報告書・出版物
2017年度島と海のネットの推進に関する調査研究報告書2018年3月公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所はじめに海洋政策研究所では、人類と海洋の共生の理念のもと、国連海洋法条約およびアジェンダ21、The Future We Want、持続可能な開発のための2030アジェンダ等に代表される新たな海洋秩序の枠組みの中で、国際社会が持続可能な発展を実現するため、総合的・統合的な観点から海洋および沿岸域にかかわる諸問題を調査分析し、広く社会に提言することを目的とした活動を展開しています。 このような活動の中で、今日、島嶼国では、地域的な環境問題や地球規模の気候変化・変動により、島と周辺海域の持続可能な開発をめぐる様々な問題に直面していることが明らかになってきました。島嶼国のみで、これらの様々な問題に取り組んでいくのはなかなか困難であり、国際社会の協力の必要性が指摘されています。 そこで、当財団ではボートレースの交付金による日本財団の支援を受け、島と周辺海域の持続可能な開発の推進について、太平洋島嶼国や国際社会と連携しつつ、その解決を目的として 2009年度から 2012年度まで「島と周辺海域の保全・管理に関する調査研究」を、2013年度から 2015年まで「島と周辺海域の持続可能な開発の推進に関する調査研究」を、2016年度からは、「島と海のネット推進に関する調査研究」を実施しました。これらの事業では、オーストラリア国立海洋資源安全保障センターはじめ、島嶼関係者、研究者とともに、国際セミナーを開催し、国際共同政策提言「島と周辺海域のより良い保全・管理にむけて」をとりまとめ、国連小島嶼開発途上国会議や、国連持続可能な開発目標(SDGs)事務局に送付するなどし、普及啓発に努めてきました。また、国際協働ネットワーク「島と海のネット(IOネット)」の設立を構想し、2014年 9月の第3回小島嶼開発途上国国際会議(SIDS2014)のサイドイベントにおいて、参加者全員の賛意を得て IOネットが設立され、2015年 5月、2016年 12月にそれぞれ第 1回、第 2回総会を開催し、ネットワークを強化するとともに、島嶼における喫緊の課題の把握、共有に努めてきました。 本年度は、海洋資源の保全と利用に関する調査、沿岸生態系保全に関する調査を進め、島嶼国におけるローカル、ナショナル、リージョナル、グローバルな問題把握に努めるとともに、海洋・沿岸域の資源管理や生態系保全に向けた方向性について議論し、研究を深化させることができました。今後、こうした知見・ネットワークを活用し、島嶼地域におけるブルーエコノミーの確立など、新たな研究分野への展開を図りたいと考えております。 本事業の実施にあたりましてご指導・情報提供いただいた研究者、有識者の皆様、現地調査などでご協力いただいた各地の政府、自治体を始めとする関係者の方々、本事業にご支援を頂きました日本財団、その他多くの協力者の皆様に厚く御礼申し上げます。2018年3月 笹川平和財団 海洋政策研究所長 角 南 篤 島と海のネットの推進に関する調査研究研究体制(2018年 3月現在)角南 篤海洋政策研究所 所長・常務理事寺島 紘士海洋政策研究所 参与吉田 哲朗海洋政策研究所 副所長古川 恵太海洋政策研究所 海洋研究調査部 部長小林 正典〇海洋政策研究所 海洋研究調査部 主任研究員角田 智彦 同上前川 美湖同上村上 悠平〇海洋政策研究所 海洋研究調査部 研究員小森 雄太同上塩入 同同上高原 聡子 同上秋山 美奈子 海洋政策研究所 海洋事業企画部 課員※氏名の後の〇印は、プロジェクトリーダー、その他の研究員については、50音順。目 次はじめに 島と海のネット推進事業調査研究体制 第1章 事業の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11.背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12.研究体制・スケジュール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23.研究内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2第2章 島と海のネット推進に関する調査研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31.島嶼における海洋資源の保全と利用に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・ 3(1)キリバス共和国での「沿岸漁業サミット」への参加 ・・・・・・・・・・ 3(2)島嶼での資源管理に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6(3)海洋フォーラム「海洋/沿岸域の資源管理」の実施 ・・・・・・・・・・ 9(4)その他の調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 2.沿岸生態系保全に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 (1)海洋フォーラム「アジア・太平洋沿岸のサンゴ礁」の実施 ・・・・ 18 (2)その他の調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 第3章 島と周辺海域の研究経過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 1.研究経過概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 2.沖ノ鳥島に関する調査研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 3.島と周辺海域の保全・管理に関する調査研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 4.島と海のネット ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 第4章 総括と今後の展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 1.総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 2.展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 第1章 事業の概要1背景と目的島は、海洋資源の開発・利用、海洋環境・生物多様性の保全などの拠点としてかけがえのない存在である。