平成13 年度閉鎖性海湾の環境モニタリングに関する調査研究報告書付 属 資 料(1)海洋環境モニタリング事例(2)海 外 事 例 調 査 報 告平成14 年3 月財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団目次-付属資料-(1) 海洋環境モニタリング事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 153(2) 海外事例調査報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 169153付 属 資 料(1)海洋環境モニタリング事例155表1(1) 代表4海湾におけるモニタリング事例(東京湾)モニタリング名称 実施機関 概要・目的 測点 測定項目 調査年 調査頻度海洋汚染調査 海上保安庁「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(海防法)第46 条に基づき、海洋汚染の防止及び海洋環境保全のための科学的調査として実施し、日本周辺海域、主要湾海水中の汚染物質の濃度分布、拡散状況、経年変化の把握を目的とする。(※1)[水質]表層6 点[底質]6 点(1991 年)[ 水質] 水温, 塩分,pH,DO,COD,PO4-P,T-Hg,Cd,Cu,Zn,PCB 、油分[底質]脂肪族炭化水素、PCB、カドミウム、水銀、クロム、鉛、銅、亜鉛、ニッケル、強熱源量、粒度組成、中央粒径 (★1)1972~毎年 (◎1)1 回/年公共用水域水質測定 環境庁水質汚濁防止法第15 条に基づき、公共用水域の水質汚濁の状況を常時監視する。このため、都道府県ごとにそれぞれ毎年測定計画を作成し、これに従って国及び地方公共団体は公共用水域の水質の測定を行う。(※2)東京都:[水質]上・下層(一部混層→健康・特殊項目)32 地点 [底質]8 点千葉県:[水質]上・下層(一部混層→健康・特殊項目)32 地点 [底質]神奈川県:[水質]上・下層(一部混層→健康・特殊項目)35 地点[健康項目]Cd,シアン,有機リン,Pb,六価クロム,ヒ素,T-Hg,アルキル水銀,PCB,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,四塩化炭素,ジクロロメタン,1,2-ジクロロエタン,1,1,1-トリクロロエタン,1,1,2-トリクロロエタン,1,1-ジクロロエチレン,シス-1,2 ジクロロエチレン,1,3-ジクロロプロペン,チラウム,シマジン,チオベンカルプ,ベンゼン,セレン[生活環境項目]pH,DO,大腸菌群数,COD,n-ヘキサン抽出物 (★2)[底質]強熱減量,COD,カドミウム,全硫化物,全シアン,鉛,ヒ素,総水銀,アルキル水銀,PCB、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、EPN,総クロム,pH,酸化還元電位,TN,T-P,乾燥減量,n-ヘキサン抽出物質,燐酸態燐 (★3)[特殊項目]銅、亜鉛、溶解性鉄、溶解性マンガン、クロム、フッ素、フェノール類[その他]メチレンブルー活性物質、アンモニア性窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、燐酸態燐、全有機態炭素、塩化物イオン、クロロフィル、プランクトン、EPN 等1971~測定項目により、開始年度は異なる。(◎2)[水質]東京都:環境基準点は1 回/月、その他の地点は2 回/年千葉県:1 回/月神奈川県:1 回/月[底質]東京都:1 回/年千葉県:1 回/5 年化学物質環境調査市原・姉崎海岸(1988~)川崎港、横浜港、東京湾中ノ瀬(~1988)化学物質と非意図的生成化学物質1145 物質のうち、約20 物質を選定(★4)[水質(表層)・底質・生物(検出結果)]メラミン、モルホリン、トリフルラリン、ツマサイド、プロポスキル、ブタクロール、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、2,6-ジニトロ-p-クレゾール、クロルピクリン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、エタノールアミン、p-ジニトロベンゼン、m-クロロニトロベンゼン、2,4-ジクロロニトロベンゼン、2,5-ジクロロニトロベンゼン生物モニタリング東京湾内 スズキ(筋肉内)、ウミネコ(胸筋内)有機塩素系化合物(27 種)、有機スズ化合物(2 種) (★5)化学物質環境安全性総点検調査指定化学物質等検討調査有害化学物質対策については国際協調が求められており、有害化学物質の環境汚染による人の健康等への被害を未然に防止するため、環境中のこれらの残留濃度レベルを監視し、必要な場合には対策を講じてゆくことが求められる。本調査は、1973 年に制定された「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)の成立を契機に実施されているものである。(※3)市原・姉崎海岸、横浜港、東京湾中ノ瀬指定化学物質、第2 種特定化学物質1,4-ジオキサン、2,4-ジアミノトルエン、メチル=3,3'-ジメチル-4-ペンテノアート (★6)1974~(1979~1988:第1 次化学物質環境安全性総点検調査1989~:第2 次―)(◎3)モニタリング環境中に残留している可能性の高い非意図的生成化学物質について、その一般環境中における汚染状況の推移を把握すること。(※4)12 地域:底質19 検体、魚類18 検体、貝類1 検体ダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン[PCDD]15 種類、ポリ塩化ジベンゾフラン[PCDF]13 種類) (★7)化学物質に関する環境調査非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査環境調査環境庁環境中に残留している可能性の高い非意図的生成化学物質を選定し、その一般環境中における汚染状況を把握すること。(※5)2 地域:底質2 検体、魚類2 検体 コプラナーPCBs、Total-PCBs (★8)1985~ 毎年(1985~1992:有害化学物質汚染実態追跡調査)(◎4)1 回/年広域総合水質調査 環境庁[水質]上下層28 点[底質]8 点[プランクトン]10 点[水質]色相、透明度、水温、pH、DO、塩分、COD(生海水)、DCOD(ろ過海水)、NH4-N、NO2-N、NO3-N、T-N、PO4-P、T-P、Chl-a、フェオピグメント、TOC、DOC、溶存酸素飽和度、PCOD[(COD)-(DCOD)]、DIN[(NH4-N)+(NO2-N)+(NO3-N)]、Org-N[(T-N)-(DIN)]、Org-P[(T-P)-(PO4-P)]、POC[(TOC)-(DOC)][底質]粒度、pH、酸化還元電位、乾熱減量、強熱減量、COD、全窒素、全燐、TOC、硫化物[プランクトン]同定、個体数 (★9)1971~(?) (◎5) 4 回/年漁海況予報事業に関わる海洋調査 東京都赤潮調査 東京都 東京湾 水温、塩分、透明度、水色、DO、プランクトン、Chl-a 1回/月(水産庁、各都道府県水産試験場)沿岸定線調査 神奈川県漁業資源の合理的利用と漁業操業の効率化を図り、漁業経営の安定に資すること。( 7)東京湾 水温、塩分、透明度、水色、プランクトン 1 回/月東京 湾東京湾横断道路環境検討日本道路公団東京第一建設局東京湾横断道路株式会社東京湾横断道路建設に関する環境への影響をモニタリングするため全34 点 [水質]pH,DO,COD,濁度,T-N,I-N,T-P,I-P,クロロフィルa,n-ヘキサン抽出物質,総水銀,アルキル水銀,カドミウム,シアン,6 価クロム,有機リン,ヒ素,鉛,PCB[底質]色相,含水比,強熱減量,比重,粒度組成,COD,T-Hg,酸化還元電位[物理環境]潮流,恒流[海域生物]動植プランクトン,底生生物,付着生物,魚介類,藻場[干潟生物](動物・植物)1987~1999 1 回/日1 回/週1 回/月4 回/年2 回/年157表1(2) 代表4海湾におけるモニタリング事例(伊勢・三河湾)モニタリング名称 実施機関 概要・目的 測点数 測定項目 調査年 調査頻度海洋汚染調査 海上保安庁 ※1 伊勢湾内5 点(1991) ★1 ◎1 1 回/年公共用水域水質測定環境庁※2 愛知県:上・中層39 点三重県:上層19 点★2 ◎2 1 回/月化学物質環境調査 ※3 名古屋港、名古屋港外、衣浦港、四日市港、鳥羽港 ★4 ◎3水質、底質モニタリング主として化審法に基づく第1 種特定化学物質を対象として実施。(※6)名古屋港(1991) 化審法に基づく第一種特定化学物質を対象 (★10) 1986~(◎6)生物モニタリング 伊勢湾(1989 追加) ムラサキイガイ(剥き身部分)(★5)化学物質環境安全性総点検調査指定化学物質等検討調査※3名古屋港、四日市港 ★6化学物質に関する環境調査 ◎3非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査モニタリング環境庁※4 名古屋港、四日市港 ★7 ◎41 回/年広域総合水質調査 環境庁 [水質]20 点 底質]5 点 [プランクトン]13 点 ★9 ◎5 4 回/年沿岸定線調査 愛知県 三河湾、渥美湾外海 水温,塩分,透明度,水色 1 回/月漁海況予報事業に関わる海洋調査 沿岸定線調査 尾鷲~沖島沖 水温,塩分,透明度,プランクトン,稚仔魚 1回/月浅海定線調査三重県※7伊勢湾内20 点 水温,塩分,濁度,流向,流速,COD,DIN,pH,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,DO,T-Chl-a 1 回/月伊勢・三河湾中部新国際空港建設に関する環境調査 愛知県中部新国際空港建設に関わる環境への影響をモニタリングするため。