伊野憲治
2023.01.25
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  • ミャンマー

ミャンマー国軍における「法の支配」と今後の展望

※本記事における見解は筆者個人のものであり、Asia Peacebuilding Initiatives:APBIの公式見解ではありません。

1.はじめに―ミャンマーの今―

2021年2月1日未明、アウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)国家顧問及びウィンミン(Win Myint)大統領が、国軍によって身柄を拘束された[1]。軍出身のミンスエ―(Myint Swe)副大統領が大統領代行に就任し、国防及び治安国家評議会(国防治安評議会 : National Defence and Security Council)[2]を召集した。ミンスエ―を除く出席者全員が現役の軍人であった。会議の席上、まず国軍最高司令官ミンアウンフライン(Min Aung Hlaing)が状況を報告した[3]。協議の末、ミンスエ―大統領代行が緊急事態を宣言、「法律と同等の効力を有する命令[4]」を発し、国家の全権を国軍最高司令官に委譲した。また、この権力委譲は、現行憲法(2008年憲法)第417条及び第418条第1項に基づくとされ、その合憲性が主張された[5]
これを受け、国軍最高司令官は、「布告2021年第1号[6]」を発し、①2020年総選挙[7]での不正疑惑調査、②新型コロナウィルス対策の強化、③経済の立て直し、④国内の和平推進を自らの責務であるとしたうえで、それらの目的が達成されたあかつきには、⑤自由で公正な総選挙を実施し、勝利した政党に政権を委譲すると約した。翌日、ミンアウンフラインを議長とする国家統治評議会(State Administration Council : SAC)が設置された。
軍側の主張はどうあれ、実質的にはクーデターによる政権奪取に他ならなかった。
当然のことながら軍の権力掌握に対抗する動きが活発化する。2月5日には、身柄拘束を免れた国民民主連盟(National League for Democracy : NLD)当選議員らによって連邦議会代表者委員会(Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw : CRPH)[8]が結成された。CRPHは、ウェブ上の存在ではあったが積極的に活動を展開し、4月16日には国民統一政府(National Unity Government : NUG)[9]を樹立、拘禁中のウィンミン大統領、アウンサンスーチー国家顧問をトップに冠することで正当性を主張し、軍事政権と対峙した。さらに、5月5日には自衛権を主張する人民防衛隊(People Defence Force : PDF)[10]という武装組織をも結成し、国内外にその存在をアピールしていった。
 市民もこうした動きに連動していった2月6日には、抗議のデモが発生した。職場放棄等による市民的不服従運動(Civil Disobedience Movement : CDM)も展開し[11]、反クーデターの意思を明確に示した。携帯電話、SNS、インターネット等を活用した抗議運動は、農村も含め全国にまたたく間に拡大していった[12]
 この動きに対し、SAC側は5月8日、CRPH、NUG、PDFの全てをテロ組織と断定し[13]、デモ等の運動に対しては、発砲も含む強硬姿勢で弾圧を加えた[14]
 軍の徹底的な弾圧によってデモ等表立った抵抗は影をひそめる一方で、軍政とCRPH(及び傘下のNUG、PDF)の対立構造は、国内の少数民族政党、少数民族武装勢力の動向にも影響を与え、PDF対国軍の武力衝突も含む国内の分裂状況を作り出していった[15]。軍が約束した、コロナ対策、経済の回復、停戦合意も決して順調に進んでいるとは言えない。いわば「政治的混乱の膠着状態」が続いている。
 こうした状況下、総選挙が、いつどのような形で実施されるかが内外の関心を集めている。国軍は、今回の政治介入はあくまで現行憲法に従ったものであり、大統領による緊急事態宣言の発令に基づいた、合憲的な権力委譲であると、一貫して主張している。それが現在、軍政にとっては一つの足枷となりつつある。憲法の規定に従えば、緊急事態宣言の有効期限は1年間である。その上で、「通常1回につき6ヶ月、2回まで」(第425条)延長が認められている。緊急事態宣言終了後は、国防及び治安国家評議会が、6カ月以内に総選挙を実施しなければならない(第429条)。つまり、最長でも、2023年7月末までに総選挙を実施しなければならないことになる。国軍側もそのことは十分理解し、この規定を順守する姿勢を示してきたが、最近気になる発言も見られる。
2022年8月17日に行われたミンアウンフラインSAC議長と国連事務総長特使との会談の内容に関する軍側の説明である。その中で、ミンアウンフラインは「テロリスト及び少数民族武装組織の活動からもたらされる脅威が総選挙実施を阻んでいる[16]」と述べている。いわば総選挙を実施する前提が確立していないが、それはSACの責任ではないと主張しているように思われる。
さらに、10月16日、全国停戦協定締結7周年記念日における演説も軍の権力存続への懸念を抱かせる。演説では、まず選挙で比例代表制を導入し、議会を少数民族の要望を実現する政治的プラットフォームとする必要性が訴えられる。そのうえで「必要とあれば現行憲法の条項を改正するであろう」「これらの目的を達成するために、現行憲法を改正するであろう」と述べている[17]。選挙制度に関する憲法条項の改正となれば、国民投票が必要となり、期日内に総選挙が実施されるか否か、はなはだ不透明な状況になる。
 本稿では、こうした現状を踏まえ、ミャンマー国軍における「法の支配」とは、何を意味しているのかを、以下の2つの論点に絞って考えてみたい。
第一は、現行憲法の規定に照らし合わせて、軍の権力掌握に正当性があったか否かについてである。この点に関しては、既に、小松による示唆に富む報告はあるが[18]、まとまった論考は見られない。そこで、小松の議論をよりどころとしながら、今少し詳細に論じてみたい。
第二は、選挙制度改変に関する議論である。現行の小選挙区制を比例代表制に改変することがその議論の中心となっている。現軍事政権が積極的に進めている「改革」の一つにあげられる。現行制度の不備を改める動きとも言えるが、憲法上、簡単に実施できるものではない。その議論を整理することから、第一の例を補完するとともに、今後の展望にもつながる素材を提供したい。
その上で、今後の展望について、いくつかのシナリオを提供してみたい。

 

