研究調査プロジェクト


POLICY MEMORANDUM #1


日米同盟の抑止力強化

共同執筆者:ジェームズ・L・ショフ/高橋 杉雄




アジア戦略イニシアティブ(ASI)について

日米同盟は、これまでも地域の安全保障と繁栄の礎となってきましたが、日米両国がより積極的な課題に取り組み、同盟関係の深化、拡大、維持を図ることが不可欠となっています。「アジア戦略イニシアティブ(ASI)」では、日米両国の第一線で活躍する安全保障、外交問題の専門家が結集し、日米同盟強化に向けた次なる取り組みの基盤となる具体的な政策提言を行います。新たな政策案を特定し、発展させ、さらに発信することで、日米同盟を今後どのように前進させるかについての両国政府における議論を喚起しようとすることを目指しています。以上の目的を踏まえ、両国の専門家が具体的かつ実行可能な提言を盛り込んだポリシー・メモランダムを合同で執筆し、公表します。ポリシー・メモランダムにおける所見や提言内容はASIグループのメンバー全員で議論されたものですが、個別の具体的な提言は共著者によるものとなっています。
ASIは笹川平和財団の日米交流事業の一環として2017年に立ち上げられたプロジェクトで、ワシントンと東京で定期的に会合を開いています。




はじめに

日本の安全保障ならびにアジアにおける米国の経済および安全保障上の死活的な利益を守っているのは、なによりも日米同盟とその抑止力である。強固な抑止力を確保することが日米両国にとって国家的な重要課題であるのは、それが紛争のリスクを最小限に抑え、開かれた経済システムを維持するためのアクセスと影響力を維持することに繋がるからである。また、日米同盟の抑止力は、アジア太平洋地域および世界全体の公共財ともなっている。しかし、長年にわたり維持されてきた日米同盟の抑止力は、北朝鮮と中国による軍事力の強化を前に、減衰しつつある。それゆえに抑止力の刷新は、日米両国の国益にかない、優先的に取り組まれるべき課題である。

日米同盟における抑止力は、これまで長きにわたって、真の意味での共同活動ではなく、米国がその抑止力を拡大的に提供することで日本の安全を確保する「拡大抑止(extended deterrence)」という言葉で語られてきた。しかし、地域安全保障環境の悪化や日本における法改正と防衛力強化に向けた動きは、より統合的な「日米同盟による抑止」が可能であることを示している。 1

近年、同盟による抑止への日本の関与は、複数のドメインや複数の潜在的な紛争の局面に及ぶ形で拡大してきた。日本は、いわゆるグレーゾーンの事態において海上保安庁に重要な役割を果たさせ、離島防衛能力とミサイル防衛能力の大幅な増強を図り、2015年に成立した安全保障関連法に基づいて限定的に集団的自衛権を行使することとした。仮に日本が将来的に、通常戦力によるある種の反撃能力の開発を決定すれば、日米同盟の抑止力を構成する重要な要素となるであろう。

上記以外の措置も含めたこれら全ての展開は、同盟国間の安全保障協力に、潜在的抑止力と複雑さを伴わせるものである。これらの措置の実施は、その効果を最大にしつつも、近隣諸国の対抗措置を誘発して悪循環に陥ることにより安全保障の強化という大きな目的を台無しにしないように、慎重に検討されなければならない。このメモランダムは、日米同盟の抑止力が直面する新たな課題を検討し、日米両国の利益と地域の安定を守るための政策や措置を提言するものである。


総合的な評価と提言

北朝鮮の核・ミサイル開発ならびに中国の軍備近代化と海洋進出は、新たな課題をもたらしている。冷戦が終結して以来、日本と米国は共通の戦略的アプローチで北朝鮮と中国に向き合ってきた。日米両国とも北朝鮮の非核化のための外交的解決を目指しつつ、ミサイル防衛体制の整備を進め、拡大抑止の信頼性の向上に取り組んできた。中国については、日米は中国を何とか責任ある大国となる道を進むように「方向づけ」ようとしつつ、それがうまくいかなかった場合にも備えてきた。実際のところ、結果は芳しいものではなかった。遠からず北朝鮮は、性能が高いとされる核搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を配備することになるだろう。中国についても、東シナ海や南シナ海における振る舞いや、この地域における日米同盟の軍事力に対抗しうる能力をみるに、おそらく日米が説得を通じて中国を責任ある大国となる道へと「方向づける」のはもはや不可能であろう。日米中の間には多くの共通利益が存在しているが、日米同盟によるヘッジは、いまや中国との長期的な戦略的競争に向けた同盟管理に取って代わられようとしている。2

