藤村 瞳
2015.09.10
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August 2015: Myanmar

1) 全土停戦合意協定(NCA)第9回公式協議開催、全団体を含む調印を目指すことで合意

第9回公式協議が8月6日・7日にかけて開催された。協議の結果、今月中に大統領、国軍司令官などを含めた政府高官らと少数民族組織代表団との直接会談を開催することが決定した。全土停戦調整チーム(NCCT)メンバー全団体を含めた停戦合意協定を結びたい少数民族側と、現在も交戦が続く武装組織を除いて協定調印をすすめたい政府側とで意見の折り合いがつかなかったとみられる。政府側は、全土停戦合意を二度にわけてすすめていく方針を示しており、第一回の調印には戦闘状態が続く組織を含めず、第二回に先送りすることを提案している。この直接会談で交渉が決裂した場合には、総選挙後に発足する新政府に交渉が引き継がれる見通しであることを、高等代表団(SD)代表が説明している。

また、今回の公式協議の結果、NCA調印に含まれる国内外の証人のなかに、国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー氏が含められていることも明らかになった。これは少数民族勢力側から提案されたもので、公式協議の際に政府側も承認した。その他の国内からの証人としては、少数民族連合(UNA)、同胞政党連合(NBF)、連邦団結発展党(USDP)からの代表者が数名ずつ含まれる。海外からの証人も調印式に参加することが予定されており、国連・EUなどの国際団体のほか、中国、インド、タイなどの近隣諸国、アメリカ、イギリス、日本、ノルウェー各国からの代表者が参加する。

第9回公式協議終了後の8月11日には、少数民族諸勢力のうち15団体に大統領からのNCA調印への招待状が送付されたことが明らかになった。これをうけて、カレン民族連盟(KNU)は緊急中央会議を開き、同協定に合意し調印することを決定したと発表した。KNUのほかに民主カレン仏教軍(DKBA)、KNU/KNLA 平和評議会(KPC)、シャン州再構築評議会(RCSS)を加えた4団体が共同声明を発表し、調印に向けて合意したと明らかにしている。同時に全ビルマ学生民主軍(ABSDF)も同様の内容を発表した。一方でSSPPは少数民族武装勢力全団体を含めた協定合意となるよう努力すべきだという見解を示している。17・18日には、協定への署名に関してカチン独立機構(KIA)本部において会議が開催され、カチン独立機構(KIA)も全団体参加での調印を目指すことに賛成を表明した。政府側と少数民族諸勢力側間のNCAの9月調印に向けて調整が進められていると明らかになった。

8月21日から23日までチェンマイにおいて開催された少数民族武装勢力協議会談が開催され、最終日の24日には元来の基本方針どおりNCCTに参加している全ての少数民族勢力を含めた調印を目指すことを全会一致で確認、承認した。今回の会議は、先に行なわれた第9回NCA公式協議において、政府側と少数民族勢力との間でNCA調印の条件について合意が得られなかったことをうけて、少数民族団体側の全体の意思を確認し合意形成を図ったものとみられる。今後は第9回公式協議結果のとおり、少数民族勢力と高等代表団から計8名の代表者が大統領と国軍総司令官と直接会談する予定。この会談は当初は8月末の実施を予定されていたが、今月25日に高等代表団から同会談を来月に延期して欲しいとの要望が政府側へ提出されたため、来月9日に両者の最終協議が行なわれる見込み。

少数民族側が全団体参加での調印を目指すと発表したことに関して、政府側は現政権下、すなわち総選挙前にNCA調印を目指していく構えだ。現政権期間中に完了できなかった場合、新政権の下で最初からやり直しとなるため、現政権下で調印できるように努力すると政府側代表のアウンミン氏がコメントした。同氏は一からやり直しとなった場合にはまた5年ほどの時間がかかる可能性があるため、現政権下での調印を目指すと述べた。

7Day Daily—
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  Vol. 54, No. 307, August 8, 2015