22 点 [水質]水温,塩分,DO,COD,T-N,T-P,DIN,PO4-P,クロロフィルa[底質]pH,COD,T-Hg,ヨウ素消費量,IL,粒度組成,含水比,酸化還元電位[生物]動植物プランクトン,魚卵・稚仔魚,干潟生物,アユ稚仔魚,サツキマス,藻場1992~ 1 回/月表1(3) 代表4海湾におけるモニタリング事例(瀬戸内海)モニタリング名称 実施機関 概要・目的 測点数 測定項目 調査年 調査頻度海洋汚染調査 海上保安庁※1 紀伊水道4 点・大阪湾5 点・瀬戸内海+響灘14 点・豊後水道4 点(計27 点)★1 ◎1 1 回/年公共用水域水質測定 環境庁※2 [水質]兵庫:(上・中・混)91 点岡山:(上・混)69 点広島:(上・中・下)69 点徳島:(上・中・混)47 点香川:(上・中)46 点愛媛:(上・中〈地点により一部下層〉)132 点大分:(上・中・10m)49 点★2 ◎2 1 回/月化学物質環境調査※3 大阪港、神戸港、姫路沖、水島沖、呉港、徳山港、高松港、新居浜港(1989~)、高砂沖(~1983)、福山沖(~1983)、宇部沖(~1983)、広島港★4 ◎3水質、底質モニタリング ※6 大阪港、播磨灘姫路沖(~1986) ◎6生物モニタリング 大阪湾、鳴門 スズキ(大阪湾)、イガイ(鳴門)(★5)化学物質環境安全性総点検調査指定化学物質等検討調査※3大阪港、姫路沖、水島沖、呉港、広島港、徳山港、高松港 ★6◎3モニタリング ※4 大阪湾1~4、水島沖、紀伊水道、広島湾 ★7化学物質に関する環境調査非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査 環境調査環境庁※5 大阪湾 ★8◎41 回/年広域総合水質調査 環境庁[水質]89 点[底質]3 点[プランクトン]44 点★9 ◎5 4 回/年浅海定線調査 和歌県 紀伊水道和歌山県沿岸 水温,塩分,COD,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,SS,DO,卵稚仔 1 回/月浅海定線調査 大阪府 大阪湾 水温,塩分,透明度,水色,pH,COD,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,T-P,DO,Chl-a,Ph-a 1 回/月赤潮予測調査 淡路島沿岸 水温,塩分,透明度,pH,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,SiO2-Si,DO,Chl-a 4~9 月、20 回浅海定線調査 淡路島西岸 水温,塩分,透明度,水色,濁度,pH,COD,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,T-P,DO大阪湾・紀伊水道漁場環境定期調査淡路島東岸 水温,塩分,透明度,水色,濁度,pH,COD,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,SiO2-Si,Chl-a 8~9 回/月播磨灘漁場環境調査兵庫県淡路島西岸 濁度,pH,COD,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,DO 8~9 回/月岡山沿岸海域の海況及び水質調査岡山県瀬戸内海岡山県沿岸 水温,塩分,透明度,COD,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,プランクトン,Chl-a 1 回/月浅海定線調査 香川県 播磨灘~燧灘 水温,塩分,透明度,COD,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,DO,プランクトン 1 回/月沿岸定線調査 豊後水道、伊予灘 水温,塩分,透明度,水色 11 回/年浅海定線調査愛媛県燧灘、斉灘 水温,塩分,透明度,濁度,pH,COD,NH4-N,NO2-N,PO4-P,DO,プランクトン 4 回/年漁海況予報事業に関わる海洋調査沿岸環境メッシュ調査 広島県※7広島県沿岸 水温,塩分,透明度,NH4-N,NO2-N,NO3-N,PO4-P,DO 1 回/月瀬戸 内 海関西国際空港建設に関わる環境調査関西国際空港株式会社関西国際空港用地造成株式会社関西国際空港建設事業に関わる環境への影響をモニタリングするため。大阪湾内 3~13 点 [水質]油膜,赤潮,透明度,水温,塩分,濁度,pH,DO,流況,SS,VSS,透明度,COD,n-ヘキサン抽出物質,T-N,NH4-N,NO2-N,NO3-N,T-P,PO4-P,クロロフィルa[底質]泥温,粒度組成,含水比,強熱減量,pH,COD,硫化物,T-N,T-P[海域水象]潮流,恒流の流向,流速[海域生物]動植プランクトン,卵稚仔,底生生物,磯浜生物,漁業生物[水質]1 回/日~4 回/年[底質]2~4 回/年[海域水象]2 回/年[海域生物]4 回/年159表1(4) 代表4海湾におけるモニタリング事例(有明海)モニタリング名称 実施機関 概要・目的 測点数 測定項目 調査年 調査頻度公共用水域水質測定 環境庁※2 [水質]福岡 9 点佐賀(上・5m)9 点長崎(上・中)8 点熊本 13 点★2 ◎2 1 回/月化学物質に関する 化学物質環境調査 有明海、大牟田沖 ★4環境調査化学物質環境安全性総点検調査指定化学物質等検討調査環境庁※3大牟田沖 ★6◎3 1 回/年福岡県有明水産試験場18 点佐賀県有明水産試験場11 点有明海漁海況予報事業に関わる海洋調査 浅海定線調査熊本県水産試験場※722 点[海況]水温、塩分、透明度、水色、波、うねり[気象]気温、天気、風向(8 方位)、風速(風力)、異常現象など[特殊項目]アンモニア、硝酸、亜硝酸、DIN、リン酸、DO、COD など1 回/月161162163165166167169付 属 資 料(2)海 外 事 例 調 査 報 告1.南フランスにおける海洋環境の取り組み 1712.北海、バルト海等における海洋環境の取り組み 188171南フランスにおける海洋環境モニタリング調査の概要日本における海洋環境モニタリングのあり方を検討するに当たり、南仏における研究機関を訪問し、海洋環境への取り組み、モニタリング調査の実際についての情報、事例を見聞、収集した。訪問箇所は、ニースの東側の入江奥に位置するVillefranche-sur-Mer のパリ第6大学の海洋観測所(Observatoire Oceanologique de Villefranche)、ニース大学の沿岸海洋環境研究所(Laboratoire Environnement Marin Littoral)、モナコ海洋博物館(Musee Oceanographique ) 、トゥーロンの西側半島突端に位置する下水処理場(AMPHITRIA(海の女神の意?))、カシスから西側に連なるCalanques(入江群)の保全水域及びマルセイユのエンドームにあるマルセイユ海洋学センター(Centred’Oceanologie de Marseolle)で、それぞれの研究機関では、現在行われている海洋生態系に関する調査研究やモニタリング調査の状況をヒヤリングし、貴重な資料を入手することができた。図 0-1 調査訪問先172調査員長崎大学水産学部 中田英昭教授シップ・アンド・オーシャン財団海洋政策研究部 大川光課長代理国土環境㈱環境技術本部 平野拓郎主任研究員(ジェトロ・パリ・センター) 佐伯誠治氏)期間平成13 年2 月17 日(土)~平成13 年2 月24 日(土)主な訪問先ニース方面(2 月18 日~20 日)・パリ第6大学海洋観測所(Villefranche-s-Mer)・ニース大学沿岸海洋研究所(Nice)・モナコ海洋博物館(Monaco)図0-2 ニース方面173トゥーロン方面(2 月21 日)・下水処理場(AMPHITRIA)(Toulon)図0-3 トゥーロン方面マルセイユ方面(2 月22 日)・地中海大学マルセイユ海洋学センター(d’Endoume Marseille)図0-4 マルセイユ方面174面会者及び主な収集資料パリ第6大学海洋観測所、動物学部門UNIVERSITE P et M CURIE – INSU – CNRS, OBSERVATOIREOCEANOLOGIQUESTATION ZOOLOGIQUE (http://www.obs-vlfr.fr/)・面会者M. Paul NIVAL, M. Gaby GORSKYニース大学沿岸海洋環境研究所LABORATOIRE ENVIRONNEMENT MARIN LITTORAL,FACULTE des SCIENCES – UNIVERSITE de NICE – SOPHIA ANTIPOLIS(http://www.unice.fr/LEML/)・面会者Prof. Alexandre MEINESE, M. Jean de VAUGELAS, M. Patrice FRANCOUR,M. Jean-Michel COTTALORDA, M. Thierry THIBAUT・収集資料-Mer Vivante, Mediterranee-Are the Mediterranean ascoglossan mollusks Oxynoe olivacea and Lobigerserradifalci suitable agents for a biological control against the invading tropicalalga Caulerpa taxifolia?-Pluriannual analysis of the reserve effect on ichyhyofauna in the Scandolanatural reserve (Corsica, Northwestern Mediterranean)-Second international campaign for public awareness of the Caulerpa taxifoliaproblem. An essential tool to collect cartographic data and to slow down thespread of this alga-Effects of boat anchoring in Posidonia oceanica seagrass bed in the Port-CrosNational Park (north-western Mediterranean Sea)-Are the Mediterranean waters becoming warmer? Information from biologicalindicators-Simulation of the mollusk Ascoglossa Elysia subornata population dynamics:application to the potential biocontrol of Caulerpa taxifolia growth in theMediterranean Sea175モナコ海洋博物館MUSEE OCEANOGRAPHIQUE, MONACO (http://www.oceano.org/)・収集資料-Guide to the Oceanographic Museum Monacoトゥーロン下水処理場AMPHITRIA・面会者M. Andre MAITREJEAN (GENERALE des EAUX Usine de depollution de CapSicie)Olivier Le BRUN Ph. D. (CREOCEAN-Agence P.A.C.A., http://www.creocean.fr/)・収集資料-下水処理場AMPHTRIA の概要パンフレット(工事、規模、能力等)-CREOCEAN の技術パンフレット-その他地中海大学マルセイユ海洋センターUNIVERSITE DE LA MEDITERRANEECENTRE D’OCEANOLOGIE DE MARSEILLE (http://www.com.univ-mrs.fr/)・面会者M. Lucien LAUBIER, PR., M. Christian GRENZ, PR.