藤村 瞳
2015.10.01
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September 2015: Myanmar

1) 来月上旬にNCA署名、7団体が署名予定

9月9日、ヤンゴンの平和構築センターにおいて全土停戦合意協定(NCA)署名に関する最終協議が行なわれた。協議の結果、政府代表と少数民族勢力代表両者はNCA署名を10月第一週に行なうことで合意した。今回の協議には、テインセイン大統領、アウンミン連邦大臣などの政府高官らも出席した。NCA署名時期について、当初テインセイン大統領から9月29日に署名式を行なうとする提案があった。しかし、少数民族勢力側は地域住民に説明し理解を得る必要があるとしてこれを拒否。10月半ばの署名を再提案した。11月の総選挙との兼ね合いを考慮した結果、最終的に10月の第一週にNCA署名式を行なうことで合意した。

少数民族勢力側としては、全団体を含めたNCA署名を目指したいという意向があったが、政府側との協議のなかでNCA実現のための時期的な問題のため、全団体ではなく段階的に署名していくことになった。少数民族武装勢力のうち6団体は今回の署名には含まれないものの、そのうちの3団体(ワ州連合軍、アラカン軍、ラフ民主同盟)は現在戦闘行為を行なっていないため、NCA署名後に開催される政治会談にはオブザーバーとして会議に出席する見込み。残るコーカン武装組織(MNDAA)やパラウン州解放戦線(PSLF/TNLA)などとは現状ではNCA署名は難しいとして、先送りされた。

NCA署名後に行なわれる政治会談についても詳細は決まっていない。政治会談において、全体でどの程度の代表者が集うべきかについては意見が割れており、更なる調整が必要となる見込み。

少数民族側は今回の政府高官との協議結果を受け、9月28、29日にかけてタイのチェンマイにおいて各団体の指導者による最終代表者会議を行なった。協議の結果、少数民族勢力17団体のうち7団体が10月に予定されている全土停戦合意協定に署名することが明らかに成った。今回先立って協定に署名するのは、カレン民族同盟(KNU)、カレン民族同盟/カレン民族解放軍平和評議会(KNU/KLNA(PC))、 チン民族戦線(CNF)、パオ民族解放機構(PNLO)、ALP、全ビルマ学生民主軍(ABSDF)、民主カレン仏教軍(DKBA)の7つの団体。他団体は少数民族勢力全団体を含めた協定でなければ署名できないとしてNCA署名を見送った。しかし、NCA署名式にオブザーバーとして参加する予定であり、オブザーバーとしての団体が新たに設立される見込み。オブザーバーとして出席する諸団体は、今後の経過をみてNCAに署名するか決定を下すとみられる。署名を見送った団体のなかには、カチン独立機構(KIA)やシャン州発展党/シャン州軍(SSPP/SSA)、PSLF/TNLAなどが含まれている。

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The Mirror
September 10, 2015

2) 選挙キャンペーン、9月8日から一斉開始〔1〕

総選挙に向けた選挙活動が9月8日から一斉に開始された。二大政党である連邦団結発展党(USDP)と国民民主連盟(NLD)のうち、NLDは同党のステッカーやチラシを配布し、街宣車で主要都市の各地域をまわり同党への投票を呼びかけている。各管区(地方)での遊説は11日から開始され、選挙キャンペーンが本格化した。