Ⅰ 全権掌握過程をめぐって

 まず、ミンスエ―大統領代行署名のもとに2月1日付で発せられた「大統領府命令2021年第1号[19]」の内容から見ていく。そこでは、以下のごとく、軍への権力委譲プロセスが説明されている。
 ①2020年11月8日に実施された総選挙において、基本として用いていた有権者名簿に重大な誤りがあり、正すよう要求したが、連邦選挙管理員会(Union Election Commission : UEC)はその職務を怠った。
 ②国家の主権は国民に由来するにもかかわらず、総選挙は著しく誤った有権者名簿に基づいて実施された。これは、民主主義の確立と主権在民という考え方に反している。
 ③有権者名簿問題を解決し、責任を追及することをしないばかりか、人民院と民族院の開会延期要望をも無視し、人民議会開会を告知し予定通り開催しようとしたことは、憲法第417条の規定にある国家主権を非合法的暴力手段[20]で奪おうとする行為であり、諸民族の統一を損なう行いである。そのような行いゆえに、町や地方において連邦選挙管理員会不信任のデモが発生し、ある政党では人々がその行動を支持する旗を掲げたり、スローガンを叫ぶなど、国家の安寧を著しく損なう事態が生じた。
 ④上記の問題に対し適切に対応しなかったがために民主主義の実現に多大な支障をきたし、法律に従って解決する必要が生じた。それ故、憲法第417条に基づいて「国家の緊急事態」を宣言する。
 ⑤有権者名簿問題の解決も含め必要な事項を遂行することができるように、憲法第418条第1項の規定に基づき「立法、行政、司法」の三権を全て国軍最高司令官へ委譲した。
 ⑥憲法第417条の規定し従って、本日2021年2月1日より、本緊急事態は1年間の効力を有す。
 ここでまず問題となっているのが2020年総選挙における不正問題である。この点に関しては、2月1日に開催された国防及び治安国家評議会での議論[21]、2月8日のテレビ放送で伝えられた(9日国営系新聞に掲載)、ミンアウンフラインの「国民への演説[22]」でその主張の詳細を知ることができる。いずれにしても選挙前・選挙後合わせて、選挙の不正調査等、7回に及ぶ軍からの申し入れを[23]、前政権、前議会、前選挙管理委員会がすべて無視し続けたということが一連のできごとを引き起こしたのだという主張がなされている。こうした申し入れにもかかわらず、強引に議会を開催しようとしたことは、国家権力を「非合法的暴力手段」で奪取しようとする行為であり、それ故、大統領代行が非常事態を宣言したという流れになっている。
 ここでいくつかの論点を指摘することができる。
 

論点1:選挙不正への対応、議会開催の動きが、国家主権奪取の動きと言えるか。
 第一は、憲法第417条と関連する。憲法第417条には「大統領は、国家の主権を、暴動、テロ及び非合法的暴力手段によって奪おうとする行為及び企てによって、連邦の崩壊、諸民族の分裂または国家主権の喪失につながる緊急事態が生じた場合もしくは生じるであろう確たる理由がある場合、国防及び治安国家評議会と協議の上、法律と同等の効力を有す命令を発し、緊急事態を宣言することができる」とある。問題は、選挙の不正への対応、議会開催への動きが、先に掲げた「大統領命令」で言われているように「非合法的暴力手段」もしくは「不当な方法」にまずもって相当するかという問題、及び仮にそのような企てが存在したとして「連邦の崩壊、諸民族の分裂または国家主権の喪失につながる」事態が生じているかといった問題である。
 憲法の規定上、緊急事態宣言の発令は、次の3つの場合に限られている。
 ①ある地域において「行政機能を憲法で定められた規定に従って行使できないことが明らかになったり、当該地域の関係機関からその旨の通報があった場合」(第410条)
 ②ある地域において「国民の生命、住居及び財産を損なう危険が及ぶ緊急事態が生じた場合または危険が及ぶと思われる確たる理由があると当該地域の関係機関から通報があった場合」(第412条)
 ③「国家の主権を、暴動、テロ及び非合法的暴力手段によって奪おうとする行為及び企てによって、連邦の崩壊、諸民族の分裂または国家主権の喪失につながる緊急事態が生じた場合もしくは生じるであろう確たる理由がある場合」(第417条)
 いずれも、手続き的には国防及び治安国家評議会と協議が必要となるが、以上3点の場合に限定されている。ここで注目しなければならないのは①、②と③は、その前提がかなり異なるということである。①、②は、地域的問題の性質が強いのに対し、③は国家転覆の動き、企ての問題であり、それ故、憲法英語訳で用いられているwrongful forcible means、ビルマ語「アダマー・ニー」にも、単なる「不当な方法」というよりも強い意味合いが込められていると言える。
 ここで確認しておきたいのは、選挙不正への対応、議会の開催への動きが、それほどまでに重大事項に当たるのか否かといった点である。
例えば、1988年の軍のクーデターによる政治介入時には、確かに介入直前の治安状況は悪化していた[24]。しかしながら今回国内の混乱状況は、軍が政権掌握後に発生しており、それ以前の状況は1988年当時の状況とは全く異なりほぼ平常といえる状態であった。ミンアウンフライン自身も3月20日ベイ基地で軍人らに「権力掌握後の1週間は平穏であったが、2週目から騒乱状態となった[25]」と述べている。軍としてはCRPH 等の煽動によって事態が悪化したと主張したいのであろうが[26]、クーデター後に国内の治安状況が乱れたのは明白である。それ以前の状態を「連邦崩壊」につながるような状況と認めるならば、権力掌握後はいかなる状況と言い表せばよいのであろうか。
しかしながらこの点に関しては介入直前の政治状況をどのように見るかといった見方に依拠しており、解釈の余地、言い換えれば恣意的な言い逃れの余地を残したものではある。
 

論点2:ミンスエ―大統領代行が緊急事態を宣言する権限を有しているか。
 第二の論点は、そもそもミンスエ―大統領代行が緊急事態を宣言することが可能かという問題である。この論点には、さらに3つの論点が内包されている。
①まず、軍よってウィンミン大統領が身柄を拘束されたからといって、憲法上は、大統領職を解任されたわけではない。憲法では、第71条に大統領の弾劾規定が明確に定められており、手続き的には、まず「連邦議会を構成するいずれかの議院において、議員総数の4分の1以上が署名した告発状を当該議院の議長に提出しなければならない。」その後、調査委員会が設置され、最終的に人民院、民族院両院において3分の2以上の議員が、告発内容は正しいと判断しなければ、弾劾は成立しない。かなりハードルの高い規定となっている。今回このような手続きは一切踏まれていない。まず、この点で疑義が生じる。
 ②また仮に大統領が欠員となったと見做したとしても、疑問は残る。憲法では第73条で、大統領が欠員となった場合について規定されている。第73条第1項では、大統領が何らかの理由で欠員となった場合、大統領選出選挙[27]で次点であった副大統領が大統領代行としてその職務を遂行しなければならないと規定されている。この規定に基づいて、ミンスエ―副大統領が大統領代行に就任したというのが、権力奪取からほぼ1ヶ月を経過した2月28日付で発した「外務省プレス・リリース」による軍側の見解である[28]。しかしながら、この論理は、第73条の第2~第4項の規定を完全に無視したものである。
 第73条第2項には、「連邦議会の会期中に大統領が欠員となった場合、大統領代行は、7日以内に大統領の欠員を埋めるよう連邦議会議長にすみやかに通告しなければならない」とあり、連邦議会議長は欠員となった大統領を副大統領として選出した母体の議員集団に対して、新たに副大統領を選出するように命じ(第3項)、出そろった3名の副大統領から新たな大統領を選出しなければならない(第4項)とされている。連邦議会が会期中でない場合には「連邦議会議長は、大統領代行から通告書を受け取った日から数えて21日以内に、連邦議会を召集し、上記の手続きに従って、欠員となっている大統領を選出しなければならない」(第5項)とされている。
 第73条の条項が意味するところは明白である。つまり、大統領代行の主な責務は、新大統領の選出に向けての各関係者・機関への働きかけであり、大統領に代わってその職務を遂行する場合、最長でも28日間と極めて一時的なものであるということである。
あえて、疑問を提示するとすれば、連邦議会(人民院及び民族院)の議員の任期が「最初の会期が開催された日から5年間」(第119条、第151条)とされ、この規定に従えば、2021年1月31日で終了しており、2月1日時点では、議会が存在していないという点であろう。つまり次の会期(2020年総選挙で選出された議員で構成する議会)が開催されるまで、僅かではあるが議会の空白状態が存在するという、憲法自体の規定の不備である。しかし、議会の議長は、人民院、民族院ともに次の「最初の会期がはじまるまで」その職務を遂行するという規定(第113条、第145条)があることから、議長の職権で議会を召集することは可能であろう。
 国軍が、権力掌握当初、第73条の規定を論拠として挙げなかったのは、第73条には軍政側の正当化理由を否定するこのような内容が含まれていたからとも考えられる。
 ③この点と関連してもう一点指摘しておきたいのは、大統領が欠員となった時、大統領代行が大統領の職務を遂行する場合の職務の内容である。現行憲法では、緊急事態に関しては一つの章を割いて規定されている(第11章:緊急事態に関する規定)。そこでは、確かに大統領に「緊急事態宣言」発出の権限が与えられている。しかしながら、行政権について記載された同憲法第5章では、「国家の行政の長は、大統領である」(第199条)とされたうえで、第202条から第215条にかけて「大統領の職務と権限」が明確に規定されている。その内容を見ると、第213条(1)で「我が国が軍事的攻撃を受けた場合、本憲法に従って設けられた国防及び治安国家評議会と協議したうえで、必要な軍事的対応をとる権限を有す」とはあるが、緊急事態宣言発出に関しては、全く記載がみられない。第73条の規定にある大統領にかわり「職務」を遂行する場合の「職務」の内容は、極めて限定的であって、緊急事態宣言の発出など重大事項は、そもそも想定されていなかった可能性が高い。
 

