Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第495号(2021.03.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆文明が進むほど自然災害の被害が増大することを指摘したのは寺田寅彦である。彼の弟子たちによれば、寺田は「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉をしばしば口にしていたそうである。2021年2月13日に福島県沖で発生したマグニチュード7.3の地震により宮城県および福島県で最大震度6強を観測した。この地震は忘れる前にやってきた感じであるが、2011年の東日本大震災の余震活動と聞いてさらに驚いた。
◆その東日本大震災後の2020年2月に復旧した南三陸町自然環境活用センター(愛称:南三陸ネイチャーセンター)について、阿部拓三同センター任期付研究員からご寄稿いただいた。ラムサール条約湿地となるためには、9つの国際基準のうち1つ以上の基準に該当することが条件とされる。日本で52番目のラムサール条約湿地となった南三陸町の志津川湾は、北海道の風蓮湖や滋賀県の琵琶湖と並び、国内最多の5つの基準に該当する湿地という。この登録成功の背後に、津波の被害により流出した動物標本や海藻・海草標本の一部がネイチャーセンターの研究者のパソコンに保存されており、志津川湾の生物情報の再構築ができたからだとのこと。ぜひご一読を。
◆八馬稔(公財)東京都公園協会水辺事業部水辺ライン課長より、2021年は30年目を迎えた東京水辺ラインについてご説明いただいた。東京都所有の3 隻の水上バスは、非常時には都の「地域防災計画」のもと、傷病者や医療チーム、救援物資等の輸送を担う防災船としての任務を遂行するが、平常時には、両国を起点として、浅草を経由し、お台場や葛西臨海公園を結ぶ旅客船として活躍している。新型コロナ感染症の影響を受けて、2020年度は運航数の大幅な減少が見込まれるとのことであるが、新型コロナが一刻も早く収束し、リーバーガイドボランティアのガイドを聞きながら水上バスからのんびりと東京スカイツリーや東京タワーを眺めることができる日が再び来ることを願わずにはいられない。
◆東京海洋大学海洋工学部の学生である鶴巻碧衣さんから自らが体験したデンマークの帆船ダンマルク号の航海訓練の様子をご紹介いただいた。ダンマルク号の航海訓練は3カ月にわたりバルト海と北海で行われたとのこと。クオーター制による青、緑、黄、赤の「船内曜日」の4日サイクルに従った同航海訓練のユニークなプログラムについては本誌をご一読ください。海に活躍の場を拡げようとする女性にエールを送りたい。(坂元茂樹)

第495号(2021.03.20発行)のその他の記事

ページトップ