2) テインセイン大統領総選挙不出馬

テインセイン大統領の次期選挙不出馬が連邦団結発展党から発表された。12日の記者会見において、マウンマウンテイン書記が明らかにした。現副大統領のニャイントゥン氏も不出馬の見込み。不出馬の理由は、健康上の理由等ではなく、大統領自身の意向であるという。同党からの不出馬に加え、個人として選挙に出馬する意向はない、しかし、選挙不出馬であるといっても大統領二期目を務めないという結論は出ていないとも同氏が述べた。現行憲法では、大統領として選出される要件として、総選挙で選出された国会議員である必要はない。

また、同党から出馬する国軍出身の候補者は59名、現職の大臣副大臣は46名であるとも発表された。元軍人の候補者には、海軍参謀総長トゥラ・テッスウェ将軍、国軍合同指揮官フラテーウィン将軍、国防省副大臣ウェールウィン将軍などが含まれている。出馬に伴い、元軍人の候補者らは現職から退役することになり、国軍側も承認している。

現在大統領府局長のアウンミン氏は、政党に所属せず個人で出馬することも発表された。カヤー州の選挙区から出馬する見込み。同氏は、テインセイン大統領の側近として知られ、当初は連邦団結発展党からの出馬を望んだが、同党から拒否されたため個人での出馬となった。

7Day Daily—
  No. 824, August 13, 2015

3) 連邦団結発展党(USDP)シュエマン氏党首から解任、新中央執行委員会発足へ

8月12日から13日にかけてネーピードーの連邦団結発展党本部で大きな動きがあった。8月12日の夜8時ごろに警備隊約200名が押しかけ、出入り口を封鎖し同党党本部事務所を一時占拠した。党本部にいる者の電話回線を切断し、政党事務所の外部は私服警備隊10名ほどが警備を固めていたという。その後、事務所の敷地内において警察、政府関係者を乗せた車も目撃された、さらに、政党役員の自宅電話回線も切断されたとも報道された。

その後、同党中央執行委員会が新たに組織されたことが明らかになり、そのなかに現在の同党議長シュエマンが含まれていないことがわかった。その他に、現職であった政党執行部関係者のうち12名が新執行部に含まれていない。これらの12名はいずれもシュエマン氏に近い人物であったとみられている。この一連の出来事について、ティンナインテイン新総書記長は、「政党の正式な党首はテインセイン大統領である。しかし、大統領としての任務があるため、副党首が党首として代わりに職務に就くことになっている。トゥラ・シュエマン氏は国家にとって重要な連邦議会の議長であり、人民代表院の議長としての職務も行なわなければならない。政党の仕事により時間を割き、徹底的に専念できるよう取り組む必要があるため、政党議長のテインセイン大統領がシュエマン氏の代わりにテーウー氏に代理党首を務めるよう8月12日に議長の地位を譲ったものである。新執行委員会は、13日の午前8時から機能し始めたとみられる。

一連の出来事は、事実上のシュエマンの党首からの解任であり、国内外ではUSDP内部での大幅な人事交代に衝撃と不安が広がった。ティンナインテイン新総書記長は、「中央書記長は以前から、連邦団結発展党の発足以来職務に就いてきた人物であり、若手でもある。知識も幅広い。よって、若手を中央書記長の座に優先的に昇格させた。このような党の再編成は、国家と国民の利益のために更に一致団結して任務に取り組むために必要であったと中央執行部が発表した。」と説明し、党の理念や活動方針はこれまでと変わらずより効率的に党務を行なうための幹部交代である点を強調した。

新委員会には、前政権時の元大臣らや現在の州・管区大臣なども含まれている。今回の人事異動に関して、各省の大臣、副大臣と国軍から退役し政党員となった者らが含まれていることから、連邦団結発展党の人事異動は、政府と国軍の協働によるものだとする意見もある。

