石井 正子(立教大学)
2018.07.28
  • フィリピン南部

ドゥテルテ政権:バンサモロ新自治政府設立のための法律成立

 2018年7月26日、ドゥテルテ大統領がバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域組織法(Organic Law for the Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao, 通称バンサモロ組織法、Bangsamoro Organic Law: BOL)[1]に署名をした。これにより、南部にバンサモロの新自治政府を設立し、MILF(Moro Islamic Liberation Front, モロイスラム解放戦線)との武力紛争を終結する和平プロセスが大きく前進した。一方バンサモロ組織法(BOL)は、MILFが参加して起草したバンサモロ基本法(Bangsamoro Basic Law: BBL)の法案を国会の審議で大きく修正したものであり、新自治政府に与えられる権限は、MILFが望んだものを十分に満たしているとはいえない。同法成立に向けて、国会審議ではどのような攻防戦が展開されたのか。攻防戦からは何が見えてきたのだろうか。

ミンダナオ島出身の大統領誕生に込められた期待

 2016年5月、「モロに対する歴史的不正義を正す」ことを約束したドゥテルテ氏が大統領に当選した。モロ/バンサモロ[2]とは、フィリピン南部のミンダナオ島、スル諸島、パラワン島に生活するフィリピン全体の人口約5~6パーセント(約500~600万人)のムスリム(イスラム教徒)を中心とする人びとのことである。もともとフィリピン南部には、モロと非モロの先住民が生活していた。しかし、アメリカ植民地期の20世紀前半以降、中北部のキリスト教徒が南部に入植者として送り出され、先住民は先祖伝来の領域を奪われた。この「歴史的不正義」に対してモロの先住民の自決権を獲得するための武力闘争が展開された。1970年前後のことである。それ以来およそ50年、南部の武力紛争は解決していない。

 ドゥテルテ氏は、フィリピン史上初のミンダナオ島出身の大統領となった。モロに対する「歴史的不正義」を認める大統領の誕生に、期待が高められた。祖母はモロのマラナオ人であるという同氏には、中北部出身のエリート中央政治家にありがちなムスリムに対する偏見が感じられない。ドゥテルテ大統領は、国家権力の浸透が特に弱く、公私さまざまな武装勢力が跳梁するミンダナオ島の生々しい地方政治に精通している。これまでダバオ市長として辣腕を振い、治安維持に成功を収めてきた。ミンダナオ島出身の大統領が、中央と地方のメディエーターとして政治の采配をふるい、武力紛争を解決してくれるのではないか。そう期待がふくらんだ。

ドゥテルテ政権とMILF:和平にむけた道のり

 しかし、当初高められた期待は、次第に不安に変わっていった。

 ここで、前アキノIII世政権から引き継がれたフィリピン政府とMILFとの和平プロセスのロードマップを確認しておこう。

 フィリピン政府とMILFは、1997年から和平交渉を開始し、アキノIII世政権下の2012年10月15日に、新自治政府を設立して武力紛争を解決するためのロードマップを記したバンサモロ枠組合意(Framework Agreement on the Bangsamoro: FAB)に署名した。2014年3月27日には、枠組合意と関連の合意文書を一つにまとめたバンサモロ包括的合意(Comprehensive Agreement on the Bangsamoro: CAB)を結んだ。枠組合意(FAB)と包括的合意(CAB)はアキノIII世大統領が見守るなかで両代表が署名をした和平合意であり、最高裁も違憲表明をしていない。

 新自治政府設立に向けては、次のロードマップが示された。

1) 新自治政府はバンサモロ基本法(BBL)に則り、設立される。

2) 政府とMILFが選出したメンバーで構成されるバンサモロ移行委員会(Bangsamoro Transition Commission: BTC, 以下本稿では分かりやすさを優先し、BBL起草委員会と記す)を設立し、BBL草案を起草する。

3) BBL起草委員会はBBL草案を大統領府に提出し、大統領府はBBL草案を国会に提出する。

4) 大統領はBBL法案を緊急法案に指定する。

5) 国会でBBL法案を通過させる。

B6) BLで中心領地(Core Territory)[3]と定められた自治体で住民投票を行い、新自治政府設立への参加の是非を問う。

7) 住民投票によりBBLが承認されたのち、ムスリム・ミンダナオ自治地域(Autonomous Region in Muslim Mindanao: ARMM)[4]を廃止する。