論点3:戒厳令の布告は可能か
 国内が騒然とする中、SACは、3月14日、15日の両日で、ヤンゴン管区域の6つの郡に戒厳令(Martial Law)を布告した[29]。これにより、該当郡の行政及び司法権がSACからヤンゴン管区司令部司令官に委譲された。混乱状況への早期の対応を可能にする措置であったと考えられるが、この点についても憲法上かなりの問題をはらんでいる。
 SACはこの措置を憲法第419条の規定に依拠するものだとしている。第419条には「国軍最高司令官は、立法権を自ら又は自らも含む組織を設け行使することができる。また行政権及び司法権をしかるべき組織を設けまたはしかるべき個人に、委譲し行使させることができる」とある。
 問題は、この規定に従えば、戒厳令を布告する必要は全くないということである。にもかかわらず何故戒厳令を布告したのか疑問が残る。そもそも、憲法の規定に基づけば、Martial Lawが布告できるのは、第413条(2)の場合のみで、第413条は条文の冒頭には「第412条に基づき緊急事態が宣言された場合は」とあり、第412条を前提としている。先にも触れたように、第412条は、ある地域で「国民の生命、住居及び財産を害う危険」が生じた場合に関する規定であり、今回の緊急事態宣言が依拠した第417条とは全く異なる。これも憲法自体の不備で、緊急事態宣言発出の3つのカテゴリー全てに適用可能と考えていたのかもしれないが、条文上、解釈の余地なく戒厳令は第412条に基づいて緊急事態宣言がなされたのみにしか発出できない。
 さらに言えば、何もMartial Lawという言葉を使わなくても、先の第419条の規定で、行政権や司法権のヤンゴン管区司令部司令官への委譲は可能であり、何故この言葉を用いなければならなかったのか疑問が残る。言葉による単なる威嚇のためか。即決裁判を実施するためか。かつてNLDが大統領の権限を他機関、他者に分権委譲することなどを定めた憲法第218条に依拠してアウンサンスーチーを国家顧問に任命したことへの仕返しなのか。疑問は深まるが、憲法の規定上、現軍事政権にMartial Lawを宣言する権限はない。

 

Ⅱ 選挙制度改正問題をめぐって

 SACは、権力掌握直後より連邦選挙管理委員会(UEC)に、2020年総選挙における不正問題に関する調査を命じ、UECは即座にその作業に着手した。
 調査報告は、2021年2月16日から7月26日まで順次公表されたが、公表内容は、大別して2つの数値群から成り立っていた。第1の数値群は、①郡の前選挙管理委員会が示した有権者数、②労働力・出入国管理・人口省(Ministry of Labor, Immigration and population)の把握する有権者数[30]、③いかなる身分証明証も持たないが有権者リストには掲載されている者の数、④身分証明証は保持しているが3回以上有権者リストに記載のある者の数、⑤身分証明証は保持しているが2回有権者リストに記載のある者の数、これを投票所ごとに示している。③④⑤に関しては、仮にあったとして有権者リスト上の問題であり、それが投票行動につながったという証拠は何ら示されていない。不正が行われたことの証明には説得力を持ち得ない数値群であると言える。
 UECは、①と②を比較することで、その差(①が多い)を示して不正な投票が行われたことを証明しようとしているように思われるが、まずもって②が何を根拠にした数値なのか示されていない。例えば、SACが信を置いている2015年総選挙及び2010年総選挙におけるヤンゴン管区域の有権者数と②を比較してみても、2015年総選挙では約7割、2010年総選挙でも約5割の選挙区では、②の数値を超えており、人口の推移を勘案したとしても[31]、②の数値の信憑性を疑う方が妥当であると考えざるを得ない。
 第2の数値群は、①投票所に持ち出された投票用紙数、②使用された投票用紙数、③残存しなければならない投票用紙数、④実際に残っている投票用紙数、⑤差異(イ)紛失数・(ロ)増加数を投票所ごとに集計したものである。⑤の(イ)・(ロ)に関しては、示された数値が何を意味し、何を明らかにしたくて挙げているのか不明である。問題にしたいことが、③と④の差異であるなら、軍側が主張する有権者総数の25パーセントを超えるようなものとは考えられない[32]
 こうした調査が進む中、より注目すべき動きとして選挙制度改変の動きが活発化する。2021年3月31日、SAC会合においてミンアウンフラインは、「議会の公正性を保つために、比例代表制の導入に関して見直してみる必要がある[33]」と発言し、次期選挙での選挙制度改変の可能性を示唆した。しかしながらUEC議長キンマウンウー(Khin Maung Oo)は4月9日に開催された2021年第4回SAC広報チーム(Information Team)記者会見席上で記者からの質問に「2月26日に開催された政党との会合において、既に比例代表制については、議論されている[34]」と答えている。つまりSACは権力掌握直後から比例代表制導入の議論を復活させていたのである。
 そもそも比例代表制の導入に関しては、既にテインセイン(Thein Sein)政権時代の2014年6月の民族院、人民院両院で議論が始まっていた[35]。2012年補欠選挙におけるNLDの大勝、2015年総選挙でアウンサンスーチーを党首とするNLDが本格的に選挙参加する動きへの警戒感から生まれた対応の一つとも言えるが[36]、まずその当時の議論を振り返ってみたい。
議論は、民族院が、人民院より一歩進んだ形で進んだ。民族院では、2014年6月11日に、比例代表制を採用し、必要な法改正をするよう連邦選挙管理委員会に申し入れることが、採決の結果、117票対85票で可決された。しかしながら、議長提案で、重要な決定ゆえ、この問題に関する審議会を結成し、詳細に検討することとなった[37]
 他方、6月の時点では何らの判断も下さなかった人民院でも、10月28日に、再度取り上げられた[38]。しかしながら、11月14日、比例代表制の導入ではなく、現行制度を引き続き維持していくことが決定された[39]。6月の民族院の議決とは異なる結果となった。
 このことの影響もあってか、民族院では、11月24日、先に結成された審議会の報告をもとに再度議論され、比例代表制導入賛成138票、反対24票、白票5票で、審議会の検討結果を承認し導入を求める旨、連邦選挙管理委員会へ伝えることが決定された[40]。 
 最終的に人民院と民族院では対応が異なることになったが、それには次のような背景があった。
 人民院では、議会での議論を受け、議長が2014年11月13日付で憲法関連裁判所に書簡を発し、比例代表制など8パターン示し、その導入が憲法上可能かを事前に問い合わせていた。憲法関連裁判所から即座に返書が寄せられ、その結果、憲法に照らし合わせるならば、現行選挙制度を除いては、違憲であるという見解が示された。11月14日に人民院が現行制度の維持を決定した背景には、こうした憲法関連裁判所とのやり取りがあったのである[41]
 このような経緯があったにもかかわらず、ミンアウンフラインは、人民院、民族院、地方議会のいずれにおいても比例代表制を導入するという議論を復活させたのみならず、2021年8月ごろからは、その導入の必要性にについて強調しはじめ[42]、10月には「比例代表制の導入は原則同意されている[43]」と断言した。その後開催されたUECと政党との会合においては、比例代表制の導入はほぼ前提とされ、具体的方法や選挙区をどのようにするのかといった議論が進められている[44]
 軍事政権のこの動きは、必ずしも否定的に見られているわけではない。実際、議会構成を考えると、あまりにもNLDに一極に集中していた。いくつかの管区域議会では、議員がNLDのみという状態も生じており、議会自体の存在意義が問われるような状況ではあった。しかしながら、SACが憲法の遵守、「法の支配」を主張している以上、現行憲法の規定との関連で、どのような問題があるのか考えてみる必要もある。現行憲法との関連では、以下に挙げる2つの論点が存在する。
 