8月15日にはエーミィン氏が記者の質問に応じ、シュエマン氏は党首の座から解任されたが、連邦議会と人民代表院の議長の地位からは降格されないとコメントした。連邦議会議長としての地位は議会が承認したものであるので、現政府の高官らが関与する権限はないと説明した。この背景には2008年に制定された憲法では、国会の議長を降格させる場合に詳しい規定が一切含まれておらず、法的な手続きの取り方が不明であるため実際に国会議員を退職させることは難しいという事情がある。加えて、シュエマン氏の総選挙への出馬は今後も変わらず、連邦団結発展党の候補者として出馬すると認めた。

今回のシュエマン氏の突然の解任に関しては、テインセイン大統領との確執が関係しているとも報道されている。特に、ここ数年シュエマン議長は国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー氏との距離を縮めており、良好な関係を築いてきた。アウンサンスーチー氏が大統領候補になる可能性がないと確定した今、彼女がシュエマン氏の大統領就任を支持する可能性も出てきている。しかしその場合、以前国軍の影響が強いとされるUSDPが求める大統領像とは異なってくる可能性があり、党内部で懸念が広がっているとみられている。しかし、22日には上記のような憶測に対して、今回の人事異動に大統領の関与はないと発表された。8月22日にネーピードーの党本部事務所にて開かれた記者会見において、同党の新事務局長のティンナインテイン氏が発表した。同党内部の人事異動に大統領が関与しているという噂や、今回の人事異動が今年の総選挙や今後の民主化に悪影響を及ぼすのではないかという国民の懸念が広まっていることを受けてのものとなった。同氏は、「大統領は以前から、憲法に定められたとおり政党活動に関与してこなかったし、現在に至るまでそのようなことはない。先の執行部の集会への参加も、ただ挨拶を行なっただけで政党活動に値する事は行なっていない。」と説明した。

新たに組織されたUSDP中央執行委員会の主な役員名と役職は以下のとおり。

代表 テインセイン
副代表 テーウー
     トゥラ・エーミィン
中央顧問  ティントェッ
      ソーター
      キンマウンミィン
中央アドバイザー  タウン
          ルンティー
          テインゾウ
          テインスェ
          チョーミィン博士     
総書記長      ティンナインテイン
副書記長      テッナインウィン
中央書記      パイットウェ
          マウンマウンテー博士
          ティントゥン
          チョウチョウテー博士
          ウィンモウトゥン

7Day Daily—
  No. 824, August 13, 2015. No. 825, August 14, 2015. 
Daily Eleven—
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The Voice Saturday—
  Vol. 11, No. 30, August 15, 2015

4) EUの選挙監視団、ミャンマー総選挙を監視へ

8月21日、EUとミャンマーとの間で、EU監視団による総選挙監視に関する覚書が締結された。EUによる民主化推進プロジェクトの一環であるEU選挙監視団(EOM)が国際選挙監視団として、ミャンマー政府からの正式な招聘をうけることとなった。海外選挙監視団体担当である選挙管理委員会メンバー、ミィンチー氏と、駐ミャンマーEU大使ローランド・コビア氏との間で署名式が執り行われた。選挙管理委員会副委員長のトゥントゥンウー氏は。「EUを含めた5つの団体と選挙監視に関する覚書と結ぶ予定である。そのうち、EUを含め3団体とこれまでに覚書を締結している。」選挙監視団には、カナダ、スイス、ノルウェーからの監視員と在ミャンマー大使館の外交官らのほかに、EU加盟国から選挙に関する短期・長期的な監視員ら合計100名以上が含まれている。EU選挙監視団は世界各国において選挙監視に関与してきた国際団体の一つであり、これまでに120の地域において活動を行なってきた。また、今回の選挙の準備作業のために、EUは100万ユーロ(14.5千万チャット)の資金協力をしたことも併せて発表された。

今回の海外選挙監視団の受け入れは、国際的な基準に見合う公正な選挙にするための措置とみられており、諸政党やNGO団体もこれを支持している。EU側は「民主的、法の支配を遵守した、人権にも配慮した選挙とすることが、EU側の基本思想(方針)だ」と説明し、選挙に関連する業務が全て完了するまでミャンマー国内で活動を続ける見込みであることを発表している。

