報告書・出版物

はじめに本報告書は、競艇交付金による日本財団の助成金を受けて実施した平成18 年度「大陸棚の限界拡張に係る支援」事業の一環として開催した国連海事海洋法課セミナー「大陸棚限界拡張とキャパシティー・ビルディング」の概要をとりまとめたものです。1994 年に発効した国連海洋法条約によりますと、大陸縁辺部の外縁が200 海里を超えて延びている場合には、大陸棚を最大350 海里まで延伸することができると定められていますが、そのためには、科学的データを添えて、国連に設置されている大陸棚限界委員会(CLCS:Commission on the Limits of the Continental Shelf)に2009 年5 月までに申請する必要があります。これまでに、ロシア、ブラジル、オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド及びノルウェーの6 カ国が申請し、またフランス、アイルランド、スペイン、英国が共同申請をしております。我が国でも、2009 年の提出期限に向けて必要なデータを収集するなど、申請の準備に追われているところであります。このような状況の中で、大陸棚限界委員会において、「どのような審査が行われるのか」、「審査過程で何が重要とされるのか」、「どのような問題が起こりうるのか」また、CLCSの「申請国に対する提案と勧告」について、事務局を務める国連海事海洋法課(DOALOS :Division for Ocean Affairs and the Law of the Sea)の意見を伺うことは、極めて有益なことと考えられます。そこで、DOALOS の専門家の方々を招聘し、国連海事海洋法課セミナーを開催しました。本セミナーでは、先ず、国連海洋法条約に則ったDOALOS の活動の全般的な紹介が行われました。次に、国連海洋法条約第76 条に従って大陸棚を延伸するためのCLCS への申請方法と手順、及びDOALOS の事務局としての役割、並びにDOALOS の技術的サポート体制について紹介がありました。その後、大陸棚の画定が技術的に極めて高度なことを受け、全ての締約国に国連海洋法条約を適用していくためのDOALOS のキャパシティー・ビルディング活動について紹介が行われ、参加者との間で活発な議論が展開されました。本報告書は、その概要についてとりまとめたものです。本セミナーを実施するに当たり、ご指導ご協力いただいた日本財団をはじめ内閣官房大陸棚調査対策室、海上保安庁海洋情報部などの関係各位、並びに国連海事海洋法課の関係各位に厚くお礼申し上げます。平成19 年3 月海洋政策研究財団(シップ・アンド・オーシャン財団)-1-セミナーの概要1. 会議名国連海事海洋法課セミナー「大陸棚の限界拡張とキャパシティー・ビルディング」2. 開催日及び開催場所平成18 年12 月7日(木)3. 開催場所東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル 2階 大会議室4. 使用言語英語―日本語 同時通訳5. 主催海洋政策研究財団6. 後援日本財団7. 開催趣旨1994 年に発効した国連海洋法条約によると、大陸縁辺部の外縁が200 海里を超えて延びている場合には、大陸棚を最大350 海里まで延伸することができると定められているが、そのためには、科学的データを添えて、国連に設置されている大陸棚限界委員会に2009 年5 月までに申請する必要がある。これまでに、ロシア、ブラジル、オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド及びノルウェーの6 カ国が申請し、またフランス、アイルランド、スペイン、英国が共同申請をしている。我が国でも、2009 年の提出期限に向けて必要なデータを収集するなど、申請の準備に追われているところである。このような状況の中で、国連大陸棚限界委員会(CLCS:Commission on the Limitsof the Continental Shelf)における審査の状況などについて、事務局を務める国連海事海洋法課(DOALOS :Division for Ocean Affairs and the Law of the Sea)の意見を伺うことは、極めて有益なことと考えられる。そこで、DOALOS の専門家を招聘し、標記セミナーを開催することとした。-2-8. 講師国連法務局海事海洋法課(Division for Ocean Affairs and the Law of the Sea, Officeof Legal Affairs, United Nations)Mr. Hariharan Pakshi Rajan (ハリハラン・パクシ・ラジャン)Senior Law of the Sea/ Ocean Affairs Officer& Deputy-Secretary of the CommissionMr. Vladimir Jares(ウラジミール・ジャレス)Law of the Sea/Ocean Affairs OfficerMr. Robert Sandev (ロバート・サンデフ)Geographic Information Systems (GIS) Officer9. プログラム13:30-13:40 開会の辞海洋政策研究財団 会長 秋山昌廣13:40-14:10 国連海洋法条約における国連海事海洋法課の活動の概要ハリハラン・パクシ・ラジャン氏14:10-15:00 CLCS への申請方法と手順~DOALOS はどのようにしてCLCS の事務局として機能しているのか~ハリハラン・パクシ・ラジャン氏15:00-15:20 休憩15:20-16:10 DOALOS の活動の技術的な側面について~その構造基盤、データベース、ホームページ、及び地理情報システム(GIS)~ロバート・サンデフ氏16:10-17:30 申請のための発展途上国のキャパシティー・ビルディング~DOALOSの計画の目的と遂行、及び他の関連したプログラム~ウラジミール・ジャレス氏17:30 閉会17:45-19:15 レセプション-3-開会挨拶 Rajan 氏開会挨拶 Rajan 氏Sandev氏 Jares 氏記念撮影記念撮影 オープンセミナー-4-目 次はじめに 1セミナーの概要 2グラビア 4講演内容開会挨拶 7国連海洋法条約における国連海事海洋法課の活動の概要 9ハリハラン・パクシ・ラジャン氏CLCS への申請方法と手順~DOALOS はどのようにしてCLCS の事務局として機能しているのか~ 13ハリハラン・パクシ・ラジャン氏DOALOS の活動の技術的な側面について~その構造基盤、データベース、ホームページ、及び地理情報システム(GIS)~ 