日米両国は、北朝鮮と中国に対する共同の戦略的アプローチを策定すべきである。 北朝鮮との核戦争を防止するために、日本と米国はそうした事態に備えるべきである。北朝鮮の新たな軍事能力を消極的に黙認するのではなく、これを積極的に封じ込めてリスクを管理する方が望ましい。そのために日米同盟は、より強力で効果的な抑止体制を構築しなければならない。韓国との協力、そして米韓同盟との緊密な連携を図ることが不可欠である。中国については、「方向づけてヘッジするshape and hedge」という戦略を見直すべきである。 "Shape"つまり「方向づける」という概念は、もっと具体化されなければならない。すなわち、漸進的な中国の拡張行動に対抗し、中国にコストを強いる周辺諸国の能力と意思に後ろ盾を与えることによって、中国のとれる威圧行動の選択肢の幅を削ぐ必要がある。中国を新たに「方向づける」この取り組みは、中国による特定の威圧行動を抑え込むことを意図するものであり、その意味で、これはある種の「選択的封じ込め(selective containment)」と理解することもできよう。選択的封じ込め策は、言うまでもなく、近隣諸国の協力がどこまで得られるかにも左右されるであろうし、中国との関係改善に向けた真摯な努力を伴うべきであろう。本メモランダムでは、主に軍事面における抑止の側面に焦点を当てているが、外交面および経済面でのアプローチにも等しく力を入れる必要がある。


具体的評価(トレンドとリスク)

北朝鮮

 •北朝鮮の中距離・長距離攻撃力は増強されつつある。北朝鮮の核兵器、長距離運搬手段、潜水艦発射ミサイル、中距離ミサイルによる飽和攻撃能力がますます高度化しているということは、遠からず、日本や米国の都市が紛争時に壊滅的な攻撃を受ける危険に晒されるようになることを意味する。また、北朝鮮による威嚇がより頻繁化する可能性もある。さらに、北朝鮮は核兵器、化学兵器、生物兵器や大型の通常弾頭で在日米軍基地や北東アジア一帯を攻撃する能力を持つことで、米国の作戦行動を直接もしくは間接的(例えば地域の同盟国が対米協力を行わないよう圧力を加える等)に妨害することも可能になる。アジア太平洋地域における米国の影響力をそぎ、同盟国の安全保障を脅かすような受け入れ難い妥協をすることなく、説得という手段で北朝鮮に核・ミサイル開発プログラムを断念させられる見込みはほとんどない。

 • 北朝鮮は攻撃元を隠蔽して攻撃する能力を向上させ続けている。北朝鮮は、非対称軍事戦略の一環として、サイバー空間と海中領域の両方で、紛争のいかなる段階においても攻撃拠点を特定されることなく奇襲する能力を増強させつつある。攻撃への関与が察知されない、あるいは証明するのは困難だろうという確信を得るとすれば、攻撃をしかけることに対する平壌の心理的な抵抗は小さくなるだろう。

 • 深い相互不信と意思疎通の不足は、紛争が起こる可能性を高めている。北朝鮮に従来の抑止理論がどこまで妥当するのか、そして北朝鮮の指導者がかつてほど自らの脆弱性を認識しなくなることによって、米国とその同盟国に対して軍事的な威嚇行動に打って出るほど大胆になるのかは、定かではない。逆に、同盟による一貫した圧力を前に不安を感じ続けることによって、攻撃的な抑止という北朝鮮ならではの考え方に基づき、低次の紛争における早い段階でミサイルを発射することもあり得る。同盟側のシグナリングや北朝鮮の意図についての解釈は必ずしも信頼できるとは限らず、そのことが、すべてのレベルにおける同盟の抑止力の重要性を高めている。

 • 世界の安定に何ら利害を持たない北朝鮮には、核兵器を拡散させる動機がある。国際社会が協調して北朝鮮に圧力と制裁をかけていることで、同国による貿易・金融ネットワークへのアクセスは、かつてない水準にまで低下している。これは現政権を弱体化させ、核・ミサイル開発プログラムに関する交渉の場へと向かわせるために必要な措置である。しかし、それは同時に、金銭的利益を目的として、あるいは世界を混乱させるために、非合法なネットワークを通じて、核兵器技術やその部品を国外の組織に売却する動機を北朝鮮に与える可能性がある。