選挙活動が解禁になると、スーチー氏は、USDP候補者や大統領派の有力人物が出馬する選挙区を中心に選挙キャンペーンを開始した。内閣府のアウンミン連邦大臣が出馬するカヤー州や、国民代表院キンアウンミィン議長が出馬予定のヤメーティン選挙区、また首都のネーピードーなどUSDPの支持が厚い地域をめぐった。アウンミン大臣はテインセイン大統領と近しい人物であり、キンアウンミィン議長は、一部の専門家の間では総選挙後に選出される次期大統領候補となる可能性のあるUSDPの有力者の一人である。スーチー氏はカヤー州での遊説で、資源豊かな国であるミャンマーだが、中央政府は豊かなのに国民は貧しいままの状態であると述べ、軍政と繋がりのある現政権とその悪しき政治体制から変化していく必要があると訴えた。また、今回の選挙は投票したい個人を選ぶのではなく、次の政府を誰に託したいのかということ問うためのものだと説明した。ヤメーティン選挙区では、USDPへの支持がNLDを上回っており、2010年総選挙においても(NLDが参加しなかったとはいえ)USDPが多く勝利した地域でもある。よって、支持票を得るために上ビルマ地域における最初の遊説をヤメーティンに決めたとNLDマンダレー地区代表がコメントした。NLDが与党となった場合には国民との約束(公約)を守る政府を築くことを掲げた。その他に、国民の利益を優先させることや国家予算の濫用を防ぐなど、USDP政権との違いをアピールした。

また、選挙キャンペーン解禁前に選挙講習会としてシャン州を訪問した際には、NLDがビルマ民族中心の政党ではないことをアピールした。少数民族の国民からNLDはビルマ民族の政党なのではないかという声が挙がっていることについて、「NLDはその結成当初から少数民族メンバーも含んだ政党である。今回、少数民族の住む管区・州地域においてNLDが出馬することは少数民族の権利を奪おうとするものではない。政治改革を行なうならば中央政府を変える必要がある。そのためには過半数以上の議席を獲得することが必須であるため、より多くの選挙区で候補者を立てた。」と説明した。また、中央政府が民主的でないならば、管区・州などの地方においても民主主義は為しえないと説明し、自身の政党への理解を広く求めた。加えて、アウンサンスーチー氏は、有権者名簿の記載の確認に行くよう呼びかけたり投票に関する講習を施すなど、選挙活動の一環として選挙への関心を高めるよう働きかけている。

8月にUSDP代表を罷免されたトゥラ・シェマン氏(下院議長)が出馬するピュー県選挙区では、シュエマン氏とNLD立候補者のタンニュン氏の一騎打ちとなっており、両者の選挙キャンペーンの熱戦が繰り広げられている。シュエマン氏は「どのような政党、誰が選挙に勝利したとしても、国の発展のために協力していく」と協調姿勢を打ち出し、国家の民主化と発展を第一とする考えをアピールしている。タンニュン氏は、シュエマン氏が権力も実績もある候補者だと認めながらも、自身の勝利を信じていると述べた。そして、当選後には議会において人権を尊重するよう求めていくと方針を説明したほか、同地域の交通の利便を向上させていくことも公約として掲げた。

一方、USDPはネーピードー、ヤンゴン、マンダレーなどの主要都市から選挙キャンペーンを順次開始した。各地区の掲示板にはテインセイン大統領の顔写真を利用し、これまでの大統領の業績をアピールしながら支持を呼びかけている。看板や選挙チラシには「国民の福祉、経済が発展するよう引き続き努力し取り組んでいく」というスローガンが掲げられ、現与党として既に改革に着手してきたことを強調し、引き続き努力する姿勢を打ち出している。そのほか、NLD同様街宣車を使った選挙活動も主要都市では行なわれている。

現職政府高官や議員である候補者に関しては、マンダレー管区議会は一週間のうち4日を選挙運動に割り当ててよいと決定した。週末と議会が開催される月曜日を除く平日の4日間をそれぞれの選挙活動に充てることができ、USDPから出馬する現職大臣らが出馬する選挙区での選挙活動を行なえるようになった。現職大臣らの選挙活動に関しては、大臣としての地方自治体の発展、活性化という職務と選挙活動が混同されるのではないかという不安視する声も挙がっている。マンダレー管区チョーミィン大臣が、大臣としての仕事と候補者としての選挙活動は全く別物であり両者を混同することはないとコメントしている。

7 Day Daily
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Daily Eleven
  September 9, 2015. September 13, 2015. September 20, 2015.