21ロバート・サンデフ氏申請のための発展途上国のキャパシティー・ビルディング~DOALOS の計画の目的と遂行、及び他の関連したプログラム~ 29ウラジミール・ジャレス氏資 料Overview of DOALOS activities 45Mr. Hariharan Pakshi RajanProcess and Procedure of Submission made to the CLCS-How DOALOS functions as secretariat of the CLCS‐ 48Mr. Hariharan Pakshi RajanThe Division for Ocean Affairs and the Law of the Sea: TechnicalAspects 51Mr. Robert SandevCapacity–building to assist developing States in the preparation ofsubmissions- Purpose and practice of the DOALOS programs, andother relevant programs 58Mr. Vladimir Jares-5-開会挨拶※秋山昌廣海洋政策研究財団 会長本日は国連海事海洋法課セミナーにご参加いただき誠に有難うございます。まず、海洋政策研究財団(OPRF)について、ご紹介をさせていただきたいと思います。私どもOPRF は、1975 年に設立された民間の非営利組織であります。競艇交付金によります日本財団のご支援を受けて、造船業および造船関連工業の技術開発の支援や情報収集などを行うとともに、海洋にかかわる様々な研究活動にも積極に取り組んでおります。また、私どもOPRF におきましては、領海基線から200 海里を超えて拡張できる大陸棚の限界拡張問題にも強い関心を持っており、一昨年度、昨年度と2 回にわたりまして、アジア太平洋諸国に対するトレーニングプログラムを、日本財団のご支援を受け、海上保安庁のご協力の下に実施いたしました。本日の国連海事海洋法課セミナーも、その一環として実施するものであります。このセミナーでは、大陸棚の限界拡張についての国連海事海洋法課の活動をご紹介し、共有することを目的としています。国連海事海洋法課は、国連海洋法条約に則り世界中の海事の管理において、非常に大きな役割を担っております。また、大陸棚の限界拡張を申請した沿岸国に対する勧告を行うことを目的とした大陸棚限界委員会の事務局としての極めて重要な役割も果たされております。では、本セミナーの講師を務められます国連海事海洋法課の3 名の専門家の方々をご紹介いたします。ハリハラン・パクシ・ラジャン氏はインドの方です。2004 年から上級法務官として、また大陸棚限界委員会の事務局次長として活躍されております。更に、オーストラリアおよびニュージーランドの申請を審査する小委員会も担当されておられます。次にウラジミール・ジャレス氏はチェコのご出身です。外交官を経て1992 年から国連事務局に勤務されております。現在は海事海洋法課で法務官を務めておられます。またブラジルの申請を審査する小委員会を担当されております。ロバート・サンデフ氏は旧ユーゴスラビア、マケドニアのご出身です。1997 年から地理情報システム専門官として活躍されておられます。本セミナーでは、先ずラジャン氏から、国連海洋法条約に基づいた国連海事海洋法課の全般的な活動および大陸棚限界委員会の事務局としての活動についてご紹介をいただきます。そしてサンデフ氏から、国連海事海洋法課の技術的な側面についてご紹介をいただくことになっております。更に、ジャレス氏から、大陸棚限界拡張申請が技術的にも資金的にも困難な開発途上の沿岸国に対して、国連海事海洋法課が行っております様々なキャパシティー・ビルディング・プログラムについてご紹介いただきます。本セミナーが皆様方にとって有益なものとなり、また活発な議論が展開されることを祈念して、私の開会の辞に代えさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。※ 挨拶は英語で行われた。-7-「国連海洋法条約における国連海事海洋法課の活動の概要」※ハリハラン・パクシ・ラジャン氏国連海事海洋法課上級法務官兼大陸棚限界委員会事務局次長海洋政策研究財団の秋山会長、そして日本財団の皆様、海洋政策研究財団の皆様、そしてお集まりの皆様、このような機会をいただきまして光栄に思っております。日本に来てからこの2 日間、大変温かくおもてなしいただいておりますことにお礼を申し上げます。意義のあるセミナーにしたいと思っております。昨日は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)に行きました。今朝は、海上保安庁に行き、ラボでいろいろなマッピングなどを見せていただくとともに、プレゼンテーションをしていただきました。大変興味深いプログラムでありました。本日は、国連法務局海事海洋法課(DOALOS)の活動についてお話をさせていただきます。同僚と一緒に参りましたので、技術的な面についてはそちらに任せたいと思っております。私の最初の発表では、DOALOS の全体像、機能についてご紹介をしようと思います。国際法の中でも非常に興味深い分野がこの国連海洋法条約であると思います。その実施に関しては、非常に興味深いところだと思います。非常に複雑な法体系であり、非常にやりがいがあるというか、チャレンジングな分野であると思っております。DOALOS の機能の一つ目ですが、DOALOS という部門は、国連の中でも海洋法条約の実施に当たって中心になっているところであります。そして関連する取り決めなどの実施に当たっても中核的な役割を果たしております。海洋法条約の締約国は、現在152 カ国になっておりまして、普遍的な法体系を提供するものであります。まさにこれが、法の施行の基礎であり、そういった意味でDOALOS は、その機能を発揮しているわけであります。もう一つ付け加えておこうと思いますが、国連海洋法条約(UNCLOS)、これは言ってみれば海洋の憲法であると思います。このUNCLOS、簡単に条約と略称することもありますが、その実施ということになりますと、いくつか考慮しなければいけないことがあります。まず何といっても技術の発展がこの40 年間、非常に目覚ましく起こってきたということであります。科学技術がこれだけ発展し、それが国境を超えて非常に大きな影響を及ぼしております。条約の実施に当たりましても、これを忘れることはできません。条約が起草された当時は、こういった技術の発展ということは予想されていなかったことであります。