アジア戦略イニシアチブ(ASI)

ポリシー・メモランダム #4

テクノ・ナショナリズムの時代
における日米同盟

共同執筆者:ジェームス・L・ショフ/森 聡


アジア戦略イニシアチブ(ASI)について

日米同盟は、これまでも地域の安全保障と繁栄の礎となってきましたが、日米両国がより積極的な課題に取り組み、同盟関係の深化、拡大、維持を図ることが不可欠となっています。「アジア戦略イニシアチブ(ASI)」では、日米両国の第一線で活躍する安全保障、外交問題の専門家が結集し、日米同盟強化に向けた次なる取り組みの基盤となる具体的な政策提言を行います。新たな政策案を特定し、発展させ、さらに発信することで、日米同盟を今後どのように前進させるかについての両国政府における議論を喚起しようとすることを目指しています。以上の目的を踏まえ、両国の専門家が具体的かつ実行可能な提言を盛り込んだポリシー・メモランダムを合同で執筆し、公表します。ポリシー・メモランダムにおける所見や提言内容はASIグループのメンバー全員で議論されたものですが、個別の具体的な提言は共著者によるものとなっています。
ASIは笹川平和財団の日米交流事業の一環として2017年に立ち上げられたプロジェクトで、ワシントンと東京で定期的に会合を開いています。

はじめに

アメリカと中国の激しい戦略的摩擦が起きている中、テクノ・ナショナリズムが世界で再燃している。30年前の日米貿易摩擦や技術をめぐる競争と比べて、米中間の摩擦は格段に激しい。かつての日米の競争は、同盟国間で比較的短期間のうちに起きたものだったが、今回の米中の競争では、日米が幅広い分野で利益を共有していることもあり、日米が多くの点で同様の政策をとっていると中国がみなしているため、長期化した激しいものとなるであろう。

このメモでは、日米両国が直面する技術開発上の課題を検討し、これらの課題にアクセス制限と共同イノベーションを通じてどのように取り組んでいるのかをまとめ、テクノロジー分野での孤立というリスクを冒さずして国家安全保障と経済安全保障を確保するために検討しうる追加的な措置を提言する。このメモは、日米両国の科学技術の強み、地域的・世界的な共通の利益、そして50年以上にわたる科学の基礎研究分野での協力の実績を踏まえ、こうした課題に対して日米同盟が果たしうる固有な役割に焦点をあてる。

評 価

1. テクノロジーをめぐる競争の出現

  • 大国間競争が、第四次産業革命と並行して発生した。人工知能、ビッグデータ、ロボット工学、高速通信ネットワーク(5G)、IoT (Internet of Things)、合成生物学など、多くの先進テクノロジーがほぼ同時に飛躍的なブレイクスルーを果たしている。アメリカと中国は現在、これらのテクノロジーを駆使して、次世代の軍事力、産業力、そして情報力の強化を図ろうとしている。両大国は、日本(政府、企業、大学)をも巻き込んだ国力をめぐる二国間競争で真っ向から対立しており、日米同盟の経済および安全保障上の利益に直接影響を与えている。
  • 先進テクノロジーを産業・軍事利用する競争が加速している。主要国は、先進テクノロジーを活用した経済成長の促進と競争力の強化に注力している。中国の「中国製造2025」はその代表例と言えよう。さらに、防衛当局や軍も最先端の民間の技術を軍事目的に活用し、軍事的優位性を確保しようとしている。アメリカの国防総省は国防イノベーションを進めており、人工知能、量子技術、極超音速技術などを、軍事利用すべき主要なテクノロジーとして注目している。アメリカのトランプ政権の国家安全保障戦略で言及されている「大国間競争」の再興とは、主として中国とのテクノロジー競争を意味しており、ペンス副大統領は「21世紀の経済の管制高地をめぐる戦いだ」と表現した。また、日本でも、米中のライバル関係の根幹にあるのは、先進テクノロジーをめぐる競争だとの見方が広がっている。1

