藤村 瞳
2015.12.09
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October 2015: Myanmar

1) マバタ、僧侶の選挙運動への関与を自粛するよう通達

民族宗教保護協会(通称マバタ)が10月2日から4日にかけて、民族宗教保護法の成立を祝う記念式典を開催した。式典には僧侶2500名が参加し、マバタを率いる高僧らも出席した。民族宗教保護法とは、仏教徒女性婚姻特別法や一夫一妻制度法などを含む4つの法案の総称であり、これらの法律成立のためにマバタは2012年から活動を行なってきた。これらの4法案は今年9月までに全て可決され法律として成立した。

式典後の記者会見では、総選挙前の選挙運動への僧侶の関与について焦点が絞られた。選挙活動に僧侶が協力した場合はマバタがこれを取り締まると発表された。ミャンマーでは、選挙活動における宗教を利用した活動は一切禁じられており、僧侶が特定の政党の選挙活動に協力することも許されていない。しかし、一部の僧侶が野党について言及したりチラシを配布したことなどが報道されている。マンダレー管区では、同地域のマバタを率いるウィラトゥ高僧がメディアのインタビューに応じ選挙についてコメントしたほか、僧侶による選挙候補者の選挙区における戸別訪問も明らかになっている。マバタ中央委員会は、同団体が連邦団結発展党のために結成された団体ではないことを説明し、同団体には各政党の支持者も含まれているとアシン・ダマピーヤ高僧が報道陣の前でコメントした。

また、マバタ中央委員会からマバタのシンボルマークを利用した政治活動や、高僧による選挙活動への協力を禁じると発表した。この通達は各僧院で僧侶が選挙活動に加わらないこと、各僧院の僧院長はこのようなことが起こらないよう誡めていくよう呼びかけるものである。しかし、実際には一部の僧侶が特定の政党に投票するよう呼びかけたり説法を行なっており、規制は難しいという声も挙がっている。

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  Vol.2, No,266, October 3, 2015

2) 少数民族8団体と政府、NCA調印

10月15日、全土停戦合意協定(NCA)の調印式がネーピードーにて開催された。今回の調印式にてNCAを締結したのは、8つの少数民族勢力である(内訳はカレン民族同盟(KNU)、カレン民族同盟/カレン民族解放軍平和評議会(KNU/KLNA(PC)), チン民族戦線(CNF), パオ民族解放機構(PNLO), ALP, 全ビルマ学生民主軍(ABSDF), 民主カレン仏教軍(DKBA)、シャン州和解評議会(RCSS/SSA))。調印式には、テインセイン大統領や副大統領、ミンアウンフライン国軍司令官、上下院議長などが政府側から出席した。その他、国外の立会人として国連、EUなどの国際機関、中国、インド、タイなどの近隣諸国からの代表が出席。88年世代オープンソサエティのコーコーヂー氏とミャエー氏などの国内の識者、市民代表者も立会人として調印式に臨んだ。今回の署名式には、NLDのスーチー氏も招待されていたが、同氏は出席を見送った。

NCAに調印した少数民族勢力8団体と国軍の間では、合意内容に基づき24時間以内に武装解除を行なうこと、調印から5日以内に合意内容を公表すること、14日以内に完全な停戦を実現するために関係者による会合を行い、詳細なスケジュールを決定することなどが必要となってくる。今回調印にこぎつけた少数民族勢力に関しては、10月初旬に違法団体リストからの削除がUPWCにより発表されており、非合法団体としての位置づけが変更された。一方で、今回のNCA調印に合意しなかった団体は7つ残っている。既に調印を終えたKNU議長は、「残る7つの団体に関しても、国軍が非難(威嚇)的な方法ではなく、協働で解決を模索するよう、敬意を払って対処していくよう求める」とコメントした。

調印に至ったとはいえ、NCA調印に関してはKNU内部での意見対立もみられた。KNU副議長のノオ・スィーポーヤセインは調印式欠席を事前に表明した。このほか、同団体の武力部隊であるカレン民族解放軍(KNLA)はNCA調印前日に、NCAに調印したとしても地域警備などのこれまでの業務の変更を受け入れることはできないと声明を発表している。KNLAはカレン民族の人々と生活と平和を守るために組織された勢力であるため、NCA調印後も代わらず存続すると通知を発表し、同組織の活動に国軍や政府らが介入することのないよう牽制している。調印に関し、チン民族軍のシュエガー書記長は今夏に起こったチン州の洪水被害が甚大であったことを理由として挙げた。調印後の政治会談において少数民族側が望んできた連邦制の達成を基本とした国家建設ができると信じて調印に踏みきったことを説明しながらも、チン州での洪水被害の実態と復興支援活動が滞りなくすすむよう考慮したと説明した。