8) バンサモロ暫定局(Bangsamoro Transition Authority)を設立し、新自治政府の代表が選出されるまで行政を担う。

9) 新自治政府の代表者を選出する選挙を行う。

10) MILFの武装解除、私兵の解体、警察機能の整備、移行期正義と和解の推進などのコミュニティの正常化をはかる。

11) 合意事項がすべて履行されたことを確認し、公式に和平プロセスを終了する出口文書(exit document)に署名をする。

 このうち、前アキノIII世政権では、5)の途中まで進んだ。前政権でBBLの審議を付託された上院と下院の委員会は、それぞれBBL草案を大きく修正した代替法案を本会議に提出した。そのため、MILFは稀釈されたような(watered down, diluted)修正版を受け入れるわけにはいかないと、両代替法案を拒否する立場を表明した。くわえて2015年1月には、国家警察特殊部隊とMILF・バンサモロイスラム自由戦士(Bangsamoro Islamic Freedom Fighters)[5]が衝突し、特殊部隊44名を含む60名以上が犠牲になるママサパノ事件[6]が起こり、和平プロセスへの逆風となった。前政権は、本会議での法案の可決を見ずに任期を終えた。

 ドゥテルテ政権では、上記手順で進めることには変わりがないが、1)からやり直しとなったのだ。

 2016年7月18日、ドゥテルテ大統領は「バンサモロ平和と開発ロードマップ」を承認した。このロードマップにおいて打ち出されたのが、Two simultaneous tracks: Federalism + Enabling law approach、すなわち、連邦制実現と立法による権限付与を同時平行で進める、という方向性であった。BBL起草委員会のメンバーを前政権期の15人から21人に拡大し、2018年7月までにBBL草案を提出することも記された。

 ここで「連邦制」というドゥテルテ政権のキーワードを確認しておきたい。ドゥテルテ大統領は選挙戦のころより憲法改正を視野に入れた連邦制の実現に意欲を示してきた。連邦制は、単一政府制を変更し、憲法改正により自治政府に与えられた権限を拡大する可能性を生む。したがって、バンサモロの新自治政府設立も、この際、連邦制への移行のなかで解決すれば一石二鳥だという議論がある。これに対し、ドゥテルテ大統領は、まずはバンサモロの自治政府設立を優先し、その実績を、全国を連邦制にするための「テンプレート」にする、と述べてきた。MILFも連邦制には反対しないが、まずはバンサモロ政府の設立を優先するべきだ、という立場を主張してきた。いきなり他の連邦政府と同列に扱われて解決されては「モロに対する歴史的不正義を正す」ことにはならない。バンサモロ独自(distinct)のアイデンティティと自治(self-governance)の希求に鑑みて、バンサモロの自治政府は、まずは他自治体とは非対称的(asymmetrical)に特別な権限を付与されて設立されるべきなのだ(cf. BBL草案前文)。

 しかしその後、立法の歩みは、次のように遅々として前に進まなかった。

2016年

11月7日 「バンサモロ平和と開発ロードマップ」の提示から約4か月後に、ようやく行政命令(Executive Order)第8号が発令され、新BBL起草委員会の結成が正式に決定される。

2017年

2 月10日 行政命令第8号が発令されてから約3か月後に、ようやく21名のBBL起草委員会のメンバーが発表され、2月24日に発足式が行われる。

6月16日 BBL起草委員会、BBL草案を仕上げ、予定通り7月17日に大統領府に提出する。

7月24日 ドゥテルテ大統領、施政方針演説でBBLの即時通過に言及せず[7]

8月半ば 大統領府、ようやくBBL草案を国会に提出する[8]

9月4日  和平プロセスが進まないことに懸念を抱いたMILF幹部が大統領に面会を要請。ドゥテルテ大統領と二度話し合いを行う(4日と14日)[9]

9月27日 パンタレオン・アルバレス下院議長他がBBL草案を第6475号法案として提出する。

2018年

1月15日 フアン・ミゲル・F・ズビリ上院議員がBBL草案を第 1646号法案として提出する[10]

 つまり以上のように、和平プロセスが遅々として進まないことに懸念を抱いたMILFが大統領に面会を要求してから、ようやく事態が前に動いたのであった。この間、2017年5 月23日から10月23日まではマラウィ市で激しい戦闘が展開された。「歴史的不正義を正す」との約束はどれだけ本気なのか。大統領就任一年目にして、私は不安になった。

フィリピンの立法過程

 ともあれ上記の通り、BBL草案は国会に法案として提出された。

 ここで、フィリピンの立法過程を確認しておこう。上院と下院の手続きは少し異なるが、概略を記すと次のようになる[11]