さらにこの財団のパンフレットを見て思いましたが、本当の意味での人類と海洋の共存、そして、それを高めて利益を得るためには、技術がもたらす課題に対応しなければなりませんし、また我々が積極的な役割を果たさなければいけないと思います。そういった意味※本文は、同時通訳の日本語をテープ起ししたものに基づいている。-9-でDOALOS は、その機能を積極的に果たしていきたいと思います。この条約の下でいくつか機能がありますが、例えば委託、国連事務総長に委託されるという役割もありますし、それに対して我々が機能を果たしております。条約の機能については、すでに簡単にお話しいたしましたが、いずれにしても国際法の発展、そして法典化に寄与していくということが書いてあります。そして技術的な面にも対応しなければいけない。またそれがもたらす複雑性にも対応しなければいけないというのが要旨であります。委託にかかわる機能というのが、この条約の下で我々には与えられております。この条約の目的は、国際社会に対して、そして海洋の利用者、利用国に対して、海洋の法体系にかかわる限界に関する規定を与える。これは条約の条文だけではなく、境界画定にかかわるプロセスとか国の管轄権、また国内法とかそういった面も当然考えなければいけない。そういったことを、委託を受けて公表するという機能が、まずDOALOS の大きな機能の一つとして果たしているわけです。次に、事務局としての役割そのものです。先ず、国連海洋法条約の締約国会議の事務局の役割を果たしております。締約国会議においては、国際海洋法裁判所(ITLOS)の判事の選挙も行われますし、ITLOS の予算の審議も行われますし、書記局からのいろいろな報告を受けたりいたします。予算関連などが中心であります。二つ目の事務局業務としては、海洋法にかかわる非公式協議プロセス(ICP)というのがあります。これは国連総会によって設立されたもので、締約国だけではなく、政府間機関であるとかNGO などが入りまして、現実的な海洋、海洋法にかかわるテーマについて議論をするプロセスであります。三つ目の最も重要な事務局機能といたしまして、国連総会にかかわる機能であります。国連総会から我々はマンデートを与えられます。国連総会の決議に関しまして、それを協議する会合の場を設定するとか、それにかかわる任務を果たしております。また大陸棚限界委員会にかかわる事務局も果たしております。これについてはまた詳しくお話ししたいと思います。いずれにいたしましても、委員会の事務局機能については、条約の中に詳しく書いてあります。国連の事務局が、委員会に対して事務局を提供しなければならないということになっており、DOALOS が、その役割を果たしているわけです。大陸棚限界委員会ですが、これは条約の施行を円滑化するものであり、大陸棚の外側の限界の設定にかかわる事柄に関して、勧告などを締約国に対し行うものでありますが、非常に複雑な技術的・科学的なデータを検討するプロセスが入ってまいります。これは国連海洋法条約第76 条にかかわるものですが、これについては次の発表で触れたいと思います。76 条を分析すると分かりますが、データを詳細に分析するわけです。その任務を委員会が行うわけですが、DOALOS が事務局として委員会に対して、GIS の機能であるとか、いろいろなサービスを提供する役割を果たしています。3番目のDOALOS の重要な機能ですが、キャパシティー・ビルディング、能力開発に関する役割です。条約の中でもいろいろな複雑な課題があります。条約からフルに果実を得るためには、開発途上国、島嶼国などの能力を育成することが欠くことができません。-10-国連総会の決議であるとか、締約国会議の中でも能力開発にかかわる必要性が繰り返し訴えられております。いろいろなイニシアティブが既にいろいろ実施されています。まず一つはフェローシップ、訓練にかかわるプログラムがあります。日本財団のフェローシップは、その中でも最も重要なものであります。3 年目に入りまして良く知られていると思います。日本財団の第3 次の研修生も既に選抜されております。その他に、ハミルトン・プログラム(SHIRLEY AMERASINGHE MEMORIALFELLOWSHIP PROGRAMME)というのもあります。これは第3 次国連海洋法会議の初代の委員長の名前を取った記念事業でありまして、21 年目に入り、23 人が既に選ばれ、このプログラムの恩恵を受けています。このフェローシップにつきましても、後の発表でもう一度触れたいと思います。キャパシティー・ビルディングのプログラムの中には、いろいろなトラスト・ファンド(信託基金)もあります。国連総会によって設立されたものです。二つ重要なものについてお話ししたいと思います。先ず、大陸棚関係だけですが、小委員会などへの参加を支援するための基金というのがあります。申請を作成するためにデスクトップなどで知識を高めるプロセスを支援するためのファンドです。さらにトラスト・ファンドの中には、国際海洋法裁判所に関するものがあります。これは紛争解決のための国を支援するものであります。カリブ海における境界画定に関する会議に参加する国々の支援とか、あるいは発展途上国への支援を行うことを目的としたものです。特にその中でも発展途上の小島嶼国とか、後発開発国とかが、非公式協議に参加するための支援を行うものです。また、ストラドリング・フィッシュ・ストック、広域回遊魚種資源などとも言われております。これに関しては、この後のキャパシティー・ビルディングの中でも触れていきたいと思いますが、これに関連する支援というものもあります。4番目の機能として、調整および連携の役割、リエゾンの役割があります。条約の中では、大陸棚限界委員会以外にも国際海洋法裁判所と国際海底機関という二つの組織がつくられており、これらがDOALOS とも密接な協力を行っております。この二つの機関との協定が国連との間で結ばれています。国際海底機関にも、DOALOS の代表が出席しておりますし、また海洋法裁判所に関しては、先ほども申し上げましたが、締約国会議で判事の選挙や予算などの決定に関して、係りを持っております。そして最後にご紹介する5番目の機能として情報の普及活動があります。国連海洋法条約の実施にかかわる最も重要な一つが情報の普及であります。充実したウェブサイトを持っており、大変広範な海洋法ライブラリーもあります。様々な関連する出版物、定期刊行物、さらには海洋法ブレティン、その他特別な刊行物、出版物などがあります。これらもまた総会において我々に委託されたものです。以上、広範なDOALOS の機能についてご紹介してまいりましたが、要点はカバーできたと思っております。この後、具体的にDOALOS の活動、特に大陸棚限界委員会との関-11-連とか、あるいはキャパシティー・ビルディングに関してのプレゼンテーションなども用意されておりますので、これらについては後の講演に委ねるといたしまして、私からは以上です。