島嶼国は、国連海洋法条約等により形成された体制の下、天然資源を開発、利用する権利を有すると同時に、生物資源を含む海洋環境の保護・保全の責務を有している。特に、太平洋においては多くの島嶼国が存在し、広大な排他的経済水域がこれらに帰属しているため、海洋の管理という観点から太平洋島嶼国は極めて重要な位置を占めていると言える。しかしながら、今日、島は、地域的な環境問題や地球規模の気候変化・気候変動により、島の保全・管理をめぐる様々な問題に直面しており、今後海面上昇が進行した場合には島の水没も懸念される。これらの様々な課題に対し、島嶼国のみで十分に対応していくのは困難であり、国際社会の協力が必要である。また、島と周辺海域に関する様々な問題は、島嶼国だけでなく我が国にとっても重要な問題である。我が国には多くの島があり、離島において島嶼国と同様の問題を抱えていることから、島嶼国と密接に協力して諸課題の解決に取り組むことが期待される。本研究事業の目的は、そうした島嶼地域における諸課題の把握・特定、問題解決に向けたネットワークづくり、国内外の世論の喚起である。このような視点から、当財団は、2009年度から 2011年度にかけて「島と周辺海域の保全・管理に関する調査研究」を実施し、「島の保全・管理」、「島の周辺海域の管理」及び「気候変化・気候変動への対応」の 3つの視点から政策提言をとりまとめた。更に、2012年 6月にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」(リオ+ 20)での今後 10年の持続可能な開発の行動計画の策定に先立ち、国連経済社会理事会の特別協議資格を有する NGOとして、2012年 10月リオ+20事務局に対して政策提言を提出するなど国際社会に向けて発信を行うとともに、2012年春には我が国の政府等の関係者や国民一般に向け、政策提言を発信した。その後、リオ+ 20においては、島嶼国における持続可能な開発に向けた国際社会の取り組みの方向性がその成果文書に盛り込まれた。また、我が国では、2013年 4月 26日に閣議決定された新たな海洋基本計画において、海洋に関する国際協力の一環として、「太平洋島嶼国等との間で、島の保全・管理、周辺海域の管理、漁業資源の管理、気候変動への対応など、我が国の島と共通の問題の解決に向けて連携・協力を推進する」ことが盛り込まれた。第 2期となる 2013年度から 2015年度にかけて「島と周辺海域の持続可能な開発の推進に関する調査研究」を実施し、第 1期の成果に基づき国際セミナーの開催により国際共同政策提言「島と周辺海域のより良い保全・管理にむけて」を精査、強化し、国連小島嶼開発途上国会議や、2015年のポスト 2015アジェンダとして採択された「2030アジェンダ」の持続可能な開発目標(SDGs)の事務局に送付するなどして、さらなる普及啓発に努めた。また国際協働ネットワーク「島と海のネット(IOネット)」の設立を構想し、2014年 9月の第 3回小島嶼開発途上国国際会議( SIDS2014)のサイドイベントにおいて提案、設立され、第 1回の総会を 2015年 5月に東京にて開催した。第 3期となる 2016年度からは、「島と海のネット推進に関する調査研究」として、引き続き太平洋島嶼国やその周辺の国々とのネットワークを強化するために、第 2回の総会を 2016年 12月に東京にて開催するとともに、島と周辺海域の持続可能な開発に向けた政策の一層の具体化を図るとともに、2016年 7月の第 8回東アジア海パートナーシップ会合東アジア海洋会議(フィリピン・ボホール)、2016年 11月の気候変動枠組み条約の締約国会議(COP22モロッコ・マラケシュ)等で普及啓発に努めてきた。2研究体制・スケジュール本調査研究においては、島と周辺海域の保全・管理に関わる科学的知見、技術、経済社会等の実態を踏まえ、総合的な見地から機動的な検討を行うこととし、当財団の研究員、内外の島嶼関係者、有識者、行政関係者などと、現地調査、情報交換、会議や研究会などを通して情報共有、意見交換を進めるという体制で調査研究を実施した。具体の参加者・体制については、個別の報告の中に記載した。表 1-1 2017年度「島と海のネットの推進に関する調査研究」の主なスケジュール日時 内容 2017年 3月 27日~4月 7日 2017年 6月 5日~9日 2017年 7月 10日~21日 2017年 9月 12日~20日 2017年 11月 27日 2018年 2月 18日~26日 2018年 3月 16日 第 3回 BBNJ準備委員会(ニューヨーク)国連海洋会議(ニューヨーク)第 4回 BBNJ準備委員会(ニューヨーク)沿岸漁業サミット参加(キリバス)海洋フォーラム「アジア・太平洋沿岸のサンゴ礁」開催資源管理に関する現地調査(パラオ他)海洋フォーラム「海洋/沿岸域の資源管理」開催 3.研究内容本年度は、昨年度までに確立された研究者、島嶼関係者とのネットワークを活用して、国内外での現地調査や情報収集を通して海洋資源の保全と利用に関する調査、沿岸生態系保全に関する調査を実施するともに、2017年 6月の国連海洋会議(ニューヨーク国連本部)、 2017年 4月、7月の国家管轄権外区域の生物多様性の保全及び持続可能な利用( BBNJ)準備委員会(ニューヨーク国連本部)に参加するなど、情報収集、成果発表に努めた。第 2章 島と海のネット推進に関する調査研究本年度の調査研究の柱は、海洋資源の保全と利用に関する調査、沿岸生態系保全に関する調査であり、昨年度までに確立された研究者、島嶼関係者とのネットワークを活用して、国内外での現地調査や情報収集を行うとともに、海洋フォーラム等の開催を通して普及啓発に努めた。1.島嶼における海洋資源の保全と利用に関する調査生物・遺伝資源を含む海洋資源は、再生産が可能であること、採取量(漁獲量)が資源量だけではなく、努力量や需要といった社会経済的な要因により左右されることなどから、鉱物資源とは一線を画した管理が必要である。特に、島嶼国においては、国連海洋法条約により、基線から 200海里(370.4km)という広大な排他的経済水域における主権的権利が保障されることとなり、その保全と利用の管理体制の構築と実効は、国際社会に対する責務としても課せられている。本年度は、キリバス、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国、パラオ、ハワイなどで現地調査を行うとともに、島嶼地域の有識者・関係者を招いて海洋/沿岸域の資源管理に関する海洋フォーラムを開催した。(1)キリバス共和国での「沿岸漁業サミット」への参加 1. 調査日時: 2017年 9月 14日-18日2. 