3) 選挙キャンペーン、9月8日から一斉開始〔2〕

二大政党のほかにも、各政党、候補者の選挙活動が一斉に始まった。無所属でヤンゴン市バハン選挙区から出馬するニョーニョーティン氏は、同地区で選挙キャンペーンを開始した。街頭演説を行なったほか、選挙チラシや投票方法を知らせるチラシなどを住民に配布した。ニョーニョーティン氏はヤンゴン管区議員としてこれまで行なってきた業績を説明し、クリーンな国家を実現するために国会議員として活動していくこと、クリーンな政府を実現させること、児童への教育を阻害している法律を廃し教育の発展を図ることなどを掲げた。ニョーニョーティン氏は地方議会を運営するのに最適な人物と称されており、同選挙区の選挙結果に注目が集っている。ニョーニョーティン氏のほかに、国民民主連盟(NLD)トゥンミィン氏、連邦団結発展党(USDP)のイェアウン、国民発展党のテッニュンウー氏、ミャンマー民主党のウーティンハン氏がおり、激戦区となっている。このほか、注目の無所属議員としては、ソーテイン大臣とアウンミン大臣らがカヤー州選挙区からそれぞれ出馬することが明らかになっている。

少数民族政党として今回注目されているのは、少数民族統一同盟(UNA)である。同党は、現憲法の受け入れを拒否するという理由で2010年選挙をボイコットしたため、今回が初めての選挙参加となる。UNAは、シャン少数民族民主連盟、ヤカイン国民党、カヤン国民党、モン国民党、ゾミ民主連盟、シャン・コーカン民主党、カチン国民民主議会、カレン国民党の合計8つの少数民族政党によって連立された政党であり、候補者はそれぞれの政党の所属議員として出馬することになる。同党は現行憲法の改正を公約として掲げ、各地域で選挙キャンペーンを開始した。ただし、他の主要政党のように大規模な選挙予算をつけた選挙活動を展開するのは難しいとして、各地域の世帯を訪問し支持を訴える戦略をとっている。

Daily Eleven
  September 9, 2015. September 16, 2015

4) 選挙活動中の妨害、違法行為続出、懸念高まる

今月から選挙活動が開始されたことに伴い、各政党の選挙キャンペーンに対する妨害もあちこちで発生している。マンダレー管区では、9月16日から20日にかけて政党の看板が切り裂かれ破られるなどの被害が続出している。被害は特定の政党に限定されているわけではなく、与党の連邦団結発展党(USDP)、野党である国民民主連盟(NLD)や国民民主勢力(NDF)などそれぞれ被害が生じている。NDFのキンマウンタン氏は「このような事態が起こるのは国家としての程度が低いためだ。5年の一度の今回の選挙は非常に重要なもので、法秩序が遵守されなければならない」とコメントした。過去の選挙においても各政党の選挙活動に対する妨害や候補者への殺傷被害が発生したことからも、対立候補者同士の選挙活動が今後さらに過熱した場合、安全面での懸念がさらに高まる可能性もある。治安国境担当大臣のミョーミン大臣は各政党の本部事務所など警備を強化すると発表している。

一方、USDPがヤンゴン管区の15の村落地域において宗教施設において選挙活動を行なっていることが明らかになった。同党と対立するNLDがこの件の同地域の選挙管理委員会に通達した。選挙活動において宗教施設や僧院などでの活動は選挙法により禁止されており、違反した場合は逮捕されると定められている。この件について、県レベルの選挙管理委員会からUNDPへ宗教施設での集会を中止するよう禁止令が発布された。逮捕に至るかどうかの詳細な処分において管区選挙管理委員会の決定を待つことになる。このほかにもNLDの一部の選挙活動に対しても違法だとする告発があるなど、一部の選挙キャンペーンにおいて規則に反する活動がみられている。

7 Day Daily
  No. 864, September 22, 2015. No. 866. September 24, 2015
Daily Eleven
  September 6, 2015. September 20, 2015

