは遅延、災害およびコスト超過に悩まされており、モスクワが彼の言葉を実行する能力に疑問を投げかけている。Putin大統領が北極戦略をもっているのか、それとも単に願望をもっているだけなのかという疑問を抱かせるほどに課題の規模と数は困難なものである。
(2) しかし、ここ数ヶ月間の出来事、特にここ数週間の出来事は暖かな気候が北極圏の海運シーズンを長くし、海の新たな部分を経済開発のために開放し、そして地域全体でのモスクワの成功についてのプロパガンダがこれまで以上に大げさになっているのにもかかわらず、モスクワのこれらの課題に対応する能力が低下していることを示唆している。ロシアが直面している問題としては、ロシアの新しい原子力砕氷船「アルクチカ」のエンジンの問題、空母「アドミラル・クズネツォフ」の修理、そして「浮体チェルノブイリ」と呼ばれる浮体原子力発電所、またごく最近でも、ムルマンスクの橋の崩落、大規模な石油流出の発生、北極圏調査船「セヴェルヌィ・ポリウス」の完成の遅れといったものがある。
(3) 戦略は当然、単なる目的の列挙ではない。むしろそれは、優先傾向を修正する、または利用できる資源を増加させることによって資源と目的の優先傾向を合わせるという計画の発展を含んでいる。特定の優先傾向を伴う計画が十分な資源を保有していない、または計画を支えるための十分な資源を動員できなければ実際には計画は全く戦略をもたないということになる。この現実は、モスクワの声明についての議論においてしばしば無視されており、意思表示が戦略の存在と同一視されがちであるが、実際には戦略を実行するための資源が十分ではない。また、モスクワによる北極圏へ力を誇示する計画についての議論では、このことが忘れ去られているのが通常のことである。ソ連時代の終わりから2007年まで北極圏を無視していたモスクワは、経済的及び地政学的にロシアにとっての北極の重要性を強調した一連の「戦略」文書を発表してきた。ロシア人学者Sergey Sukhankinによれば、こうしたロシアの主張や計画は、外部の専門家からの分析でも「軍事的プレゼンスの強化、石油事業への選択的な投資及び大規模な外国投資への期待は、本格的な戦略とはとても呼べない」という懸念を呼び起こすことが多い。これらの文書中には、この地域における「朽ち果てた、一般的には十分に発達していないインフラ、人的資本の急速な縮小及び生活水準の低迷のような重要な問題の解決策を提供している」ものは1つもない。ほとんどの場合、モスクワの戦略は実際にはただの希望にすぎないことを事実としている。
(4) これらすべてのことが、特に原油価格が下落し、予算が厳しくなっている最中において、外国からの投資だけでなく、国内の資金源からの資金調達さえも難しくしている。その結果、少なくとも短期的・中期的には、北極圏はロシアにとって限られた利益しかもたらさず、主に国防省が他国を脅し、モスクワからより多くの資金をそれ自身のために引き出すために利用されることになるだろうとSukhankinは結論付けている。北極圏は、クレムリンが定期的にそうなる可能性があると主張しているような奇跡の土地に近い将来なる可能性は低い。ロシアは北へと動いているが、その指導者たちが主張したり、他者が恐れたりするほど際立っているとか、成功しているとはいえない。
記事参照:Delays, Disasters and Cost Overruns Plague Putin’s Projects in Arctic

6月5 日「比、『訪問米軍地位協定』継続の背景―香港紙報道」(South China Morning Post.com, June 5, 2020)

