柴山 信二朗
2015.10.01
  • アーカイブ

September 2015: Southern Thailand

1) NSC事務局長人事

9月末のアヌシットNSC事務局長退職後の後任として、10月2日からタウィープ陸軍大将 が同役職に就く。

2) エラワン廟爆弾事件と深南部紛争

エラワン廟爆弾事件との関わりで、ナラティワート県スンガイコーロック郡居住のムスリムが拘束され、バンコクに移送された。別の容疑者もナラティワート県で拘束されている。

3) ワンカディール 元Beru satuリーダーの見解

5日報じられたところによると、Bersatu元リーダーのワンカディール ・チェマーン氏は、マーラー・パタニー は全ての武装勢力グループを代表しているわけではないので、和平対話に期待してはいけない、とした。

同氏はマーラー・パタニー代表団7人のうち6人を知っているとし、これらの人物は本物の武装勢力であるが、深南部で現在活動 をしている武装勢力グループには影響力を持たないとし、タイ政府は深南部で活動をしているグループに影響力を持つグループと非公式に対話を持つべきである、とした。

また、マレーシアが仲介している和平対話は20年続いているが、深南部紛争問題は解決されることなく、むしろ悪化しているとし、マレーシアのファシリテーターとしての役割に疑問を呈した。そして、マレーシアは部外者であり、交渉人としてはタイ人を選出するべきである、とした。

4) アブドル・カーリム氏のビデオ・メッセージ

8日、BRNのアブドル・カーリム氏がメッセージをユーチューブで流した。6分間のビデオ・メッセージの中で、同氏は、BRNは現在進行中の和平対話を認めていない、とした。

5) 非公式和平対話の状況

11日、和平対話についてのNSCとの会合を終えた後、和平対話の進展は遅々としているが、いずれ成果をあげるだろう 、とプラユット首相は述べた。武装勢力には複数のグループがあり、要求事項に関してこれらグループ内で合意を形成するのに時間がかかるためである、とした。NSCとの会合は、9月末までに 正式な和平対話の開催を実現させるためのものだった(註:タイでは9月末に年度がかわり、軍の人事異動も10月1日付けで行われるためである)。 和平対話をナショナル・アジェンダにするというマーラー・パタニーの要求事項に関して、和平対話は暴力事件を終わらせる9つの戦略の1つとしてナショナル・アジェンダの一部である、とした。

また、ナラティワート県ランゲ郡で発生した連続爆弾事件の翌日、ウドムデート陸軍司令官は、暴力事件が悪化することを望んではいないが、和平対話の前提となるタイ政府、武装勢力間の信頼構築には時間を要する、と述べた。

一方、今月30日に陸軍を退役する 予定のアックサラー和平対話政府代表団代表は、退職 後も代表団代表として継続して任務にあたる。バンポットISOC報道官によると、同件は2015年9月21日付首相府令第259/2558号により既に確定済であるという。

6) 連続爆弾事件

17日夜、ナラティワート県ランゲ郡で、8回にわた って爆弾が爆発し、一般人3人と兵士1人が死亡、13人が負傷した。連続爆弾事件翌日に会見をおこなったウドムデート陸軍司令官は、当局は深南部の治安状況をしっかりとコントロールしている、と述べた。

7) ダート・ターナーム氏の釈放

19日、PULO元リーダーの1人で、先日釈放されたサマエー・ターナーム氏の兄弟であるダー オ・ターナーム氏が釈放された。同氏は約17年間収監されていた。

治安機関によると、サマエー・ターナーム氏、ダー オ・ターナーム氏および同じくPULO元リーダーであり、両氏に先立って釈放されていたブードー ・ベートン氏の釈放は、和平対話へ向けた措置である。釈放後、サマエー・ターナーム氏と同様にダー オ・ターナーム氏は武装勢力グループとの交渉において仲介者としての役割 を担うことが期待されている。

8) イマーム・ヤパ事件

22日、2008年4月にナラティワート県ルーソ郡で、勾留中の拷問により殺害されたイマーム・ヤパの事件に関して、タイ国家汚職追放委員会(NACC)は同氏殺害容疑がかけられている兵士1人に対して法的処置をとることを促した。2008年12月にナラティワート県裁判所は、イマーム・ヤパは兵士の虐待により殺害されたとの判断を下していた。

註:上記内容は主に以下のWEBサイトの記事等を参考に、筆者が編集した。

Bangkok Post (http://www.bangkokpost.com/)
Deep South Watch (http://www.deepsouthwatch.org/)
Deep South Journalism School (http://www.deepsouthwatch.org/dsj)
Isra News Agency (http://www.isranews.org/)
Matichon Online (http://www.matichon.co.th/)
National News Bureau of Thailand (http://thainews.prd.go.th)
The Nation (http://www.nationmultimedia.com/)

01 October 2015

SHINJIRO SHIBAYAMA柴山 信二朗

モニター

関連記事

  • November 2015: Myanmar

    2016.01.02

    山本 一恵 アーカイブ
    November 2015: Myanmar

    8日に総選挙が実施された。投票終了時刻の午後4時から開票作業が始まり、同日深夜までには大勢が判明し、国民民主連盟(NLD)の圧倒的勝利が確実となった。選挙管理委員会は翌日9日午後から、一日6回各地区の公式開票結果を順次発表し、最終的な公式開票結果は19日に発表された。


  • December 2015: Southern Philippines

    2016.01.02

    大矢 南 アーカイブ
    December 2015: Southern Philippines

    大矢 南 1) 人権団体、現政権下で民兵組織に殺害された民間人94人に上ると発表 2) 国家公安委、大量虐殺事件に関与した警官32人を行政処分 3) 移行期正義和解委、政府とMILFに報告書提出 4) バシ


  • November 2015: Southern Philippines

    2015.12.10

    大矢 南 アーカイブ
    November 2015: Southern Philippines

    フィリピン日本人商工会議所を含む財界13団体は3日、首都圏マカティ市内で記者会見を開き、アキノ現政権下での可決が危ぶまれているバンサモロ基本法案について、早期可決を促す共同声明を発表した。


  • October 2015: Myanmar

    2015.12.09

    藤村 瞳 アーカイブ
    October 2015: Myanmar

    民族宗教保護協会(通称マバタ)が10月2日から4日にかけて、民族宗教保護法の成立を祝う記念式典を開催した。式典には僧侶2500名が参加し、マバタを率いる高僧らも出席した。民族宗教保護法とは、仏教徒女性婚姻特別法や一夫一妻制度法などを含む4つの法案の総称であり、これらの法律成立のためにマバタは2012年から活動を行なってきた。これらの4法案は今年9月までに全て可決され法律として成立した。