 フィリピンの立法については三読会制が採用されている。上院と下院は、歳入・歳出法案以外は、ほぼ同等の立法権限を持つ。第一読会では、事務局長による法案の題名と番号の読み上げが行われ、その後議長が適切な委員会に法案を付託する。委員会は必要であれば公聴会を開催し、審議の結果、修正を導入したり、代替法案を作成したりする。委員会は、委員会報告を作成し、承認し、事務局に法案を提出する。その後、上院、下院の本会議で第二読会が行われる。第二読会で法案が審議され、ここでさらに修正が加えられる場合がある。第三読会では、事務局長は法案の題目と番号を読み上げるだけで、ここでは修正は認められない。下院では出席議員の過半数の賛成をもって可決、上院では議員一人ひとりに賛否を問う方法(nominal voting)により採決される。その後、上院の法案が下院に、下院の法案が上院に送られ、両法案の一致が図られる。両法案の差異の一致が難しい場合、両院協議委員会(Bicameral Conference Committee)において法案の一本化図られる。両院で承認された法案は大統領に送られ、裁可が下される[12]

 では、国会でBBL草案を待ち受けていたのは、どのような道のりだったのだろうか。

国会という険しい道のり:「ARMM マイナス」法案への修正

 まず、忙しい方のために、簡単に述べると次のようになる。

 下院の委員会はBBL草案を修正せず、上院の委員会も大幅には修正せずに、本会議に送った。しかし、本会議の審議において、上院、下院とも、既存のムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM, 注4参照)ですでに分権化された立法権すら限定する条項を含む法案、すなわち「ARMM マイナス」法案に修正した。そこで、両院協議委員会で法案が一本化される過程で、これらをどれだけBBL草案に戻すことができるかが争点となった。

 つぎに、より詳しく知りたい方のためには、以下のとおりである。

 まず下院では、アルバレス下院議長他が提出した第6475号法案(BBL草案)に加えて、3つの関連の法案が提出され[13]、3つの委員会により合同で審議が行われた[14]。合同委員会では、4月16日から19日のあいだに、提案された362か所の修正条項について採決を行う予定であった。しかし、突然4月16日にアルバレス議長他提出の第6475号法案、つまりBBL草案を本会議に提出するバイ・サンドラ・セマ議員の提起(omnibus motion)を受け入れ[15]、5月15日に正式として承認された[16]

 上院でも、ズビリ議員提出の法案(BBL草案)の他に、3つの法案が提出された[17]これらの法案は3つの委員会と1つのサブ委員会で審議され[18]、修正され[19]、2月28日にBBL草案をもとにした第1717号法案を承認した[20]

 2018年5月14日から6月1日まで、第17議会第2会期が開かれた。5月23日、下院議員は、ドゥテルテ大統領に第6475法案を緊急法案に指定することを要請した[21]。緊急法案に指定されると、第二読会と第三読会のあいだに3日間あけるというルールの適応が除外される[22]。これを受けて、5月28日に大統領が上院、下院の代表者と会い、翌29日に緊急法案に指定した[23]同29日に下院本会議は第二読会の審議を行い、翌30日に可決した(賛成227票、反対11票、棄権2票、棄権したのは後述するアブドゥラ・ディマポロ議員とセルソ・ロブレガト議員[24]) 。一方上院は、2月28日にから5月23日まで審議を行い、29日と30日に修正期間を設け、31日午前1時に可決した( 賛成21票、反対0票、棄権0票)[25]

 以上のように、上院、下院の法案は、第2会期終了間際に大慌てで可決されたのであった。BBL起草委員会のメンバーは議会を傍聴していたため、どのように法案が修正されたかをある程度理解していたと思われる。しかし、あまりに急な展開であったため、可決時に修正内容は外部に十分に伝えられなかった。

 それゆえ、可決のニュースが発信されると、南部からは喜びの声があがった。しかし、修正された上院、下院の法案の全容が明らかになると、喜びの声は次第に「BBL草案の通過を!」「包括的合意(CAB)にもとづくBBLの通過を!」という声に変わっていった。可決された法案は双方ともBBL草案を大きく修正しただけではなく、ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)ですでに与えられた権限すら限定する条項を含む、すなわち「ARMM マイナス」法案であったのである。

 それゆえに、両院協議委員会で法案が一本化される過程で、これらをどれだけBBL草案に戻すことができるかが争点となった。

両院協議委員会での法案一本化

 両院協議委員会は2018年7月9日~13日、および17~18日まで開催された。12日までの4日間で議論の9割は終了したが、その間、朝から夜中まで、激しい討論が展開された。上院議員10人、下院議員19人の計29人の委員は[26]、親BBL草案派と反BBL草案派に分かれた。強固な反BBL草案の代表は、北ラナオ州選出のアブドゥラ・ディマポロ議員(父)とカリド・ディマポロ議員(息子)、サンボアンガ市選出のセレソ・ロブレガト議員そして、フランクリン・ドリロン上院議員であった。当初は17日に一本化の作業を終える予定であったが、BBL起草委員会の攻防がつづき[27]、18日にバンサモロ組織法として一本化した。