NCA調印後、15日と16日の2日間にかけて政府・少数民族の双方からの代表者による第1回共同連携協議(Joint Implementation Coordination Meeting: JICM)が開催された。この会議では、NCA協定に含まれる平和プロセスに関する話し合いが行なわれた。協定に従い、JICMは、政府側の連邦平和実現合同委員会(UPDJC)と少数民族側の合同協議委員会(Joint Meeting Committee: JCM)によって組織され、全土停戦と平和構築の実現にむけて協力していく方針が確認された。

さらに、10月29日から31日まで継続して会議が開催された。第2回目の協議では、執行委員会の発足や、管区・州レベルでの委員会の設置などについて話し合いが行なわれた。その他、協議の代表メンバーとして三名が選出されることとなり、政府側から一名、少数民族勢力側から一名、そして公平を期すために市民代表からの一名選出することで両者が合意した。第三回目のJICM会議は11月16日に開催予定。

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3) 在外投票実施へ、一部では不都合も発生

来月の総選挙に先駆けて、事前の在外投票が各国で今月中旬に実施された。海外在住のミャンマー国籍の有権者うち、在外投票の申請を済ませた者は3万4865人程度で、在外期日前投票の総実数は3万152票であったと選挙管理委員会が明らかにした。在外投票のうち、投票申請が最も多かったのはシンガポールで2万1000名に上った。シンガポールでは、15日から始まった事前投票の期間を延長し、21日まで実施した。連日長蛇の列をつくり、約1万6000人が投票に訪れた。マレーシアでは、投票日は18日の一日のみ設けられ、事前申請した者のうちの360人が投票に訪れた。在外投票のために申請をした者はわずか440人であった。

海外での事前投票は概ね滞りなく行なわれたが、一部の有権者は選挙管理委員会側の書類準備不足で、投票できないという事態も起こった。ミャンマーの選挙管理委員会から各国大使館に送付されているはずの投票券が届いていなかったり、有権者名簿の記載漏れなどが原因で投票できなかったケースがシンガポールや日本で相次いだ。イギリスで10月18日に行なわれた事前投票でも、25名ほどが有権者名簿に名前が含まれていないという理由で投票できなかったケースがあった。事前申請したにも関わらず、これらの問題で投票ができなかった在外有権者に対して、選挙管理委員会は投票期間を延長して対処したほか、総選挙当日の11月8日にミャンマーに帰国して投票を行なうことができると発表している。しかしこの発表に関して、シンガポール在住の有権者は「投票のために帰国することは簡単ではない。仕事の休暇を取ったり飛行機代を支払うなどは難しい。」とコメントし、実際に帰国して投票することは困難であると説明した。

在外投票の投票数が投票申請の総数より少ないことについて、選挙管理委員会のティントゥン報道書記は「申請をするときに何度か重複申請した者や、ミャンマーでの住所などの記載ミスのためにミャンマー側での書類処理が上手く行かず、投票券が発行できなかったケースがあった。」と説明した。その他、各国のミャンマー大使館において投票日の際に混乱が生じたことについては、今回の総選挙は従来ミャンマーで行なわれてきたものとは異なる重要なものであり、選挙管理委員会側も今回のような状況における経験が全くないと経験不足を理由として挙げた。

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4) ミャンマー翡翠輸出、政商や軍幹部関与の疑い

イギリスに拠点を置くGlobal Witness(GW)が発表した報告書によって、ミャンマーの翡翠輸出産業に元軍人幹部やクローニー(政商)との関わりがあることが明らかにされた。2014年度のミャンマー翡翠の中国への輸出量が310億米ドルにのぼる。この額は国内GDPの約半分に相当し、健康・保健予算の46倍の額にあたるという。さらに、この翡翠産業について、前政権の権力者であったタンシュエ氏の親族や、オウンミィン大臣、マウンマウン大臣など軍関係者が関与していることが明らかにされた。国軍のミャンマー経済ウーパイン社、ミャンマー経済コーポーレーション、アジアワールド、KBZグループ、Ever Winner社とsky net社などのクローニー(政商)も翡翠産業に関与しているとみられる。