中国

 • 中国はアジア最大の軍事大国であり、その遠征能力は拡大しつつある。中国の国防費は8年間でほぼ倍増し、2016年には2260億ドルに達した。この膨大な国防費は、中国の軍事力の大規模な近代化のみならず、巡航ミサイルに対する高度な防衛力、ステルス機、航空母艦、遠征可能な海空軍力を支えており、近い将来、南シナ海と東シナ海に広がる広大な海域で自らの意思を他国に強いることができるようになる。3 とりわけ、東シナ海の尖閣諸島周辺海域における中国の威圧的な外交と海洋プラットフォーム建設といった動きは、島嶼防衛を打ち破って実力で島嶼を占拠するために比較的容易に強化されうるものである。

 • アジア地域における中国と日米同盟の打撃力の差は広がりつつある。 中国人民解放軍(PLA)空軍の攻撃力ならびに同ロケット軍が保有する通常弾頭を搭載した弾道ミサイルおよび巡航ミサイルは、日本およびグアムの航空基地をたちまち無力化させるほどの戦域レベルの打撃力を中国に与えるほか、航空母艦を含む米海軍水上部隊を脅威にさらし域外に押しとどめることができる。日米同盟側が頼れる通常戦力の攻撃システムは、戦域内に配備された限られた数の米軍の攻撃型潜水艦と巡航ミサイル潜水艦だけである。この日米同盟側の制約は、中国本土の攻撃部隊のもたらす挑戦と相まって、中国に先制攻撃の動機を与える原因となり、アジアの「危機における安定性」が損なわれる恐れがある。こうした状況に加えて、中国が将来的に獲得しうる核カウンターフォース能力は、戦略的安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。

 • 中国の核兵器近代化の進展とともに、カウンターフォース能力が出現しつつあり、拡大抑止への影響を検討する必要が高まっている。中国がDF-5などの複数個別誘導弾頭(MIRV)搭載のサイロ発射型大陸間弾道ミサイル(ICBM)やDF-41などの移動式MIRV搭載ICBMを配備するということは、今後10年以内に米国の地上配備戦略抑止力(GBSD)に対する攻撃能力を持つ可能性があることを意味する。4 そうなった場合、ソ連軍について1970年代の終わりから1980年代の初めにかけてロナルド・レーガン大統領を含む米国の複数の指導者たちが懸念していた「脆弱性の窓(window of vulnerability)」に類似する状況が生み出されることになるだろう。5  トライデントD5のような米軍の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の精度が飛躍的に向上していることを踏まえれば、現在の状況は冷戦時代とは明らかに異なる。しかしそれでも同盟各国の戦略担当者らは、これまで看過されてきた中国のカウンターフォース能力が何を意味するのか注意深く分析すべきである。

 • 中国のサイバー攻撃能力は、同盟国側の抑止作戦を困難にする。 北朝鮮と同じように、中国もサイバー兵器を高度化させており、これらを単独で、もしくは他の兵器と組み合わせて、日本国内にある同盟国の支援インフラを攻撃できる。日本国内にある同盟の支援設備には、民生用の重要インフラや日本と韓国を防衛する作戦行動に不可欠な防衛関連システムが含まれている。同盟国それぞれの軍事的役割の相互依存性が高まるにつれて、同盟国間の計画策定におけるサイバー分野の重要性が高まっている。


日米同盟の抑止力のため具体的提言

制度面

 1. 拡大核抑止の信頼性の向上を図るべく、現行の取り組みのさらなる制度化を進めるべき。 北朝鮮の核の脅威の高まりに対処するためには、迅速かつ確実な報復と損害限定など、拡大抑止の様々な要素を動員しなければならない。もし北朝鮮が東京に核攻撃をしかけたら、米国が報復に核兵器を使用するか否かに関わらず、日本は甚大な被害を受けることになる。米国が北朝鮮の攻撃を阻止できると日本を安心させるためには、具体的で信頼できる米国の損害限定のための核態勢が必要である。日米両国は、米国の核使用に関する情報共有のための標準手続きを定めるべく、核関連計画の合同策定プロセスを設けるべきである。日米はこうした準備を整えることにより、平壌による核の恫喝に断固たる姿勢で対処する意思を示すことができ、北朝鮮による核の使用を抑止することが可能となる。このプロセスは、同盟間協調を最大化できるように米韓間の類似の仕組みと並行して進められるべきである。現時点では、米国の非戦略核兵器の前方展開に作戦上の利点はないだろう。米国の核兵器の前方展開を進めるより、核使用についての合同の意思決定・責任共有の仕組みを検討する方が重要である。 6