・収集資料-Evolution d’un site marin soumis a un rejet urbain. Synthese bibliographique1960-2000-Service d’observation en milieu littoral (SOMLIT), Bilan 1998-2000- Prospective2001-2002-Surveillance du Milieu Marin, Travaux du Reseau National d’Odservation de laqualite du milieu marin, Edition 2000-Mortalite massive d’invertebres marins: un evenement sans precedent enMediterranee nord-occidentale-La Vie et l’Oeuvre Scientifique de Jean-Marin Peres-OCEANOLOGIE, actualite et prospective-Guide des Stations Marines176パリ第6 大学海洋観測所(Villefranche-s-Mer)「UNIVERSITE P et M CURIE – INSU – CNRS, OBSERVATOIREOCEANOLOGIQUE」は、Centre National de la Recherche Scientifique(CNRS)に所属し、1884 年に設置された歴史のある海洋観測所で、CNRS の研究者や教育研究者ら100 人余りが在籍している。今回の訪問では、「STATION ZOOLOGIQUE」を訪問し、海洋生物学のNIVAL 博士とGORSKY 博士に面談、話を伺う機会を得た。写真 0-1 GORSKY 博士から「尾虫類が生態系に与える影響」について説明を受ける(右から、中田委員長、NIVAL 博士、GORSKY 博士)NIVAL 博士は、様々な角度から海の自然現象を継続的に調査している。特に、基礎生産、生物の生産力、生物と海洋環境の関係、食物網のパラメータとモデリングを主要なテーマとしている。観測所の地先海域では、鉛直方向のプランクトン分布を毎週観測し、データを蓄積している。プランクトンの鉛直観測には、Marine Video Profilor(図0-5)が使われ、映像と同時に光学的測定を行い、水温、塩分等も測定している。観測結果は、IFREMER ともネットワークで共有しているとのことである。GORSKY 博士は、このビデオシステムを用いた研究者で、「尾虫類(オタマボヤの類)が生態系に与える影響」の成果を発表している。東京湾などでもミズクラゲの大発生が問題となっているが、同様の現象として興味深い。生物の種類は異なるが、有用魚介類が利用できない尾虫類の食物網への入り込みは、食物連鎖の時間や高次への受け渡しをショートカットする結果となり生態系の成り立ちを変化させる可能性がある。我が国においても動物プランクトンを大量に摂食し、高次の生物への栄養塩の受け渡しに障害を与える可能性のあるクラゲの研究が必要と思われる。「尾虫類の生態系に与える影響」研究は、1998 年9 月から2001 年8 月の計画で、EC委員会の支援で実施されているプロジェクト(MAS3-CT98-0161)である。177Marine Video ProfilorDYFAMED results.Long term survey of particles (>0.15mm) and of the temperature(C)In the water column.52km of Nice, France.For more details, please contact gorsky@ccrv.obs-vlfr.fr図0-5 Marine Video Profilor と鉛直測定結果の事例(ホームページより)Particles in strobo light beam andzooplankton inspot lights178ニース大学沿岸海洋研究所(Nice)ニースの海岸線から少し内陸に入ったところにニース大学のキャンパスがある。「LABORATOIRE ENVIRONNEMENT MARIN LITTORAL(LEML)」は、キャンパスの正門を入った右手の丘の上の建物にある。LEML 所長のMEINESZ 博士の歓迎を受けた。LEML は、博士を含め9人の研究者、研究生で構成され、沿岸域の藻場や潮間帯生物、生態系の調査研究を行っている。この研究室のメンバーは、全員がダイビングなどフィールドの調査に携わり、沿岸域の生物や環境を体感している。写真0-2 LEML のメンバーMEINESZ 博士は、地中海の海草(Posidonia)研究の権威で、外来海草であるtaxifoliaの繁殖がフランス地中海沿岸の藻場生態系に影響を及ぼすことを懸念している。沿岸域の藻場の調査は広域に及び、フランス沿岸でもモナコからマルセイユ近くまで200kmにも及ぶ。外来海草は、船舶や漁具によってもたらされ、沿岸域の風の吹き方、温暖化などの生息環境条件の変化で在来種を駆逐し、生息範囲を拡大させているようだ。博士らは、外来海草の繁殖に対して広く注意を呼びかけ、在来の藻場やその生態系を保全する努力をしている。また、THIBAUT 研究生は、taxifolia の分布の拡大をモデル解析し、勢力の拡大を予測する試みを行っている。このように、沿岸域の環境の現状把握を179丹念に行い、将来予測にも踏み込み研究を進める一方で、広く啓蒙活動にも参加していることは見習うべきところがある。Herbiers à Posidonia oceanica envahis par Caulerpa taxifolia. Gauche : touffe de P.oceanicaEntourèe de C.taxifolia ; droite : touffe de P.oceanica pènètrèe par C.taxifolia (Photos A.einesz).写真 0-3 在来海草のPosidonia と外来海草のTaxifolia(ホームページより)図0-6 Taxifolia の分布拡大予測フローと予測成果のパネルまた、ニース前面の海岸線、潮間帯における生物観察マップを作成し(写真0-4)、環境の変化を把握している。調査は、約20km に及ぶ海岸線を20m 毎に区切り、出現生物を観察記録するシンプルなものであるが、夏場に1月かけて作成するマップには説得力がある。「多くの測定をする必要はない。簡単なチェックを重ねることで環境の状態が見えてくる。」という話であった。50 種程度の指標を観察し続けているようである。180他にも、web サイトで生物の検索ができるように写真や同定のポイントなどを整理し、一般市民が生物や環境に正確に触れられるようにする努力が進められていた。写真 0-4 ニース前面の海岸線、潮間帯における生物観察マップモナコ海洋博物館(Monaco)モナコ海洋博物館は、ALBERTⅠ世が1910 年に建造したもので、海洋学研究のメッカ的存在である。博物館には大公の海洋調査、生物サンプルのコレクションなどが展示され、歴史を感じる。潜水艇などの展示は、必要と好奇心から創意工夫した当時の海洋調査への並はずれた熱意を感じる。また、水族館では地中海の生物が展示され、観光スポットとなっている。水族館で使用されている水槽には、Closed system aquarium(図0-7)があり、水槽内部で物質循環がなされている画期的なものとして紹介されている。日本でもモナコ水槽としてペットショップなどが扱っているようである。Closed system aquarium は、水槽内に自然の生態系(バクテリアを含む)を創り上げ、排泄されるアンモニア態窒素を好気性バクテリアが硝酸にし、それを嫌気性バクテリアが窒素ガスと酸素に分解する仕組みで、これらのバクテリアの存在が何らかの方法でコントロール(バランス)している水槽とのことである。詳細なメカニズムは秘匿されているのでわからないが、生態系が成立しているため、給餌も不要とのことである。181図 0-7 Closed system aquarium の解説下水処理場(AMPHITRIA)(Toulon)AMPHITRIA 下水処理場は、Toulon 市からの下水をSicie 崎で処理する大規模なもので、このような下水処理場は、地中海側に4つ(ニース、マルセイユ、モンプリエ)存在する。AMPHITRIA はこのうち完全な密閉処理を行う処理場で、最先端のものと言うことである。Sicie 崎は、もともとToulon の下水を放流していたところで、下水はblack water といわれ、濁水が海域に拡散していた。処理場は1997 年から稼働し、現在の稼働率は60%とのことである。