訪問先:キリバス共和国(クリスマス島)3. 参加会議:「沿岸漁業サミット( Coastal Fisheries Summit)」4. 参加機関:キリバス漁業省、 SPC、FAO、クリスマス島評議会、タブアエラン島評議会、テライナ島評議会5. 調査目的:①大洋州諸国が直面する漁業に関する課題と解決策に関する議論から当研究所の目指すブルーエコノミーの確立に資する知見を得ること、②当研究所の推進する「島と海のネット」の考え方および具体的なプロジェクトを参加者に紹介し、漁業の分野において新たなプロジェクトの立ち上げを目指し、多様な関係者とネットワーク構築を行うこと。6. 調査結果:〇9月 14日(木)クリスマス島評議会、タブアエラン島評議会、およびテライナ島評議会の代表から、それぞれの島における漁業の現状と課題に関する報告があった。1.クリスマス島評議会 観賞用魚、ロブスター、および Reef Fish(環礁内生息魚種)が主たる収入源である。 ロブスターを漁獲するための漁具が高価であり、島には不足している。魚(te ikari)の移動が船によって妨げられるなどの状況のために、主要な船の停留所を移設するなどの取組みを行っている。 ハワイなどの主要な市場に出荷するための輸送手段に関する援助を特に必要としている。2.タブアエラン島評議会・ te ikariや ten nokunokuなど、ソトイワシ科に属する小型魚種などが主要な収入源であり、観光業にも経済が依存している。・ ten nokunoku保護海域を設定し、産卵期などには禁漁などの措置をとっている。・ 島内には発達した市場が存在しない。・ ten nokunokuが貴重な魚種であることについて、島内のコミュニティが認識できるよう周知していくことが重要である。3.テライナ島評議会・ ケージングなどの基本的な技術や包装・加工などについて訓練が必要・ 漁業規制のための規則や法律について、さらなる研究が必要〇9月 15日(金)キリバスにおける Spiny Rock Lobster(南洋イセエビ)と冷凍魚、観賞用魚および海藻等の生産や加工、飼育の現状や課題について報告があった。 1. Spiny Rock Lobsterと冷凍魚・ 週 1便のフライトには輸送のためのスペースが余りないため、それが生産に対する制約要因となっている。・スキューバダイビングと漁業が同じサイトで行われているため、管理計画の中で両者のデマケーションを行うべきである。2.観賞用魚・観賞用の魚は主としてホノルルの買い手に向けて輸出されている。その他、アメリカおよび香港にも輸出されている。他方で、輸送のためのフライトにおけるスペースが限られているという事情が、輸出を拡大することへの制約要因となっている。・他の漁業者と比べ、観賞用魚のオペレーターにとってボートの使用料が年々高くなってきているという問題がある。・しばしば起きるフライトのキャンセルが、観賞用魚のオペレーターにとって大きな経済損失を生じさせている。3.海藻・ 近年導入された新たな種が、これまでの種の育成に悪影響を与えている。・海藻の価格が現地において世界の市場価格よりも高いため、バイヤーを獲得することが困難である。・クリスマス島には海藻を保存しておくスペースが限られているため、海外輸出のための安定した供給の確保が困難。・昨年設立されたタスク・フォースが、問題の検討を行い、海藻の育成、購入、および輸出を再活性化するための方策について勧告を行うこととなっている。〇9月 18日(月)ケージ・ファーミングやスポーツ /ゲーム・フィッシング産業の現状や課題、太平洋共同体(SPC)、国連食糧農業機関(FAO)の取組みについて紹介があったのち、全体的なまとめが行われた。 1.ケージ・ファーミング(生け簀養殖)・クリスマス島内の池でのロブスターの飼育の試みが進められており、他の島への導入も検討されている。・密漁者の侵入をいかに防ぐか、飼育のための道具のコスト高にいかに対応するかが課題。2.スポーツ/ゲーム・フィッシング・北部では、夏季の観光客がほとんどいない。しかし近年では、冬季と同じ程度のオーストラリアからの観光客が夏季にもいる。・観光客が多く訪れるにつれて、サンゴの死滅が進み、特定の魚種にも影響を与えている。3.太平洋共同体(SPC)の取組・沖合での漁業に関してはマグロの科学調査を、沿岸漁業資源および養殖に関しては加工場の整備などを支援している。また、ツアーガイドのための研修、船のエンジンの補修、安全性の向上のためのワークショップの開催などの活動を行っている。4.国連食糧農業機関(FAO)の取組み・食物の安全や栄養、農業や気候変動、旱魃や食の安全保障といったテーマに焦点を当てている。漁業に関しては、漁業に関する統計の整備や IUU(違法、無規制、無報告)漁業、寄港国措置などに関する国際約束の策定や実施の監督などを行っている。5.まとめそれぞれの参加者が所属する機関が、それぞれの強みを活かし、本サミットで明らかにされた課題にどのように取組むことができるかを議論した。当方からは、IUU漁業対策や一般的な漁業規則の策定、資源保全のための海洋保護区( MPA)の設定にかかる研究に何らかの貢献をすることができるだろうと述べ、今後具体的にどのような協協力ができるるかは持ち帰帰り検討したたいと表表明した。図図 2-1 キリババス共和国ででの「沿岸漁漁業サミットト」のまとめめの様子本サミットの参加者は、実際にキリバス共共和国の各島島において実実際に漁業にに従事する人がが多数を占め、政府に対すする要求など、忌憚のなない意見交換換が積極的にに行われていたた。特に、海外のマーケットに輸出すする際の輸送送手段や保存存方法の限界界などが主要なな問題と認識されているようであったた。他方で、当財団も含含め、国際社社会に対してはは、とにかく何か支援してほしいといいう要求が先先行し、具体体的なプランンを持ち合わせせているか疑問と感じられれる点もあっったので、現現地の関係者者が主体的にに開発計画を策策定するインンセンティブブが必要でああるように感感じた。当財財団の目指すすブルー・エコノミーの実現のためにも、当地域ににおける漁業業の持続可能能な管理やそそこからの安定定的な収入の確保は重要な課題であるるため、引きき続き現地のの取組みを追追っていく必要要を感じている。(2))島嶼での資資源管理に関関する調査 1. 調査日時時:2018年 22月 18-26日日2. 訪問先:ミクロネシア連邦、マーーシャル諸島島共和国、パパラオ共和国国、米国ハワワイ州3. 調査目的的:海洋・沿岸保全と持続的利用にに向けた施策策および研究究についてのの現況や課題題の把握を目的的とし、政府関係者や研究究者等と意見見交換や関連連現場の視察察等を行ったた。4. 調査結果:〇パラオ政府レメンゲサウ・パラオ大統領を表敬し、意見交換を行った。