「ARMM マイナス」法案から「ARMM プラス、プラス、プラス」法へ

 それでは、どのように法案は一本化されたのだろうか。

 結局一本化された法案は、修正および削除されたBBL草案の条項をあまり回復することなく、私の目には、重要条項も含めてBBL草案を大幅に修正したように思えた。それらは例えば、重要原則である自決権の確認、価値の同等性(parity of esteem)、非対称的な関係(asymmetrical political relationship)の削除、新自治政府の地理範囲に関する限定条件の追加(後述)、バンサモロ政府の排他的権限の区分の削除、治安部門へのバンサモロ政府の権限の削除、などである。一方、バンサモロ自治地域で中央政府が集めた税収入の75パーセントがバンサモロ政府に配分され、毎年歳入の5パーセントがブロックグラントとして配分されるなど、財政の自律性(富の分有)には大きな進展があった。MILF幹部は、バンサモロ組織法(BOL)は8~9割ほど包括的合意(CAB)に則っていると[28]、受け入れ可能であることを表明した。

 一方国会では、「歴史的不正義」をいかに正すか、という理念からの審議はなされず、条項の違憲性を口実にした既得権をめぐる争いが馬脚を現したようにも思われた。

 それが明らかになったのが、新自治政府の範囲(中心領地)に関する審議であった。両院協議委員会2日目、審議のハイライトは、北ラナオ州6町と北コタバト州6町のうち39村が新自治政府の一部になるにあたって母自治体の過半数の賛成も必要か、であった。この議論は、6名で構成される「領地と住民投票に関する小委員会」に託された。北ラナオ州選出のディマポロ親子議員とサンボアンガ市選出のロブレガト議員が委員となった[29]。ディマポロ親子はモロのマラナオ人である。北ラナオ州の人口はキリスト教徒のほうがムスリムより多い。しかし、ディマポロ一族は同州の多くの政治ポストを握る。それゆえに、新自治政府にムスリム人口が多数の北ラナオ州の6町が含まれることに反対した。一方、サンボアンガ市選出のロブレガト議員は、スル海とモロ湾の海域の利害が対立する立場にあった[30]。この3名は母自治体の過半数の賛成も必要であると主張した。ちなみに新自治政府設立後、地続きの自治体は登録有権者の10パーセントの請願があれば25年間にわたって5年ごとに住民投票を行うことで、新自治政府に編入できる可能性をうたった条項(新自治政府の拡張可能性の条項)は削除された。

 両院協議委員会の共同議長のズビリ上院議員が涙目になるほどの激論の末[31]、委員会では合意にいたることができず、最終的に大統領に助言を求めることになった[32]。その結果、ドゥテルテ大統領は母自治体の過半数の賛成も必要である、という結論に落ち着くように委員会のメンバーを説得した。このことは次のことを象徴している。

 第一に、すでに指摘されていることではあるが、フィリピンの現行憲法の枠組と、政治王朝(political dynasty)と呼ばれる世襲の地方有力政治家一族が国政代表となって立法権限をもつ政治構造においては、彼らの既得権益に反する権限は簡単には認められない。

 半世紀前にさかのぼるが、もともとMNLF(Moro National Liberation Front, モロ民族解放戦線)は、1970年前後に結成された当初は独立を目指していた。しかし、それをあきらめ自決権が行使できる自治政府設立に目標を変えて闘ってきた。MNLFは南部の13州(現在14州)9市に自治政府を設立する和平合意を政府と結び(1976年トリポリ協定、1996年最終和平合意)、現在もその履行を求めている[33]。MNLFから分派したMILFは、より現実的に自治政府設立の範囲をムスリムが大多数の自治体に絞った。そして、自治政府発足後も住民投票を実施することによって、徐々に自治政府の範囲を広げていく方法をとろうとした。

 一方、フィリピン政府は、1987年憲法に則り、1990年にムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)を設立した。しかし、MNLFとMILFは1987年憲法とARMMを認めていない[34]

