APBI Monitor
2014.07.10
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June 2014: Myanmar

1) 大統領資格要件、変更なし

憲法改正実行委員会は、アウン・サン・スー・チー氏が大統領となるのを妨げている59条を維持することを決めた。与党の連邦団結発展(USDP)選出の委員がイラワジに伝えたところによると、6月1日の委員会で、委員31人のうち、5人のみが、改正に賛成したという。

これに対し、スーチー氏が党首を務める国民民主連盟(NLD)は、「現段階は、あくまでも委員会の決定。憲法は議会の投票によって改正することができる」とし、スーチー氏が大統領になる望みは残っているとの認識を示した。

http://www.irrawaddy.org/burma/parliament-committee-deals-blow-suu-kyis-presidential-hopes.html
http://www.irrawaddy.org/burma/suu-kyis-presidential-bid-dead-yet-nld.html
http://elevenmyanmar.com/index.php?option=com_content&view=article&id=6434:charter-committee-votes-not-to-amend-section-59&catid=32&Itemid=354
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/politics/item/11464-parliamentary-panel-votes-to-retain-ban-on-nld-leader-becoming-president
http://www.dvb.no/news/suu-kyi-presidency-bid-in-the-balance-burma-myanmar/41569

2) 上院議会が次期総選挙で比例代表制導入を承認

上院議会が12日、2015年の選挙に比例代表制を導入する議案を可決した。イラワジによると、117人が賛成し、軍人やNLD、少数民族政党の85人が反対した。

国民民主勢力(NDF)のKhin Wine Kyi議員が提案した。

下院でも導入を検討する。

比例代表制について、「改革の初期段階で複雑なシステムを導入することは、有権者を混乱させる」との批判が出ているほか、少数民族政党は「豊富な資金があり、国内全土でキャンペーンができる大政党を利するもの」と反対している。

http://www.irrawaddy.org/burma/burmas-upper-house-votes-change-electoral-system.html
http://www.dvb.no/news/upper-house-votes-for-proportional-representation-burma-myanmar/41450
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/politics/item/11576-proportional-representation-committee-to-report-next-parliamentary-session
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/politics/item/11494-lower-house-to-debate-move-for-proportional-representation

3) 平和的集会・行進法が改定

ミャンマー連邦議会は、平和的集会・行進法の改定案を承認した。同法は、2011年に制定されたもので、デモや集会を開催するときは、事前に地方警察と地方当局の許可を得なければならず、違反した場合は、最長2年の禁固刑を科す内容となっていた。改定では、刑期が最長で1年と短縮されたが、事前に許可を申請するという内容は残された。一方で当局側は、「正当な理由」なしにデモを不承認にしてはならないという内容も加わった。

Robert San Aung弁護士は、「政府が本当に民主化を進めるなら、このような表現の自由を制限している法律は破棄すべきだ」と批判。ベテラン弁護士のAung Thein氏も、「政府が許可したくなければ、申請を認めないだろう」と話した。

http://www.irrawaddy.org/burma/burmas-parliament-amends-protest-law.html
http://www.dvb.no/news/peaceful-assembly-bill-passed-now-awaits-presidents-signature-burma-myanmar/41639

4) 国連事務次長補がミャンマー訪問

カンキョンファ(康京和)人道問題担当国連事務次長補がミャンマーを訪問。4日間の滞在中、ラカイン州やカチン州の避難民キャンプなどを視察した。カン氏はラカイン州のキャンプについて、「これまでに視察した中で、最悪。彼らは移動を厳しく制限され、ぞっとするような状態の中で生活している」と評した。また、「避難民は、健康や教育、水の確保や衛生管理など基本的なサービスを受ける機会がまったくない」とし、「(イスラム教徒と仏教徒のラカイン族との間の)ラカイン州での紛争から2年を経た現在でも、彼らは生活を再建することができず、何十万もの人々が人道援助に頼る状況が続いている」と、指摘した。

http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/11500-suffering-in-rakhine-the-worst-i-ve-seen-says-top-un-official
http://www.dvb.no/news/un-official-appalled-by-situation-in-arakan-burma-myanmar/41607
http://www.irrawaddy.org/burma/rohingya-camps-appalling-conditions-un-official-says.html
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/11421-senior-un-humanitarian-affairs-official-begins-four-day-visit
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/11475-top-un-official-issues-plea-on-aid-access-for-idps