Closed system aquarium(MicrocEan® process)Corals are very sensitive to high nitrate levels in sea water. They willonly live successfully in aquaria with water of an exceptional quality,obtained thanks to original and efficient biological filtration systems.Organic wastes, like decayed plant material or fish excretory products,break down into nitrates (NO3) in several under the action ofaerobic bacteria. In turn, these nitrates are transformed by anaerobicbacteria into innocuous gaseous nitrogen (N2) and oxygen (O2).182HIER,Crique du Cap Sicie、pollue、eAUJOURD’HUI写真 0-2 下水処理場前面の濁水の拡散(左が処理場建設前、右が現在)下水処理場前面海域の環境モニタリングは、面談したCREOCEAN(環境コンサル)が担当し、10 年間の契約で1997 年から継続している。モニタリング調査の一括契約については、調査データの質を維持するため重要な要素である(日本では単年度契約で、調査コンサルが変わることがあり、データの継続性に疑問が残る場合がある)。環境モニタリングは、前面海域の17 点で行われ、窒素、リンなどの栄養塩物質、重金属類、ベントス(食性別に指標種の追跡と多様性)を夏季1回行っており、1997 年と2000 年の調査結果を比較してモニタリング結果を中間的にまとめていた。具体的な資料は入手できなかったが、評価基準として重金属類7項目を使って改善率のようなものを判定していた。ID=Σ重金属測定値/Σ重金属過去最大値地中海大学マルセイユ海洋学センター(d’Endoume Marseille)「CENTRE D’OCEANOLOGIE DE MARSEILLE」は、CNRS に所属し、1889 年に設置された歴史のある海洋学センターで、CNRS の研究者や教育研究者ら100人余りが在籍している。調査研究は、1) 海洋の生産性、2) バクテリアの役割、3) 微粒物質の生物学的輸送、4) 沿岸の食物網、5) 生態系と多様性、6) 生物の生息環境の6つに分かれている。今回の訪問では、センター長のLAUBIER 博士と生物部門の責任者であるGRENZ 博士に面談、話を伺う機会を得た。183写真 0-6 左;海洋学センター本館(創設時とほとんど変わらない)、右;本館屋上で(中央がLAUBIER 所長、左がGRENZ 博士)モニタリング調査に関しては、ニース大学と同様にPosidonia の観察ネットワークに参加し、分布図作成を行っている。また、マルセイユの下水処理場から排出されるスラッジを使って藻礁を作成し、藻場造成を試みている。マルセイユの下水処理場前面海域での観測では、汚濁海域の変化を追跡している。藻礁はこの海域の西側に設置されている。潮間帯についても生物生息密度を調査し、分布に関する情報を蓄積している。184▲Evolution des communautés benthiques de substrats meubles dans le secteurde Cortiou de 1966 à 1997 entre 5°19'50 et 5°27'50 E.図 0-8 マルセイユ廃棄物処分場前面海域の環境の変遷(1966 年から続けられている)185海域ではマルセイユ前面の海域で、1994 年から35 点の横断鉛直観測を行っており、観測項目は、水温、塩分、pH、DO、クロロフィル、窒素、リンで、我が国の調査内容と大きく違わない。また、気象変動により、風による混合が小さくなり水温が上昇したため、岩礁部の珊瑚や海綿が死滅した。これを受けて、マルセイユ沖に鉛直断面を設定して水温の常時監視を継続しているとのことである。写真 0-3 水温上昇に伴う海綿の死滅例海洋環境の健康については、流域の状態、生物量、生息密度、多様性が重要で、生物の活力を酵素の分泌などで調べるのも一つの方法ではないかとのことであった。また、生物相については全体を見るだけではなく特定の種(指標種)の追跡も有効であるとのことであった。Dates図0-9 下層水温の変化(1998 年と1999 年の対比;1999 年の水温上昇で海綿の死滅が生じた)Figure 4. fluctuations de température enregistrées à 24 m à Carry-le-Rouet en 1998 et 1999 entre le 24 août et le 1er octobre(une mesure toutes les 2 h 30)Moyenne ± écart type―1998:17,3℃ 2,8—1999 : 23,1 ℃ ± 1,5.186まとめ南フランスにおいては、大学の研究機関や民間コンサル、さらにはIFREMER が、モニタリング情報の共有化、連携をはかり、比較的簡単な方法で生物種に着目した調査を継続的に実施している。また、モニタリングの目的が、外来種の移入(在来種の保護)や生物種の鉛直的な分布確認など焦点を絞ったものが多く、簡潔で、継続可能な方法が採用されている。潮間帯の主要な生物を観察によって網羅したモニタリングや外来種の移入状況を他の研究機関と連携してマッピングする調査など、息の長い地道な調査には頭が下がる。峻険な岬の突端まで地下道を貫通し、下水処理場が整備されている。建設に伴う環境影響についてはヒヤリングできなかったが、大胆な手法での環境整備には目を見張るものがある。処理排水のモニタリングは、底質や底生生物に着目した内容で、年間1回の調査ではあるが処理場が完成した以降の環境改善効果を端的に示していた。我が国における閉鎖性海湾の環境モニタリングとして取り入れるべき内容としては、在来生物の継続的な観察、潮間帯などの身近な生物の観察によるマッピング、海洋構造(水温分布など)に着目した鉛直断面の連続観測、官民の協力による観測体制とネットワークの構築などで、その特徴は下記のとおりである。外来の侵入生物の分布拡大に関するモニタリング(主にニース大学)・潜水観察による外来種の分布確認・啓蒙活動による在来種の保護・マルセイユ海洋学センターなどとの連携による広域分布の把握・着生、拡大過程のモデリング潮間帯生物に着目した長期継続的なモニタリング(ニース大学)・年1回の潜水観察及び踏査による潮間帯生物の分布確認・比較検討による環境変化の把握・生物同定情報のホームページ公開鉛直断面の継続観測(マルセイユ海洋学センター、パリ第VI 大学)・気候-海洋(水温)-生態系(海綿)の変化を見るための水温観測(マルセイユ海洋学センター)・プランクトン、アペンディキュラリアの光学的鉛直観測と海洋構造(水温、塩分等)の同時観測(パリ第VI 大学)187官民の協力、ネットワークの構築・高度下水処理排水の影響モニタリング(コンサル-大学-IFREMER)・底質や底生生物の継続的モニタリング・外来生物種の分布拡大などの共有その他;スラッジを利用した藻礁設置による藻場造成(マルセイユ海洋学センター)・廃棄物処分場前面海域の長期的環境変化モニタリング・藻礁設定による環境修復188北海、バルト海等における海洋環境の取り組み調査の概要日本における海洋環境モニタリングのあり方を検討するに当たり、オランダ、ドイツ、デンマークの研究機関、環境行政機関を訪問し、海洋環境への取り組み、モニタリング調査の実際についての情報、事例を見聞、収集した。<参考資料;訪問趣旨>OUR VISIT TO EUROPE- Ship & Ocean Foundation Study Team -29/8-7/9/2001TITLESTUDY ON THE EFFECTIVE ENVIRONMENTAL MONITORING IN ENCLOSED COASTAL SEASVISITING LIST・30/8/2001;The Netherlands Institute of EcologyCenter for Estuarine and Coastal Ecology・31/8/2001;The Netherlands Institute of Sea Research・ 3/9/2001;The Alfred Wagener Institute Foundation for Polar and Marine ResearchBiologische Anstalt Helgoland・ 4/9/2001;International Council for the Exploration of the Sea・ 5/9/2001;National Environmental Research Institute of DenmarkBACKGROUND OF THE PRESENT STUDYIn Japan, coastal marine environmental monitoring programs have commenced since 1970s when marinepollution became obvious by increased pollutant loads. These monitoring programs have been carried out byrelevant governmental organizations and municipal governments in the polluted water areas, coastal sea areasand rivers.These monitoring programs, however, have not developed to the satisfactory level for the marine ecosystemmanagement. Every existing monitoring programs run independently for specific purposes and has not beencoordinated together. In addition, biological monitoring has not been fully conducted, though the waterquality has been monitored in detail.The present study aims to propose a grand design of the marine