 ドゥテルテ大統領以前の歴代政権下では、憲法改正は実現しそうもなかった。そこで、MILFは現行の憲法の範囲内での自決権獲得を模索せざるをえなかった。アロヨ政権期には、バンサモロ司法体(Bangsamoro juridical entity)の概念やサブ国家(sub-state)のもとに新自治政府を設立することを提唱したが、いずれも違憲であるという議論が巻き起こった。そこで、枠組合意(FAB)、包括的合意(CAB)で実現しようとしたのが、憲法の範囲内で他の自治体とは非対称(asymmetrical)な特別な権限を与えられた自治政府構想だったのである。

 それゆえに枠組合意(FAB)、包括的合意(CAB)は憲法に抵触しないように策定し、実際、署名時には違憲であるという大論争は抑えられていた[35]。しかし、結局、立法過程においては、既得権益をもつ反対派議員が違憲であるとの主張を展開し、多くの非対称的な権限を保障していた条項は削除されてしまった。

 第二に、バンサモロの新自治政府の拡張は、同じバンサモロの議員によって反対された。そして、バンサモロの議員は、MILFと敵対するクリスチャンの議員と共闘した[36]。フィリピンの10以上の民族集団で構成されるバンサモロは、一つにまとまっているわけではない。長引く紛争と繰り返される和平プロセスは分断と離反も生んできた。ディマポロ家のようにモロの自決権を求める分離運動には積極的に参加せず、むしろ中央政治家と協力して地方に政治地盤を築き、既得権をもつ有力政治家一族も存在する。特にこれから心配されるのは、南北ラナオ州の情勢である。北ラナオ州には、MILFのフロント・コマンダー・ブラボー(通称)の基地があり、ディマポロ一族とは敵対している。南ラナオ州は、マラウィ市街戦の復興とISの残党の掃討作戦の展開で不安定になっている。

 ともあれ、バンサモロ組織法(BOL)は大統領に承認され、MILFは受け入れた。その反応は、MILFの努力と忍耐を称える声もあれば、大幅な修正を嘆く声まで、様ざまだ。一方、MILFは財政の自律性に大きな成果があったこと、議員内閣制の政府樹立が認められたこと、すでにムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)に与えられた範囲内ではあるが55もの項目がバンサモロ政府の権限として認められたことなどをもって、バンサモロ組織法(BOL)は「ARMM プラス、プラス、プラス」だと主張する[37]。今回獲得した権利のもとに既成事実を積み上げながら、自決権の拡大を交渉する機会を待つ、という戦略への切り替えは現実的な選択肢でもある。MILFは、これを機に武力紛争を解決する、という政治判断を下したと見ることもできよう。

 賽は投げられ、新自治政府への参加を問う住民投票実施に向けて動きだした。しかし、包括的合意(CAB)にもとづくロードマップの観点からは、最終和平まで未だ道半ばである。バンサモロ組織法(BOL)の成立によって「歴史的不正義が正された」という感覚はまだない。



[1] 多くの日本のメディアはBangsamoro Organic Lawを「バンサモロ基本法」が成立したと報じているが、本稿では、1)Bansgsamoro Basic Law(バンサモロ基本法)と区別すること、2)Basic LawからOrganic Lawにタイトルが変更されたことにより、現行のフィリピン憲法第10条第15~18節の自治地域の規定にあるOrganic Act(組織法)に則っていることが強調されたことから、「バンサモロ組織法」と訳す。

[2] 「バンサモロ」とは、「バンサ」と「モロ」という二つの単語をつなげた造語である。「バンサ」はマレー語で国・民族(nation)を意味する。「モロ」とは、元々はスペイン植民地勢力がフィリピン諸島のムスリムに対して付けた蔑称であった。しかし、MNLF(Moro National Liberation Front, モロ民族解放戦線)もMILFも、「モロ」「バンサモロ」をムスリムに限定せず、植民地化に抵抗したフィリピン南部の諸民族の総称として創り変えようとしてきた。

[3] 枠組合意(FAB)とBBL草案において、中心領地は、1)現在のムスリム・ミンダナオ自治地域である5州1市,2)2001年の住民投票においてムスリム・ミンダナオ自治地域になることを望んだ北ラナオ州6町と北コタバト州6町のすべての村のうち39村、3)コタバト市とイサベラ市、4)これらと地続きで住民投票の2か月前に中心領地に含まれることに対する当該自治体の決議または登録有権者の10パーセントの請願があった自治体であることが謳われた。また、自治政府設立後も、地続きの自治体は所定の手続きによってバンサモロに加わることができることも記載されていた。