5) 候補者名簿公表、うち106名は出馬資格を満たさないとして除名

総選挙の候補者名簿が9月5日から公表された。各管区・州ごとの選挙管理委員会事務所において、各地区・地域から出馬する候補者の氏名が5日から7日にかけて順次貼り出された。

公表された候補者リストから合計で106名の立候補申請者が除名されたことが明らかになった。選挙出馬の条件として、ミャンマー国籍を持つ両親を持った国民であることが要件の一つとなっておりこの基準を満たさない者が処分を受けた。ティンエー委員長は、「審査を行い、処分を決定したのは各管区・州・県レベルの選挙管理委員会であるため、中央の連邦選挙管理委員会に訴えても(中央委員会は)何もできない。」と説明した。今回の処分は、現職の国会議員や政府高官らも含む公正なものであるとも説明している。特に少数民族同士の両親を持つ場合は父方の民族籍を受け継ぐことになるが、母方の民族籍を名乗って出馬申請をした者などが今回の処分の対象になっている。

今回除名された者の多くは、出生時に両親がミャンマー国民として登録していなかったことが理由となっている。国外の報道機関は、この件について両親がムスリムである候補者たちが意図的に除外されたと報道している。しかし、国内では国営民営問わず、そのような報道はされていない。今回の除名処分は与党野党問わず与えられている。問題となっている候補者の両親の国籍に関しても、ムスリムであることだけが問題となっているわけでなく、両親が中国人であったり、少数民族出身で国民登録をきちんと行なっていない場合も多く含まれている。

7 Day Daily
  No.848, September 6, 2015. No. 850, September 8, 2015
Daily Eleven
  September 20, 2015
Democracy Today
  Vol.2, No. 237, September 4, 2015

6) 有権者名簿最終版公表、在外投票も可能に

有権者名簿の最終版が9月14日から2週間公表され、27日に公表が終了となった。ヤンゴン管区では第1回目の公表時と比べて、名簿の確認に訪れた有権者が多かったと選挙管理委員会は発表している。対して、有権者名簿公表に際し各地区の選菅事務所にて監視を行なった市民団体のInstitute for Political Civic Engagement(iPACE)とIndependent Youth For Changeの2団体の報告では、事務所に名簿確認に訪れたのは少数であったという。選挙自体に関心を持つ国民もいれば(投票について勉強会が開催された地域は特に)、投票に関心がなく、名簿確認にも来なかった者も多いとコメントしている。

前回よりは名簿における誤記載は減少したものの、今回が最終版であるにも関わらず地域に住んでいない者の氏名が誤記されたり、住民の氏名が漏れていたりと未だに間違いが多い点から、一部の政党からは有権者名簿の正当性を不安視する声が挙がっている。また、転居(在留)届けを提出していないために、転入先地域の有権者名簿に名前が含まれていない住民が相当数いることもわかった。原則では180日以上居住していることが証明できる場合は、現在の居住地域の有権者名簿に名前を載せるよう申請することができる。この状況をうけて、連邦選挙管理委員会は10月10日まで上記の条件に当てはまる場合の変更申請を受け付けると発表した。18歳以上のミャンマー国民であり上記の条件に当てはまる者は申請可能だという。

一方で、海外在住者は期日前投票を行なうことができる。海外在住のミャンマー人は全体で10万人ほどいるとみられるが、期日前投票の申請を行なったのは約2万人程度だと明らかになった。在外投票を希望する場合には、事前の申請が必要となり、選挙管理委員会の審査の後に投票許可が与えられる。事前申請は8月にすでに締め切られており、申請を行なわなかった者は今回の選挙における投票権がない。

7 Day Daily
  No.857, September 15, 2015
Democracy Today
  Vol.2, No. 261, September 28, 2015. No. 262, September 29, 2015
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  No. 8327, September 18, 2015