 2. 日米拡大抑止協議(EDD)および日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の実施を部分的に統合すべき。北朝鮮との紛争におけるエスカレーション・ラダーがいまや核のレベルにまで達していることを踏まえると、EDDとガイドラインを部分的に統合すべきである。そうすることで、紛争の激化に関するあらゆる可能性を日米安全保障協力の諸側面(抑止、シグナリング、防衛、韓国への支援を含む)から確実に検討できるようになる。必要に応じて拡大抑止協議を適時、次官補・局長レベルに引き上げて実施することも考えられる。一つの焦点となり得るのは、潜水艦戦と海・空戦の戦闘管理の統合、また抗争的環境における攻撃支援によって、紛争における日米同盟の非対称的な優位を強化することであろう。米国は1944年末以来、アジア太平洋で制海権を維持し、地域の安定と開放に大きく貢献してきたが、今後この役割は、同盟国や友好国からの一層の支援を受けながら果たすものとなる。

 3. 核兵器に関する諸問題や北朝鮮の抑止について中国の当局者および学者との対話を拡大すべき。 高まる北朝鮮の脅威に対して日米両国がさまざまな対応を検討するにあたり、中国と何らかの対話を持ち、透明性を確保することは、米中関係の諸側面(米中間の先制攻撃リスク、軍拡のダイナミクス、危機安定性など)についての安定性を維持するうえで重要となる。透明性が必要なのは、ある国が取り得る選択肢の中で最も攻撃的でないと考える抑止措置を講じた場合でも、その措置は現状に変化をもたらし、もう一方の国にはエスカレーションと受け止められる可能性が高いからである。


計画と抑止能力

 4. 将来的な運用面の協力(特に指揮・統制面)に関する研究を開始すべき。2015年に改定されたガイドラインでは、同盟国間協力のあり方が更新され、それは日本の新たな安全保障法制にも盛り込まれ、意思決定と運用面における調整の強化がその大きな特徴とされている。同盟調整メカニズム(ACM)の設置は重要な成果ではあるものの、自衛隊と米軍は依然として、指揮・統制を一元化することなく並行的に作戦行動を実施することになっている。グレーゾーンにおける法執行から武力攻撃事態への移行が円滑に行われる必要を踏まえると、特に高次の戦闘作戦について、現行の指揮・統制を幾分か統合することに利点があるかもしれない(例えば、アドホックに日米統合任務部隊(JTF)を結成することなどが考えられる)。

 5. 北朝鮮に対する防衛を最大限効果的に行うために、日米韓協力をより高度に、より洗練されたものにすべく継続的に取り組むべき。 韓国との外交面および軍事面における効果的な協力は、北朝鮮に対する日米同盟の抑止力の重要な基盤であるが、それは韓国および米韓同盟の防衛と抑止力を補完する不可欠な要素でもある。日米韓協力の積極的な動きを維持することは、日米同盟にとって2018年の最優先課題の一つである。軍事面においては、ミサイル警戒およびミサイル防衛に関する情報交換、対機雷戦、有事の際の軍事活動および非戦闘員退避活動に使用する空港・港湾の確保・警備における三国間の協力活動に特に力を入れるべきである。対潜水艦戦や、その他の海洋安全保障協力も、ますます重要性が高まる可能性がある。

 6. さまざまなドメインにまたがる共通作戦状況図を構築することで、情報・監視・偵察(ISR)および宇宙状況監視(SSA)における協力をさらに強化すべき。ISRへの投資と情報共有を進めることは、防衛力の最大化を図り、攻撃作戦の遂行を可能にし、北朝鮮による特定不能攻撃を打ち破るうえで、引き続き不可欠である。また、この分野は絶えず進化し続けており、そこでの対処は創造性と費用対効果の高い協力を要する。そのためには、自律型システム、共有の人工衛星ペイロード、迅速で一時的な展開が可能な超小型衛星、新たなサイバー能力の配備が求められる。特に北朝鮮の脅威がからむ場合には、韓国との頻繁な情報共有も必要になる。

 7. 日米同盟によるミサイル防衛への投資と共同研究を拡大すべき。 北朝鮮とのいわゆる相互脆弱性は、(北朝鮮の現政権の性格を考えると)容認できず、また(同盟のリソースを考えれば)必要でもない。日米によるミサイル防衛への投資は、北朝鮮のミサイル開発プログラムに遅滞なく対応でき、拒否的抑止に大いに貢献している。その一環として、短期的には、日本における陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージスアショア」の配備、ならびにSM-3ブロックIIA及びSM-6といった既存システムの改良が含まれるべきである。日米両国は、二国間で実施するミサイル防衛技術研究の認知度向上と投資拡大に努め、両国のシステムを統合する能力を向上させるべきである。これには、北朝鮮を念頭に置いた、ブースト段階(ミサイル発射から上昇段階)におけるミサイル迎撃技術に関する共同研究が含まれるべきである。長期的には、より低価格で効果的なミサイル防衛手段となり得る指向性エネルギーやレーザーの共同研究も検討できよう。