角南所長から、海洋ガバナンスを科学的知識を活用して推進していく重要性を指摘し、IPCCの海洋版の必要性をこの前の週にノルウェー首相との意見交換でも議論してきており、海洋ガバナンスの実効性向上に向けた国際協力が重要であると考えているとの話があった。その後、閣僚(フォスティナ・レウア・マルッグ国務大臣、エルブシェル・サダング財務大臣、ウミイチ・センゲバウ天然資源・環境・観光大臣、チャールズ・オビチャングインフラ・産業・商業大臣)、州政府代表、酋長他政府関係者等、約 15名程度が参加し、レメンゲサウ大統領司会の下で、昼食を交えながら懇談会が行われたギラタオチ・ニック・グワルパラオ国家海洋保護局長との懇談の中では、海洋保護区行政と併せて、これまでかかわってきた再生可能なエネルギーにも関わる予定であること、日本の環境省との協力で実施している JCM(二国間排出抑制メカニズム)の下での太陽光発電の他、廃棄物由来のバオエタノール利用なども所管していることなどが説明された。また、海洋保護区の管理については、監視と履行確保が重要で、日本財団の巡視船他、関連施設の供与は大変ありがたく、こうした監視に加え、航空監視、寄港地措置協定の実施などが重要と考え効果的実施に向け取り組んでいるとの見解であった。〇在パラオ日本大使館他レメンゲサウ大統領の下では海洋環境・水産資源の保全が優先課題として取り組まれている一方で、出国税の引き上げや、直行便の取りやめ、2020年の外国漁船による入漁料の支払いが終了など財政的な基盤の構築が鍵となる(日本大使館)。海洋監視分野での研修生の日本への派遣の他、シャコガイの養殖場整備、コロール州リサイクルセンター支援などが行われており、コロール州のリサイクルセンターは他国からも注目されている。ペットボトルや缶にデポジット料金が上乗せされ、回収費用に回されており、機能しているが、漂着ごみや廃棄自動車等の問題は課題となっている(JICA)。ジェリフィッシュレークは追加50ドルの入場料収入がかけられていたが、 2016年のエルニーニョによりクラゲを見ることができなくなり、ピーク時には 1日 700人の入場があったものが、現在は研究者が時々訪れる程度になってしまい、大きな減収となっている(コロール州・レンジャー)。クラゲ減少の理由は、まだ十分に解明されておらず、今後も調査が必要な分野である(パラオサンゴ礁研究センター、サンゴ礁研究財団、パラオ自然保護協会等)。ダダルカナル島の日本戦時中に採掘され放棄されているボーキサイト採掘跡地の植生が回復しない状況が続いており、表層度である赤土が海水に流出し、サンゴを多いサンゴに被害を与えるということがあり、沿岸域総合管理の観点からも陸域の植生再生と沿岸環境保全を一体的に取り組むことは有効と考えられる(パラオ自然保護協会)。コロール州リサイクルセンターでは、廃棄物の適正管理とリサイクルの推進をバイオエタノールのエネルギー利用、ガラス工芸品の作成、障がい者雇用を実践している他、今後は有機肥料を利用した農業支援などに繋げたいとの構想を有しており、太平洋島嶼国の循環型社会づくりのモデルとして発展させたいと希望しており、幅広い協力関係を模索したい(コロール州リサイクルセンター)。〇ハワイホノルルにおいて、東西センター、ハワイ大学太平洋諸島研究センター、ネイチャーコンサーバンシー、日本総領事館関係者にヒアリングを行った。結果につき特記すべき内容は下記の通り。ハワイ大学太平洋諸島研究センターはハワイ大学の学際的研究機関として機能しており、専属教員が 10名、この他、他学部に所属する連携教員が 48名所属し、学士、修士課程の学生の指導を行っている。タヒチの海洋保護区や沿岸域保全の研究も行われており、ツバルを例にとれば、中国との 2国間連携を強化し、中国語教育を行うなど地政学は大きく変わってきている。アメリカは 2023年のコンパクト(自由連合盟約)の下での財政支援は何らかの形で継続されることを期待しているが、太平洋島嶼国との連携に向け、日米連携は重要と考えている(ハワイ大学)。東西センターでは、太平洋島嶼国のリーダー育成の他、海底資源管理に関連する海洋環境保全、海洋の科学物資汚染防止、気候変動適応、安全保障などの分野で研究活動を進められている。SDGsや地球規模での海洋ガバナンス、プラスチックゴミ、水産資源管理などについては国際連携を強化したいと考えている(東西センター)。ネイチャー・コンサーバンシー( TNC)では、ハワイにおける海洋・沿岸環境の保全の他、ミクロネシアやメラネシアなどの小島嶼国との協力事業も行っている。パラオはそうした地域協力の中心として考え得おり、TNCのパラオ事務所は重要な拠点となっている。海洋・沿岸環境の保全だけでなく、 IUUやプラスチックゴミ、 MPAの設定や管理、森林や陸域生態系の保全を含めた沿岸域総合管理など課題は幅広く、関係機関との連携を強化できればと考えている(TNC)。〇ミクロネシア連邦(FSM)およびマーシャル諸島共和国(RMI)両国において、海洋・沿岸環境保全やブルーエコノミー推進に向けた取り組みについての情報収集を目的に関係者との懇談・現地視察を行った。 FSMでは、マリオン・ヘンリー資源開発大臣、バレンティン・マーティン資源開発省次官、アリサ・タケシ同省次官補、バネッサ・フレッド環境、気候変動、危機管理省沿岸域管理プロジェクト(Ridge to Reef Project)マネージャー等と面談を行った。RMIではモリアナ・フィリップ RMI環境保護庁(EPA)局長、ドロレス・デブルム・カチル次長等と面談を行ったほか、ローラ地域で開催された会合でマジュロ市議会議員他関係者と懇談を行い、沿岸域管理や漁業資源管理の課題について情報収集、意見交換を行った今回の現地調査を踏まえ、今後検討が有用と考えられる点としては、以下の通り。我々の海洋( Our Ocean)2020のパラオ開催に向けた国際連携強化、気候変動の影響と適用についての現地団体との連携、地域社会の取り組みへの支援、島嶼・沿岸・海域環境や資源管理の効果的実施に向けた研究などが挙げられる。また、区域型管理ツールを含む海洋保護区政策の実施・運用などについて意見交換を行うことは、今後の国家管轄権外区域の海洋生物多様性保全と持続可能な利用に向けた政府間会合などの議論の進展に重要と考えられる。 FSMや RMIについては、広大な EEZを有する一方、日本の漁船の撤退の傾向が顕著で、持続可能な漁業と水産資源管理をどのように両立させていくのかという政策課題については注視が必要である。海洋環境の変化については、富栄養化や繁殖性藻類やオニヒトデなどの被害が報告されており、大気の影響による海水温上昇や酸性化などの要因の動きをモニタリングはあまり実施されていないが、陸域に由来する汚染物質や汚水の流入などのモニタリングの流入防止・対策措置は重要である。