2. 技術的優位性のための競争の意義

  • 初期段階でのリードを取り戻すのはほぼ不可能かもしれない。歴史的に、技術の進歩は国民の知識を高め、一定期間を経て経済的利益をもたらしてきたが、現在開発中の次世代技術の収益性や熟達度は、これまでよりはるかに小さくなる可能性がある。2 過去に、技術開発者や人気アプリのデザイナーが莫大な報酬を手にしたのは事実だが、しばらくすると製品価格は平準化され、他国の企業も市場に参入し競争することができた(例:自動車産業、原子力エネルギー、コンピューター、半導体、スマートフォンなど)。しかし、いま起こりつつあるデジタル時代においては、早期のデータ独占とともにAI・量子技術の先進的な取り組みを活用すれば、特定の市場を圧倒し、国際競争を事実上不可能とすることもできる。
  • テクノロジーをめぐる競争は、最終的には数十年後の国家成長へとつながる、国家間の戦略的競争の一部を成している。中国への機微技術の移転を制限ないし阻止することは、重要だが戦術レベルの問題だ。外資規制や輸出管理を強化する努力も必要だが、それらは防御的な性質である。軍事力の増強や経済面での競争力の強化を目的に多岐にわたる技術をうまく適用し、さらに安全な情報通信やデータアクセスを拡大することが、競争に勝利するうえで決定的な意味を持つことになる。巨視的な視点に立って適切なエコシステムを設計・確立することがイノベーションを引き起こすカギだ。中国からのヒトや投資の流れを規制していけば、技術イノベーションの促進が遅れるというコストが生じることになり、そこにはトレードオフの関係がある。そこで日米両国が、安全保障が損なわれるような技術移転を阻止しながら、同時にイノベーション・エコシステムを改善・促進していくためには、どの程度の「開放性」が最適なのか、ということが中心的な問題となる。

3. テクノロジーをめぐる競争の形態

  • 広義でのテクノロジー競争は、少なくとも軍事、産業、情報通信の三つの分野で展開している。
    • 軍事防衛当局は、圧倒的優位に立つため、最先端テクノロジーを軍事目的に活用しようとしている。アメリカ国防総省の「防衛イノベーションイニシアチブ (Defense Innovation Initiative)」「防衛イノベーション委員会(Defense Innovation board)」「防衛イノベーションユニット(Defense Innovation Unit Experimental)」などは、軍事技術上の優位を維持しようとする動きの一例であり、AI(人工知能)や5G (次世代移動通信システム)の国防研究・開発費を2021年(予算案)では年間23億ドル以上にまで大幅に増加した。一方、中国は、国家主席自身が強く提唱した、民間の技術イノベーションを軍事利用するための軍民融合なる取り組みを国家的に進めている。
    • 産業主要各国は、先進技術を駆使し、経済成長と競争力の拡大を図ろうとしている。中国は、他国の先進技術を買い、学び、窃取し、それらを「中国製造2025」などの大規模な国家事業を通じて経済成長のために利活用しようとしている。中国は今や、先進技術上位10分野のうち9分野において世界有数の特許出願国となり、近年の相次ぐ投資によって中国のNANDやDRAM半導体の生産量は、2018年の「実質ゼロ」から飛躍的に伸びて、2020年には世界全体の5%にまで拡大している。これに対して、アメリカ政府は、中国の違法な技術移転を阻止するために、外資規制と輸出管理を強化している。同時に、ホワイトハウスの「未来のための産業(Industries for the Future)」 イニシアチブは、アメリカの繁栄を促進し、安全保障を強化する四つの重要なテクノロジーとして、特にAI、先進製造、量子情報科学、5Gを挙げている。トランプ政権の2021年度の予算案では、例えばAI及び量子情報科学などの非国防分野の連邦政府の研究・開発費を2倍に増やすとしている。OECD加盟国全体の研究・開発費は、過去10年だけで毎年2,000億ドルずつ増加している。
    • 情報通信中国の情報通信技術(ICT)は、華為技術(Huawei)など大手通信機器メーカーを通じて、中国の内外に広まっている。いわゆるデジタル・シルクロード構想の下、中国は5G関連の規格や特許を独占しようと試みているほか、海底光ケーブルシステム、5G無線アクセスネットワーク、電子商取引プラットフォーム、クラウドコンピューティングシステムなど、ICT関連のソフトウェアやハードウェアを世界各地へ輸出している。アメリカ政府は、特定の中国のICT機器やサービスを連邦政府のシステムから排除し、独自の5Gネットワークの構築を加速させると同時に、リスクの高い中国ICTベンダーとの取引を拒否するよう他国政府を説得しているが、すでに80か国近くで展開している華為技術の5Gとの苦しい戦いに直面している。さらに、中国は独自のデジタル主権の概念に基づくデータローカライゼーションの要件やその他データ関連のルールを課しているため、データガバナンスの問題が争点化されている。