 6月5日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、 “Philippines’ move to keep US military pact reveals shift in South China Sea calculations”と題する記事を掲載し、Duterte比大統領が「訪問米軍地位協定」を継続することを決めた背景について、専門家の見方を紹介しつつ要旨以下のように報じている。
(1) Duterte比大統領は6月2日、20年間継続されてきた「訪問米軍に関する地位協定」(Visiting Forces Agreement、以下、VFAと言う)を停止せず継続することを決定した。専門家は、この決定を北京による係争中の南シナ海での高圧的行動が地域の不安を煽っていることから、マニラの地政学的考慮が変化した証拠と見ている。彼らはまた、フィリピンがコロナ禍で経済的苦境にあることも、この決定の要因として指摘している。マニラは2月11日、今後、180日間かけてVFA を停止するプロセスを開始すると発表していた。このことは米国との伝統的な同盟関係を格下げする動きと受け取られた。
(2) マニラの専門家Richard Heydarianは、Duterte大統領の心変わりについて、世界貿易のおよそ30%を占める流通経路である南シナ海における中国の最近の高圧的行動を考えれば、全く驚くに当たらないと見ている。北京は、南シナ海のほぼ全域に対する領有権を主張し、この10年間に人工島を造成し、軍事施設を建設してきた。最近では、対潜哨戒機を南沙諸島に展開させ、また南シナ海を管轄する西沙諸島に本拠を置く2つの行政区を新設した。さらに南シナ海に防空識別圏を設定する計画を進めているとも報じられている。係争海域における中国船舶によるASEAN諸国船舶に対する最近の一連の挑発的事案は、マレーシア、フィリピン、ベトナム及びインドネシアによる中国の南シナ海領有権主張に反対する国連への外交文書提出に発展した。また、米中両国がコロナ禍を巡って対立を深めている中で、米国の南シナ海における「航行の自由」作戦に対する北京の妨害行為は、海洋における本格的な衝突への不安を高めた。
(3) アジア安全保障問題アナリストLucio Blanco Pitlo III は、恐らくDuterte大統領は依然として米国との同盟を「マニラと北京との跛行的な力関係を考えれば、フィリピンの利益を守り、中国の増大する影響力に対抗する上で重要である」と考えている、と見ている。米比間の軍事関係は緊密で、両国間では毎年数百回の共同演習が行われてきた。2019年には前年の261回よりも多い、281回の共同演習実施に合意していた。とは言え、フィリピンは中国との間でも共同演習を行っている。2020年1月に、マニラと北京は、南シナ海で初めての沿岸警備隊と海警総隊による共同演習を実施した。2018年には、フィリピンは、中国と他のASEAN諸国との地域軍事演習に参加した。この演習は、マニラにとって北京との初めての軍事演習とされる。米The Rand Corporationの上席防衛アナリストDerek Grossmanは「Duterte大統領がいずれVFAを停止する可能性は依然としてあるが、マニラがVFAを継続することに価値を見出していることは有望な兆候であることは確かである。このことは、中国を抑止するために、フィリピンが米国との安全保障関係を不可欠であると考えていることの証左である」と指摘している。シンガポールのThe S. Rajaratnam School of International Studiesの研究員Collin Kohは、より自立的な防衛を目指すマニラの意図がコロナ禍などによる財政悪化の影響を受けていることに言及し、従って、「VFAの継続は一種の保険の役割を果たすことになろう」と見ている。
(4) 多くのアナリストは、フィリピンの決定が当面、米国の軍事プレゼンスに悪影響を与えないであろうことから、恐らく域内諸国はこの決定に安堵したに違いない、と見ている。前出のKohは、「域内諸国政府がコロナ禍で手一杯であることから、このことは重要である。この決定はまた、マニラが南シナ海問題を懸念し、中国にさらなるエスカレーションの自制を促す、北京に対する明快なメッセージである」と指摘している。ハノイは北京の領有権主張に対して最も声高に反対していることから、中越関係は最も緊張状態にあると見られる。ここ数週間、各種報道が報じるところによれば、2013年にフィリピンがハーグの仲裁裁判所に中国を提訴したことに倣って、越政府は法的な調停に委ねることを慎重に検討しているようである。
(5) 前出のGrossmanは、VFAはインド太平洋戦略にとって不可欠というわけではないが、役に立っていることは間違いないとした上で、「フィリピンなしでも、米国は、沖縄、日本本土、オーストラリア及び韓国の基地へのアクセスが可能である。しかしながら、フィリピンは、南シナ海に最も近接しており、したがって、軍事紛争が生起した場合、米軍が最も速く対処可能な拠点である」と指摘している。シンガポールのThe ISEAS-Yusof Ishak Institute ISEAS のLe Hong Hiepは、ワシントンはこの機会にフィリピンとの戦略的関係をリセットすべきであるとして、「南シナ海において中国が益々高圧的になり、しかも米中両国間の戦略的抗争が激化していることから、ワシントンは、この重大な局面において、北京に対抗する長年の同盟国を失う余裕などない」と見ている。中国曁南大学国際関係学院フィリピン研究中心主任の代帆は、Duterte政権には親米派の前あるいは元軍高官が参画していることを指摘した上で、「我々は、事態が逆転したことに驚いてはいないが、こんなに早く起きるとは予想外であった。Duterte大統領がこの問題について考えを改めたこともあるが、逆転を促した要因の1つは軍部である。加えて、ワシントンとの軍事的結び付きを維持することによって、マニラが大いに益することは明確である。また、ワシントンによるマニラの取り込みは、この地域における米国の影響力が深く浸透していることを示している。域内の米国の同盟諸国は内心大喜びしているであろう。中国がこの地域において米国のリーダーシップに取って代わるには、依然として、長い道程が横たわっている」と述べている。
記事参照:Philippines’ move to keep US military pact reveals shift in South China Sea calculations