7) テインセイン大統領訪中、習近平国家主席と会談

9月3日から5日にかけてテインセイン大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。今回の訪問は、9月2日から4日にかけて開催された抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念式典に参加するためのもので、その間にテインセイン大統領は習主席と会談の時間を持った。今回の訪問を通じて、ミャンマーと中国の軍事、経済分野を含む友好関係の維持発展について両者が確認した。加えて、中国側からは7月末と8月上旬に起こったミャンマーの洪水被害への支援として、90000元の支援金、洪水対策や復興事業における支援協力を行なうことが明らかにされた。その他、双方の相互理解の促進、国境地域の平和と法秩序の確立、国境地域での計画に対する相互協力、金融、経済、貿易などの各分野における協力などを引き続き継続することを確認した。

会談にあわせて共同声明も発表された。声明の内容は会談で協議された内容とほぼ同じであり、両国の友好関係をより豊かに発展させていくこと、メコン経済回廊構想に向けた両国間の陸路の開通と整備の促進、ミャンマー国内の農業、電力、経済分野などへの中国投資の強化などを目指すことが盛り込まれた。ミャンマー側としては、中緬国境地域の治安維持や平和構築に向け今後さらなる相互協力を求めていくことも声明文のなかで発表された。

7Day Daily
  No. 847, September 5, 2015
Myanmar Alin
  Vol. 54, No. 334, September 5, 2015. No. 335, September 6, 2015

8) 中緬国境での違法伐採問題をEIAが調査、年末までの輸出入禁止に

中緬国境地域における違法伐採の問題が深刻化している。9月初旬に第二次世界大戦終戦70周年式典に出席するため中国・北京を訪れていたテインセイン大統領が、滞在中に習近平国家主席と雲南省の李紀恒党総書記と個別に会談したことがわかった。中緬国境地域での違法伐採について協議した。特に雲南省の総書記長との会談においては、中緬国境地域で発生している森林違法伐採について禁じるよう要請したとみられる。

15日には中緬国境域での違法伐採に関する国境会議が行なわれ、雲南省政府が年内のミャンマーからの違法伐採の輸入を禁じると発表した。この措置は違法伐採された木材の輸出に限らず、違法な人身取引や麻薬取引も対象になるという。今回ミャンマー政府側の雲南省政府への要請で、国境に関税所が設けられることになった。国境での関税が定められたとおりに適用されるならば、輸出許可を与えると環境保全局の担当者が述べた。これまでにミャンマー政府は中国人の違法伐採従事者155名を身柄拘束したこともある。しかし、8日後に中国政府からの要請もありこれらの違法伐採労働者全員に恩赦を与えており、問題解決に向けた実質的な取り組みは十分に行なわれてこなかった。この措置について、ロンドンに拠点を置く環境保全団体、環境調査機関(Environmental Investigation Agency; EIA)はひとまず措置が講じられたことを歓迎しつつも、臨時的な措置である4ヶ月間では短すぎるとし、完全に取り締まることのできるような対処を求めると勧告している。

22日には、EIAが報告書を発表した。この報告書では、中緬国境においてミャンマーの貴重な資源である紫檀やチークなどが中国国境付近雲南省へ密輸されている実態が報告された。特に、高級木材としても重要な紫檀の伐採については、現状のペースでいくと3年以内には絶滅してしまう恐れがあるという。「ミャンマー・カチン州における紛争などによって生じた困難のなかで違法伐採された木材が中国側にわたるようになったのを始まりとして、違法伐採によって私腹を肥やすことができることからさらに複雑化していったと思われる。表面上では取り締まっているようにみえるが、実際はその背後に全方面において影響力を持つ元締めがおり、木材を送り続けるための特定のルートで輸出しているとみられる。」と同団体は報告した。違法伐採の問題は、当該地域の環境を損ねること、地域住民の安全を阻害すること、国境地域の治安悪化を招くこと、紛争の発生・激化などにつながる恐れがあり、両国政府に対し早急な措置を講じるよう進言している。