特定の個人や企業のほかに、中緬国境地域での国軍による利益専有や少数民族勢力であるワ州連合軍(UWSA)を支援している麻薬密輸関係者が翡翠輸出もコントロールしているとみられる。加えて、カチン州内のカチン独立機構・軍(KIA/KIO)の関与もあるとされているが、詳細は明らかに成っていない。同地域において活動する企業から、少数民族勢力が利益の一割を税として徴収しているとみられると報告されている。

名指しされた企業は、国軍や政府の天下り先として関係が深く、長らく既得権益があるとみなされてきた。現政府はクリーンな政府であるとして特定の企業へ特別な権利の付与は行なっていないと公言しているが、国軍と関係のある団体や個人が翡翠産業で利益を得ていることが暴露された形となった。名指しされた個人や企業はメディアへの回答を拒否しているが、KBZグループは非合法な商業活動は行なっていないと報道内容を否定。GWの報告書は、翡翠輸出による利益がどこに消えたのか、誰の手に渡っているのかについて国民が政府に問いただす必要があると結論づけ、来たる総選挙にて発足される新政権とともに同問題に対処していくべきだと提言している。

 このGWの報告書に対して、政府は24日付けの国営新聞にて2011年から2015年上半期までの経済活動の方針や輸出品内訳の詳細を公表した。先述の報告書において問題とされた翡翠貿易についても触れており、10.6トン以上を輸出してきたと発表した。これは5年間の合計輸出量であり、年間では約2100トンもの輸出量に相当するが、輸出額は公表されなかった。また、ミャンマー政府は天然資源採掘に関する透明性と市民への恩恵享受を保証する国際的な枠組み、産取産業透明性イニシアティブ(Extractive Industries Transparency Initiative: EITI)に参加しているが、同団体に提出した2014年度の翡翠産業収益と、今回GWが明らかにした収益額との差は約50倍にのぼる。今回の報告書によって、ミャンマーの翡翠産業の不透明性が明示されることとなった。この計上額における格差がなぜ発生したのかについては、総選挙終了後11月中に政府の財政省から発表がある予定。

今後、総選挙後に発足される新政権が軍閥やクローニーの影響が強い翡翠産業にどのように対処していくかが注目される。

7 Day Daily
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Myanmar Alin
  Vol. 55, No. 24, October 24, 2015

5) NLD候補者、選挙運動中に襲われ重症

10月29日夜に、ターケータ地区にて国民民主連盟(NLD)立候補者ナインガンリンを含む三名が刃物によって襲われる事件が発生した。襲われたのは議会候補者のナインガンリンと、党員のチョウドゥー、タンダティンの三名。この三名が各家庭をまわり選挙運動をしていた際、居酒屋から出てきた男たちが被害者を襲ったという。襲ったのは同地域に住む男性三人で詳しい動機はわかっていない。主犯格の男の父親はNLD党員であるうえ、被害者への個人的な恨みもないという。情報省の発表によると、加害者であるゾオラッは、どの政党も支持していない一般市民であるという。事件発生当時、飲酒していたことが明らかになっている。ナインガンリン候補者とチョウドゥーの2名は重症を負っており、30日未明にヤンゴン総合病院に運ばれ治療をうけた。30日午後には同党議長のアウンサンスーチー氏も両者を見舞いに訪れた。

NLDは、今回の事件をきっかけに対立する政党への仕返しが起こることを懸念しており、全国の同党支持者に対して、選挙を平和裡に遂行できるよう仕返しを行なわないよう緊急声明を発表した。事件が起きたターケータ地区では、事件後も選挙運動を引き続き行なうことをNLDは決めている。しかし、夜6時以降の活動を控えると同地区からの候補者ウェーピョーマウン氏がコメントした。