人材育成は重要で、特に単科大学しか存在しない島嶼国において、国内で学び働けるという人の動きが可能となるような体制整備を検討することは意義があると考えられた。(3)海洋フォーラム「海洋/沿岸域の資源管理」の実施 1. 開催日時・場所: 2018年 3月 16日 15:00-18:30笹川平和財団国際会議場2. 開催目的: 2017年には、海洋環境保全や気候変動対策を議論した国連海洋会議や気候変動会議において太平洋島嶼国の積極的な姿勢が注目された。国連持続可能な開発目標(SDG)14.7では、太平洋島嶼国の経済的便益向上が謳われ、海洋・沿岸資源の保全と持続的利用を通じた経済振興であるブルーエコノミーの推進は、SDG14の実現を図る上で重要視されている。2018年 5月の第 8回太平洋・島サミット( PALM8、福島県いわき市)では、太平洋島嶼国との国際協力の拡充に向け、日本が牽引的役割を果たすことが期待されている。こうした背景に鑑み、太平洋島嶼国の海洋・沿岸環境や資源管理について研究や実務を行う内外の有識者を交え、課題や展望、今後の国際協力の方向性などについてご議論頂く海洋フォーラムを公開で開催することとした。3. テーマ:海洋/沿岸域の資源管理 -持続可能な開発目標(SDGs)の実施とブルーエコノミーの推進に向けた太平洋小島嶼国の視点調査内容・結果4. プログラム開会の挨拶:角南篤 笹川平和財団海洋政策研究所所長導入:古川恵太 笹川平和財団海洋政策研究所海洋研究調査部長基調報告:山口大治 外務省アジア大洋州局大洋州課長基調講演:フォスティナ・レウア・マルッグ パラオ共和国国務大臣パネル討論パネリスト:ウマイ・バジリウス(Umai Basilius)パラオ自然保護協会マネージャーリッキー・カール(Ricky Carl)TNC1ミクロネシア渉外部次長サム・マケニー(Sam McKechnie)SPC2漁業資源評価事業科学担当官アリソン・ネウェル(Alison Newell)南太平洋大学海洋資源研究所 研究員中村崇 琉球大学理学部准教授福島健彦 環境省地球環境局国際連携課長小豆澤英豪 国際協力機構(JICA)東南アジア・大洋州部次長 コメンテーター:フランシス・マツタロウ(Francis Matsutaro)駐日パラオ大使司会:小林正典 笹川平和財団海洋政策研究所 主任研究員5. 概要会議冒頭、角南所長からの開会あいさつに引き続き、古川部長が導入として、太平洋小島嶼国における海洋の危機、その管理と地球環境変化・変動への対応、環境の保全と両立する開発、すなわち SDGsの達成とブルーエコノミーの推進が目標であると説明した。山口大治大洋州課長(外務省アジア大洋州局)から第 8回太平洋・島サミット(PALM8)の意義と準備状況についての報告の後、ファウスティナ・レウアマルッグパラオ共和国国務大臣の基調講演があり、島嶼国における資源管理の重要性が強調されるとともに、パラオ政府の資源管理政策について解説された。 1 The Nature Conservancy:ザ・ネイチャー・コンサーバンシー 2 Secretariat of Pacific Community:太平洋共同体事務局ウマイ・バジリウスマネージャー(パラオ自然保護協会)は、パラオ政府の持続可能な土地管理政策(SLM)やタロ畑に適用される管理計画などを解説するとともに、パラオの生態系と人々との相互の関わりの深さについて解説した。リッキー・カール次長(TNC ミクロネシア渉外部)は、12年にわたるミクロネシアチャレンジによる政府と国内パートナー機関との協働、マグロ類漁業の電子モニタリング計画などを紹介し、地域の人々の能力開発や関連計画との連携によるスケールアップの重要性を強調した。サム・マケニー科学担当官( SPC 漁業資源評価事業)は、科学技術機関としての太平洋共同体の体制や、WCPFCによる水産資源管理の活動を紹介し、不確実性のある中での管理戦略の科学的評価の重要性を指摘した。アリソン・ネウェル研究員(南太平洋大学海洋資源研究所)は、南太平洋大学における教育プログラムなどを紹介し、気候変化が進行する中での持続可能な輸送の確立や地域の支援事業を総合的に実施する重要性を解説した。中村崇准教授(琉球大学理学部)は、サンゴおよびサンゴ礁の重要性、その白化の現状と影響、原因、再生について解説し、島嶼系のサンゴ礁を持つ地域・国々が協力し、より情報共有・コミュニケーションをとりながら、自然科学と社会科学の両面での議論を進めることの大切さを強調した。福島健彦国際連携課長(環境省地球環境局)は、環境省における太平洋島嶼国への循環型社会システムと再生可能なエネルギーの普及に向けた取組みについて紹介し、国際協力の重要性を強調した。小豆澤英豪東南アジア・大洋州部次長(国際協力機構)は、太平洋地域における SDGs達成のための取り組みを解説するともに、バヌアツでのコミュニティ・ベースの資源管理事業を紹介した。各発表者からの話題提供の後、フランシス・マツタロウ駐日パラオ大使をコメンテーターに迎え、小林主任研究員の進行により、登壇者によるパネル討論が行われた。その中では、コミュニティ、国、地域での資源管理や環境保全、海洋保護区の実効、漁業・観光も視野に入れた各国のニーズに合ったブルーエコノミーへの展開などが意見交換され、そうした問題の具体的な解決に向けた国際協働の重要性と緊急性が示された。(4)その他の調査結果 1. 国連海洋会議 2017年6月5日から9日にかけて、ニューヨークの国際連合本部にて国連海洋会議が開催された。国連の場で、海洋をテーマとし多様なステークホルダーを迎えて開催された重要な会議であり、各国ハイレベル(首脳 16名、副首相2名、大臣 86名等)も集まった。会議では、アウトプット文章である「行動の呼びかけ(Call for Action)」の作成を目指し、メインの会議である全体会合(プレナリ)が開催されたほか、7つのパートナーシップダイアログ、多数のサイドイベント、「自発的コミットメント( Voluntary Commitment)」として関係者が自発的に実施することを登録する仕組みなどが用意された。当海洋政策研究所は国連に認証された NGOとして本国連海洋会議に参加し、の草案作成にも参画したほか、自発的コミットメントの登録、サイドイベントの開催、パートナーシップダイアログ7での発言等で会議に貢献した。開会セレモニーでは、共同議長を務めたフィジー首相とスウェーデン副首相から、海洋で生じている深刻な問題が小島しょ国( SIDS)等の人々の生活の脅威となっており、海洋会議がその改革者( game changer)となるべきとの認識が冒頭挨拶として示された。持続可能な開発目標( SDGs)は 17の分野毎の目標と 165のターゲットで構成される。