6月5日「中国との交渉を拒絶するインドネシア政府―米オンラインメディア報道」(Benar News, June 5, 2020)

 6月5日付の米オンライン5カ国語ニュースサイトBenarNewsは、“Indonesia Rejects Beijing’s Offer for South China Sea Talks”と題する記事を掲載し、南シナ海問題について中国とインドネシア間で交わされた主張の応酬を受け、インドネシア政府の立場を中心に要旨以下のように報じている。
(1) ここ最近、中国とインドネシアの間で国連を介した外交的やり取りが頻繁に交わされている。5月26日にインドネシア政府は国連事務総長に外交通牒を送り、そこで中国が主張する九段線にはいかなる歴史的・法的根拠もないと主張した。それに対し中国は6月2日、インドネシアとの間に領土的論争がないことはそうであるが、他方で南シナ海において海洋の権利をめぐって主張が重なるところがあるとも主張した。それに対してインドネシア政府は5日の金曜日に、従来の主張を繰り返す形で、中国との間に領土的主張をめぐる争いはなく、したがってこの問題をめぐってインドネシアは中国といかなる交渉も行うつもりがないと述べた。
(2) インドネシア政府の立場は一貫している。2020年1月にインドネシア外務省は、1982年の国連海洋法条約に基づけばインドネシアと中国の間に一切の領土的論争はないという声明を出した。中国が主張する九段線は確かにインドネシアの排他的経済水域を超えている。しかしその主張は一方的なものであり、歴史的・法的根拠を欠いている。そのため交渉をする必要性がないのだと。
(3) ASEAN諸国と中国との間では、国連を介した同様のやり取りが2019年から続いている。そのときはマレーシアが大陸棚の拡張について自国の立場を主張した。同様にフィリピンやベトナム、ブルネイなども中国との間で南シナ海における領土的論争を抱えている。
(4) インドネシアの海洋法学者や国際関係学者はインドネシア政府の立場を支持している。曰く、インドネシアの主張は国際法に基づいているが中国はそうではない、したがってインドネシアは中国との間にいかなる交渉を行うべきではない。
(5) インドネシア政府の立場は、中国との間に領土的論争はないとするものだが、他方で2020年初めや2016年には、ナトゥナ諸島沖合に中国漁船が大挙したことをめぐって、中国との間に緊張が高まった。現在、2021年の完成に向け、「南シナ海における行動規範」の具体的な内容についての交渉が続いているが、それをめぐる合意は困難をきわめるだろう。
記事参照:Indonesia Rejects Beijing’s Offer for South China Sea Talks