何かご質問があれば喜んでお答えしたいと思います。ありがとうございました。質疑応答(Q) 大変幅広い活動をしておられることに敬意を表したいと思います。これだけの活動をするために抱えておられる人員と予算規模について教えていただけますでしょうか。(A) ご質問ありがとうございます。この件については、この後のプレゼンテーションでの中でカバーしようと思っております。GIS などとの関連でもこのようなことが出てきますので、そこで触れたいと思います。-12-「大陸棚限界委員会への申請方法と手順-国連海事海洋法課はどのようにして大陸棚限界委員会の事務局として機能しているのか-」※ハリハラン・パクシ・ラジャン氏国連海事海洋法課上級法務官兼大陸棚限界委員会事務局次長二つ目のプレゼンテーションをさせていただきたいと思います。「大陸棚限界委員会への申請方法と手順」という話になります。まず冒頭に当たりまして、なぜこのような申請が必要であるのかということをお話ししたいと思います。条約の76 条をご覧いただきますと、特定の方程式というものが用意されています。これは大陸棚の縁辺部が200 海里を超えて延びている場合に、どう対応するかを示したものです。200 海里以内であれば申請の必要はありません。200 海里を超えている場合には、申請が必要であるということになります。この申請の要件というのは、200 海里を超えて大陸棚の外側の限界を設定することに関連しているからです。縁辺部とは、棚、勾配、そしてライズ部分を包含するということになります。一方、法的にはカットオフポイントという要素があります。それが法律的な大陸棚の部分ということになるわけであります。これは地理的な大陸棚の定義とは違うということです。76 条をご覧いただきますと方程式も入っております。そして大陸棚の外側の設定においてのカットオフポイントというものが設定されています。学術的に非常に複雑な要因も含まれております。そして、勾配の脚部からの測定が必要になってきます。また堆積岩の厚さも見ます。一つは、ある点における堆積岩の厚さが、当該点から大陸斜面の脚部までの最短距離の1%以上であるとの要件を満たした最も外側の点を用いて、規定に従って引いた線です。もう一つが大陸斜面の脚部から60 海里を超えない点を用いて、規定に従って引いた線であります。本日は、どういった申請方法と手順が必要かということについてお話したいと思います。最初に時間枠というものがあります。申請の提出期限は、条約の効力が発生してから10年以内ということになります。しかし、第1 期の委員会委員の選出に少し時間がかかってしまったということもありまして、ガイドラインの準備が遅れてしまいました。76 条に関するガイドライン、提出書類に関連する細かい規定が出来上がるまで少し時間がかかり、委員会によって採択されましたのは1999 年の5 月でした。締約国の会合において、1999 年5 月より前に条約を締結した国については、1999 年5月からこの効力が発生すると見なされました。すなわち、その日より前に批准した国におきましては、1999 年5 月から10 年目ということで2009 年5 月がその提出期限になるわけです。※ 本文は、同時通訳の日本語をテープ起ししたものに基づいている。-13-申請に対する要件でありますが、条約、ガイドラインに入っている内容だけではなく、手続き規則というものが委員会にはあります。手続き規則というのは、書式、使われる言語、コピーの部数などを規定しているものであります。申請に必要な詳細情報が含まれております。申請言語というのは国連の公用語であれば、どれでも構わないというものであります。英語以外の言語を用いての申請ということになりますと、事務局の方でそれを英語に翻訳するという手続きとなっております。そして必要な書式の要件でありますが、これもまたこの委員会の規則に則って決まってまいります。沿岸国による申請は、事務総長に対してのノートという形で提出されなければなりません。事務総長がこの条約の下、大陸棚限界委員会の事務局としての機能を果たしています。申請書の構成といたしましては、エグゼクティブ・サマリー、主文になります。その他、主文を補足する科学的技術的データが含まれます。そして、書式の要件に基づいて、提出区域において、現在、何か紛争があるかどうか、あるいは何らかの潜在的な紛争の種があるのかどうかを明記しなければなりません。また、委員会の委員から何らかの科学的技術的なアドバイスを受けたかどうか、受けた場合にはそれを明記する必要があります。申請内容といたしましては、エグゼクティブ・サマリーが22 部、そして主文、これが分析記述部分になるわけですが、これが8 部。それをサポートする科学的技術的なデータ、海図などそういったものが入りますが、これが2 部必要です。コピーはハードコピーでの提出という形になります。ハードコピーとともに電子コピーを提出することもできます。現在の手続き規則の場合、ハードコピーと電子コピーとの間で何らかの差異が存在する場合には、ハードコピーが優先されることになります。では事務局の役割は何でしょうか、このような申請を受理した時に何をするかということでありますが、先ず暫定的なチェックをいたします。必要なフォーマットになっているか、必要な部数が揃っているか、そして言語、その他の要件がきちんと守られているかどうかを確認いたします。次にハードコピー、そして電子コピー、両方が提出された場合には同等なものかどうかを確認します。差異がある場合には、沿岸諸国にその旨が通達されます。その後、その差を訂正することになります。そして沿岸国に対して、正式に申請が受理されたということのアクノリッジメントが行われます。また委員会の議長および委員にこの申請受理が伝えられます。更に、条約の締約国、国連の加盟国に対しまして申請書類の受理が伝達されます。そしてウェブサイトで公表されます。ウェブサイトで公表した後の次の段階というのが、委員会の会合のアジェンダ項目として載せられます。そして手続き規則の下、エグゼクティブ・サマリーが用意された後、少なくとも3 カ月という期間が経ってから委員会の会合に初めてこの議題が取り上げられるという流れになります。委員会の議題の一つとして、この申請内容について審議するということになります。それが先ほど申し上げたウェブサイトに載せてから少なくとも3 カ月経ってからということになります。-14-そして委員会で内容を確認する中で、委員会の委員長は、申請国に対してプレゼンテーションをするように要請します。提出国は委員会でプレゼンテーションができます。申請国の代表団は、76 条のどの定則を適用したのか、また申請を支援した委員会の委員の名前、何らかの紛争がある場合にはその内容を報告することになります。