[4] コラソン・アキノ政権期の1989年にムスリム・ミンダナオ自治地域組織法(共和国法第6734号)が成立し、住民投票の結果にもとづいて1990年にムスリム・ミンダナオ自治地域(Autonomous Region in Muslim Mindanao: ARMM)が成立した。しかし、MNLFとMILFはその成立手続きに納得せず、住民投票をボイコットし、ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)を認めてこなかった。

[5] 2010年にMILFから分派した勢力。のちにその一派がISに忠誠を誓うグループに転じた。

[6] ジャマーア・イスラミヤのメンバーでFBI(米連邦捜査局)がテロリストに指名していたズルキフリ・ビン・ヒル(Julkifli Bin Hir, 別名マルワン)ら2名を確保するために、国家警察特殊部隊(Special Action Force)がママサパノ(Mamasapano)町の潜伏先に向かった。しかし、作戦の情報がMILFに事前通告されていなかったため、同町周囲に拠点をおくMILFとBIFFが国家警察特殊部隊を攻撃し、交戦に発展した。特殊部隊44名、MILF17名、一般市民7名が犠牲となった。

[7] Carolyn O. Arguillas, Duterte’s SONA makes no call on immediate passage of Bangsamoro law, MindaNews, July 25, 2017. http://www.mindanews.com/peace-process/2017/07/dutertes-sona-makes-no-call-on-immediate-passage-of-bangsamoro-law/(2018年7月7日参照)

[8] Carolyn O. Arguillas, At last, draft BBL transmitted to Senate, but no certificate of urgency. MindaNews, August 17, 2017. http://www.mindanews.com/peace-process/2017/08/at-last-draft-bbl-transmitted-to-senate-but-no-certificate-of-urgency/(2018年7月7日参照)

[9] Interview with Chairman Ghazali Jaafar, Chairman of the expanded Bangsamoro Transition Commission by Masako Ishii, The Challenges Faced by the Bangsamoro Transition Commission in Drafting the New Bangsamoro Basic Law. Asia Peacebuilding Initiative, December 15, 2017. http://peacebuilding.asia/the-challenges-faced-by-the-bangsamoro-transition-commission-in-drafting-the-new-bangsamoro-basic-law/(2017年7月7日参照)

[10] ズビリ議員は、当初2017年12月12日に第1635法案を提出したが、第1646号法案に差し替え提出をした。Maila Ager, Zubiri replaces proposed BBL with approved version of BTC. Inquirer.net., January 16, 2018.

http://newsinfo.inquirer.net/960798/zubiri-bbl-btc-bangsamoro-duterte-mindanao-bangsamoro-transition-commission%20 (2018年7月7日参照)

[11] 上位と下院の手続きについては、議会のウェブサイトに詳しい。上院:https://www.senate.gov.ph/about/legpro.asp、下院:http://www.congress.gov.ph/legisinfo/

[12] ただし大統領が拒否した場合、法案は先に法案を提出した議院に差し戻され、最終的に両議院の3分の2の多数が可決した場合には、大統領の署名がなくとも法案が法律として成立する。

[13] その他3つの法案は以下の通り。

1.バイ・サンドラ・セマ議員(マギンダナオ州第1区)提出の第092号法案。2016年6月30日提出。バイ・サンドラ・セマ議員は、MNLFセマ派のムスリミン・セマの妻。MNLFセマ派は、ドゥテルテ政権下のBBL起草委員会に政府側選出のメンバーとして参加。092法案の内容は実質的にアキノIII世政権下のBBL起草委員会の草案と同様(つまり、MILFに受け入れられる内容)。

2. グロリア・マカパガル・アロヨ議員(パンパンガ州第2区)提出の第6121号法案。2017年8月3日提出。アロヨ議員は元大統領。第6121号法案の内容は、実質的に前アキノIII世政権下にフェルディナンド・マルコス上院議員が委員長を務めた上院地方委員会が採択した代替法案第2894号と同様。代替法案第2894号は、前BBL起草委員会が策定した草案を8割改訂し、MILFの怒りを買った。

3. モハマド・カリド・Q・ディマポロ議員(北ラナオ州第1区)提出の第6263号。2017年8月24日提出。ディマポロ議員の祖父は戒厳令を敷いたマルコス大統領の盟友のアリ・モハマド。ディマポロ一族は、世襲で北ラナオ州の政治ポストの多くを握る。北ラナオ州の町の中心領地からの除外を提案。

BBL versions: House and Senate. MindaNews, January 16, 2018. http://www.mindanews.com/peace-process/2018/01/bbl-versions-house-and-senate/(2018年7月7日参照)

[14] 3つの委員会は以下の通り。

1.地方自治政府下院委員会(House Committee on Local Government chaired by Rep. Pedro Acharon Jr, PDP-Laban, South Cotabato)

2.ムスリム関係委員会(Committee on Muslim Affairs under Rep. Mauyag Papandayan Jr., PDP-Laban, Lanao del Sur)

3.平和、和解、統一特別委員会(Special Committee on Peace, Reconciliation and Unity headed by Rep. Ruby Sahali, NPC, Tawi-Tawi).