6月8日「ロシア北方艦隊、軍管区と同格へ-ノルウェー紙報道」(The Barents Observer.com, June 8, 2020)

6月8日付のノルウェーオンライン紙The Barents Observerは、“Putin raises the Northern Fleet’s strategic role”と題する記事を掲載し、ロシア北方艦隊が2021年1月1日で軍管区と同格に昇格されるとして要旨以下のように報じている。
(1) 2021年初頭、艦隊がロシアの4つの軍管区と同等の地位を得ることになるだろう。6月はじめの大統領令でPutin大統領は北方艦隊の地位を軍管区と同等のものに引き上げることにした。2021年1月1日付で北方艦隊はロシアの他の4軍管区と同じ地位を得ると6月5日付大統領令は述べている。コミ共和国、アルハンゲリスク州、ムルマンスク州、ネネツ自治管区は北方艦隊司令部管轄の一部となり、もはや西部軍管区には属さないことになる。
(2) ロシアの歴史で艦隊が地理的軍管区と同じ指揮権を持つことになるのは初めてのことである。2014年以来、北方艦隊は北極海航路沿いにある陸上の軍事施設もその指揮下に置く北極統合戦略軍となっており、西部軍管区の一部ではなくなっている。軍の司令部はコラ半島のセヴェロモルスクに置かれ、現在の司令官はAleksandr Moiseyev中将である。地理的に、南部軍管区、中央軍管区、東部軍管区はそのままである。Putin大統領は、政府に対し新しい軍の管理機構を実現する計画の準備期限を10月1日と示している。
記事参照:Putin raises the Northern Fleet’s strategic role

6月8日「中国は西沙諸島の基地間に海底ケーブルを敷設している模様である―米オンライン紙報道」(Benar News, June 8, 2020)