日米同盟に関わる課題

  • 日米両国は、共通の利益を強固な基盤とし、官民の事業で長年協力を続けてきたが、現在の最重要課題は、不公平な搾取を許すことなく、可能な限りオープンかつ協力的な環境の中で、テクノロジー分野での互いのリーダーシップを維持することだ。このバランスを保つのは難しく、もし失敗すれば、将来的なイノベーションに長期にわたって過度な制約を課してしまうか、他国の成長を効果的に後押ししてしまうこととなる。日本とアメリカは、科学技術の研究に対する投資額(公共と民間)では、世界トップ3に入り、研究者数(人口比)、ハイパースケールデータセンターの数、特許出願数、その他技術力を測る多くの関連カテゴリーにおいて、同種の立ち位置にある。往々にして中国は、トップ3のもう一角を占めており、数年後には日米を抜いてトップの座に就く可能性もないとはいえない。また特筆すべきは、日本がアメリカでの研究開発において、他のあらゆる国よりも多額の資金を投じており、アメリカにおける海外トップメーカーでもあることだ。また、日本とアメリカは中国の貿易相手国の上位二ヵ国である。日米両国は、特に他の国々とも連携することで、多くの点で中国と効果的に競争し、ハイテク分野の未来を形成するための十分な技術力と市場への影響力を持っている。しかし、単独で競っていこうとすれば、互いにリーダーであり続け、実行可能なイノベーション・エコシステムを維持していくのに苦労するだろう。
  • アメリカと日本は、3つの幅広い取り組みを検討すべきである。すなわち、1)アクセス制限、2)共同イノベーション、3)第三国への関与である。
  • アクセス制限
    政策担当者は、中国のICTへの投資規制や輸出管理、そしてその使用禁止などを日米の重要・機微技術やデータに対する中国からのアクセス制限ができる主要な手段とみている。こうした規制は、産業保護よりも国家安全保障の観点から検討すべきで、規制の適切なレベルと範囲を決めるための厳格なリスク評価が必要となる。
    • 日米両国は、輸出管理、投資規制、サプライチェーンのリスク管理について、賢明な選択をすべきである。中国経済は巨大だが、他のG20諸国と比べて開放的ではなく、中国の市場規模、データへのアクセス面での有利な状況、政府の直接支援といった優位性によって、新技術分野における日米企業の中長期的な成長の潜在性が、容易に制限される可能性がある。3 世界各国が新興分野で中国の技術規格を広く取り入れた場合、この課題はさらに深刻な状況となるであろう。これは、中国のプラットフォームでのみ動作するよう設計されたアプリなど、製品の付随機能の互換性という点だけでなく、データプライバシー、データローカライゼーション、クラウドソーシングなどサポート制度や慣行という面についてもいえることである。このシナリオでは、日米両国が国際標準に合わせて製品を設計するか、あるいは両国の重要インフラをサイバー脅威から確実に保護するかの選択を迫られる可能性がある(中国標準が国際化すれば、これらを両立できなくなる可能性がある)。
    • 過度な輸出管理よりも、投資の監視と制限を重視し、集団的イノベーション・エコシステムと利用可能な市場を最大化するためのルールを同盟国と調整する。いくつかの研究によれば、一般的には、アメリカの輸出品のリバース・エンジニアリングよりも、中国による米国企業への投資(直接投資およびベンチャーキャピタルを含む)の方が、中国への技術移転(産業スパイ活動も含む)の主要な手段であったことが示されている。そのため、投資規制をする方が、より厳しい監視のもとで中国のアクセスを制限するのに有意義だろう。これらの規制を調整し、情報共有を促すことは、この分野で強硬路線をとるアメリカ側の妥協を必要とするが、比較的安全なイノベーション市場を最大化することにつながる。
  • 共同イノベーション
    日米は、軍事、産業、情報通信用の先端技術の革新的な応用を推進しなければならない。そのためには、科学技術協力で最大の成果を得られるよう、両国のイノベーション・エコシステムの協業を模索する必要がある。これには、政府が保有するデータを相手国の民間研究開発イニシアチブと自由に共有し、重要技術のサプライチェーンに関する情報をこれまで以上に共有し、中国の産業スパイに対する防諜活動での協力を増やすことなどが含まれる。
    • 日米両国は、共通の長期的な戦略的優先事項を追求するための、現行の両国の科学技術協力から、より大きな利益を得ることができる。アメリカと日本は、様々な分野で伝統的かつ確固たる基盤のもとで研究・開発協力を行う科学技術分野のリーダーだが、イノベーションの力学は変化しており、政府のリソースにも限りがある。両国は、情報共有とチームワーク促進を目的にいくつかのフォーラムを設立してきたが、しかしそれらが、今日のペースの速いイノベーションに対応し、共通の優先事項を特定し、重要な基礎科学研究ないし新興技術に関する持続的協力のためのカタリティック・ファンディング(民間資金を呼び込むための公的な投融資)を主導することは困難となっている。二国間でボトム・アップ型の研究・開発協力は続けられるが、AI、量子コンピューティング、高エネルギー密度(HED)科学、バイオセキュリティ分野では、トップダウン型の戦略的投資で補完すべきだ。
  • 第三国への関与
    日米は、中国のデジタル・シルクロードに対応した戦略を策定しなければならない。中国は、世界の新興市場や発展途上国の市場において、自国の比較的安価で手頃なICT機器やサービスを普及させてきた。しかし日米は、同じようなアプローチをとるべきではない。代わりに両国は、アジアの戦略的に重要な場所のデジタルインフラへの投資や融資に重点的に注力するとともに、信頼性の高いハードウェアやソフトウェアを含むデジタルインフラを開発して提供すべきた。デジタル貿易や民主的ガバナンスなどデータの取り扱いに関しては、EUと調整することで、アジア各国における日米の関与が強化される。