論点1:選挙制度を容易に改変できるのか。
 まず問題となるのは、人民院、民族院、地方議会の構成を規定した条項で、軍人議員以外の民選議員の選出方法に関連して、以下のように定められている点である。
 ①人民院議員は「郡及び人口の構成に基づき、また郡が330を超えた場合は、新設された郡を関係する郡と適切に合併したうえで、法律に従って決定した選挙区から選出された議員総数が330人を超えない人民議院」(第109条)。
 ②民族院議員は「(1)行政自治区または行政自治区域で選出された各1名の議員を含み、かつ当該域内にある連邦直轄領は当該管区域・州に包摂した上で、各管区域及び州から選出された各12名からなる168人の民族院議員」(第141条)[45]
 ③各管区域・州議会議員は「(1)管区域または州内の各郡から2名ずつ選出された管区域または州議会議員」(第161条)
 ③に関しては、域内の少数民族で人口の0.1パーセント以上の人口を有すると認められた場合1名の議員を選出できることになっているが、人民院、民族院、管区域・州議会民選議員の基本的構成は上記のようになっている。
 こうした憲法の規定に従えば、人民院においては、憲法関連裁判所が示した見解通り、郡を基に各選挙区から1名選出されるということになり、選出議員数も規定されていることから、1選挙区から複数名を選出する比例代表制は導入できない。導入に際しては、憲法改正が必要となる。
憲法改正に関しては、現行憲法では2種類の場合が考えられており、①連邦議会(人民院及び民族院)議員総数の75パーセントを超える議員の同意を得た後、国民投票により有権者の過半数の同意を得なければならない場合と、②連邦議会議員総数の75パーセントを超える議員の同意のみによって改正できる条項とに分かれている(第436条)。第109条、第141条、第161条に関しては①の手続きを経なければ改正できず、国民投票にかけなければならない。SACが発議したとしても改正への手続き的ハードルは高い。
 民族院に関しては、制度設計次第によって、憲法を改正しなくても、選挙法など関連法規の改正で、比例代表制の導入は可能である。管区域・州議会に関しても、民族院同様、制度設計次第によっては憲法改正の必要はない。
 とすると問題は、人民院にある。だが、少数民族等多様な人々の意見が反映できるようにするための選挙制度改正であれば、もっとも改正が必要なのは人民院なのである。連邦議会は、人民院及び民族院両院の構成員でなりたっており、人民院議員440名、民族院議員224名となっている[46]。人民院議員が約3分の2を構成している。大統領選出等重要案件は連邦議会で審議されることを考えれば、最も必要な部分に比例代表制が導入できないということになる。
 「はじめに」で指摘した2022年10月16日のミンアウンフラインの憲法改正への発言は、こうした問題がある点にやっと気づいたか、またはこれまで意図的に隠しこのタイミングで気づいたふりをしているかのいずれかであることは間違いない。
 

論点2:選挙区を改変することは可能か。
 もう一つの論点としては、第1の論点と深く関係するが、比例代表制導入のさい、各選挙区をどのように設定するかといった問題がある。
 2021年12月26日にUECと政党の会合では、郡のかわりに県を単位としてはどうかという意見が出されている。また、このことと直接関係あるか否かは不明であるが、2022年4月30日付で、「国家の政治、経済、社会等の発展に応じて、地方の開発、行政業務円滑化のために」46県が増設され、憲法第54条及び第284条第2項に従って設置された従来の75県から121県に改組された[47]
 現行憲法では、県は複数の郡からなりたっており(第51条)、「村、村落区、区、町、郡または県の境界を変更、新設又は名称を変更する必要が生じた場合、大統領は、当該管区域または州の統括大臣の大統領への申請をうけた後、必要な措置を取らなければならない」(第54条)、「大統領は、連邦直轄領であるネーピィードー内の県及び郡を必要に応じて改変することができる」(第284条第2項)と規定されている。2021年2月1日以降国家の全権が国軍最高司令官に委譲されていると考えれば、県の改変は可能ではある。しかし第54条は、仮に改正するとなれば国民投票にかけなければならない規定に分類されており重要事項として扱われていることを考えれば、何故この時期に改組が必要なのかという疑問がわいてくる。
 また、県の改変が可能であったとしても、人民院及び地方議会にあっては、先に掲げた第109条、第161条で定められているように、選挙区の設定の基本は郡であることにかわりなく、県を単位とすることは、現行憲法ではできない。

 

Ⅲ 国軍における「法の支配」

 以上、権力掌握のプロセス及び比例代表制の導入に関する軍の対応と現行憲法の規定との関係について疑問点を提示してきた。軍は現行憲法、法律の遵守を主張しているものの[48]、憲法そのものの恣意的な解釈・運用は疑う余地はなく、そのうえ選挙不正に関する調査に見られるように、独善的説明が常態化している。さらに、市民の権利を制限する方向性での「市民のプライバシー及び安全保護法」や「刑法」「刑事訴訟法」の改正[49]等、一連の法律改正に至っては、権力維持のための意図的な立法と言わざるを得ない。
 現軍事政権下のミャンマーは、「法の支配」とは程遠い状況にある。
 こうした指摘は目新しいものではない。1988年9月以降2011年3月まで存続した前軍事政権においても、その「欺瞞」に満ちた政治姿勢は、顕著な特徴、いわば軍の伝統、政治文化であった[50]
 その「欺瞞」的政治姿勢を正当化しているのが、軍は国民政治[51]の唯一の体現者であるといった、自らが作り上げてきた政治思想である。軍は、政治を「国民政治(National Politics)」と「政党(党派)政治(Party Politics)」に二分し、「政党政治」は政党の利害だけを追求するもので、いわば「世俗の政治」であるのに対し、「国民政治」は、個々の利害を超えた国家全体の利害の追求を目指す、「超俗の政治」と位置付け、その担い手は軍以外にあり得ないという考え方をとっている[52]
 ミンアウンフライン国軍最高司令官はその演説の中で「グッド・ガバナンス、クリーン・ガバメント[53]」の確立を強調している。通常その前提として「法の支配」がある。しかしながら、憲法、法律の遵守という表向きの主張の陰には、「超俗の政治」は「世俗の政治」規範を超えており、軍の統治には適用されないといった信念にも近い考え方が潜んでいると言えよう。