Ben Rosario, House begins deliberations on 4 versions of BBL. Manila Bulletin, December 12, 2017.

https://news.mb.com.ph/2017/12/06/house-begins-deliberations-on-4-versions-of-bbl/(2018年7月7日参照)

[15] Carolyn O. Arguillas, Bangsamoro Basic Law update: It’s back to BTC version. MindaNews, April 16, 2018. http://www.mindanews.com/peace-process/2018/04/bangsamoro-basic-law-update-back-btc-version/(2018年5月16日参照)

[16] Mara Cepeda, House joint panels approve proposed BBL without amendments. Rappler, May 15, 2018, https://www.rappler.com/nation/202560-house-joint-panels-approval-committee-report-bangsamoro-basic-law(2018年5月16日参照)第6475法案の歩みはこちらのサイトに詳しい。House Bill 6475. Basic Law for the Autonomous Region in the Bangsamoro. MindaNews, July 5, 2018. http://www.mindanews.com/peace-process/2018/07/house-bill-6475-basic-law-for-the-autonomous-region-in-the-bangsamoro/(2018年7月7日参照)

[17] その他の3つの法案は以下の通り。

1.アキリノ・ピメンテルIII議員提出の第1608号法案。2017年11月6日提出。

2.リサ・ホンティヴェロス議員提出の第1652号法案。2018年1月17日提出。

3.パオロ・ベニグノ・アキノIV議員提出の第1661号法案。2018年1月23日提出。

筆者は、これらの3つの法案について詳細に検討していないが、メディアによるとBBL草案と大きく齟齬はないことが報じられている。

Cf. Carolyn O. Arguillas, Q and A. Senate President Aquilino Pimentel III: “It makes more sense to push for BBL first .. but the simplest would be straight to federalism.” MindaNews, March 5, 2017.

http://www.mindanews.com/peace-process/2017/03/peace-talk-senate-president-aquilino-pimentel-iii-it-makes-more-sense-to-push-for-bbl-first-but-the-simplest-would-be-straight-to-federalism1/(2018年7月7日参照); Gaea Katreena Cabico, Hontiveros tells colleagues: Focus on BBL passage instead. The Philippine Star, January 23, 2018.

https://www.philstar.com/headlines/2018/01/23/1780636/hontiveros-tells-colleagues-focus-bbl-passage-instead(2018年7月7日参照);

Sen. Bam: Senate to prioritize BBL, peace in Mindanao over Cha-cha. Sanate of the Philippines, 17th Congresshttp://www.senate.gov.ph/press_release/2018/0130_aquino1.asp(2018年7月7日参照)

[18] それらは、1)地方自治政府委員会(Committee on Local Government)、2)財政委員会(Committee on Finance)、3) 憲法改正および法典改正委員会(Committee on Constitutional Amendments and Revision of Codes)、 4) バンサモロ基本法サブ委員会(Subcommittee on the Bangsamoro Basic Law)。

[19] 委員会の段階でどれだけ改訂されたかは分からないが、MILFにも受け入れられる内容であったと報じられた。Carolyn O. Arguillas, MILF chair Murad: Senate’s proposed Bangsamoro is “generally acceptable.” MindaNews, March 6, 2018. http://www.mindanews.com/peace-process/2018/03/milf-chair-murad-senates-proposed-bangsamoro-generally-acceptable/(2018年5月16日参照)

[20] 第1717号法案の歩みはこちらのサイトに詳しい。Senate Bill 1717. Basic Law for the Autonomous Region of the Bangsamoro. MindaNews, July 5, 2018.

http://www.mindanews.com/peace-process/2018/07/senate-bill-1717-basic-law-for-the-autonomous-region-of-the-bangsamoro/(2018年7月7日参照)

[21] Llanesca T. Panti, House asks Duterte to certify Bangsamoro bill as urgent. The Manila Times, May 24, 2018. http://www.manilatimes.net/house-asks-duterte-to-certify-bangsamoro-bill-as-urgent/400782/(2018年7月7日参照)

[22] Duterte certifies BBL as urgent. ABS-CBN News, May 29, 2018. http://news.abs-cbn.com/news/05/29/18/duterte-certifies-bbl-as-urgent(2018年7月7日参照)