5) 憲法436条改正を求める署名に300万超す賛同

NLDは30日、330万人以上の憲法436条改正を求める署名を集めたと発表した。署名集めは The 88 Generation Peace and Open Societyと共同で5月27日から行っていた。7月19日まで引き続き行われる。

436条は、憲法改正には議会両院で75%を上回る賛成が必要としている。現在、選挙で選ばれていない軍人議員が全議席の25%を占めていることから、事実上、彼らは憲法改正に対する拒否権を行使できるようになっている。

NLD中央執行委員会委員のTun Tun Heinは、すべての署名を議会に提出するとし、「我々は、国民の支援が436条項改正の後押しとなると信じる」と話した。

http://www.irrawaddy.org/burma/nld-3-million-people-join-petition-amend-charter.html
http://www.dvb.no/news/2-6-million-sign-petition-for-436-amendment-nld-burma-myanmar/41939

6) テイン・セイン大統領が中国訪問

テイン・セイン大統領が27日から4日間)の日程で中国を訪問。両国とインドとの3か国による「平和共存5原則」提唱60周年記念式典出席などのため。大統領の公式訪問は3度目で、今回、初めて習近平国家主席と会談した。

新華社通信によると、習国家主席は、「エネルギーや水力発電、鉱山開発など大規模プロジェクトが円滑に進むよう、両国間が有益な関係を築くことを期待する」と述べた。また、習主席は、ミャンマーの21世紀海上シルクロード構想と、バングラデシュ、中国、インド、ミャンマーを結ぶ経済回廊を発展させることへの参加を歓迎すると述べたという。

会談後、両首脳は、文化、教育、医療などの分野での中国側からの援助について合意した。

http://www.dvb.no/news/thein-sein-gets-red-carpet-treatment-in-beijing-myanmar-burma/41910
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/regional/item/11591-myanmar-president-meets-chinese-counterpart
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/regional/item/11578-president-to-celebrate-peaceful-coexistence-with-china-and-india
http://www.irrawaddy.org/burma/thein-sein-set-first-bilateral-talks-chinese-president.html
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/regional/item/11618-president-criticised-for-chinese-cross-cultural-exchange

 

7) ラカイン州の首相にMaung Maung Ohn少将就任

ラカイン州の州首相に、内務省副大臣のMaung Maung Ohn少将が就任することが決まった。州議会が承認したと30日、発表された。Hla Maung Tin首相の辞職に伴うもので、テイン・セイン大統領が推薦していた。同少将は、ヤンゴンで開かれた州議会で「地域の安定と人々の生活向上に尽力する」と述べた。

同少将は、3月のラカイン州シットゥエで仏教徒のラカイン族が、国際援助組織を襲撃した際、政府の調査を主導した。

同少将が推薦されたことに対し、ラカイン州の州議会などでは、同少将がラカイン族ではないことに加え、「軍の支配が強まるのではないか」などと懸念の声が出ている。一方で、軍の高官が就任することで、ロヒンギャ問題に関しては前進するかもしれないとの見方もある。

http://www.dvb.no/news/maung-maung-ohn-confirmed-as-arakan-chief-minister-burma-myanmar/41951
http://www.irrawaddy.org/burma/general-appointed-arakan-chief-minister-govt-tells-local-mps.html
http://www.irrawaddy.org/burma/state-parliament-approves-general-arakan-chief-minister.html
http://www.dvb.no/news/president-nominates-military-man-as-arakan-chief-minister-burma-myanmar/41856
http://www.dvb.no/news/military-nominee-pledges-to-improve-living-standards-in-arakan-state-burma-myanmar/41887
http://www.irrawaddy.org/burma/new-arakan-chief-minister-pledges-zero-tolerance-rohingya-smuggling.html

 

註:上記内容は、下記ミャンマーニュースWEBサイトのほか、随時、日本のメディア、ミャンマー関係団体等のサイトも参考に、筆者がまとめた。

文中には主なリンク先のみ挿入した。

Democratic voice of Burma(http://english.dvb.no/
The Irrawady (http://www.irrawaddy.org/)
Mizzima (http://www.mizzima.com/index.php)
BBC (Burmese) (http://www.bbc.co.uk/burmese/burma/)
VOA (Burmese) (http://burmese.voanews.com/)
RFA (Burmese) (http://www.rfa.org/burmese/)

June 2014, Myanmar

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