おわりに―今後の展望―

 最後に、以上のような議論を踏まえて、今後の展望について若干触れておきたい。2023年1月末には、緊急事態宣言の2度目の延長が終了する。当初からの軍の主張によれば6ヶ月以内つまり7月末までには総選挙を実施しなければならいという時期に来ている。そのような状況下、今後に関していくつかのシナリオが考えられる。
 第一のシナリオは、選挙が予定通り行われるという前提に立つ。この場合、NLDが選挙に参入するか否かが問題となる。一部報道等では、軍はNLDの参入を促す方向で動いているという見方も流れているが[54]、仮に、参入した場合、NLDの圧勝は必至であり、その危険性を回避するためには、比例代表制の導入が不可欠となってこよう。軍としては、4分の1が軍人で占められる議会において、軍人議員と反NLD勢力で議会での過半数獲得を目指すやりかたである。しかしながら、現状では、NLDの参入は可能性が低いと言わざるを得ない。NLDがボイコットする形での実施となれば、2010年総選挙の復活であり、内外の理解は簡単には得られない。さらに、その総選挙の結果、ミンアウンフラインが大統領に選出するようなことがあれば、反軍勢力は、抗議活動を強める可能性が高く、「ガバナンスと法の支配」を重視する国際社会には背を向けられることになる。ミャンマーのさらなる混乱は必至のように思われる。
 第二のシナリオは、軍政側が、国内の諸状況、特にテロリストの活動により、国内の秩序回復に至っていないという理由により、緊急事態のさらなる延長を試みることが考えられる。緊急事態の延長は「1回6ヶ月、2回まで」と理解されている場合が一般的であるが、実は憲法の規定では「通常、1回につき6ヶ月、2回まで」となっており、この「通常(ターマンアーピィン)」という言葉の解釈次第では、さらなる延長は、軍の側からするならば十分に可能である。ちなみに、2008年憲法の中で「通常」という言葉が使われているのは、延長を規定した第421条(2)と第425条の2ヶ所のみである。制憲時、こうした事態がすでに想定されていたのかもしれない。延長されれば、選挙制度改正への時間的余裕も生まれることになる。しかしながら、こうした動きもまた混乱状況を鎮静化するに至らないことは想像に難くない。国内の混乱状況→軍政の延長→国内の混乱状況悪化という負のスパイラルに陥る結果となろう。当然のことながら国際社会の理解も得られない。
 第三のシナリオは、NLDを始めとする民主化勢力にとっては、最悪のパターンである。これは、軍が、選挙制度改正を前面に打ち出し、「通常」規定を利用して、緊急事態を延長する場合である。その際は、ミンアウンフラインも「やっと気づいた」あるいは「このタイミングで気づいたふりをしている」憲法改正のための国民投票が必要となる。軍側としては、緊急事態宣言延長の格好の大義名分となり、その延長期間に関しても融通を利かせやすい。
例えば、議会が存在していないことを理由に、憲法改正のための国民会議を設置し検討するといった方法が考えられる。この場合、国民会議での改正発議→国民投票の実施という流れになり、国民会議の議論にどの程度時間をかけるかについては、軍の思惑次第となる。2008年憲法制定に関しては、1993年1月9日に最初の国民会議(制憲国民会議)が開かれてから、2008年5月10日の国民投票まで、15年以上の歳月を費やしている。こうした前例を踏襲する可能性は少なくない。
軍にとってこのシナリオの利点は、国民や国際社会の理解が、選挙制度改変に関しては、比較的得やすいと思われる点にある。少なくとも軍はそのように現状認識している。しかしながらNLD等民主化勢力にとってのみならず、大多数の国民にとっても、最悪のシナリオとなる。
 いずれのシナリオにおいても不透明な部分は少なくないが、民主化といった観点からは、悲観的にならざるを得ない。そのような状況下、国際社会は、ミンアンフライン自身が主張する「グッド・ガバナンス、クリーン・ガバメント」に照らし合わせて軍政の実態を把握・評価し、自らの対応を決定していく必要があると思われる。

 (2023年1月9日脱稿)

 

 


