OPRIについて

公海ガバナンス

「公海のガバナンス研究会」は、明治大学国際総合研究所と海洋政策研究所が共催し、政産官学の専門家で構成する民間の研究組織(共同主査:川口順子元外務大臣、寺島紘士常務理事)です。

この研究会は、2013年春、公海が直面している問題に対処するために世界各国の有識者が参加する世界海洋委員会(Global Ocean Commission共同議長:フィゲロス元コスタリカ大統領、マニュエル南ア大臣、ミリバンド元英国外務大臣、事務局:英国オックスフォード大学サマー・ビルカレッジ)が設立され、日本から川口順子参議院議員(当時)が、これに参加することとなったのがきっかけで発足しました。

それまで日本国内で公海に焦点を当てた議論はあまりなされていなかった事実に鑑み、これを機会に川口氏を囲んで、公海を中心に現在の海洋が置かれている状況や海が抱える問題点について最新の科学研究の成果や各国・国際社会の動きなどを踏まえて研究することが申し合わされました。

海洋関係各分野の専門家が参加して2013年5月28日に第1回研究会、以後、2014年4月まで9回にわたって研究会が開催され、メンバーがそれぞれの専門分野について発表を行い、それらを基にして活発な議論を行いました。それらをもとに提言書の構成を組み立て、メンバーが分担して執筆し、共同主査が取りまとめを行い、政策提言書「公海から世界を豊かに~保全と利用のガバナンス~」を作成しました。

この政策提言書の概要は、次の通りです。

まず、海洋生物多様性、海洋の遺伝資源、温暖化と海洋酸性化、漁業資源、深海鉱物資源を取り上げて、問題の重要性および現状と課題を考察し、具体的な対応策を提案。次に、国際社会における地球サミットからリオ+20にいたる海洋の総合的管理と持続可能な開発に関する行動計画の進展及び国連海洋法条約の下での公海のガバナンスの取組みについて考察し、続いて、わが国の海洋基本法・海洋基本計画を基盤とした海洋政策を公海ガバナンスとの関係に焦点を当てて概観した後、保全と利用のガバナンスがきちんと確立されていない公海を中心に、わが国及び国際社会がとるべき政策を次のように整理して提言しています。

我が国の今後の取組み — 考え方と体制 —

1. 取り組みの四原則

公海における権利と義務の認識/予防的アプローチ/総合的管理及びエコシステムアプローチ/順応的管理

2. 具体的取組み(総論)

海版IPCCの設立/国際機関・政府におけるハイレベル枠組みの設置(海洋に関するハイレベル政府間フォーラムの設置ほか)/東アジア縁辺海の持続可能性に向けたイニシアチブ/わが国の公海問題等への取組み強化(総合海洋政策本部に閣僚レベルの公海チーム設置ほか)/海洋問題についての情報発信/発展途上国支援/人材育成/海洋教育の推進

3. 具体的取組み(各論)

海洋酸性化(研究コンソーシアムの設立、造礁サンゴの品種改良等の適応策、CCS、排出量を「マイナス化」する新技術の研究開発ほか)/漁業(過剰漁獲能力の削減、漁業補助金削減、漁獲証明制度の導入、地域漁業管理機関(RFMO)の機能強化ほか)/生物多様性と遺伝資源(公海の海洋保護区設定を目指す、CoMLに次ぐ国際的共同研究計画の提案、公海の遺伝資源に関する国際条約の検討ほか)/越境海洋汚染/海底資源など

2014年6月13日、共同主査と若干名のメンバーが山本一太海洋政策担当大臣を訪問して当該提言書を提出し、概要を説明しました。さらに同日、記者発表を行いました。

海洋基本法は、「(前略)海洋に関する施策の推進は、海洋に関する国際的な秩序の形成及び発展のために先導的役割を担うことを旨として、国際的協調の下に行われなければならない」(第7条)と定めています。研究会では、わが国が公海問題について先導的役割を担えるように、公海に焦点を当てた議論の盛り上りに貢献すべく活動を強化していくこととしています。また、2015年6月26日、第2次「公海のガバナンスに関する研究会」が発足し、第1回研究会が開催された。第1次「公海のガバナンス研究会」の討議を踏まえ、現在の国際情勢に対応した研究を継続することで合意し、早速BBNJ問題等に関する議論が開始されました。

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