このうち SDG14が「海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」であり、その中に 14.1(海洋ゴミ等の海洋汚染)、14.2(海洋及び沿岸の生態系)、 14.3(海洋酸性化)、14.4・14.6・14.b(漁業)、14.7(小島しょ国や後発発展途上国)、14.a(科学技術)、14.c(国際法の施行)等の 10の個別目標が示されている3。この中で、島嶼における海洋資源の保全と利用に関係する部分は、14.4・14.6・ 14.b(漁業)と 14.7(小島しょ国や後発発展途上国)、14.c(国際法の施行)である。特に着目すべき論点として、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の撲滅に向けた取組み、海洋保護区(MPAs)の設定と運用、ブルーエコノミーの確立、国家管轄圏外区域の生物多様性(BBNJ)の保全と利用などが多く取り上げられ議論された。関係のサイドイベントとして「 SDG14の実施に向けて必要なこと:海洋と気候とブルーエコノミーを語る」(主催:海洋政策研究所・グローバルオーシャンフォーラム)では、海洋と気候変動に向けたロードマップを提唱し、その実施にむけて結束して行動していくことが確認された。そのほか、「人々と環境のための漁業の再構築」(主催:食糧農業機関)、「SDG14の実施に向けた推進力としての SDG間の相互連関」(主催:国際学術会議)、「SDG14達成への財政策」(ドイツ、 OECD等主催)、「人々の幸福のための漁業における生物多様性主流化」(主催:生物多様性条約事務局、日本国水産庁)等が開催されていた。関連報告書では国連開発計画(UNDP)発行の「SEA、 MY LIFE」(MPAの事例を詳細に報告)、UNESCO-IOC発行の「 Global Ocean Science Report」(海洋研究の現状(研究者数、研究資金配分等)の調査報告)、世界銀行発行の「Blue Economy」(ブルーエコノミーについて論じた 200ページを超える報告書)、日本財団ネレウスプログラム発行の「CO-BENEFITS、CLIMATE CHANGE & SOCIAL EQUITY」 3 SDG14.1、2、3...などターゲットが数字になっているものは定量的な目標、14.a.b、c...などアルファベットになっているものは定性的な目標であることを意味する。(SDGsの共益(コベネフィット)関係について報告)等が注目されていた。 5日間にわたる会議は、閉会プレナリにおいて「行動の呼びかけ (Call for Action)」を採択して会議が閉幕した。2.BBNJ準備委員会 2005年の国連総会決議により「国家管轄権外区域における海洋生物多様性 (BBNJ) の保全と持続可能な利用」に関する国際的な枠組み作りのための作業部会が設置され、その後、9回の会合を経て、2015年の国連決議により準備委員会(BBNJ PrepCom)が設置された。2016年 3-4月に第 1回、同 8月に第 2回会合が開催され、本年度には 2017年 3-4月に第 3回、8-9月に第 4回会合が開催された。当該準備委員会では、(1)海洋遺伝資源(利益配分を含む)、(2)区域型管理ツール等の措置(海洋保護区を含む)、(3)環境影響評価、(4)能力構築及び海洋技術移転、(5)分野横断的問題について議論がなされている。この中で、島嶼における海洋資源の保全と利用に関係する部分は、(1)と(2)であり、以下に、その議論の概要を掲載する。まず、海洋遺伝資源(利益配分を含む)に関する議論においては、公海自由の原則適用を主張する先進国と、人類の共同財産(Common Heritage of Mankind)の原則適用を主張する途上国との意見対立がある。途上国は海洋遺伝資源の経済的・非経済的な便益の共有を求めたが、欧州連合、日本、米国がそれぞれ異なる主張を表明した。その他、便宜供与メカニズムの構築、知的所有権の規定、情報共有制度の確立などについて議論がなされているが、合意に至っていない。区域型管理ツール等の措置(海洋保護区を含む)については、各国より長期的な保全、予防原則、海洋保護区のネットワーク、科学的知見に基づく判断、公平性、統合的アプローチなどを含む多くの提案がなされた。こうした背景の下、勧告案の中では、本項目の原則や目的が一般項目として記載された。 2018年以降、政府間会合に協議の場が移され、当面 4回の会合が予定されているが、合意に至るまでのプロセスは確定しておらず、引き続きの注視、働きかけが必要である。3. 石垣市・竹富町 2017年 6月 26日~27日にかけて、沖縄県竹富町を訪問し、海洋基本計画の改定に向けた取組みについてヒアリングを行った。我が国の沿岸域管理の制度整備についての調査が主目的だったが、島と周辺海域の保全と管理に関する貴重な知見が得られたので、以下に参考として記載する。訪問先は、以下の通り・ 沖縄県庁企画部市町村課、環境部自然保護課・ 竹富町役場政策推進課、産業振興課得られた知見を以下に列挙する。沖縄県庁でのヒアリング( 6月 26日)沖縄県庁では、サンゴ礁域を地方交付税の測定単位に含めることに関して、平成 24年度と平成 27年度の 2回、地方交付税法 17条の 4に基づいて、沖縄県を通じて総務省に対して意見の申し入れをしている。これに伴う総務省からの回答として、算定基準は国土地理院の「面積調」に基づく、ということ、財政需要として挙げた漂流・漂着ゴミについて特別交付税にて措置されていること、サンゴ礁域のみを対象とすることの全国を見た場合の偏在性についても指摘があった。世界自然遺産について国の推薦を受けて、来年の登録に向けたプロセスが行われている。今夏の IUCNの現地視察やその意見等への対応が当面の課題である。当初は森川海の繋がりから石西礁湖も含めた提案が検討されたが、奄美等を含めた各地域と共通する生物進化に着目し、石西礁湖は対象から外れた。海域よりも、むしろ陸域が主な対象となっている。関連する環境保全の取組として、河川での漁(内水面)と航行船のルールづくりなどがあるが、海域を主な対象としたものはない。世界自然遺産には関係しないが、県では白化対策に力を入れており、恩納村での白化に強いサンゴの植え付け事業などを行っている。竹富町役場、小浜島視察( 6月 27日)竹富町海洋基本計画については、今年度の予算にて改定を進めており、これまでの取組状況を整理するとともに、国における議論を含めた新たな情勢変化を踏まえて年度内の作成を目指している。自主財源の観点からは、地域自然資産法を活用した入域料に着目している。これまでの海洋政策研究所による研修等により、沿岸域管理の仕組みを活用できてきている。世界自然遺産の西表島の保全の取組では、河川域が中心となるが、沿岸域管理の考え方で取組が進められている。