申請内容が公表されるということで、申請国以外の国からの口上書が提出されることもあります。それに対して締約国が何かコメントがある場合には、会議の場で意見を言うことができるということになります。このように提出国がプレゼンテーションをいたしましたら、委員会の方で提出した国とで質疑応答の場を持ちます。申請の内容であるとか、どのような定則や、どのような基準を採用したのかといったような一般的な質疑応答が最初になされます。委員の方が確認を求めるプロセスです。そしてその後、委員会のメンバーだけで会合を開き、小委員会を設置するかどうかを決めます。この条約では、委員会に対して小委員会を設置することは義務付けられてはおりません。必要に応じて設置してもいいということになっております。その場合は7 名からなる小委員会となります。特定の手続きに従って、小委員会が設置されるということになります。ロシアが最初に申請をしましたが、そのときの一番重要な手続き規則としては、申請を準備するときに、誰が支援をしたのか、アドバイスをしたのかということももちろんあるわけですが、委員会の中に同じ国の人がいたり、申請国と潜在的に紛争となるような国の出身の人がいたりするかもしれない、そういった場合には、小委員会のメンバーにはならないことになるわけです。また小委員会設置のプロセスには段階がありまして、21 人の中の7 人の出身国の地理的なバランスが取れているようにするということが考えられます。また申請の性質からして、科学的な専門性というバランスの取れた7 人のメンバーになるように配慮がなされます。このような手続きが、そのほかの国からの申請のときも同じような段階で考慮されました。今のところすべての申請に関しまして小委員会が設置されています。イギリス、フランス、スペイン、アイルランドの共同申請のときもそうでありました。現在もう1 件、ノルウェーからの申請がありまして、次の委員会が来年3 月に開かれますが、そのときにノルウェーの申請が検討されることになっています。小委員会が設置されますと、今度は小委員会の方で、まず予備的な審査というのが行われます。だいたい1 週間以内にこれは済むことになります。この段階で技術的な面として、従物性の検証というのがあります。そして76 条の中のどのような基準でこの線が設定されたのか、また提出国の代表と確認しなければいけないことがあるのかどうかということを洗い出し、更に何か紛争があるのかどうかということも確認いたします。1 週間にわたる最初の審査が行われますと次の段階に入ります。これは科学技術的な面の審査になります。ここで申請の内容が詳しく検討されます。その場合に、例えばラボの施設などが必要になります。DOALOS が事務局として、それを提供いたします。例えばGIS を使った詳しい検討などが行われますが、これについては次の発表で詳しく説明しま-15-す。文書であるとか、やりとりの書簡などは、すべて事務局を通して行われます。提出国の代表団は、この審査のとき、また小委員会のメンバーもですが、お互いにいろいろやりとりをしたいということがあるかもしれません。例えば確認をしたい、質問をしたいということがあるかもしれません。そういった場合の会合も事務局を通じてアレンジされます。すべてのやりとりは代表団の団長と、小委員会の委員長を通じて行うということになります。そしてすべて文書でやりとりということになります。小委員会の審議は記録に残りませんが、やりとりについて文書になったものは記録に残ります。質疑応答が起こることがあるでしょう。委員会の方からいろいろ聞き、代表団がそれに対してお答えをするということがあるでしょう。そういうことにつきましても、やりとりをした書簡は記録に残ります。このような小委員会による詳しい審査が行われた後、次の段階として勧告案づくりということになります。今のやり方、手続き規則の中では、例えば前回の委員会のときの例ですが、勧告のオーバービューというのが、まず提出国の代表団に対して提示されます。それに対してどのような反応をしたかということを配慮して、詳しい勧告案を作成し、委員会に提出します。委員会の場でその勧告案を検討し、採択或いは修正を行います。コンセンサスができない場合は、多数決で決められます。そして最終的な勧告ができまして、委員会から提出国に渡されるということになります。英語以外で申請書が提出された場合には、その言語に訳して勧告が提出国に渡されるということになります。これが最後の段階であります。このような流れで小委員会の審査というのが行われております。以上で概観をご紹介いたしました。ご質問がありましたらお受けしたいと思います。質疑応答(Q1)リクワイアメント・フォーマット・ナンバー・オブ・コピーズに関して質問をしたいと思います。ここでハードコピー、エレクトロニックコピーと書かれておりますが、今の規定でいきますと、おそらくハードコピーはマストで、エレクトロニックコピーというのは部分的に、ないしは一部出すということになると思いますが、現在いろいろな技術が発達していますし、またハードコピーは保管の面でも問題があるとも聞いております。すべてエレクトロニックコピーで提出するというようなことは可能になるのでしょうか。(A1) 確かに大量の文書が提出されるわけで保管は大変問題になっております。今の手続き規則ではハードコピーが義務と明確に書いてあります。そしてハード版と電子版で違う場合には、ハード版が優先ということになっております。今の状況では、このようにハードコピーがどうしても必要になっております。しかし、委員会が例えば手続き規則を変えるということもあり得ます。そのときは条件が変わると思います。ただ、今の段階では少なくともハードコピーが義務で、それを補う形で電子版を使ってもいいということになっているわけです。(Q2) 申請に関して、手続きがどういう意味かよく分かったのですが、申請が実際に行-16-われてから、最後の勧告に至るまで、どれぐらいの期間が必要になると考えたらよろしいのでしょうか。(A2) これはとても難問です。委員会が決めるということになりますが、通常、小委員会は、委員会の期間中だけではなく、会合と会合の間でも審査を行っています。例えば、オーストラリアのときもそうでしたし、ブラジルのときもそうでした。アイルランドのときも、そのような小委員会や小さな会合が行われました。また共同申請のときもそうでした。それだけではなく、専門のウェブサイトなどを設けることもあります。そのウエブを通じて、小委員会のメンバーがお互いにコミュニケーションをし合うわけです。これはもちろん小委員会のメンバーだけがアクセスできる場ということになります。こうすることによって会合と会合の間に、お互いに審査のための詳しい情報交換をすることができます。これによって全体を円滑にすることに役立っていると思います。