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October 2015: Southern Philippines

1) 外国人拉致事件への関与が疑われる男性2人拘束
2) 武装グループがイタリア人元神父を拉致
北サンボアンガ州ディポログ市ミプタク村で7日夜、武装集団約10人が飲食店を襲い、同店を経営する元神父のイタリア人男性(56)を連れ去った。国家警察同州本部は、店内の監視カメラに写っていた映像を元に、犯人のうち2人を特定、同州を中心に頻繁に拉致事件を起こしている身代金目的誘拐グループとみて行方を追っている。
州本部の調べでは、武装集団のうち4人が客を装い店内に入った後、武装した仲間が侵入し、イタリア人男性を襲った。男性は抵抗したが、そのまま逃走用のバン型乗用車に強引に押し込まれ、連れされられた。犯人らは、途中で乗用車を乗り捨て、ディポログ市の海岸で小型ボートに乗り換えて、北サンボアンガ州3区方面に向かったという。
18、19両日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)主催を控え、外国人の拉致事件が頻発していることを受け、国軍・警察は全国で警戒を高めている。
3) コタバト州で武装集団が送電塔を爆破。広域停電に
コタバト州ピキット町バトゥラワン村で9日深夜、武装集団が国家送電公社(NGCP)の送電塔2棟を爆破し、コタバト州一部とマギンダナオ州、コタバト市全域が約3時間にわたり停電となった。
爆発を受けて現場に駆けつけた国軍の爆弾処理班が、60ミリと80ミリ迫撃砲を使った手製爆弾の破片を回収。不発だった爆発物を処理した。
ピキット町とマギンダナオ州パガルガン町の送電塔を狙った爆破事件は今年に入ってこれで4回目。国家警察は、反政府武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)の離脱者らで構成されるバンサモロ自由戦士(BIFF)や、同様にイスラム系武装組織の元構成員からなるグループ、アル・コバルの犯行とみて調べている。
4) バンサモロ開発計画の主要24事業を発表
国際協力機構(JICA)とバンサモロ開発局(BTA)は9日、首都圏パシッグ市で「バンサモロ開発計画」(BDP)に関するセミナーを開催し、新自治政府下での地域復興、開発を推進する主要24事業の概要を発表した。
セミナーは6月に行われた初回に続いて2回目。初回では中長期計画として計51事業を発表したが、さらに検討を重ね、計60事業に増やされた。
JICAによると、このうち2016〜22年に実施する主要24事業は、新自治政府の管轄地域に入る可能性がある地域の住民から意見を聞き、実現可能性の高さと影響の大きい事業を選択した。24事業は、インフラ整備、農業と食品製造・加工業の開発促進に重点が置かれている。幹線道敷設、コタバト空港改修、コタバト市の都市インフラ整備、公共かんがい設備開発、ココナツ製品産業およびハラル食品産業の促進などが含まれている。
5) バンサモロ基本法案、下院本会議審議を11月に持ち越し
国会は10日、休会入りし、バンサモロ自治地域基本法案( BLBAR, バンサモロ基本法案の代替法案)の本会議審議は11月3日の再開後に持ち越された。12月19日から再び年末年始の休会に入るため、年内に残された審議日数は18日。
フェレル政府側和平交渉団長は7日午後、首都圏ケソン市の下院議事堂で開いた記者会見で、11月18、19日にマニラ首都圏で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に言及。「アジア太平洋のリーダーたちは、『フィリピンは平和、進歩的であり、発展と統合への準備がある』という確証を得ようとしている。国際社会にアピールするこの機会を逃してはならない」と述べ、APEC開催までの8日間の審議で法案を可決するよう下院議員らに呼び掛けた。
MILFのイクバル和平交渉団長は、2016年5月の次期統一選が迫っていることから、年内可決が「唯一残された機会」と指摘。年明け以降は「すべてが政治(選挙運動)一色になる」とし、国会議員に「この国の歴史の中で、一度でよいから尊敬に値する政治家になってほしい。その後の歴史が各議員の法案への姿勢を裁くだろう」と強調した。
代替法案の審議は上下両院ともに、第2読会の質疑応答で止まったまま。定数不足による審議中断や、2016年政府予算案の審議優先などで足踏み状態が続いている。新自治政府の創設を盛り込む同法案が10月12〜16日の次期統一選候補者届け出期間までに可決されなかったため、すでに現行のムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)選の候補者が立候補を届け出た。法案可決後は、新自治政府の管轄地域に入るかどうかを問う住民投票が行わなければならず、枠組合意に明記された次期統一選と新自治政府議会選の同時実施は実現しない見通し。
6) 犯人グループ、人質の映像を動画サイトに投稿。軍事作戦中止を要求
北ダバオ州サマル島のリゾート施設で外国人男性3人とフィリピン人女性1人が拉致された事件で、犯人グループは13日、動画共有サイト、ユーチューブに人質となっている外国人男性3人の映像を投稿し、国軍・警察による人質救出の軍事作戦を中止するよう要求した。作戦を中止しない限り、人質の解放交渉には応じないと強調した。
3人はカナダ人のロバート・ホールさん、ジョン・リズデルさんと、ノルウェー人のヨルタン・セキンスタットさん。映像の中で、両国とフィリピン政府に対し、犯人の要求に応じるよう訴えた。犯人グループはスカーフとサングラスで顔を隠し、ライフルや刃物で人質を脅す
4人はスル州内にいるとの情報があり、国家警察が映像が撮影された場所の特定を急いでいる。国軍・警察ともに、「捜査中」を理由に映像や捜査内容への言及は避けた。
7) マストゥラ弁護士が和平枠組み違憲訴訟への参加申し立て。訴え棄却求める
フィリピン政府とMILFの枠組合意および包括的和平合意の違憲認定訴訟に絡み、英雄スルタン・クダラトの子孫で、MILF和平交渉団メンバーのダトゥ・マイケル・マストゥラ弁護士は27日、訴えの棄却を求め、訴訟への参加を最高裁に申し立てた。
同弁護士は、「バンサモロ住民のアイデンティティが脅かされ、彼らの共和国への忠誠心が疑われ、自由と正義、平和を望む声が多数派によって幾度も圧制されている今、私が訴訟に参加することが、バンサモロ住民の声を届ける機会になる」と説明。違憲認定を求める訴えを棄却するよう求めた。
申し立てには、ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)のハタマン知事、モロ民族解放戦線(MNLF)のアロント元副議長、MILF和平交渉団の他メンバーらが付き添った。
ロムアルデス下院議員=レイテ州=を代表とするフィリピン憲法協会(Philconsa)らは6月、大統領の裁量権乱用、新自治政府創設が憲法が定める自治体規定に反するなどとして、違憲認定を求めて提訴した。また判決が下るまでの仮処分として、枠組合意、包括的合意とバンサモロ基本法案に基づいた事業、予算執行の一時差し止めを請求した。
註:上記内容は主に以下の現地報道機関のウェブサイトの記事を参考に、筆者が編集した。
日刊まにら新聞(http://www.manila-shimbun.com/)
MindaNews(http://www.mindanews.com/)
Philippine Daily Inquirer(http://www.inquirer.net/)
Philippine Star(http://www.philstar.com/)
ABS-CBN News(http://www.abs-cbnnews.com/)
GMA News Online(http://www.gmanetwork.com/news/)
Manila Bulletin(http://www.mb.com.ph/)
Rappler (http://www.rappler.com/)
The Manila Times (http://www.manilatimes.net/)
Business World (http://www.bworldonline.com/index.php)


フィリピン在住