[1] この2名のほか国民民主連盟(NLD)政権閣僚や2020年総選挙での当選議員の多くも身柄を拘束された。その時の具体的状況については、永杉豊『ミャンマー危機―選択を迫られる日本―』扶桑社、2021年、28~32ページ、北川成史『ミャンマー政変―クーデターの真相を探る―』筑摩書房、2021年、10~32ページ、中西嘉宏『ミャンマー現代史』岩波書店、2022年、2~3、170~175ページ等で、それぞれ独自の情報を駆使し実態の把握につとめている。
 尚、現行憲法上は、軍に逮捕・身柄拘束する権限は与えられていない。憲法第376条では「国家の安全保障、法と秩序の維持、国民大多数の平和繫栄及び国民大多数の利益のために、法律に従って、予防的措置が必要と定められた事柄または現行法で定められた事柄を除き、審理権を有す裁判官の拘留命令なく、いかなる者をも24時間を超えて拘束してはならない」と定められている。
[2] NSCは、①大統領、②副大統領、③副大統領、④人民院議長、⑤民族院議長、⑥国軍最高司令官、⑦国軍副司令官、⑧国防大臣、⑨外務大臣、⑩内務大臣、⑪国境問題担当大臣の11名から構成される。
[3] ミンアウンフラインの報告に基づいて議論が進められた点に関しては、“National Defence and Security Council of Republic of the Union of Myanmar holds meeting,” GNLM, 2 February 2021, p.3参照。
[4] “Republic of the Union of Myanmar Office of the President Order Number(1/2021), 1 February 2021,” The Global New Light of Myanmar(以下GNLM), 2 February 2021, p.1
[5] 憲法原本は、『ミャンマー連邦共和国憲法(2008年)』(ビルマ語、英語掲載版)Ministry of Information, Yangon, 2009版を用いているが、条文の訳に関しては、伊野憲治(訳)「邦訳『ミャンマー連邦共和国憲法 2008年』(1)」『基盤教育センター紀要』第32号、2019年、141~206ページ、同「邦訳『ミャンマー連邦共和国憲法 2008年』(2)」『基盤教育センター紀要』第33号、2019年、59~129ページ、同「邦訳『ミャンマー連邦共和国憲法 2008年』(3)」『基盤教育センター紀要』第34号、2020年、43~104ページを基本的に用いた。
本憲法の概要に関しては、同「2008年憲法の概要と憲法改正への動向」阿曽根邦明、奥平龍二編著『ミャンマー―国家と民族―』古今書院、2016年、438~449ページ参照。
[6] “Republic of the Union of Myanmar Office of the Commander-in-Chief of Defence Services Notification No.1/2021,” GNLM, 2 February 2021, p.2. 本布告は、6パラグラフから構成されているが、その第1パラグラフを除く部分が現在軍政側が掲げている「国家統治評議会の将来計画五ヶ条(Five future programmes of State Administration Council)」とされた。
[7] 2020年総選挙の結果に関しては、伊野憲治「2020年ミャンマー総選挙結果―連邦レベルを中心として―」『基盤教育センター紀要』(北九州市立大学)、第35・36合併号、2021年、155~220ページを参照。
[8] CRPHは、ウェブサイトCRPH - Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw (crphmyanmar.org)上で声明等を発している(2022年12月26日アクセス)。
[9] NUGのウェブサイトはHome | Government of the Republic of the Union of Myanmar (nugmyanmar.org)。(2022年12月26日アクセス)
[10] PDFのウェブサイトはPeople’s Defence Force – ကာကွယ်ရေးဝန်ကြီးဌာန (nugmyanmar.org)。(2022年12月26日アクセス)
[11] ミンアンフラインによれば、初めてのCDM運動がおこったのは、2021年2月4日、マンダレー医科大学においてである。“The speech on one-year State responsibilities discharged by the State Administration Council Prime Minister Senior General Min Aung Hlaing,” GNLM, 2 February 2022, p.5.
[12] 髙橋昭雄「騒乱続くミャンマー反クーデター農村からもー」『朝日新聞』2021年3月23日朝刊、13ページ。
[13] “Republic of the Union of Myanmar Anti-Terrorism Central Committee Notification No.2/2021, 8 May 2021,” GNLM, 9 May 2021, pp.1-2.
[14] 軍の弾圧に関してはテレビ、インターネットやSNSを通じて明らかにされた。その中でまとまったものとして、日本放送協会「NHKスペシャル 緊迫ミャンマー 市民たちのデジタル・レジスタンス」(2021年4月4日放映)、同「NHKスペシャル 混迷ミャンマー 軍弾圧の闇に迫る」(2021年8月22日放映)をあげることができる。また同取材班によるNHKミャンマープロジェクト『NHKスペシャル取材班、「デジタルハンター」になる』講談社、2022年がある。
[15] この点に関しては、長田紀之「2021年のミャンマー」アジア経済研究所編『アジア動向年報 2021年』アジア経済研究所、2022年、419-421参照。
尚、ミャンマー政治の現状については、永杉【2021】、北川【2021】、中西【2022】、深沢淳一『「不完全国家」ミャンマーの真実―民主化10年からクーデター後までの全記録―』文眞堂、2022年、山口健介『ミャンマー「民主化」を問い直す―ポピュリズムを超えてー』NHK出版、2022年、永井浩『ミャンマー「春の革命」―問われる[平和国家]日本―』社会評論社、2022年も参考になる。
[16] “Full description of discussions between SAC Chairman Prime Minister Senior General Min Aung Hlaing and Special Envoy of United Nations Secretary-General on Myanmar,” GNLM, 20 August 2022, pp.4-5.
[17] “The speech addressed by Chairman of the State Administration Council Prime Minister of the Government of the Republic of the Union of Myanmar Chairman of the National Solidarity and Peacemaking Central Committee Commander-in-Chief of Defence Services Senior General Min Aung Hlaing at the 7th Anniversary of Signing the Nationwide Ceasefire Agreement(NCA),” GNLM, 16 October 2022, p.3.『チェーモン』(ビルマ語紙)20222年10月16日、4ページ。
[18] 小松健太「ミャンマークーデターの法的分析」(報告資料)、SDGs Bar vol.11 - 特別企画vol.2 ミャンマークーデターの法的分析 | Peatix(2022年12月25日アクセス)。尚、筆者は、小松氏から、報告のパワーポイント資料を、「緊急事態宣言の法的枠組み」という資料とともに、直接ご提供いただいた。記して心より感謝申し上げたい。

 

[19] 「ミャンマー連邦共和国大統領府法律と同等の効力を有する命令 命令2021年第1号、2021年2月1日」『チェーモン』2021年2月2日、1ページ。
尚、その英訳が“Republic of the Union of Myanmar Office of the President Order Number(1/2021), 1 February 2021,” GNLM, 2 February 2021, p.1に掲載されているが、ニュアンスが異なる部分が少なくないので、ここではビルマ語から訳した。原文は、主語が極めて不明確な文章となっている。
[20] 今後の議論との関連で指摘しておきたい。拙訳では「非合法的暴力手段」としたが、異論もあるかもしれない。原語は「アダマ・ニー」で、憲法の英訳ではwrongful forcible meansとなっている。「非合法的手段」あるいは「不当な手段」としても良いが、それについては本論で触れる。
[21] “National Defence and Security Council of Republic of the Union of Myanmar holds meeting,” GNLM, 2 February 2021, pp.1,3.
[22] “Republic of the Union of Myanmar State Administration Council Chairman Senior General Min Aung Hlaing makes speech to public,” GNLM, 9 February 2021, pp.1-2.
[23] これらの声明等は、国軍系新聞『ミャワディー』(ビルマ語、英語併記版)のウェブサイトမြဝတီသတင်းစာ | Myawady Webportal(2023年1月9日アクセス)で確認できる。7回の声明等は以下の通り。①“Republic of the Union of Myanmar Office of the Commander-in-Chief of the Defence Services Statement on stance on situation of the pre-2020multiparty democracy general election(2 November, 2020),” 『ミャワディー』2020年11月3日、18ページ、②“Republic of the Union of Myanmar Office of the Commander-in-Chief of the Defence Services Announcement of stance on EAOs related to election(2 November, 2020),” 同、19ページ、 ③“Statement on Stance, 30-11-2020,” 同、2020年12月1日、18ページ、 ④“The Statement in connection with the attitude towards the statement issued by Union Election Commission, 10-12-2020,” 同、2020年12月11日、18ページ、 ⑤“One-fourth of Hluttaw representatives demands to convene special session of second Pyidaungsu Hluttaw, 11 January 2021,” 同、2021年1月12日、18ページ、⑥“Statement on the attitude towards the Announcement(1/2021) of the Pyidaungsu Hluttaw Office, 14-1-2021,” 同、2021年1月15日、⑦“Statement on stance, 20-1-2021,” 同、2021年1月21日(英文には欠落があるので、同1,11ページ掲載のビルマ語版も参照)。
またその要約は“Republic of the Union of Myanmar Office of Commander-in-Chief of Defence Services Announcement to public, 6th February 2021,” GNLM, 3 February 2021, p.4を参照。但し、そこでは声明等の発出回数は「選挙前に2回、選挙後に4回」となっている。6回というのは、2021年1月11日と1月14日を1回として数えたからだと思われる。
[24] 伊野憲治『ミャンマー民主化運動―学生たちの苦悩、アウンサンスーチーの理想、民のこころ―』めこん、2018年、294~302ページ参照。いわゆる「破壊・略奪」「リンチ・処刑」行為の発生件数が、1988年クーデター前後で比較されている。いずれもクーデター後に増加しているが、クーデター前にも相当数発生しており、治安状況の悪化した状態であったと言える。しかしながら、このことが、88年当時の軍のクーデター介入を正当化するものではない。
[25] “Some incite the youths to commit violent acts ; these attempts are dangerous for the State : Senior General,” GNLM, 21 March 2021, p.3. こうした見方は、既に3月6日付のGNLMのコラムで明確に示されている“State Administration Council’s endeavors for State peace and stability and rule of law in February 2021,” GNLM, 6 March 2021, p.12. そこでは、より明確に「連日発生するデモは初期のころは平和的な雰囲気に包まれていたが、いくつかの主要都市においては、2月9日を境に騒乱に転嫁し、そして蛮行を働く暴徒化した」と記されている。
また、クーデター後の混乱状況は、市民の犠牲者数(死者数)からも推察できるAAPP(Assistance Association for Political Prisoners(Burma)のウェブサイトによれば、2023年1月5日現在2707名に上っているAssistance Association for Political Prisoners (aappb.org)2023年1月9日アクセス)。
[26] 典型的な例は、クーデター後1年を経過した2022年2月1日行われたミンアウンフライン演説で明確に示されている“The speech on one-year State responsibilities discharged by the State Administration Council Prime Minister Senior General Min Aung Hlaing,” GNLM, 2 February 2022, p.4.
[27] 現行憲法において大統領は次のように選出される。まず、選挙によって選出された人民院議院からなる集団、選挙によって選出された民族院議員からなる集団が、それぞれ副大統領1名ずつを選出するとともに、国軍最高司令官が指名した両院の軍人議員からも副大統領1目を選出する。選出された3名の副大統領が、大統領候補となり、大統領選挙人団(人民院、民族院議員全員、連邦議会構成員と読み替えても良い)が大統領を選出する(第60条)。
[28] “Press Release from MOFA,” GNLM, 1 March 2021, P.3.
[29] “Republic of the Union of Myanmar State Administration Council Martial Law Order 1/2021, 14 March 2021,” GNLM, 15 March 2021, p.1及び“Republic of the Union of Myanmar State Administration Council Martial Law Order 2/2021, 15 March 2021,” GNLM, 16 March 2021, p.1