こういった円滑にするためのいろいろなやり方を工夫するということが、今、行われております。ただ全体の枠組みと時間の枠ということで考えると、小委員会がだいたいどのくらいの期間がかかるかを決めるということになっています。そして小委員会で勧告が作られて、それが委員会の全体会合に出されて、そこで検討される。そこで勧告案をどれだけ時間をかけて見るかということも、そのとき、そのときで決められるということになります。このような形でしかお答えができません。(Q3) ブラジル、オーストラリアといった国々の申請が行われてから2 年以上経過しています。これから提出される国の申請についても、それより長い期間が必要であると考えてよいということでしょうか。(A3) 少なくとも2 年という考え方をする必要はないと思います。もう少し短時間のうちに勧告がでる可能性もあると思います。アイルランドの申請については、小委員会の勧告は、すでに委員会に報告されています。1 年ぐらいの間に報告されたと思います。オーストラリアの場合は、膨大な申請内容がありましたが、私が理解する限り、大半の審査が終わっていると聞いております。ただ、後どれぐらいで勧告が出てくるかというのはまだ分かりませんが。(Q4) 3 カ月という時間がございます。申請から審査に入るまでの時間です。提出して3 カ月たった時期がコミッションの会合の最中だったときには、その時点でプレゼンテーションが行われるのでしょうか。(A4) 現在の要件としては、公表された後、少なくとも3 カ月間が経って初めて審査が開始されるということになるわけです。委員会の議題の中に、この申請が入っている場合は、エグゼクティブ・サマリーが公表されてから、3 カ月が経っていることになります。その期間にまだなっていないという場合、つまりまだ3 カ月に経っていないで、既に委員会が始まっている場合には、次の委員会の議題に入れられるということになります。-17-(Q5) 既に、多くの申請が委員会の方に提出されています。76 条の大陸棚に関する条文の解釈において共通のさまざまな争点があります。こういった共通して見られる解釈の問題について、小委員会が一貫性のある形で対応しているのかどうかを教えていただけますでしょうか。(A5) 委員会が従う所定の手続き規則というものがあります。様々な申請に対してのいろいろなやりとりについてのものもあります。また提出国とのやりとりの中で、条約の規定に関する解釈の問題などがあります。しかしながら委員会としては、この条約の規定に関して特定の解釈をしているというわけではありません。76 条の規定に対する均一の解釈というものが別にあるわけではありません。(Q6) 2 点質問があります。先週、ノルウェーの申請が出されまして、今後多くの国が申請を出してくることが見込まれています。そのような状況に対応するために、委員会の審査の効率性というものが求められておりますが、DOALOS では効率性について検討が行われているのかどうかについてお聞きしたいのが1 点。2 点目ですが、来年6 月に大陸棚限界委員会の委員の選挙が行われます。これによって実際の審査にあたる小委員会のメンバーに変更があり得ると思いますが、そのような委員の変更は、小委員会の審査作業にどのような影響があり得るのかです。(A6) まず前半の質問、申請が増えてくるであろうということに対して、これは確かに認識されております。DOALOS は事務局として、いろいろな施設や便宜を提供して、例えば審査が同時に進めるようにしております。前回の8 月の委員会では、3 つの小委員会が同時に作業ができるようにいたしました。GIS のラボ、いろいろな施設なども提供されました。我々が事務局として提供したわけです。とにかくいずれの時点においても、現在は3 つの審査を同時に行うだけの施設があります。効率がどれだけ上がるかということについて、施設面から言いますと、DOALOS ではいろいろな対応をしており、今後もしていきたいと思います。委員会の方でも効率アップをどういうふうにしたらいいのかとか、審査の効率化をどうしたらいいのかなど、いろいろ検討いたしました。例えば、場を設けて、あるいはウェブサイトなどを使って、小委員会で審議を進めるようにするとか。セキュリティを確保した形でウェブサイトをどのように使ったらいいのか、7 人だけがインターアクションできるようにするためにはどうしたらいいかといったことも、委員会自体で検討されたわけです。そのようにいろいろな対応が検討されております。後半のご質問ですが、委員の選挙が来年6月の締約国会議で行われます。条約の定めに従いまして、締約国に対して委員の推薦をお願いしています。専門家を締約国に推薦してもらい、その後に締約国会議で選挙をして決めるということになります。委員の構成がもしかしたら変わるかもしれないし、小委員会のメンバーも変わるかもしれません。しかし、前の小委員会のメンバーも専門家として参加をすることはできます。ただし、小委員会のメンバーになるためには、再選されなければなりません。これは忘れ-18-てはいけないことであります。(Q7) 次の発表でお話しくださるということだったのですが、お話がなかったのでもう一度お尋ねしたいのですが、DOALOS の職員、委員の数、組織の大きさがどれぐらいかということと、日本人を含む国籍の分布がどうなっているかということと、予算がどの程度か。もう一つ伺いたいのですが、先ほど7 名の委員を選ばれるときに、紛争国の方が入らないように気を付けられているということですが、これは公正さを保つ意味で非常に重要だと思いますが、そのほかに公正さを保つことは何か考えておられるのかどうか、この2 点をお願いします。(A7) 最初のスタッフの数、予算というところに関してですが、次の講演で話をすることになっております。後半の小委員会のメンバーに関しての質問でありますが、条約の現在の要件というものを見ますと、申請に対して何らかの支援をした委員は小委員会のメンバーにはなりません。しかしながら委員会の委員として、さまざまな審議に係るということになります。最終的には、小委員会からの勧告が委員会に報告され、その際にも委員として係るわけです。最初の提出国の場合は、複数の国との間で紛争があったということで、それらの国の国籍を有する委員は小委員会のメンバーにはなることできませんでした。それ以外は、この条約の中で規定された内容はないと記憶しております。2 番目のブラジルからの申請以降は、21 名のうち7 名の地理的なバランスを確保する、そして科学的なバランスも確保するということがあります。特定の専門性が必要である場合に、小委員会のメンバーにその専門家がいないときには、委員会のメンバーをアドバイザーとして小委員会のミーティングに出席してもらうことができます。ロシア、ブラジル、オーストラリアも場合にはアドバイザーがおりました。