Daily Eleven—
  August 22, 2015
Democracy Today—
  Vol. 2, No. 224, August 22, 2015

5) 宗教、婚姻に関する4法案全てが可決、施行へ

ミャンマー人仏教徒女性婚姻関連法を含む2法案にテインセイン大統領が署名した。これで、上記の法案は正式に法律として発効することになる。今回大統領が署名したのは、ミャンマー人仏教徒女性婚姻関連法と改宗関連法案の2つで、これらは人民宗教維持団体が進めてきた4つの法案に含まれているものである。これらの宗教に関する4法案をめぐっては、国際人権団体から信仰の自由や女性の基本的人権を侵すものであると批判が挙がっており、大統領にたいしても法案に署名をしないよう求めていた。ヒューマン・ライツ・ウォッチのミャンマー駐在員は「基本的人権を脅かす法案であり、ミャンマーの憲法にも国際法にも反している。これらの法案が成立するならば、宗教コミュニティ間での対立が深まる恐れがある。特に、マイノリティや女性の権利を脅かすものである」というコメントを発表した。

 たいして人民宗教維持団体側は、「これらの法律は、我々が現代に新たに起草したというものではなく、1954年の婚姻関連法を修正しなおしたものであるので、この法案としては、ミャンマーの女性を守るためのものである。しかし時代が変わり環境が変化してきたため、修正する必要が生じてきた。国民の宗教を保持していかなければならない。」と説明し、同法案の正当性を訴えた。

 また、8月31日には審議されていたもうひとつの法案である一夫一妻関連法に大統領が署名し、施行された。これは、ミャンマー国内での婚姻は一夫一妻制度を採ると定めたもので、宗教の違いに関係なくこの法律が効力を発揮することになる。これは、一夫多妻制を認めているムスリムなどに対して、婚姻に関する規制を設けたかたちとなる。

Democracy Today—
  Vol. 2, No. 229, August 27, 2015
Myanmar Alin—
  Vol. 54, No. 328, August 29, 2015

6) 政府官僚現職解任、連邦団結発展党(USDP)党務復帰へ

8月12日に、大臣・副大臣4名が大臣・副大臣の地位から本来の軍人としての職務に復帰し、政府高官ら計8名が現職から解任された。大統領の名前でこれらの人事が発表された。

防衛大臣であるウェイルウィン副大将と副大臣のチョウッチョウニュン大将、国境大臣のテッナインウィン副大将、副大臣ティンアウンチッ副大将ら4名が政府高官の地位から解任され、本来の軍務に復帰するよう通達が出された。その他に、大統領府第5大臣ティンナインテイン氏、通信・情報技術省大臣ミャッヘイン氏、入国管理局大臣キンイー氏、鉄道省大臣タンテートー氏、情報省副大臣パイットェし、宗教省副大臣マウンマウンテー博士、共同事業省副大臣ティントゥン氏、労働省副大臣モウトゥン博士らが現職から解任された。これら政府官僚の解任は、連邦団結発展党内部の党内政治をにらんだ動きであるとみられている。政府高官としての職務からの解任をうけて、上記の元大臣らはUSDPの党務に復帰すると、大統領府報道官のイェトゥッ氏がコメントした。大統領派の人物を党内政治に復帰させることで、総選挙後に党内部におけるパワーバランスを有利に保つ目的があるとみられている。解任された大臣・副大臣ら全員の名前は、総選挙の候補者リストに含まれており、次期選挙を戦う見込みである。

今回解任されたメンバーは、12日夜から13日にかけて発足した同党の新中央執行委員会メンバーとして全員が含まれており、党内政治に復帰させるという上記の思惑どおりの形となっている。