environmental monitoring program in thefuture. The methodology for monitoring material fluxes will be highlighted as an important basis for theenvironmental evaluation in the monitoring framework.SCOPE OF THIS STUDYTo enjoy various benefits given by the sea continuously in the future of our lives, it is necessary to conserveecological function and sustain biological production in the sea. However, anthropogenic impact has beendisturbing it. We are therefore planning to watch “the level of health of the sea” to ensure the proper functionand sustainability of the sea. In particular, we seek for a way to recover the “health of the sea” in enclosedcoastal seas, which have been already polluted by various human activities in the past.The goal of the present study is to make clear the concept for monitoring the healthiness of the sea:・Definition of the “healthiness of the sea”.・Set-up of indicators for the “healthiness of the sea”.・The criteria to evaluate the “healthiness of the sea”.・Proposal of a concept and methodology for evaluating “health of the sea”.INFORMATION TO BE COLLECTEDBasic concept of your environmental monitoring program;・How the “function of the sea” is understood ?・Which environmental information is necessary for marine environmental conservation and restoration?・By what system, the environmental information in the sea is collected ?・What is the philosophy, on which investigation is based ?・How is the environmental information processed and analyzed ?・How is the environmental information managed and opened to public ?・What is the organizational structure to obtain environmental information ?・What kind of outcome they make ?・Any other suggestion(s)189オランダでは、デルタ地帯の生態系を研究しているオランダ生態研究所、河口・沿岸生態センター(Netherlands Institute of Ecology-NIOO, Center for Estuarine andCoastal Ecology-CEMO)、主にワッデン海や外洋をフィールドとしているオランダ海洋研究所(Netherlands Institute for Sea Research-NIOZ)、ドイツでは、主に北海やワッデン海をフィールドとしているウェグナー極地・海洋研究財団-ヘルゴランド生物学研究所(Alfred Wegener Institute Foundation for Polar and Marine Research-AWI,Biological Institute on Helgoland-BAH)、デンマークでは、国際的な海洋研究に先駆的役割を果たし、今でも北海の環境や漁業をリードする国際海洋開発委員会(International Council for the Exploration of the Sea-ICES)、データセンターの役割を持つ国立環境研究所- 海洋生態部局( Ministry of Environment andEnergy-National Environmental Research Institute-NERI, Department ofMarine Ecology and Microbiology)、これからのヨーロッパにおける環境問題に中心的に係わると思われるヨーロッパ環境機構(European Environment Agency-EEA)を訪問し、それぞれの研究・行政機関における環境モニタリングへの取り組みやその為の工夫などについてヒヤリングし、貴重な資料を入手することができた。図0-1 調査訪問先NIOO-CEMONIOZAWI-BAHNERIICESEEA190調査員長崎大学水産学部 中田英昭教授シップ・アンド・オーシャン財団海洋政策研究部 大川光課長代理国土環境(株)環境技術本部 平野拓郎主任研究員(JAPAN SHIP CENTRE 近藤敏和次長)期間平成13 年8 月29 日(水)~平成13 年9 月7 日(金)主な訪問先、面会者及び収集資料オランダ生態研究所、河口・沿岸生態センター(オランダ)NETHERLANDS INSTITUTE of ECOLOGY (NIOO),CENTRE for ESTUARINE and COASTAL ECOLOGY (CEMO)(http://www.nioo.knaw.nl/)・面会者Dr. Herman Hummel (Senior Scientist Marine Ecology, Co-ordinator MonitoringTaskforce)写真 0-1 デルタ計画と生態系の変化について説明するHummel 博士191・収集資料-Progress Report 1998-The Oosterschelde Estuary (The Netherlands): A Case-Study of a ChangingEcosystem-Atlas of the Zoobenthos of the Dutch Continental Shelf-Implementation and Networking of large-scale long-term Marine Biodiversityresearch in Europe-BIOMARE-同上、プレゼン資料-Human impact studies in SW Netherlands by means of macrobenthosmonitoring: limitations and solutions(プレゼン資料)-その他オランダ海洋研究所(オランダ)NETHERLANDS INSTITUTE for SEA RESEARCH (NIOZ)(http://www.nioz.nl/)・面会者PhD. Jaap van der Meer (Marine Ecology)PhD. Henk W. van der Veer (Marine Ecology)PhD. Rob Dekker (Marine Ecology)PhD. R. Daan写真0-2 NIOZ 玄関でMeer 博士と192・収集資料-DYnamics through Natural and Anthropogenic causes of Marine Organisms– DYNAMO-Van der Meer, J., (1997) Sampling design of monitoring programmes for marinebenthos: a comparison between the use of fixed versus randomly selectedstations. Journal of Sea Research, 37, 167-179.-De Vooys, C.G.N.,Van der Meer, J., (1998) Changes between 1931 and 1990 inby-catches of 27 animal species from the southern North Sea. Journal of SeaResearch, 39, 291-298.-Van der Meer, J., (1999) Keeping things in order: multivariate direct gradientanalysis of a strongly fluctuating benthic community. Journal of Sea Research,42, 263-273.-Van der Meer, J., Beukema, J.J., Dekker, R., (2000) Population dynamics oftwo marine polychaetes: the relative role of density dependence, predation,and winter conditions. ICES Journal of Marine Science, 57, 1488-1494.-Van der Meer, J., Piersma, T., Beukema, J.J., (2001) Population dynamics ofbenthic species on tidal flats: the possible roles of shorebird predation.Ecological Studies, 151, 317-335.