ニュージーランド、アイルランドの申請、及び4カ国の共同申請の場合にはいなかったように思います。小委員会が、特別にアドバイザーとして招聘することができるようになっています。(Q8) 勧告までに至った申請の内容が、今後おそらく前例としてCLCS の中で蓄積されていくのではないかと思うのですが、このような理解でよろしいかお聞かせいただけたらと思います。(A8) これまでの勧告が、今後の検討において、一種の判例のようになって影響を及ぼすかということだと思うのですが、それは申請がどのような技術的な内容かによると思います。いずれにしても76 条の要件が、きちんと満たされているかどうかということが審査されますし、そして科学的技術的ガイドラインに則っているかどうかということが重要です。これは普遍的な要件ですが、それ以外ということになりますとケース・バイ・ケースであります。委員会は司法機関ではないわけでありますから、これまでの例が判例となって、それを踏襲しなければいけないということはもちろんありません。それぞれの技術的な要件とか-19-内容によって審査をされるということになります。手続きのやり方というのは、普遍的なもので一貫しておりますから、これは今後もずっと変わらないということになります。-20-「国連海事海洋法課の活動の技術的側面について~構造基盤、データベース、ホームページ、及び地理情報システム~」※ロバート・サンデフ氏国連海事海洋法課地理情報システム専門官皆さんこんにちは。このような機会をいただき誠に有難うございます。海洋政策研究財団、日本財団の皆様に改めてお礼申し上げます。最初に、国連海事海洋法課(DOALOS)の役割についてお話ししたいと思います。DOALOS の委託されている内容といたしましては、合理的かつ整合性のある形で国連海洋法条約が受け入れられ、これが適用されるべく貢献していくというものです。これからは簡単に条約と申し上げていきます。スライドに詳しく委託事項が書いてありますので詳しくは申し上げませんが、これは国連の総会で決定されたものでありまして、国連事務総長告知、ST/SGB/1997/8 の中に書かれております。この文書と条約および総会の決議というのが基礎となりまして、包括的な情報普及プログラムを我々の課において策定し、情報通信技術を使ってこういったプログラムを実施していくというわけであります。今日はこうしたプログラムの主要な要素、またどのようなインフラがあるのかについてご紹介をしていきます。一つここで申し上げますと、こういった情報普及活動の中で重要なのは何といってもスタッフです。この質問がすでに2 回出てまいりました。我々の課には27 人のスタッフがおります。給与に関しては通常予算から拠出されておりますが、スタッフの中に1人、日本財団から給与をいただいている者がおりまして、国連の用語では予算外のメンバー、特別予算扱いという形になっています。先ほど申しましたように、我々の課において広範な出版・刊行物関係の活動を展開しております。まず出版物の中で何らかの機関を経て定期的に刊行される定期刊行物と、我々が協力をしているさまざまな機関からの要請に基づいて出されるものと、議事関連ということで、すなわち我々の活動を円滑に進めるため、あるいはその活動の結果として生まれた報告などがあります。この出版物、特に不定期刊行物ですが、ここではいろいろな問題が扱われております。例えば条約の状況とか関連する協定、合意に関するものだけではなく、もっと実質的な内容を持ったものとして、例えば関連する分野の専門家の協力の下での緊急を要する課題とか、海洋環境の状況についての報告、あるいは各国における条約のさまざまな側面の実践についての要約などがあります。あるいは締約国が、条約の下での義務を果たす上で使えるようなトレーニングマニュアルとか、技術ガイドラインなど、その他、締約国によって要請されるテーマを扱ったものもあります。これらの定期刊行物および不定期刊行物は、ニューヨークの代表部において無料で利用できますし、関心のある人には販売もしております。※ 本文は、同時通訳の日本語をテープ起ししたものに基づいている。-21-次に、パーラメンタリードキュメンテーションと呼ばれている三つ目のものでありますが、これは事務総長から国連総会に対する報告であります。またそれ以外の国連の年間の決議、あるいはその他の機関からの報告など、これはウェブサイトでアクセスすることができます。後でご紹介しますが、こういったものも含めて、すべての出版物に関しては、ほかのライブラリー、例えば国連の中央のライブラリーにはないような海洋法関連ライブラリーというのがあります。これを我々の課で維持しています。この後、スライドを使いまして、出版物の例をご紹介していきます。それぞれのカテゴリーにかかわるものですが、定期刊行物の中で一番人気があるのが海洋法情報サーキュラーというもので、これがどういうものかといいますと、各国におけるさまざまな報告刊行義務に関連して出されているものです。また、海洋法ブレティンですが、これには地図とともに関連する国内法などのテキストが掲載されています。一方、不定期刊行物ですが、これは締約国の要請に基づいて、我々がサービスを提供しているパネルを通じて発行されたり、あるいは総会の決議に基づいて刊行されたりしております。何度も出てまいりますが、出版物の一つとしてトレーニングマニュアルがあります。これはどういうものかといいますと、いわゆる200 海里を超える大陸棚の外側の限界の画定に関するものでありまして、国連事務局の出版物の中でも、ここまで詳細にわたる技術的な分析を行ったものはほかにありません。これは、大陸棚限界委員会のブレッケ、カレラ両博士、その他この委員会の現メンバーや前メンバーの協力の下に出されたもので、大変に広範にわたるものとなっています。後でジャレスから、その内容について詳しく申し上げます。その他、出版しているものとして、例えば二つトレーニングマニュアルがあります。一つは海洋保護区に関するもの、もう一つは生態系のアプローチに関するものです。漁業に関連した出版物、あるいはその他、我々がサービスを提供しております関係各部、パネルなどの要請に基づいて出版されるものがあります。また私たちは世界中の技術革新の波に乗って、インターネットの導入とともに、我々の課でもウェブサイトを開設しました。このウェブサイトは大変貴重な情報源となっています。皆様の中にも、ウェブサイトにアクセスをされた方がいらっしゃると思いますが、簡単にこの中を見ていきましょう。今、ご覧いただいておりますのは、インターネットでアクセスしているライブの画面です。主要な情報は、グループ分けされております。条約および関連する協定というのが一番左側にあります。タイトルのところをクリックしますと、その内容が見られるようになっています。