7 Day Daily
  No. 903, October 31, 2015
Democracy Today
  Vol. 2, No.294, October 31, 2015

6) USDP、NLDの選挙運動、一層過熱

アウンサンスーチー氏は、選挙運動のため毎週末に全国各地を遊説し、主に少数民族が多く居住する各州を重点的に訪れた。カチン州、ヤカイン州、シャン州などを訪れ、大規模な演説集会を開催し、市民からの質問にも答えた。10月2日から4日にかけてカチン州を訪れた際には、ミッソンダム事業に関して国民に対し情報を開示しながら対処していくと説明。スーチー氏は現時点では企業と政府間でどのような取り決めがあるのかはっきりとわかっていないとしたが、関与する企業との間での取り決めなど「まず初めに国民に伝える」と方針を提示した。また、紛争の終結と平和を達成するために三つの段階を踏んで対処していくとコメント。第一に停戦を達成すること、第二に代表者会議を開催し協議すること、そして第三に真の連邦制国家を築くための憲法を定めることだとした。カチン州は二大政党のほかにも少数民族政党が多く出馬しており、選挙戦が激しくなるとみられている地域である。

 10月中旬にはヤカイン州を訪れた。ヤカイン州での演説では、過去の恨みや報復をしないことを優先させ、国軍とも連携して政治運営に取り組む姿勢をみせた。その他に、イスラム教徒である市民から、ミャンマーにおいてムスリムが不当に扱われていることに関し、NLDが政権を獲得した場合、国内のマイノリティは平等に扱われるのかと質問が挙がった。これに対し、スーチー氏は宗教に関して選挙活動中に言及することは法に抵触すると説明し明言は避けたものの、「NLDは法による支配を尊重する政党であり、憲法に定められているとおり全ての人を平等かつ公正に扱う」と答えた。ミャンマーにおけるイスラム教をNLDがどのように扱うのかという点においては、以前にも聴衆から質問が出るなど、国民の大きな関心を呼んでいる。

10月24日にコミューにて開催された選挙演説会において、NLDは地域の少数民族政党と対立したいわけではなく、管区・州それぞれにおいて民主主義を達成し中央では与党となるために各地域から出馬していると集った聴衆に説明した。スーチー氏は、「中央だけの民主主義でなく、どこか特定の州・管区のためだけの民主主義を勝ち取りたいわけでもない。与党となるためには候補者を多く擁立し多くの当選者を出す必要があるため、各管区・州から出馬している。NLDは国全体を代表する政党なので、一箇所に限らず全ての地域で候補者を立てている。」と説明した。NLDと地方における少数民族政党との間での連携(同盟)があまりみられておらず、議席を争い対立する状況が生じている。

一方、与党の連邦団結発展党(USDP)も、各地で演説集会を行ない、支持を訴えている。加えて、同党への支持を得るためのテインセイン大統領の言動も顕著になってきた。10月頭の月例ラジオ演説では、NCA調印に向けた最終協議の結果や11月の総選挙のほか、総選挙後の新政権の任期5年間における成果と課題について言及した。そのうえで、民政による行政システムに向けて憲法をきちんと改正していくとも発言。民営紙7day dailyは、大統領が憲法改正について言及したことを異例なことだと解説し、選挙運動が盛り上がっているこの時期に来期について触れることは、自身が大統領に再当選すると確信しているか、USDPが勝利すると考えているかのどちらかだと評している。

 さらに、10月29日、パテイン地域を訪れたテインセンイン大統領は、自身の政権のこれまでの成果について発言した。テインセイン大統領は、この5年間の間、教育、保健衛生、経済などの各分野が発展するよう取り組んできたと述べ、改革はすでに開始されており、与党としてこの改革を引き続きすすめて方針を強調した。「改革の時は満ちた(Time to change)」というフレーズは最大野党であるNLDがスローガンとして掲げているもので、大統領の発言はNLDをけん制するためのものとみられる。テインセイン大統領は市民集会において「我々は、軍政の政権から国民が選出する政治体制や議会などの民主制に既に移行している。再度どのような体制に移行したいのか。もう一度移行すべきほかの政治体制などない。(残されているのは)共産主義だけである。共産主義へは誰も移行したくない。」と呼びかけ、民主主義への移行は既に達成されており、再びの変革は必要ないことを訴えた。

 また、USDPとしても、再び与党となった場合はテインセイン大統領を次期大統領として選出するという発言が相次いでいる。同党総書記長のティンナインテイン氏がBBCニュースのインタビューに応じた際に上記のようにコメントしたほか、USDP候補者も選挙運動中の演説においてテインセイン大統領を次期大統領候補として選出すると発言している。テインセイン大統領個人の人気は、国民の間でも決して低くないとみられることから、USDPとしてはその人気を利用して同党への支持を広げるねらいがあるとみられる。