-Van der Meer, J., Beukema, J.J., Dekker, R., (2001) Long-term variability insecondary production of an intertidal bivalve population is primarily a matterof recruitment variability. Journal of Animal Ecology, 70, 159-169.-Van Damme, C.J.G., Van der Veer, H.W., (2001) The nursery function of theWesternscheldt for fish and crustaceans.-Dekker, R., Beukema, J.J., (1993) Dynamics and growth of a bivalve, Abretenuis , at the northern edge of its distribution. Journal of the MarineBiological Association of the United Kingdom, 73, 497-511.-Beukema, J.J., Cadee, G.C., Dekker, R., (1998) How two large-scale“Experiments” illustrate the importance of enrichment and fishery for thefunctioning of the Wadden Sea ecosystem. Senckenbergiana maritime, 29, 37-44.-Dekker, R., Beukema, J.J., (1999) Relations of summer and winter temperatureswith dynamics and growth of two bivalves, Tellina tenuis and Abra tenuis , onthe northern edge of their intertidal distribution. Journal of Sea Research,42, 207-220.-Beukema, J.J., Essink, K., Dekker, R., (2000) Long-term observations on the193dynamics of three species pf polychaetes living on tidal flats of the WaddenSea: the role of weather and predator-prey interactions. Journal of AnimalEcology, 69, 31-44.-Beukema, J.J., Dekker, R., Essink, K., Michaelis, H., (2001) Synchronizedreproductive success of the main bivalve species in the Wadden Sea: causes andconsequences. Marine Ecology Progress Series, 211, 143-155.-Daan, R., Booij, K., Mulder, M., Van Weerlee, E.M., (1995) A study on theenvironmental effects of a discharge of drill cuttings contaminated with esterbased muds in the North Sea. NIOZ-Rapport 1995-2.-Daan, R., Bergman, M.J.N., Duineveld, G.C.A., (2000) Macrobenthos op loswalnoord en noordwest in 1999, 3 jaar na verplaatsing van het stortingsgebied.NIOZ-Rapport 2000-2.-Daan. R., Mulder, M., (2000) The macrobenthic fauna in the Dutch sector ofthe North Sea in 1999 and A comparison with previous data. NIOZ-Rapport 2000-7.-その他ウェグナー極地・海洋研究財団-ヘルゴランド生物学研究所(ドイツ)ALFRED WEGENER INSTITUTE FOUNDATION for POLAR and MARINERESEARCH (AWI)BIOLOGICAL INSTITUTE on HELGOLAND (BAH)(http://e-net.awi-bremerhaven.de/BAH/)写真 0-3 Helgoland へ向かう高速船乗り場(ハンブルグ港)194・面会者Prof. Dr. Friedrich Buchholz (Pelagic Ecosystems. Head of the Marine Station)Dr. Karen Helen Wiltshire (Pelagic Ecosystems)Dr. Cornelia Buchholz (Benthic Ecosystems)・収集資料-Research Highlights 2001-その他国際海洋開発委員会(デンマーク)International Council for the Exploration of the Sea (ICES)(http://www.ices.dk/)・面会者Mr. Jorgen Norrevang Jensen (Environmental Data Scientist)写真0-4 Mr. Jensen のデスクでWeb サイトの説明を受ける(この時、EEA を紹介される)・収集資料-ICES Newsletter, 37-Report of the working group on ecosystem effects of fishing activities-2001 overview of ICES committees and subsidiary groups, their shadowing bysecretariat staff, schedule of ICES meetings and list of CM codes-ICES cooperative research report No. 241. Report of the ICES advisorycommittee on the marine environment, 2000195-ICES cooperative research report No. 242. Report of the ICES advisorycommittee on fishery management, 2000. Part 1-3-その他国立環境研究所-海洋生態部局(デンマーク)Ministry of Environment and Energy-National Environmental Research Institute(NERI)-Department of Marine Ecology and Microbiology(http://www.dmu.dk/forside.asp)・面会者Ph.D. Stiig Markager (Senior Scientist Aquatic Plant Ecology Bioptic)写真0-5 NERI 玄関前でMarkager 博士と・収集資料-NERI Report and activities 2000-2001-Environment of the Baltic Sea area 1994-1998-Coastal eutrophication and the Danish national aquatic monitoring program(プレゼン資料)-Daniel J. Conley, (2000) Biogeochemical nutrient cycles and nutrientmanagement strategies. Hydrobiologia, 410, 87-96.-Daniel J. Conley, Hanne Kaas, Flemming Mohlenberg, Bjarke Rasmussen,Jorgen Windolf, (2000) Characteristics of Danish Estuaries. Estuaries Vol.23-6,820-837.196-Daniel J. Conley, Alf B. Josefson, (2001) Hypoxia, Nutrient Management andRestoration in Danish Waters. Coastal and Estuarine Studies, 425-434.