[30] ミンアウンフラインの国民に対する演説では、統計学的に推定された人口に基づく有権者数とも比較されているが。この推定値もどのように割り出したのか何ら説明されていない“Republic of the Union of Myanmar State Administration Council Chairman Senior General Min Aung Hlaing makes speech to public,” GNLM, 9 February 2021, p.2.
[31] 人口の推移に関しては、経済産業省『医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 ミャンマー編』経済産業省、2021年、5ページ等を参照。
[32] 25パーセントを超えるとの発言は”Republic of the Union of Myanmar Office of the Commander-in-Chief of Defence Services Announcement to public, 2 February 2021,” GNLM, 3 February 2021, p.4等。
UECの調査が、膨大な作業量であったことは認めるが、「何をどのように明らかにしたのか」あるいは「したいのか」については、筆者の理解を超える。よって、調査結果の信憑性については評価できない。しかし、このような意味不明な調査結果に基づいて、UECは、2021年7月26日に、2020年11月の総選挙結果を無効とした“Republic of the Union of Myanmar Union Election Commission Notification No(2/2021) 26 July 2021, Announcement on annulment of Nov 8 Multiparty General Election results,” GNLM, 27 July 2021, p.6.
[33] “Equal term of rights must be carefully created for ethnics: Senior Genaral,” GNLM, 31 March 2021, p.3
[34] “Record of Press Conference(4/2021) held on 9 April 2021 by the State Administration Council’s Information Team,” GNLM, 14 April 2021, pp.10-11.
[35] “Upper, Lower Houses debate car substitution programme, electoral system,” NLM, 11 June 2014 ; “PR system debated at Lower House,” The New Light of Myanmar(以下NLM), 26 July 2024, p.1. 2014年の議論に関しては長田紀之「2014年のミャンマー 加速する経済、難題に直面する政治改革」アジア経済研究所『アジア動向年報 2010▶2019 ミャンマー編』アジア経済研究所、2022年、116ページ及び長田紀之「2015年のミャンマー 新体制下初の総選挙で野党の国民民主連盟圧勝」アジア経済研究所『アジア動向年報 2010▶2019 ミャンマー編』アジア経済研究所、2022年、143ページも参照。
[36] 2015年総選挙結果に関しては、伊野憲治「2015年ミャンマー総選挙結果」『基盤教育センター紀要』2016年3月、85~133ページ参照。
[37] 「ミャンマー連邦共和国第1期民族院第10回定例会第9日議事録」(ビルマ語)2014年6月11日、56~57ページနဝမနေ့ မှတ်တမ်း (၁၁.၆.၂၀၁၄) | အမျိုးသားလွှတ်တော် (amyotha.hluttaw.mm)(2022年12月29日アクセス)。
[38] “Pyithu Hluttaw discuss electricity, electoral system,” GNLM, 29 October 2014, p.2.
[39] “Pyithu Hluttaw approves FPTP electoral system,” GNLM, 15 November 2014, p.2.
[40] 「ミャンマー連邦共和国第1期民族院第11回定例会第33日議事録」(ビルマ語)2014年11月24日、50~51ページ(၃၃) ရက်မြောက်နေ့ မှတ်တမ်း (၂၄.၁၁.၂၀၁၄) | အမျိုးသားလွှတ်တော် (amyotha.hluttaw.mm)(2022年12月29日アクセス)。
[41] 人民院と憲法関連裁判所とにやりとりに関しては、人民院のウェブサイトにアクセス不能なため議事録等を入手することができず、断定することはできない。しかし、その後、民族院議員26名が連名で憲法関連裁判所に出した問い合わせに対する、2015年2月27日に下した憲法関連裁判所の命令(裁定)から、読み取ることができる。そこでは、人民院議長は問い合わせる権利があるが、民族院議員個々人にはその権利はなく、手続き的に無効であり、民族院内でしかるべき議論を深めるよう諭されている。その命令の中で、人民院議長との書簡でのやりとりの引用を含めた要旨が示されている。本稿は、これに依拠している。「ミャンマー連邦共和国憲法関連裁判所2014年申し立て5 当該申し立てに関する命令」(ビルマ語)2015年2月27日、တင်သွင်းလွှာအမှတ် (၅/၂၀၁၄) ကနဦးဆုံးဖြတ်ရမည့် အချက်အပေါ် ချမှတ်သည့်အမိန့် | Constitutional Tribunal of Myanmar(2022年12月29日アクセス)。尚、人民院議長からの書簡では8つの選挙制度パターンが示されていた模様で、その第一番目が現行制度であったと考えられる。
[42] 例えば、8月23日のSAC会合における発言“All the People need to emphasize national interests by forging the Union sprit: Senior General,” GNLM, 24 August 2021, p.2.
[43] 10月15日のSAC会合における発言“Aim is to ensure prosperity of the nation and emerge genuine democratic federal Union: Senior General,” GNLM, 16 October 2021, p.3.
[44] 例えば、11月5~6日、12月24、26日開催のUECと政党との会合。
11月5日ပြည်ထောင်စုရွေးကောက်ပွဲကော်မရှင်နှင့် နိုင်ငံရေးပါတီများ ရွေးကောက်ပွဲစနစ် ဆွေးနွေးပွဲကျင်းပ (uec.gov.mm)
11月6日ပြည်ထောင်စုရွေးကောက်ပွဲကော်မရှင်နှင့် နိုင်ငံရေးပါတီများ ရွေးကောက်ပွဲစနစ် ဆွေးနွေးပွဲကျင်းပပြုလုပ်ခြင်း (uec.gov.mm)
12月24日ပြည်ထောင်စုရွေးကောက်ပွဲကော်မရှင်နှင့် နိုင်ငံရေးပါတီများ ရွေးကောက်ပွဲစနစ် ဆွေးနွေးပွဲကျင်းပပြုလုပ်ခြင်း (uec.gov.mm)
12月26日ပြည်ထောင်စုရွေးကောက်ပွဲကော်မရှင်နှင့်နိုင်ငံရေးပါတီများ ရွေးကောက်ပွဲစနစ်ဆိုင်ရာဆွေးနွေးပွဲ တတိယနေ့ ကျင်းပပြုလုပ်ခြင်း (uec.gov.mm)(いずれも2022年12月29日アクセス)。
また、National Democratic Force Partyのフェイスブックには、2021年11月6日付で「連邦選挙管理員会、比例代表制度に関する説明」(ビルマ語)と題された、連邦選挙管理員会が作成したと思われるパワーポイント資料がPDFで掲載されている。
https://www.facebook.com/330831333699181/posts/4462815370500736/?d=n(2022年11月16日アクセス)。
PDFファイル自体には、2021年10月21日の日付が付されており、PP資料には日付が付されていないので、いつ作成されたものか特定できないが、かなり詳細に制度設計案が検討されている。但し、その47ページに記された憲法関連裁判所の裁定に関しては、あたかも人民院も含まれているような書き方になっているが、あくまで民族院に対するものである。なお、本資料の存在は工藤年博氏よりご教示いただいた。
[45] 第109条、第141条に関しては、「第1章 国家の基本原則」第12条第2項でも「連邦議会は、郡及び人口構成に基づいて選出された議員からなる議院及び各管区域及び州から同数選出された議員からなる議院の2つによって構成される」と規定されている。
[46] 軍人議員も含めた数。
[47] “Expansion of new districts in Nay Pyi Taw, regions and states according to political, administrative, economic and social development,” GNLM, 2 May 2022, p.6. この点に関しては原田正美氏からご教示いただいた。尚、英訳には一部誤りがあるので『チェーモン』2022年5月1日、10ページも参照した。