 8. 日本の反撃能力の開発を漸次進めるべき。日米間のディカプリング(分断)を回避し、より広範な相互運用を通じた抑止力の強化を図るため、日米両国は日本の長距離攻撃能力の開発を協同で漸進的に進めていくべきである。その目的は、日米の安全保障協力を強化し、北朝鮮によるいかなる攻撃にも迅速に対応し、更なる攻撃の可能性を減じる能力を日本が確実に備え、また有事における米軍の攻撃能力を補完することにある(例えば、米韓軍が短距離攻撃の脅威に対処する一方で、日本を脅かす北朝鮮の長距離兵器に米国と協力しながら対処するなど)。日米両国は、役割と任務に関する具体的な見直しを行い、どのような反撃能力を追求すべきか見極め、指揮・統制及びISR共有体制を検討すべきである。機会費用を踏まえた妥当な価格のシステムを開発ないし購入することが最優先課題となろうが、そうしたシステムは、同盟の策定する計画や訓練への組み込みが可能で、日本国民に支持されうるものであるべきだ。

 9. 地域における中国の通常兵器による即時攻撃能力の有効性を削ぐべき。 中国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力が高まるなか、もし中国が全面攻撃をしかけてくる場合には、陸上と海に配備されている日米の攻撃兵器は、たちまち無力化されてしまうかもしれない。「危機における安定性」を保全するために、日米両国は、比較的低コストのミサイル防衛手段の増強に加えて、基地の強靭性を高め、日本およびマリアナ諸島の航空基地の共同使用を拡大すべきである。

10. 日本における民間防衛と核被害管理(および韓国支援)のための二国間による共同計画立案と共同訓練を実施すべき。予想被害の大きさを考えると、核攻撃に伴う緊急事態に適切に備えるためには、更なる取り組みが必要である。被害発生後の対処体制を整備しておくことは、北朝鮮に対して恫喝に屈しない強い決意を示し、核兵器の使用を抑止する一連の取り組みの中で、重要な部分を構成している。こうした備えを行っておけば、仮に抑止が破綻した場合でも、犠牲者数を抑えるのに役立つ。

1本稿で「日米同盟の抑止力」という場合、日米の軍事力が第三国による軍事挑発(通常兵器によるものか核兵器によるものかは問わない)に対して持つ抑止力全体と、互いのために抑止力を発揮する準備と意欲に関する両国間の相互信頼を指す。

2 「2018年米国国家防衛戦略概要」(米国国防総省、2018年1月) "Summary of the 2018 National Defense Strategy of the United States of America, Department of Defense, United States of America: Sharpening the American Military's Competitive Edge2," January 2018, Department of Defense, https://www.defense.gov/Portals/1/Documents/pubs/2018-National-Defense-Strategy-Summary.pdf 

3国防費は2015年の恒常ドル換算で、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)による。下記サイトで入手可能。 https://chinapower.csis.org/military-spending/

4中国が保有する大陸間弾道ミサイルの数は約75基で、それぞれ10~20発のMIRV弾を搭載しており、米国のミサイル倉庫と核武装爆撃機の基地それぞれ1カ所につき約2発の核弾頭を発射できるという想定に基づく計算。米国の潜水艦発射弾道ミサイルへの影響はない。

5例えば、1982年3月31日のレーガン大統領(当時)の記者会見を参照。 http://www.presidency.ucsb.edu/ws/index.php?pid=42346.

6ここでいう「責任共有」は、同盟各国が地域の核の脅威に迅速に対処するための確実なプロセスを備えるとともに、自国民を核攻撃から守ることと米国が北朝鮮に核攻撃を行った場合の恐るべき長期的な影響との間で微妙なバランスを取りながら政治的責任を果たすことを意味する。別の言葉でいえば、核兵器に訴えるのが「早すぎる」もしくは「遅すぎる」という問題が必然的に生じるとしても、同盟(米韓同盟および日米同盟)の結束を維持しようとするものである。こうした備えをすることが核抑止力を高め、核の使用を阻止することにつながる。

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