小浜島の視察においては、マングローブ群落や赤土対策施設など、沿岸環境の保全に係る状況を見ることができた。また、ちょうど干潮にあたったため、伝統漁法である海垣(インカチ)を確認することができるなど、沿岸域の伝統文化にも触れることができた。更に、往復の船上では、特に干潮時刻と重なった復路において、サンゴ礁の干出や航路浚渫の様子を確認できるなど、海域管理に関連する状況を確認することができた。沿岸域の総合的管理について竹富町は積極的に推進したいとの意向であった。今年度に改定する竹富町海洋基本計画が一つの契機となり、研修なども含めて取組の発展が期待できる。なお、石垣市海洋基本計画の動きについて、石垣市役所の担当者と簡単な意見交換をすることが出来たが、近年は動きが無いとのことであった。広域連携なども視野に入れ、注目すべきと考える。4. 竹富町・対馬市 2017年 1月 29日~31日にかけて、我が国の離島における海洋保護区を通じた資源管理および漁業を軸とした沿岸経済振興に関し、竹富町および対馬市において実際に計画を担当する役所職員等に対するヒアリングを行った。我が国の沿岸域管理の手法の多様性を理解することが主目的だったが、島と周辺海域の保全と管理に関する貴重な知見が得られたので、以下に参考として記載する。訪問先は、以下の通り・ 沖縄県農林水産部水産海洋技術センター石垣支所・ 竹富町役場政策推進課・ 対馬市役所水産課海洋資源保全室・ 長崎県対馬振興局福島地域づくり振興課、対馬水産業普及指導センター、衛生環境課・ 長崎県環境部地域環境課得られた知見を以下に列挙する。沖縄県農林水産部水産海洋技術センター石垣支所( 1月 29日(月))川平・名蔵保護水面については、もともとは地元の漁業者の自発的な取組みとして禁漁期が設定されていたものが、様々な理由でうまくいかず、県が保護区の設定に乗り出したという経緯がある。(特に完全な禁漁区の設定に関しては、漁業者からの反発などもあったのではと問うたところ、)これらは 40年以上前に設定されたものであるが、地元の漁業者全員の同意を得たうえで実現した。今のところ、外国人観光客が大規模に保護区のルールに違反するという事例は見られない。石垣の保護区は沿岸の、さらにサンゴ礁付近の生態系を保護するものなので、海外の漁船との競合は生じにくいのだろう。与那国の海洋保護区には台湾からの遊漁船が頻繁に来て、警告にも従わないという話は聞いたことはある。ヨナラ水道が保護区となったのは、サッコーミーバイ(ナミハタ)の集群水域がだんだん減ってきて、最終的にここしかなくなったという経緯がある。ここは県も支援をしているが、主として漁協の一部会である「伝統潜り研究会」の管理に委ねられており、法的な縛りはまったく存在しない。今後、任意の禁漁にとどまらず、漁協の規則の対象にするなど規律を強化していくための支援をセンターとしても行っているところである。海洋保護区設定の際の合意形成のプロセスについては、まず地域の代表的漁業者にアプローチし、科学的に裏付けされたデータを用いて、現状について理解してもらうというところから始めるのが一般的である。竹富町役場(1月 29日(月))希少種のうち、特別希少種については捕獲に際して許可が必要になる。西表島の浦内川河口に生息する魚などが特別希少種に指定されている。希少種の保護のために必要がある場合には、町長は保護区の設定をすることができる(その結果、特定の行為が制限される(第 12条))が、現時点では、そのような保護区は設定されていない。設定場所としては、希少種の生息が密なところということで、陸または海の区別は特にない(他方で、特別希少種については、保護区の内外に関わらず、自由な捕獲が禁止される。)。浦内川河口に生息する魚などは、特別希少種として保護したうえで、さらに保護区内で保護する必要があるかどうかは要検討である。特別希少種の選定の際には、琉球大学の研究者をはじめとする専門家からなる有識者会議の見解を求めることになっている。西表石垣国立公園(竹富地域)に漂着するゴミの内容としては、ペットボトルと流木が多い。12月には海岸を埋め尽くすほどの流木が漂着した。海岸がゴミで埋め尽くされていると、海カメが産卵のために上陸できないなどの問題があり、ボランティアの人々の力をかりて清掃活動を行っている。町役場としては、国境離島の EEZ管理などについて国の次期海洋基本計画の中で焦点を当ててほしいと考えている。対馬市農林水産部水産課海洋資源保全室(1月 30日(火)現時点では対馬市独自の海洋保護区と呼べるものは存在しないが、「科学的な分析に基づく資源管理」、「順応的な管理」、「魚価向上を目指した体制づくり」の理念の下に基本計画(2016年~2025年度)を策定し、「対馬版」海洋保護区の設定を推進しているところである。対馬市海洋保護区設定推進協議会の下に専門委員会、戦略会議、科学委員会、磯資源作業部会および藻場再生作業部会を設置し協議・検討を行ってきており、PR番組やリーフレットの作成等を通じた広報にも力を入れている。現在は技術の発達により誰でも大量に漁獲することが可能という時代であり、獲りすぎないための施策を市が実施することの意義はあるだろう。他方で、より獲れなくなった場合の付加価値の向上など、対応しなくてはいけない課題も多い。「ストーリーのある魚」を市場に出すことでより買ってもらえるよう消費者にアピールするというブランディング戦略も考えている。釣った魚を自らの直販所で売るといったことを考えている漁業者もいる。しばらくは磯資源や藻場の再生作業部会を中心に活動し、それらの仕組みがうまく回るようになれば、ゆくゆくは生物多様性作業部会を立ち上げ、より包括的な取組みを行っていけたらと考えている。対馬においても漂着ゴミの問題は深刻であり、ボランティアや韓国の学生団体などと清掃活動を行っているが、根本的な解決にはほど遠いという状況である。発生源としては海外大陸からのものがほとんどである。海洋保護区設定のための調整に当たりネックになるのは、やはり自然保護と漁業活動の発展の両立をいかに図るかということである。長崎県対馬振興局(1月 31日(水)海洋保護区については対馬市の方で中心的に取組みを行ってきている。県の方では、漁業調整規則に基づく免許や許可などを実施してきているところ。また、養殖の指導や技術の普及、漁場の管理などを現場で行っている。対馬の漁業生産の 6割はイカ釣りが占めている。漁業形態としては、遠洋よりも沿岸で、近海を来遊してくる魚を獲るというものが大部分。IUU漁業といわれる違法漁業には巻き網が多い。大臣許可の巻き網漁業そのものは違反ではないが、沿岸の 1本釣り漁業と競合している例が見られる。自主的な申し合わせを行い、このような競合を回避しようという試みもある。太平洋マグロについては、資源管理が厳しく、各海区・漁協・個人ごとの個別割当が実施されているところ。