これと関連して、23日からネーピードーにて中緬政府高官らによる協議が開かれた。両国からは、副大臣、副局長らが会議に出席し、問題となっている違法伐採について意見を交わした。同協議に関して、ミャンマー側の森林専門家からは中国側の対応は見かけ騙しにすぎないと批判が挙がっている。森林局チョーティン局長は、「彼らが今回やって来た協議したものの、今回は副局長レベルでの会談である。副局長間の協議ということでは、何も決定する権限がない。協議では多くのことを議論するが、議論するだけで終わりである。実際に実現されることは少ない。」と批判的にコメントしている。森林局の副局長は、「ミャンマーから輸出される木材が違法伐採されたものであるとこれまでも中国側にも伝えてきた。それを知りながら、利益が出るとみて違法伐採を行なっている。彼らが受け取らなければ、今回の問題は一切起こらなかった。今後、輸出の際に関税をかけることで違法伐採を無くす予定である。」とコメントした。今回の協議をうけて、中国側は上層部に協議結果を伝えると話している。一方で、違法伐採事業者の活動は引き続き行なわれている。カチン州やザガイン管区では、違法伐採に関する通報が現在も生じており、現地の木材局職員らは対応に追われている。

中緬国境での違法伐採事業は、1990年ごろから始まり2005年に最も増加した。一時は中国政府の取り締まりが強化されたことをうけて減少したものの、2014年に生じた違法伐採はこの2005年の数値を上回っており、早急な対応が求められている。EIAによると、現政権下において木材の密輸量は急激に増加しており、185000ヘクタールを超える規模で違法伐採が行なわれているという。これらの違法伐採された木材は高級家具の材料として中国側で加工されており、仲介業者の存在や取引についても調査が必要となっている。

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9) 一部の少数民族勢力と国軍間で武力衝突、NCA署名にも影響か

カチン州バモー県周辺地域にてカチン独立機構(KIA)と国軍間の戦闘が23日から発生した。武力衝突によりシェルターに避難している地域住民は現在218名ほどおり、封鎖された地域に取り残された住民もいる。避難した住民のための支援はNGOらが行なっているが、教育、福祉、復興については緊急に支援する必要があると示された。今回の戦闘により地域の治安が脅かされる可能性もある。

KIAと国軍間の武力衝突は、現在進められている全土停戦合意協定(NCA)署名に関する交渉に影響を与える可能性もあり、一部では懸念が広がっている。両者の間で取り交わされていた停戦合意に沿うためにも、両者の協力による早急な対処の必要性が発表された。

26日から28日にかけて武力衝突は4回ほど発生しており、30日の時点でも戦闘は収束していない。国軍からの発砲が発生し、KIAの戦闘拠点において戦闘が発生している。国軍も武力衝突が発生したことを認め、同地域の治安維持のために住民からの要請により先頭に突入したと26日に声明を発表した。同地域で戦闘が発生しているのは事実であるが、同地域の治安が脅かされたため住民が国軍に助けを求めたということはないと地域住民が説明した。国軍との戦闘においてKIA側が地雷を使用しているため、地域住民にも被害者が出ており被害の拡大を防ぐために早急な対処が必要となる。 

その他、19日からパラウン州解放戦線(PSLF/TNLA)と国軍の間でもそれぞれ武力衝突が発生したことが明らかになった。TNLAには18日にミャンマー平和センターのニョーオウンミィン氏が電話で連絡を取り、政府側とTNLAと二者会談を個別に開催したいとの要望を伝えた。しかし翌日の19日には両者の間で戦闘が発生したことをうけて、TNLAからの回答は保留されたままとなっている。一方シャン州では、16日からシャン州再構築評議会(RCSS)と国軍の間でも戦闘が発生したことを受けて、RCSSは今回の全土停戦合意協定(NCA)の調印式に参加しないことを決定した。地域の治安と安全が確保されていないためと理由を説明した。19日にはアウンミン氏の元へ正式に通達を送り、戦闘が発生している地域の現状も併せて説明したと発表している。

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August 2015, Myanmar

HITOMI FUJIMURA藤村瞳

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