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世界的な大不況、世界各地でのナショナリズムの台頭、もてはやされたグローバリゼーションの影の部分の顕在化などにより、国際社会は政治的にも経済的にも不安定な時期を迎えたと見受けられます。このような時代にこそ、日本は、地に足の着いた国際協力を行う必要があることは、疑問の余地がありません。笹川平和財団(SPF)は、現在の不安定な時代に対応する新しい事業方針を掲げ、日本の国際協力を民間分野において飛躍的に発展させるための活動を昨年より展開してまいりました。わずか1年という短い期間でしたが、今後の発展の基礎を作ることができたと自負しています。

まず第1に笹川中東イスラム基金の設立です。社会主義からの移行国であった中欧諸国がEUのメンバーとなり、NATO に加盟したことに鑑み、移行への支援という主要な使命を果たした笹川中欧基金の目的を変更し、新たに笹川中東イスラム基金を設立しました。今後の活動の中核の1つに中東イスラム地域を加えたことは、当財団の20数年におよぶ国際交流の歴史の中でも画期的なことであると思います。設立記念パーティーの際、笹川中東イスラム基金運営委員長の松尾邦彦氏が「中東には“言葉は雲、行動は雨” という諺がある。日本と中東との交流も掛け声はあったが、実行となると今一つでありまさにこの諺のとおりであった。しかし、今回の笹川中東イスラム基金の設立は、雨を降らせるものであると思う」と述べられたように、大きな期待がいろいろな関係者の方々から寄せられています。

また第2番目は、SPFが中東に加え、もう1つの重点地域としてアメリカ合衆国を選び、90年代の貿易摩擦をピークに、関心が薄れてきた日本との交流を新たなメニューに基づきスタートさせたことです。若手、中堅、シニア各階層の日米双方のオピニオンリーダーによる交流を開始し、単なる親日派の形成を越え、環境、エネルギー、核拡散防止など国際社会に共通する課題について、意見交換、政策提言のできる関係の形成を目指します。

そのほかにもSPFは、東アジアを中心とした人口問題、鳥インフルエンザをはじめとしたパンデミックへの対応、太平洋島嶼国の海洋管理の問題など世界や地域が直面する深刻な問題を取り上げ、実践的な調査、研究、試行を経て提言を行い、その解決に貢献する方針です。もちろんこれらの問題は、直ちに解決が図られるような単純なものでないことは周知のことですが、SPFのミッション・ステートメントの第3番目に記されている心構え、すなわち「笹川平和財団は、問題の複雑性や、事業遂行の困難性を厭わず、試行錯誤を重ねたうえで、漸進的に成果をあげる事業推進の手法を尊重する。」を肝に銘じ、活動してまいります。皆さまのご指導ご鞭撻を心からお願いいたします。


笹川平和財団
会長 羽生 次郎
2009年8月






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