 6月8日付の米オンライン5カ国語ニュースサイトBenar Newsは、 “China Works on Undersea Cables between Paracel Island Outposts”と題する記事を掲載し、中国は西沙諸島所在の各基地間に軍事用の海底ケーブルを敷設している可能性があるとして要旨以下のように報じている。
(1) 船舶追跡ソフトウェアと衛星画像によると、中国の船舶が西沙諸島の中国の前哨基地の間に海底ケーブルを敷設している模様である。ケーブルはおそらく軍事用であり、潜水艦を探知する能力を強化している可能性がある。専門家の評価が正しければ、中国は南シナ海を軍事化するための次のステップに進んだ可能性がある。Benar Newsは、西沙諸島の高解像度の商用衛星画像を解析した際に敷設船の活動を発見した。衛星画像を解析した3人の米国の海洋専門家は、海底ケーブルに関連した何らかの作業を行っていることには同意したが、作業内容については画像からは判明しなかった。新しいケーブルを敷設したり、既存のケーブルを修理または改修したりした可能性があるが、船が運航している場所に過去にケーブルネットワークがあったことに気が付いていた専門家はいなかった。船舶追跡ソフトウェアによると、2020年5月28日に中国の敷設船「天翼海工」が西沙諸島に向けて航海した。同船は6月5日に南西に航行し、ドラモンド島(中国名:晋卿島)、ヤゴン島(中国名:鴨公島)、オブザーベーション礁(中国名:銀嶼)に立ち寄り、6月8日の朝にはオブザーベーション礁の北東側で活動していた。敷設船「天翼海工」が海底ケーブルを敷設しているかどうかは不明であるが、その船の行動パターンは他の船舶と同様である。
(2) 中国がこの地域に海底ケーブルを敷設したことは、2016年にロイターによる報道によって明らかになった。海南市とウッディ島の軍事基地が接続された。西沙諸島における新しい海底ケーブルの機能がどのようなものかは衛星画像では明らかではないが、専門家はBenar Newsに、中国が保有する基地間の光ファイバーケーブルの接続は軍事目的であると思われると述べた。米海軍大学のJames Kraska教授は、ケーブルはおそらく中国の複数の基地間の軍の暗号通信用のものであり、すでに中国の東海岸に沿って建設されている海底ケーブルシステムに接続するであろうと述べた。「他にできることは、敵の潜水艦の音を聞くためのSOSUSネットワーク、水中音響監視システムを持っていることでる。そのため、この海域に入ってくる水上艦や潜水艦のパッシブなセンサーとなる可能性がある。」と彼は述べた。米シンクタンクThe Hudson Institute上級研究員Bryan Clarkも海底ケーブルが海中監視用である可能性があると考えている。「中国の潜水艦基地が海南島の楡林にあるため、ソナーシステムのあるウッディ島の北側は重要である」と彼は述べた。Clarkによれば、楡林は中国海軍の最も進んだ基地の1つであり海南島の南端にある。そこには中国海軍が増強している原子力潜水艦のための地下トンネルと造修施設が多く存在する。「ウッディ島と海南島の間の海底ソナーは平時には基地と中国の潜水艦の情報収集に当たり、戦時には中国潜水艦を攻撃する米潜水艦を探知するのに役立つ」とし、このような海底ソナーは、中国海軍潜水艦が母港を離れるときに敵潜水艦に追跡されないようにするのに役立つともClarkは述べている。
(3) ハワイに拠点を置く米インド太平洋軍司令部は6月8日の事案に対するコメント要請に即座には応答しなかった。The International Maritime Organization(国際海事機関)のデータベースには敷設船「天翼海工」の運営者の記録はない。2020年初めに建造され、中国船籍となったという情報しかない。英国に本拠を置く海底ケーブル業界向けの擁護団体であるThe International Cable Protection Committeeにも記録はない。ただし、船舶追跡データは、2020年5月18日に上海の造船所から最初に出港したことが記録されている。同じ造船所にはSB Submarine Systems Co.Ltd.が所有、運営する別のケーブル敷設船Bold Maverickがある。 その会社は「中国の海底ケーブル設置サービスの大手プロバイダーであり、アジアでの主要な海底ケーブル設置業者の1つ」とウエブサイトに掲載されている。中国の複数の企業が海底ケーブル業界に関係しており、中国軍の研究センターや国防大学と頻繁に提携している。
(4) 中国国営メディアは、中国電信が2017年に南沙諸島のファイアリークロス礁、スビ礁、ミスチーフ礁の間で光ファイバーケーブルを敷設したと報じた。2020年5月下旬の第20回全国人民代表大会では、中国電信からの全人代代表陳穎宇が、海底ケーブルネットワークの拡大、保護、強化を中国政府に要求した。中国軍も独自のケーブル敷設船を運用しており、2015年に最初の作業を開始した。Kraskaは最終的に中国政府の要請によりケーブルが設置されるため、誰がケーブルを設置する責任があるかは重要ではないと考えている。彼はまた、中国の遠隔の前哨基地を監視ネットワークに加えることは、中国が南シナ海の紛争となっている岩や礁に軍事的存在を定着させ、それらのすべてを制御しようとしているもう一つの兆候であると述べている。「これは、彼らが『海の近く(near seas)』と定義するところで何が起こっているかを制御する彼らの能力をさらに強固にしている」とKraskaは言う。中国はブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムがそれぞれ主権を主張している沿岸近くの水域、島、サンゴ礁を含む事実上すべての南シナ海の主権を主張している。中国はそのような各国の広範な主張に対して「歴史的権利」を持っていると主張しているが、そのような態度は国際法とは適合していないものである。
記事参照:China Works on Undersea Cables between Paracel Island Outposts