主要なイニシアチブと提言

  • イニシアチブ1:アクセス制限-同盟国間の調整および、EUやその他の志を同じくする技術分野でのリーダーと連携して、重要技術の輸出管理体制と外資規制を更新する。
    • エンドユース規制を一層重視する輸出管理体制の改革するための日米間の調整を強化し、その一環で、輸出管理の法的根拠を両国間でできる限り一貫させるための議会交流を促進すべきである。また、アメリカ、日本、台湾、韓国の間で、多国間の輸出管理調整対話(枠組)を立ち上げ、情報交換を行い、特定の半導体やソフトウェアを含む一部のハイテク分野における、既存および将来の規制の影響を評価する。
    • 外資規制についても同様に協力し、外国人投資家の審査にかかわる防諜活動の分野において二国間の情報交換を強化する。
    • 輸出管理や外資規制の分野における日米間の相互理解を深め、一層調和のとれたルールを作るための連携されたロビー活動の機会を生み出すべく、輸出管理や外資規制に関して、日米の民間セクターのコミュニケーションを活性化する。
  • イニシアチブ2:共同イノベーション-1988年に日米間で締結した科学技術研究開発協力協定(STA)を改訂することで、科学技術分野のインフラや二国間協力の活動を見直す。
    • 日米合同ハイレベル委員会(U.S.-Japan Joint High Level Committee)の権限強化により、共通の科学技術の優先事項を特定し、この分野での共同研究開発に対してカタリストファンディングを運用できるようにする。これらは、日本の既存の「ムーンショット」研究開発制度やアメリカの「10大アイデア」プログラムなどから引き出す(または増強する)ことができる。
    • 長期的な二国間の研究・開発協力の有効性を高めることを目的として、両国の国立研究所、特定の大学や研究機関の間で、特に重要ないくつかの組織間協力を強化するための投資を行う。ここには人材交流、特定の価値の高い研究資産への相互アクセス、このような資産や関連のテストベッドへの共同出資などが含まれうる。また、STEM教育の促進やお互いの国の科学関連機関への留学支援なども含まれる。
    • 日米のトップレベルの政策担当者を支援するための、二国間の官民学際組織を設立する。この組織は、財政的制約の下で、両国の科学技術協力を明確な優先課題を念頭に、新たな方法で活用するという機能を果たす。これは、1988年のSTAのもとで設立され、後に廃止された合同ハイレベル委員会と同様の機能を果たす案がありうるほか、年度予算案に反映されるべき科学技術協力に関する共同の資金計画を両国の国家安全保障会議事務局に提案できるようにする案も考えられる。また、両国の優秀なシンクタンクを活性化し、各組織同士の連携を強化すべきである(例:日本の科学技術庁の研究開発戦略センターや、ホワイトハウスの科学技術政策局を補佐する米国科学技術政策機構(U.S. Science and Technology Policy Institute)など)。
    • すべての科学技術研究が防衛分野に実質的に応用可能である事実を認識し、平和目的の研究が最優先ではあっても、その事実によって二国間の研究・開発協力が制限されるべきではない。日本においては、非防衛分野と防衛関連の科学技術研究・開発コミュニティー間の相互交流を促進すべきであり、そうすることで潜在的なデュアルユース技術の分野が、日本の科学的専門知識の恩恵を十分に受けられるようにすべき。
    • 日本は、セキュリティ・クリアランス・システム(一元化された身元調査)をさらに強化することを検討すべきである。これは、デュアルユース技術や「信頼された研究者(trusted researcher)」プログラムに関する日米共同研究・開発イニシアチブを促進し、活性化させるために進めるべき。日米の優先的な共同研究・開発に関わる研究者交流のために、両国でビザ発給を拡大することも重要だ。