ヨーロッパ環境機構(デンマーク)European Environment Agency (EEA)(http://www.eea.eu.int/)・面会者Mr. Niels Thyssen (Project Manager Inland Waters)・収集資料-European freshwater monitoring network design-Sustainable water use in Europe. Part 1: Sectoral use of water-Groundwater quality and quantity in Europe-State and pressures of the marine and coastal Mediterranean environment-Sustainable water use in Europe. Part 2: Demand management-Directive of the European parliament and of the council 2000/60/ECestablishing a framework for community action in the field of water policy-Environment in the European Union at the turn of the century, Offprint: Coastaland marine zones-EEA multiannual work programme 1999-2003-a brief overview-Inter-Regional Forum, Second meeting report of European marine conventions-Integration of information on Europe’s marine environment-Marine and coastal environment annual topic update 1999-Marinebase, Database on aggregated data for the coastline of theMediterranean, Atlantic, North Sea, Skagerrak, Kattegat and Baltic-EUROWATERENT, The European environment agency’s monitoring and informationnetwork for inland water resources technical guidelines for implementation-Pilot implementation EUROWATHRNET-groundwater, State of groundwater inselected groundwater bodies with reference to nitrogen-European topic center on inland waters, Annual topic update 2000-Environmental signals 2001, European Environment Agency regular indicatorreport-Developing EEA priority data flows for transitional, coastal and marine water[Working document-7 September 2001]197-Development of a Core Set of Indicators-State of Play September 2001-その他写真 0-1 Mr. Thyssen からEEA の役割を聞く訪問先の概要オランダ(8 月29 日~31 日)・オランダ生態研究所- 河口・沿岸生態センター( NIOO-CEMO ) -2001.8.30.13:30~16:00生態研究所は、主に個々の動植物、生物群集の生態及び生態系に関する研究を行っている。同研究所は、本部と河口・沿岸生態センター、陸水学センター、陸生センターの3つのセンターからなり、200 人を超えるスタッフがいる。3つのセンターは1950 年代にそれぞれ別組織として設立されたが、1992 年に同研究所に一本化された。同研究所はオランダ芸術・科学王立アカデミーの傘下にあり、年間予算は約11億円で、同アカデミー傘下の最大の研究機関である。5年に一度、世界各国の専門家から外部評価を受けている。河口・沿岸生態センターは、ロッテルダム-アントワ-プ間のデルタ地帯の生態系に関する研究を実施している。同センターで実施しているモデル解析、モニタリング等について説明があった。これらの活動により取得されたデータや研究成果は、政府の政策決定に活用されている。本年度予算は昨年度に比べ2.5%削減されているが、大学が40%削減されているのと比べ削減率は低くなっている旨の説明があった。198・オランダ海洋研究所(NIOZ)-2001.8.31.13:00~16:00オランダ海洋研究所は1876 年7 月に海洋動物局として設立され、現在では欧州の主要な海洋学研究所の一つとなっている。同研究所は、オランダ科学研究協会傘下の研究機関であり、外洋や大陸棚における海洋研究を担当している。主な研究テーマは、 流動と物質輸送 土砂堆積と物質輸送 生物生態、群集生態及び生物多様性 海象変化と気候変動の4テーマに集中した組織作りがなされている。この主要テーマをベースに、今後5年間の優先分野としては、大陸棚における物質輸送プロセスのモデリングと海象変化、微小生物のモニタリング及びデータ管理がある。また、同研究所ではデンヘルデンとを結ぶフェリーを利用した連続観測を行っている。観測結果はフェリー内の軽食堂でモニターできるとともにWeb サイトにもオンラインされている。観測項目は、水温、塩分、流向、流速、濁り、水深である。199Continuous observations of oceanographical datafrom TESO ferry 'Schulpengat' on the trajectDen Helder - TexelIn a coöperation between NIOZ(Netherlands Institute for SeaResearch) and TESO (Texels EigenStoomboot Onderneming), the ferrySchulpengat (see picture; in front) is used as a platform to obtainextensive data series on oceanographical parameters in theMarsdiep area, i.e. one of the inlets between the North Sea andthe Wadden Sea.The ferry sails the transect with an interval of 30 minutes, dailystarting at 06.00 and ending at 22.00.Data are directly presented to the public in the lunchroom of theferry Schulpengat and hourly, when the ferry is in the Texelharbour, transmitted to NIOZ and presented on Internet.The project has been started in the framework of the UN- Year ofthe Ocean 1998 which aims at an increasing awareness of theimportance of the ocean for the climate (and life) on earth.Web ページから(www.nioz.nl/en/deps/fys/niozteso/enhtml/main.html)ドイツ(9 月1 日~3 日)・ウェグナー極地・海洋研究財団- ヘルゴランド生物学研究所(AWI-BAH) -2001.9.3.13:00~16:00ヘルゴランド生物学研究所は、主に北海及びワッデン海に焦点を当てた海洋生物に関する基礎研究を実施しており、この研究を通して海洋生態系の機能維持に貢献し200ている。同研究所は100 年以上の歴史を持っているが、1998 年にアルフレッド・ウェグナー極地・海洋研究財団に統合された。同研究所は1962 年より北海及びバルト海において長期間生物観測を実施している。同研究所の予算の90%は政府からの支出である。ドイツにおいても沿岸域管理(Coastal Zone Management)の考え方は明確にはなっていないとのこと。最後に同研究所付属の水族館を見学した。写真0-7 AWI-BAH 付属の水族館(模型);水族館とはなっているが、生物飼育などの実験棟も兼ねているようだ・ハンブルグ港魚市-2001.9.2.8:00~10:00ハンブルグ港では、毎週日曜日に魚市が開催される。“魚市”とはなっているが、野菜、フルーツなどの食料品、観葉植物、衣料品など多くの物が売られている。“市”の規模は大きく、市民や観光客で大変賑わっている。魚屋は昔から魚市が開催されていた地域に集中している。商品は、北海やバルト海の近海物を扱っているようだ。ヨーロッパウナギの薫製、サーモンなどが主な売れ筋と思われる。写真 0-8 ハンブルグ港の朝市(サバ、タラ、カレイなど日本でもなじみの魚が多くみられるが、その横でヨーロッパウナギの薫製が次々と売れていく)201デンマーク(9 月4 日~6 日)・国際海洋開発委員会(ICES)-2001.9.4.13:00~16:00ICES は北大西洋の物理・化学・生態システムに関する研究の推進、普及を目的に1902年に設立された政府間組織である。同委員会は環境に与える人間のインパクト、特に漁業への影響について助言を行っている。メンバー国は欧州諸国を中心に19 カ国。ICES自身では行っていないが、プロジェクトの推進や各国からのデータのとりまとめや提供を行っている。主な活動は、 北大西洋における人間活動による影響に関する助言・提言 各国海洋データの収集、蓄積-海洋学データ(塩分、海水温度等)、漁獲統計、漁業資源評価、生態系、沈殿物への汚染、魚の病気、生態系データで、欧州で現在行われている以下の海洋モニタリングを対象に評価活動を行っている。 HELCOM (Helsinki Commission) OSPAR (Quality status Report Assessment at various term intervals) National Monitoring and Assessment EEA (European Environment Agency)- based on Water Framework Directive AMAP (Arctic Monitoring and Assessment Program)・国立環境研究所(NERI)、海洋生態部局-2001.9.5.10:00~12:30デンマーク環境研究所は、デンマーク環境・エネルギー省傘下の独立研究機関であり、政策上、行政上及び営利活動上の環境にかかる決定を行う際の科学基礎データの提出が活動目的である。同研究所の運営予算は、50%をデンマーク政府が、残りの50%がEU各国や地方自治体が負担している。同研究所はデンマークのNational Data Center として活動している。