水産物の市場での差別化という点では、対馬でも MSCの認証を受けるための事前審査を受けた例がある。海岸漂着物の処分については、県も市をバックアップする形で関与している。日中韓との間での協定に基づき、漂着物対策を目的とした交流事業(ワークショップ)も実施されてきている。流れ着いたゴミは塩を含んでいるので、再利用はなかなか難しい。ほとんどは島外に排出されている。タンカーから漏れ出す油が海鳥や海藻などに悪影響を与えることもある。市には海岸漂着物協議会が存在し、漁協も関与したうえで総合的な対策を実施しているところである。磯資源や藻場の再生に関しては、県としても市の協議会の中の部会に加わり、市と協力関係を築いてきている。実際のプロジェクトは漁業集落ごとに実施されているので、そこにおける高齢化や働き手の減少というのが問題である。現在はボランティアの数も減ってきており、市から賃金を払って浜の清掃をしてもらうということもある。離島地区は輸送コスト(費用・時間)のハンデがある。対馬から東京まで産品を輸送するには 3日かかってしまうところ、これを短縮しようという試みやそれぞれの島から輸送しているものを一か所(例えば、福岡など)からまとめて出そうという試みがある。今回の現地調査を通じて、いわゆる国境離島における海洋環境の保全を実施するためには、漁協や地域住民をはじめとする利害関係者間の調整(合意形成を含む)が重要であり、その取り組みの一環として大学等研究機関と協力して科学的知見の取り込みを行うことが有益であることが明らかとなった。環境保全に関する取り組みに資する科学的知見を収集・蓄積するのみならず、それらを踏まえた新たな知見を創出・発信することが急務であり、太平洋島嶼国の海洋環境保全や生物資源管理、産業振興の実現に向けたヒントとなる研究成果が我が国の国境離島での調査研究から見いだされてくる可能性を感じた。 2.沿岸生態系保全に関する調査沿岸生態系(藻場、干潟、サンゴ礁、マングローブ林など)は、生物多様性のホットスポットであるとともに、高い生産性を生み出す源でもある。しかし、現在、沿岸域の開発による富栄養化や貧酸素水隗の発生などの海洋汚染、過剰漁業や違法・無規制・無報告( IUU)漁業などによる持続可能な漁業の危機、生物生息場の喪失、海ゴミを含む廃棄物処理などの問題が顕在化してきている。特に島嶼国においては、その保全・再生・利用が地域経済の発展に直結することから、持続可能な沿岸生態系保全は、重要な研究テーマである。本年度は、世界的なサンゴ白化の現状把握と今後の取り組みについて議論する海洋フォーラムを開催するとともに、国連海洋会議や現地観測などを通して、情報収集に努めた。(1)海洋フォーラム「アジア・太平洋沿岸域のサンゴ礁」の実施 1. 開催日時・場所: 2017年 11月 27日 16:30-18:30 笹川平和財団国際会議場2. 開催目的:近年、海洋環境の変化によりもたらされる影響に注目が集まっており、今年 7月には沖縄でサンゴの白化現象が深刻化しているとの報告がある。こうした海洋環境の変化とその影響は国際的な関心事項で、今年 6月の国連海洋会議においても、持続可能な開発目標 14.2で掲げられる「2020年までに海洋・沿岸生態系の保全と持続的管理に取り組む」方策が議論されている。今般日本サンゴ礁学会第 20回大会に合わせて訪日するフィリピン、パラオ、タイ、モーリシャスの海洋およびサンゴ礁の専門家を迎え、日本の専門家と共に、近年、顕著に見られる海洋環境の変化、サンゴ礁への影響、対策と課題等を提示して頂き、今後の取り組みや国際協力の方向性などについて議論することを目的として海洋フォーラムを開催した。3. テーマ:危機にあるアジア・太平洋沿岸のサンゴ礁:現状報告と保全に向けての課題4. プログラム開会の挨拶:角南篤 笹川平和財団海洋政策研究所所長趣旨説明:古川恵太 笹川平和財団海洋政策研究所海洋研究調査部長報告:灘岡和夫東京工業大学環境・社会理工学院 教授ペリー・アリーニョ(Perry Ali)フィリピン大学海洋研究所 教授タマサク・イェミン(Thamasak Yeemin)タイ・ラムカムヘン大学 教授イムナン・ゴルブ( Yimnang Golbuu)パラオ国際サンゴ礁センター 最高経営責任者ランジート・バグーリ(Ranjeet Bhagooli)モーリシャス大学 准教授パネル討論パネリスト:報告者司会:小林正典 笹川平和財団海洋政策研究所 主任研究員5. 概要会議冒頭、角南所長からの開会あいさつに引き続き、古川部長が趣旨説明として、国連海洋会議などを始めとする海洋を巡る国際的な動向、サンゴ白化などの危機が着目されている状況について説明した。灘岡和夫教授(東京工業大学)からは「ローカル・グローバル環境変動の「指標生態系」としてのサンゴ礁生態系」として、サンゴ礁保全に関するわが国の現状と取り組み、アジア・太平洋連携ネットワーク基盤構築の必要性についての報告がなされた。その中で、アジア・太平洋域のサンゴ礁はグレートバリアリーフなどと異なり、沿岸域に貧困層含む人口密度が高く、陸域影響によるストレスがサンゴ礁にかかっており、持続的な沿岸資源利用のあり方がきわめて重要な課題になっていることが指摘された。特に、「アジア・太平洋型」の問題構造と課題解決の必要性、そのための早急な連携ネットワーク基盤の構築などが提言された。ペリー・アリーニョ教授(フィリピン大学)からは「賢明な適応と対応力向上に向けた科学と技術」として、海洋保護区ネットワークにおける地域社会の取り組みの意味についての報告があった。フィリピンはサンゴ礁三角地域(コーラル・トライアングル)と呼ばれる世界の海洋生物多様性の中心に位置しており、多様な生態系の財とサービスが提供されていること、そうした恵みがフィリピンにとって、全人類にとっての自然遺産であることが説明された。その中で、自然資源の関連性への理解の欠落から、生態系管理が行き届かず、フィリピン人において貧困や収奪といった問題を提起していることを指摘し、海洋保護区のネットワーク化や順応型の管理制度を構築し、新しい現象に迅速に対処していくことが必要であると提言した。タマサク・イェミン教授(タイ・ラムカムヘン大学)からは「環境危機の下でのタイにおける沿岸生態系保全」として、タイの沿岸生態系は人為的および気候変動による影響に起因する多様な影響により高いリスクに直面している現状が報告された。その中で、人間活動に起因する影響としてマングローブ林や湿地および海岸における入植や未処理排水の放出、観光開発による観光客の増大、沿岸開発による土砂堆積などが指摘された。タイでは、2017-2036年の 20年国家戦略を作成し、国家の安定、繁栄、持続性を実現することが謳われ、6つの戦略 4が示されていることが紹介された。イムナン・ゴルブ最高経営責任者(パラオ国際サンゴ礁センター)からは「パラ