  • イニシアチブ3:第三国への関与-日米は、環太平洋パートナーシップと日米デジタル貿易協定にみられるデジタル貿易とデータガバナンスの原則に基づいた、インド太平洋のデジタル連結性戦略(DCS)を共同で(他国とともに)開発し、実施する。
    • DCSの目的は、デジタルインフラを提供することであり、テクノロジーセキュリティとサイバーセキュリティの成功事例を共有することに置かれるべき。
    • 欧州諸国も、インド太平洋地域のデジタル連結性を推進するための潜在的なパートナーとみなすべき。(ASEAN、ASEAN地域フォーラム、APEC、OECD、その他多国間フォーラムも活用すべき。)
    • サイバーセキュリティ能力を構築するための協力体制を推進する(2国間の例としては、防衛産業のサプライチェーン全体のサイバーセキュリティの基準を高めることを目的とした、アメリカ国防総省のサイバーセキュリティ成熟度モデル認証がある。また、第三国における取り組みの例として、2018年以来ASEAN諸国と共に実施している重要インフラを守る、ICSサイバーセキュリティに関する日米共同訓練がある)。
    • 中小企業が、政府の研究・開発事業をより安全なサイバー環境の下で支援できるよう、日米がクラウド上に「安全地帯 (secure enclaves)」を提供するなど、連携して対策の可能性を探る。また、国防総省が立ち上げた「信頼できる資本市場(Trusted Capital Marketplace)」を通じて強力なサイバーセキュリティを促進することができる。これにより、サイバーセキュリティ分野で「高いスコア」を出す企業(ベストプラクティスを取り入れている企業)にベンチャーキャピタルの資金を集める。
    • インド太平洋地域で事業を展開している、あるいは計画しているアメリカと日本の民間のサイバーセキュリティ企業は、ホスト国に共同で連絡事務所を設立し、5GやICTのインフラ構築を所管するホスト国のデジタルコミュニケーション当局に積極的に関与していくべきである。アメリカと日本の大使館は、オーストラリアのような利害関心を共有する国々とともに、こうした取り組みを支援しなければならない。
    • 日米両政府は、志を同じくする他国の政府とともに、海底光ケーブル市場がどう変化しているのか、またそれがインド太平洋地域の重要なデジタルネットワークの結節点にどのような影響を与えているのかを調査すべき。地政学的な競争が激化する中での需要拡大といった他の変化に加え、(人口密集地域同士の接続ではなく)データセンター同士の接続に移行していくことは、今後の海底光ケーブルネットワークの構築に向けた関係国政府の政策の関連性を高めることになる。ケーブル陸揚局(cable landing station)は、物理的なセキュリティと技術的統合性の両面からみて重要な要素となっている。また、より高い透明性や多国間のガバナンスによって、これらのネットワークの強靭性と安全性を向上させることができる。

(了)

1 日本では、「米中ハイテク覇権争い」や「米中ハイテク冷戦」という見出しの記事が数多くみられる。一般向けの本として、次がある。NHKスペシャル取材班、『米中ハイテク覇権のゆくえ』、NHK出版新書、2019年。

2 この段落は、本メモの共同執筆者ショフが伊藤亜聖氏と共著した「技術とイノベーションをめぐる中国との競争」で指摘した点に依拠している。J・ショフ、伊藤亜聖「技術とイノベーションをめぐる中国との競争」カーネギー国際平和財団・日本国際フォーラム、2019年10月。“Competing with China on Technology and Innovation,” Carnegie Endowment for International Peace and Japan Forum on International Relations, October 2019.

3 同上

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