7 Day Daily
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  October 30, 2015

7) 総選挙のために特別警備隊発足

総選挙の投票所の警備のために、特別警備隊員を選出し特別警備隊が組織したとヤンゴン管区警察が発表した。今回の総選挙では、ヤンゴン管区の全ての投票所で監視員として警察官が常駐する。現状では人材不足であるとして、特別警備隊を組織したと警察側が発表した。今回の特別警備隊は総選挙のために選出された者たちで、どの政治団体にも属さず関連していないことが条件とされた。そのほか、健康が芳しくない者なども除外されたが、個人の信仰によって選別したということはないとも説明があった。

特別警備隊に選出された候補者たちは、今月20日から31日まで特別講習を受けたのち、来月8日の総選挙に備える予定。この特別講習に関して、ヤンゴン管区警察は通常ならば6ヶ月と定められている講習期間を、総選挙の監視と警備のためだけの特別講習とすることで間に合わせると説明した。投票が混乱なく行なわれるよう、監視業務を行なえるよう訓練するという。特別警備隊が投票に関して投票者に圧力をかけたり、投票の指示をするようなことがあった場合は、市民らは最寄の警察署に届け出ることができるという。

7 Day Daily
  No.885, October 13, 2015

8) 期日前投票、開始

10月29日から、期日前投票が各地にて開始された。期日前投票は10月29日から11月7日までとなっており、期日前投票の事前申請を行なった者が投票することができる。原則として期日前投票に申請できる者は、関連業務で総選挙当日に国内外に出張している政府役人、公務員のほか、学校や仕事などで選挙日当日に選挙区に不在であることがわかっている者、選挙日に報道するメディア関係者、手術や通院などで当日の投票が不可能な者などと定められている。29日から開始された期日前投票だが、初日は投票に訪れた人はわずかだったと民営紙が伝えた。期日前投票の存在を知らなかったとインタビューに答えた市民もおり、期日前投票がどの程度活用されるかは不明だ。

 また、選挙日当日、投票所に4時を過ぎても投票者がまだ残っている場合には、4時前に到着した者は時間を過ぎても投票できると選挙管理委員会が発表した。各地区の投票所一つにつき、割り振られた投票者数は300から3000にのぼる。選挙日当日の投票時間はっ後4時までとなっているが訪れた有権者による投票が終わらない場合には、立会人も残って投票を継続できるよう対処する。事前に行なわれた在外投票において、大使館閉館時間を過ぎても投票を終えていない有権者が続出したことから、上記のような対応がなされた。

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  October 28, 2015
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  October 30, 2015

9) ロヒンギャについて国連がミャンマー政府を非難、政府は事実否定

10月26日に開催された国連総会において提出されたミャンマーに関する報告書の内容について、事実無根であり偏見であると大統領府がコメントした。国連総会において、ミャンマー人権特別報告者の李亮喜氏による報告書が提出され、ミャンマー政府のロヒンギャに対する対応に懸念が表された。具体的には、60人以上のムスリムの候補者の候補者名簿からの除外や、投票権がないムスリムやベンガル人がヤカイン州に76万人いることなどに対する懸念が表明された。その他、ミャンマーから亡命してきたとされるベンガル人は14万人ほど存在し、ミャンマーにおいて住居もなく難民となる者や、国内外へ移住する者がいる実状も報告された。

これらの報告書の内容について、10月29日に大統領府高官が記者団に対してこれらは一切事実無根であると説明した。李亮喜氏がこれらの避難民がミャンマーから脱出してきた者たちであると何度も説明していることに驚きを覚えるとコメントし、ミャンマー政府としては今年5月と7月にこれらの避難民を避難シェルターにおいて保護し、調査を行なったうえでバングラデシュへ送還し適切な処置を行なったと強調した。またヤカイン州のベンガル人の置かれている住居環境などについても、ミャンマーは発展途上にある国であり、貧しい国民は全土に多くいる。これはベンガル人だけ(に限った問題)ではないと発表した。

Democracy Today
  October 30, 2015
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HITOMI FUJIMURA藤村瞳

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