そして総会における海洋と海洋法、このタイトルの下の関連する文書としては、当課が作成したもの、国連総会に提出されたもの、および国連総会がつくった機関で、我々がサービスを提供しているところなどがかかわっているものなどです。次に、この条約によってつくられた組織ということで、例えば大陸棚限界委員会とか、あるいは海洋法裁判所といったような組織などへのリンクが張ってあります。-22-特に大陸棚限界委員会とのリンクが皆さんには一番感心があるかと思いますが、多くの情報がここに掲載されております。例えば委員会のメンバーは誰か、どういった文書が今まで作成されたか、そしてどのように使われているのかとか、あるいは76 条に関連した活動のさまざまな側面に関するものです。ご質問があれば、それについては後でお答えしたいと思います。またキャパシティー・ビルディングのプレゼンテーションの中でも、かなりこのテーマについての話が出てくるかと思います。次の欄ですが、これは紛争解決というものでありまして、ここではどういった手続きを取ることができるか、例えば国際司法裁判所とか、あるいは仲裁者のリスト、専門家のリストなど活用できるものが記載されています。最後は当部の機能、そして活動です。ここではキャパシティー・ビルディング・ファンドのリンクもあります。フェローシップに関するもの、トレーニングコース、技術協力、トラスト・ファンド、国連および日本財団との間の協力、当部が提供する技術支援があります。国連出版物として我々が出しているものがあります。ここをクリックしますと、販売部の方にアクセスすることができます。いろいろな機関の間の協力や調整などについてのウェブサイトはまだ開発中です。もう一つこのウェブサイトで興味深いものとして、条約データベースというのがあります。左下のところをクリックしますと、リンク先に、例えば国内法、寄託状況、海図、世界の海域の外側の限界に関するものがあります。私たちは、様々な国からの協力を得ていろいろな情報収集を行っています。対象となっているのは国内法で、世界における外側の限界の状況についてもっと詳しく知りたいといったような研究者がよく利用しています。ただ我々の現在の課の構成から考えまして、あまりこういった部分には人手を割けないということで、必ずしも常に内容を更新しているわけではありません。こういったフォーラムにおいては、私たちはよく皆さんにお願いしているのですが、ウェブサイトをアクセスして、それぞれのお国の国内法の状況についての記述が正しいかどうかチェックをしてください。そしてもし何か情報が古いというような場合には、ぜひ我々に対してそれをお知らせいただきたいと考えています。つまりこのウェブサイトというのは、言ってみれば締約国とのいわば窓口に使っているというもので、これによって我々のサービスを改善しようとしているのです。もう一つこのウェブサイトは、いくつか改善も重ねています。実際、かなり再デザインがなされておりまして、このウェブサイトを国際的に認識されているようなウェブサイトの基準に合わせたものにしています。例えばW3C の基準などにも合わせるようにしております。ともあれ忘れてはならないのは、3 つの要素というのが、あらゆるウェブサイトにおいては満足しなければいけない要件だということです。有効な情報源であるためには、ウェブサイトはまずシンプルでなければいけない。分かりやすく、そして扱いやすいものでなければいけない。実効性、効果ということで、意図された、あるいは予測された結果を生むものでなければいけない。例えば数回クリックすれば欲しい情報が手に入るものでなければいけないし、機能性と-23-いうことに関しては、統一的なメッセージをユーザーに対して提供できるものでなければいけないというものです。もう一つここで申し上げておきたい点があります。当課におきましては、その他のシステムも活用しています。これは内部で使われているもので、例えばデジタルアーカイブといったようなもので、外部からはアクセスできないものですが、4 年ぐらいになります。すなわち当課に届く様々なところからのコミュニケーション、デジタルや、あるいは紙の形で来たものをすべてデジタル的に保存しているというものです。またすべてのコミュニケーション、すなわち我々のところに入ってきたメッセージに対して答えたものなどに関しても、これをデジタル化して保存しています。例えばこういったコミュニケーションに関しての情報を検索するのにとても時間がかかる。それでダウンタイムがかかってしまう、それが改善できたということと、今までは紙でやりとりしていたものをデジタル化したことにより、保存スペースも節約することができました。このシステムを導入したことで、こういった情報技術の利用が大きく改善したということであります。また、当課におきましては、大陸棚限界委員会のニーズに対応するためにいろいろな配慮をしています。IT 技術を使うことにより対応しております。10 年ぐらい前に私が専門官として参加したのは、地理的なデータをシステムとして使っていく必要性が出てきたからです。地理情報システムでは、コンピューター、ソフト、ハード、データ、そして人材がいて、それを操作・分析し、空間的な形で表示するということが行われます。そうした側面からも、委員会は複数の人たちによってサポートされています。専門家が2 名おり、1人は法務担当、もう1人は実務的なことをやる人です。委員会に関係する様々な文書について法務担当の専門家がかかわり、地理的な情報の管理はもう1人の専門家が協力するという体制になっています。DOALOS はハードコピー、電子コピーの両方を受理しています。先ほども話が出ましたが、この電子的なコピーはどういうものか、まだはっきりしていない部分もあるかもしれません。過去において、ある国がGIS によって構築した情報を提出してきました。そうすると、地理的な大陸棚の延長線から該当するドキュメンテーションへのリンクというものが図られます。このようなストラクチャーが委員会の分析を早めることにつながるのであれば、何かを探したり、必要な情報が入っているかを探したりするためのダウンタイムを少なくすることができます。どこを探せば正しいのか確認できるということです。これは一つ大きな改善であると思います。委員会においても、こういったシステムを使うことにより、正確なリンクが図れるということで、大きなメリットがあると思います。提出国の方でそれを用意しないということであれば、私どもの課において提出されたものを電子的な形で、より迅速に対応できるようにしたいと思っています。-24-現在のDOALOS におきましては、数年間にわたる計画の下、今ある状態が進められています。委員会に対して
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