[23] Camille Elemia, Duterte certifies BBL as urgent a day before Congress adjourns. Rappler, May 29, 2018. https://www.rappler.com/nation/203611-duterte-certify-bangsamoro-basic-law-urgent-may-29-2018(2018年7月7日参照)

[24]  棄権した議員は両院協議委員会のメンバーになることができる。

[25] Vanne Elaine Terrazola, Senate approves BBL. Manila Bulletin, June 1, 2018. https://news.mb.com.ph/2018/05/31/senate-approves-bbl-2/(2018年7月7日参照)

[26] うち、少なくとも下院議員の12名、上院議員の2名はフィリピン南部の選挙区出身。Carolyn O. Arguillas, 28 legislators to craft final Bangsamoro law: 14 from Mindanao, 7 of them Moro. MindaNews, June 2, 2018. http://www.mindanews.com/peace-process/2018/06/28-legislators-to-craft-final-bangsamoro-law-14-from-mindanao-7-of-them-moro/(2018年7月7日参照)

[27] Camille Elemia, Plebiscite, preamble, PH laws among last issues at Bangsamoro bicam. Rappler, July 17, 2018. https://www.rappler.com/nation/207540-proposed-bicameral-bangsamoro-basic-law-issues-final-days(2018年7月18日参照)

[28] Carolyn O. Arguillas, MILF chair on bicam version of Bangsamoro law: “80 to 90% CAB-compliant.” MindaNews, July 14, 2018. http://www.mindanews.com/peace-process/2018/07/milf-chair-on-bicam-version-of-bangsamoro-law-80-to-90-cab-compliant1/(2018年7月24日参照)

[29] Congress bicameral committee resolves BBL territorial provision dispute. CNN Philippines, July 11, 2018.

http://cnnphilippines.com/news/2018/07/11/congress-bicameral-committee-resolve-bbl-territorial-provision-dispute-zubiri-roque-duterte.html(2018年7月12日参照)

[30] Mara Cepeda, BBL’s hot issue: Who gets to control rich Sulu Sea, Moro Gulf?. Rappler, July 12, 2018. https://www.rappler.com/nation/207180-bangsamoro-basic-law-hot-issue-control-sulu-sea-moro-gulf

[31] Camille Elemia, How heightened emotions, stress define bicam on proposed BBL. Rappler, July 11, 2018. https://www.rappler.com/newsbreak/in-depth/206986-bangsamoro-basic-law-bicameral-committee-emotions-stress(2018年7月12日参照)

[32] Camille Elemia, Bicam to seek Duterte help to solve Bangsamoro plebiscite deadlock. Rappler, July 10, 2018. https://www.rappler.com/nation/206964-bicameral-committee-to-ask-duterte-solve-deadlock-bangsamoro-territory-plebiscite(2018年7月12日参照)

[33] ドゥテルテ大統領は2016年12月に行政命令第10号により、憲法を見直し連邦制を実現するための議論を行う諮問委員会(consultative committee, 通称Con-Com)を設立した。このメンバーにはMNLFミスアリ(初代議長)派のランドルフ・パルカシオ弁護士が入っている。MNLFミスアリ派は連邦制の実現による問題の解決を目ざしている。

[34] 両者とも、1987年憲法を制定するか否かを問う国民投票、およびARMMに参加するか否かを問う住民投票をボイコットした。ただし、フィリピン政府とMNLFとの1996年最終和平合意後、MNLFのミスアリ議長はARMMの知事に就任した。しかし、1996年最終和平合意の実施過程において両者の関係は悪化し、2001年に発足した新ARMMをMNLFミスアリ派は承認していない。

[35] 違憲であるという議論がまったくなかったわけではないが、大論争には発展しなかった。Benedicto Bacani, Prospects of federalism as a solution to the Mindanao conflict. Institute for Autonomy and Governance. October 5, 2017 http://www.iag.org.ph/index.php/blog/1507-prospects-of-federalism-as-a-solution-to-the-mindanao-conflict(2018年7月7日参照)

[36] Lobregat wants Christian office in Bangsamoro remove. Luwaran (MILF公式ウェブサイト), July 12, 2018. https://www.luwaran.com/news/article/1404/lobregat-wants-christian-office-in–bangsamoro-remove

[37] Mara Cepeda, Bicam draft ‘not a watered-down BBL,’ says BTC chair Jaafar. Rappler, July 12, 2018. https://www.rappler.com/nation/207127-bicameral-committee-draft-bangsamoro-basic-law-not-watered-down(2018年7月24日参照)

MASAKO ISHII石井 正子

立教大学

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