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1) The Assumption of Access in the Western Pacific
http://cimsec.org/the-assumption-of-access-in-the-western-pacific/43645
Center for International Maritime Security (CIMSEC), June 2, 2020
Blake Herzinger, a civilian Indo-Pacific defense policy specialist and U.S. Navy Reserve officer
Elee Wakim, a surface warfare officer in the U.S. Navy Reserve and a Presidential Management Fellow
6月2日、米海軍予備役将校でありインド太平洋の安全保障問題に詳しいBlake Herzingerと米海軍予備役部隊のSurface Warfare OfficerであるElee Wakimは、米シンクタンクCenter for International Maritime Securityのウエブサイトに、" The Assumption of Access in the Western Pacific "と題する論説を発表した。ここで両名は冒頭、「植民地であるか軍事施設であるかに関わらず海外の施設がなければ戦争中の米国の艦艇は飛べない鳥のようなものとなり、自国から遠くに飛ぶことはできない」とのAlfred Thayer Mahanの言葉を引用した上で、米国が歴史的に太平洋を安全保障上重要視してきたこと、そしてそれが忘れ去られようとしていることなどを細かく説明し、結論として、米国は今日、西太平洋地域での有事の際には、最初の攻撃が行われる前に軍事的選択権を確保せねばならず、また、紛争の敗北を回避するためには、現時点から同地域へのアクセスが失われる可能性に備えなければならないと警鐘を鳴らしている。
 
(2) An Emerging Strategic Geometry – Thawing Chokepoints and Littorals in the Arctic
http://cimsec.org/an-emerging-strategic-geometry-thawing-chokepoints-and-littorals-in-the-arctic/43977
Center for International Maritime Security, JUNE 3, 2020
By Robert C. Rasmussen, a Foreign Affairs Specialist with the U.S. Department of Energy’s National Nuclear Security Administration
6月3日、米外交問題の専門家であるRobert C. Rasmussenは、米シンクタンクCenter for International Maritime Security (CIMSEC)のウエブサイトに" An Emerging Strategic Geometry – Thawing Chokepoints and Littorals in the Arctic "と題する論説を発表した。ここでRasmussenは、今世紀は国際システムの中で当然とされてきたルールが急速に進化し始めた変革の世紀となるだろうと述べ、現在起こっている最も基本的な変化の1つは、気候変動とそれに伴う地政学的影響の変容であり雪解けの北極ほどこのことが明白な場所はなく、実際、北極が、手の届かない凍りついた不毛の地から手の届く手付かずの保護区へと変貌しつつあることは新たな競争空間を生み出すだけでなく新たな戦略的な闘いの場となることを示しており、米国は同盟国と協調して、この新しい世界における主権と安全を維持するために、北極へのアクセスと安全を確保する能力に投資する必要があると主張している。
 
(3) Seeing the World Through Points
http://cimsec.org/seeing-the-world-through-points/44114
Center for International Maritime Security (CIMSEC), June 9, 2020
Captain H. Clifton Hamilton, currently serves in III MEF
6月9日、米海兵隊のH. Clifton Hamilton大佐は、米シンクタンクCenter for International Maritime Securityのウエブサイトに、“Seeing the World Through Points”と題する論説を寄稿した。ここでHamiltonは、①戦略的なチョークポイントと沿海域は権力闘争の舞台であり、米国はこれらの地域で人道主義と自由で開かれた商業を推進する役割がある、②ホルムズ海峡の課題の多くはイランの軍隊や戦術の非正規の性質を含む複雑な軍事環境に由来するため米国は抑止力を維持し示さなくてはならない、③バブ・エル・マンデブ海峡周辺の地域では中国が進出して搾取的な経済政策に裏打ちされた外交を行い、また、海賊行為と非国家アクターの問題があるため、ガバナンスの改善に焦点を当てた正当な権力への投資とそれとの調整が重要である、④南シナ海では、軍事的に大きな誤算があれば、相互確証的な経済破壊をもたらす可能性があるため、米国のパワーはルールに基づく秩序に対する脅威には断固として適用されなければならない、⑤米国の資産と注意は、北極圏における最大の競争相手であるロシアに大きく遅れをとっており、米北方軍(NORTHCOM)は、北極は米国にとって防衛の最前線であると宣言したが、それ以上のことが必要である、⑥米国は、戦略的チョークポイント、沿海域におけるこれらの問題を効果的に管理するための様々な同盟国、自国の強み及びツールを有している、といった主張を行っている。