デンマークでは1987 年に大規模な漁業資源の破壊があり、政府はこれを契機に漁業資源保護のためのアクションプランを作成した。プランは6年ごとに内容の見直しを行っている。同研究所は最近、2003 年度からスタートするEU のプロジェクトの入札に成功し、EU メンバー各国の学生を受け入れて実施する予定。・ヨーロッパ環境機構(EEA)-2001.9.5.14:00~16:00EEA は1994 年に設立され、EU から予算をもらっている。スタッフ80 名、コンサルタントを含めて約100 名が働いている。EEA の活動は、ICES と同様ではあるが、その守備範囲が環境全般に及んでいることが特徴である。したがって、海洋環境に対しても陸上の活動や河川や地下水を含めた広範な調整が可能となっている。主な活動は以下の202とおりであるが、これらに加え、現在、EUが実施しているWater Frame work Directiveに基づくプロジェクトのとりまとめを行っている。 ネットワーキング 各国の報告の監視 EU 及びメンバー国の政策立案、実行活動の支援EEA は、ICES と連携をとりつつ、MAP(Mediterranean Action Plan), BSEP(BlackSea Environment Programme)をも含めヨーロッパ全域をカバーしている。EEA では北海、バルト海をはじめとして地中海、黒海などヨーロッパを取り巻く海域の環境情報をGIS データベースで整理している(図は硝酸態窒素の分布)。203「海の健康」に関する考え方等調査結果それぞれの訪問先では、「海の健康」に関して、その捉え方、指標、評価基準、モニタリング方法などについてヒヤリングした。「海の健康(healthiness of the sea)」については、一様に「大変難しい課題」との反応であった。海の環境の何に着目するかで変わる。優先させる環境を何にするかで定義が変わる。経済と環境の両立が大切。全体的な生物相に変化がないこと(エネルギーフローが変わらないこと)。種を特定して生産を見るのも大切。デンマークの環境研究所で紹介された富栄養化に関するモニタリング計画では、負荷から生物生産に至るフローが示されており、物質循環に着目しているが、大気中からの負荷も対象としている(図 )。図 0-2 物質循環の流れ(Coastal Eutrophication and the Danish National AquaticMonitoring Program のConcept)PrimaryChlorophyllHypoxia, ShadingmacrovegettioBlooms ofphytoplanktoChange inbiologicastructurConc. of inorganic N andNutrientrunofffromfroatmospherfrom mixingandhorizontatransporNutrient loadlandfromatmospheremixingsedimentshorizontaltransportproductionconc.anoxia ofmacrovegeta -tionofphytoplanktoninbiologicalstructureof inorganic N and P204「海の健康の指標」については、生態系の食物連鎖、生物多様性が異口同音に帰ってきたが、とりわけ底生生物を中心とした底層環境に着目したモニタリングの重要性が強調されていた。底生生物の種及び群集(底生生物相) 底生系(Bernice system)エネルギーフロー 生物生産 底生生物と基礎生産(プランクトン)汚濁負荷や底層の溶存酸素量また、デンマーク(国立環境研究所)では、沿岸の富栄養化に関するモニタリングの指標項目として、冬の窒素濃度 夏のクロロフィル量 生物生産 植物生産の限界水深底層の溶存酸素量 底質の汚染と生物 生産不能(環境ホルモン?)を、具体的な例としてあげていた。「海の健康の評価」については、具体的な手法を得るには至らなかったが、長期的・広範囲な生物モニタリングの情報を、時系列で追跡することでわからなかったことが見えてくることが共通している。今回訪問した研究機関では、例外なく10 年以上の継続した生物モニタリングの情報を持ち、種類数、現存量などの変化が整理されていた(図0-3)。オランダでは「アメーバ法」が評価手法として多用(国のスタンダード)されているが、これは長期的な、しかも健全な(人為的負荷がない)頃の生物データがあることが普及しているポイントと考えられる。オランダの海洋研究所の玄関には1950 年代から10 年ごとの生物相の移り変わりがパネルにされていた(図0-4、写真0-9)。写真 0-2 NIOZ 玄関のパネルの生物相変遷の図(1950 年代からの変化が表示されている)205図 0-3 オランダGrevelingen における底生生物の出現状況変化(1994 年から貝類から多毛類の出現に変わった)図 0-4 アメーバ法の一例(代表的な出現種の基準年の状態を円で表し、比較年の状態をその割合で表示している)0 tot 2m diep2 tot 6m diep6 tot 45m diepGrevelingen - Westelijk deel - plot 1Cerastoderma eduleCampagnesNajaar 1990Voorjaar 1991Najaar 1991Voorjaar 1992Najaar 1992Voorjaar 1993Najaar 1993Voorjaar 1994Najaar 1994Voorjaar 1995Najaar 1995Voorjaar 1996Najaar 1996Voorjaar 1997Najaar 1997Voorjaar 1998Najaar 1998Voorjaar 1999Najaar 1999Biomassa mg/m25,0004,5004,0003,5003,0002,5002,0001,5001,00050000 tot 2m diep2 tot 6m diep6 tot 45m diepGrevelingen - Westelijk deel - plot 1Nereis succineaCampagnesNajaar 1990Voorjaar 1991Najaar 1991Voorjaar 1992Najaar 1992Voorjaar 1993Najaar 1993Voorjaar 1994Najaar 1994Voorjaar 1995Najaar 1995Voorjaar 1996Najaar 1996Voorjaar 1997Najaar 1997Voorjaar 1998Najaar 1998Voorjaar 1999Najaar 1999Voorjaar 2000Dichtheid7006005004003002001000206「モニタリング」に関しては、底生生物を中心とした生態系のモニタリング(図0-5、表0-1、表0-2、表0-6)の重要性とモニタリング情報の活用、公開、共有の重要性が強調された。図 0-5(1) オランダにおけるモニタリングポイントの一例(北海では全域を網羅して生物相のモニタリングを実施している。ライン川河口に広がるデルタ及び沿岸部にはさらに多くのモニタリングポイントやブイ局が設定されている。)207図0-5 (2) ワッデン海の干潟部におけるモニタリングポイント(NIOZ では毎日サンプリングをして出現生物の変遷を記録している)表0-1 デルタにおけるNIOO-CEMO モニタリング項目の一例208表0-2 ドイツ(AWI-BAH)におけるモニタリング実績209Measured parameters• CTD, light, nutrients, oxygen and Chl• phytoplankton taxonomy and abundance• micro- and meso-zooplankton• primary production, P-E curves• biomass and depth limit of macrovegetation• biomass and distribution of benthic fauna• hydrographic modeling• sediment chemistry• contaminants図0-6 デンマークにおけるモニタリングポイント及びモニタリング項目モニタリング情報は、例外なくWeb サイトで公開され、その利用は制限されていない。また、情報が更新されるまでの期間は短く、機器測定などによる項目はオンラインもしくは1週間の内に、生物情報でも早い場合は翌月に、遅くても半年後には公開されている。また、ICES では、HELCOM, OSPER 等の活動を統合したデータベース(データセンター)が機能している。オランダのNIOO-CEMO がデータセンターとなって進め210ているBIOMARE(海洋生物多様性のネットワーク)はヨーロッパ各国の研究機関(25機関)をメンバーとして2000 年から情報の共有化を図っている(図0-7)。図 0-1 BIOMARE の関係研究機関(全ヨーロッパ25 機関)さらに、これからのヨーロッパの環境問題に取り組む機関としてEuropeanEnvironment Agency (EEA)があり、ここでは、EIONET (European EnvironmentalInformation and Observation Network)の開発と管理、環境情報の資料センターの設立、モニタリング報告の出版、環境問題に関する見解の統一を任務とし、環境に関するあらゆる政策の助言、支援を行っている。特に人と電子のネットワーク造りに熱心で、大学などの研究機関や民間会社を含んで情報を公開している。中でもモニタリングデータの解析を若い研究者に奨励し、資金提供していることが特筆される(図0-8)。図0-8 EEA のプログラムの一例(ETC/MCE ; The European Topic Centre on the Marine and Coastal Environment)平成13年度 閉鎖性海湾の環境モニタリングに関する調査研究報告書平成14年3月発行発行 財団法人シップ・アンド・オーシャン財団 海洋政策研究部〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-15-16 海洋船舶ビルTEL 03-3502-1828 FAX 03-3502-2033本書の無断転載、複写、複製を禁じます。 ISBN4-88404-056-2