[48] “National Defence and Security Council of Republic of the Union of Myanmar holds meeting,” GNLM, 2 February 2021, p.3 ; “Union Ministers hold diplomatic briefing on recent political developments in Myanmar,” GNLM, 6 February 2021, p.2等参照。
[49] “Republic of the Union of Myanmar State Administration Council State Administration Council Law No(4/2021), Amendment of Law Protecting the Privacy and Security of the Citizens, 13 February 2021,” GNLM, p.1 ; “Republic of the Union of Myanmar State Administration Council State Administration Council Law No(5/2021), Law Amending the Penal Code, 14 February 2021,” GNLM, 15 February 2021, p.2 ; “Republic of the Union of Myanmar State Administration Council State Administration Council Law No(6/2021), Law Amending the Code of Criminal Procedure, 14 February 2021,” GNLM, p.2.
[50] 当時の軍事政権の「欺瞞的」姿勢に関しては、伊野憲治「ミャンマー軍事政権(SLORC)の政治姿勢について(1)」『アジア経済』第32巻、第12号、1991年、65~71ページ、及び同「ミャンマー軍事政権(SLORC)の政治姿勢について(2)」『アジア経済』第33巻、第1号、1992年、63~71ページを参照。
[51] 「国民政治」という言葉、概念は、現行憲法でも国家の基本原則の一つである第6条の「国家は、以下のことを常に目指す。・・・(6)国家の国民政治追求における国軍の永続的参画」という規定で使用されているほか、ミンアウンフライン演説も含め、軍側の様々な説明等で権力掌握直後から多用されている。例えば“National Defence and Security Council of Republic of the Union of Myanmar holds meeting,” GNLM, 2 February 2021, p.3 ; “Republic of the Union of Myanmar State Administration Council Chairman Senior General Min Aung Hlaing makes speech to public,” GNLN, 9 February 2021, pp.1-2.
[52] 「国民政治」「政党政治」に関する議論は、伊野【2018】、341~365ページ参照。
[53] “Republic of the Union of Myanmar Chairman of State Administration Council Senior General Min Aung Hlaing Situation Report on Country,” GNLM, 12 February, 2021, p.3.

[54] 例えば、稲田二郎「スーチー氏刑期33年に」『西日本新聞』2022年12月31日朝刊、5ページ。

KENJI INO 伊野 憲治

1959年生まれ。東京外国語大学大学院地域研究研究科修了、一橋大学より博士号(社会学)。博士課程在学中の1988~91年、外務省在ミャンマー日本国大使館専門調査員。北九州市立大学基盤教育センター教授。

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    【エッセイ・映画評】 人間が獣のように吠える時〜 ~『この都市を失って』(『負け戦でも』)

    近年ミャンマー人監督によるドキュメンタリー映画が数多く作成され、日本をはじめ国外でも上映機会が増えている。国際映画祭などで選出されることも稀ではない。これは以前には見られなかった現象である。2023年にはミャンマー人による作品(『この都市を失って』(『負け戦でも』))が山形国際ドキュメンタリー映画祭のアジア部門(「アジア千波万波」)で最高賞(小川紳介賞)に選ばれた 。 本エッセイでは、ミャンマーのドキュメンタリー作家が2021年クーデター後に直面する課題を論じた上で、『この都市を失って』(『負け戦でも』)がいかに新境地を切り拓いたかを示したい。


  • 仏教徒とムスリムの関係:ミャンマーでの反ムスリム運動の背景を考える

    2024.03.08

    斎藤紋子 アジアのイスラーム 新着 ミャンマー
    仏教徒とムスリムの関係:ミャンマーでの反ムスリム運動の背景を考える

    現在、反ムスリムの動きは少なくなり、2021年のクーデターの影響で、マイノリティ全体に対する風向きが少しだけ良い方向に変わりつつあるように見える。しかし、反ムスリムの動きが全くなくなったわけではない。ミャンマーの人々が抱く反ムスリムの感情は民主化後に急激に高揚したようにも見えるが、実際には民主化以前は顕在化していなかっただけの状態であった。本稿ではミャンマーで多数を占める仏教徒と、マイノリティであるムスリムの関係について、少し時代をさかのぼって考えてみたい。


  • 【エッセイ】ミャンマーの民主闘争と国内避難民 (3)―越境支援の現場から―

    2024.02.29

    岡野 英之 新着 ミャンマー
    【エッセイ】ミャンマーの民主闘争と国内避難民 (3)―越境支援の現場から―

    本連載はこれまで、私がマンダレー滞在中に見た国内避難民の様子を描いてきた。第三回目の今回は、舞台を隣国タイの国境地帯に移したい。私はマンダレーに数週間滞在した後、タイに飛んだ。タイでは10日間ほど滞在し、ミャンマーとの国境地域を調査した。とりわけ本稿で伝えたいのは、国境を通して実施されるミャンマー人たちによる同胞への支援の様子である。


  • 【エッセイ】ミャンマーの民主闘争と国内避難民 (2)―仏教僧院という隠れた「避難民キャンプ」―

    2024.01.15

    岡野 英之 新着 ミャンマー
    【エッセイ】ミャンマーの民主闘争と国内避難民 (2)―仏教僧院という隠れた「避難民キャンプ」―

    連載第二回目には、仏教寺院(=僧院)に身を寄せる「隠れた国内避難民」を紹介したい。ミャンマーの僧院は人々にとって「駆け込み寺」として機能している。国内避難民たちの中には、そんな僧院を頼って暮らしている者もいる。