7Day Daily—
  No. 824, August 13, 2015
The Voice Saturday

7) 民族代表院、議会開催停止へ

19日、民族代表院の議会開催一時停止が決定されたとキンアウンミィン同院議長が発表した。議会開催停止の提案は、連邦団結発展党の議員二名から18日に提出された。先の洪水の被害が甚大であること、被害地域への支援を行なえるようにするためと、総選挙前の時期に所属政党の選挙活動に時間をあり充てることができるようにというのが議会開催停止の主な理由として説明された。19日には議会開催停止について信任投票が行なわれ、賛成128、反対34、保留14で賛成多数のために決定が下された。民族代表院は議会開催を停止するが、人民代表院と連邦議会は代わらず議会を継続開催する予定。今期の議会会期中に審議される予定であった法案等は約30件あまりあり、審議に遅れが生じることに関し同院議員からは反対の声も挙がっている。今後、緊急で議会を召集する必要がある場合のみ、特別国会を開くとも発表された。

民族代表院の議会停止については、議員からも批判の声が挙がっている。連邦団結発展党のエーマウン博士は、「連邦議会は開会しているので、洪水被害を理由にして民族代表院を停止しても意味がない。このような重要なときに議会を停止させるべきではない。このような議会停止の背後には、強力な政党の思惑があるはずだ。誰が議会を恐れ停止させたいと思っているのか、それは何故なのか、考えるべきことである」とコメントした。洪水被害を理由にした議会停止についてはネット上での批判が噴出しており、議会停止を提案した議員二名が被害地域に実際に行くことがあるのかという点や、キンアウンミィン民族代表院議長が被害地域に出向いたことがないという事実について批判が集中している。

7Day Daily—
  No. 831, August 20, 2015
Daily Eleven—
  August 20, 2015
Democracy Today—
Vol.2, No.222, August 20, 2015

8) 総選挙候補者は6000名超、候補者/有権者名簿は9月公表

総選挙に出馬を表明した候補者数は総勢6000名を越えることが明らかになった。内訳は、人民代表院1772名、民族代表院913名、州・管区議会3504名(少数民族代表163名を含む)で、合計6189名である。最大野党である国民民主連盟(NLD)が最も多くの候補者を擁立しており、1150名が申請を終えている。次いで与党の連邦団結発展党(USDP)が1134名の候補者を擁立している。この候補者名簿は各政党から14日までに選挙管理委員会に提出されており、8月18日から27日まで名簿の記載内容が審査される。しかし、先月末に起きたミャンマー中部における洪水被害を考慮して立候補者の申請期間が延長されたためことをうけて、選挙管理委員会は、候補者名簿の審査を同月31日まで延長すると発表した。最終的な候補者名簿は9月になってから公表される見込みだ。各候補者による選挙活動期間は9月8日から11月6日の夜12時までと定められており、有権者名簿の公表と選挙活動期間が重複することになる。

また、今回の選挙では期日前投票も実施される予定だ。選挙管理委員会は、期日前投票の要件を満たす人物は、選挙日当日の二日前までに投票をすることが可能だと説明している。期日前投票の対象者は、当日に有権者名簿に記載された地区以外の場所にいる者、病気や出産などで入院中の者、受刑者に加え、高齢者や病気の者なども対象になるという。期日前投票を希望する者は所定の用紙にて選挙管理委員会に届け出る必要がある。その後、期日前投票を行なう有権者名簿を各地区の選挙事務所において公表するという流れになっている。

7・8月の洪水被害の影響で、有権者名簿の最終公表も9月にずれ込むことがわかった。既に第1回の名簿公表は各管区、州の地域で終了しており、名前や情報に間違いがある場合には有権者から修正希望が申請されている。最終的な名簿は公開日から14日間貼り出される予定で、その期間中に有権者らは各自の名前が含まれているか、記載情報に間違いがないかを確認し、間違いを発見した場合には規定のフォームで選挙管理委員会へ申し立てることができる。

7Day Daily—
  No. 828, August 17, 2015. No. 842, August 31, 2015
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Myanmar Alin—
  Vol. 54, No323, August 24, 2015

9) 総選挙当日の報道に関する規制を選菅が発表、メディアは反対

総選挙当日の報道メディアの取材許可に関して、連邦選挙管理委員会がミャンマー暫定報道委員会に対して26日に通達を送ったことが明らかになった。国内メディアは各地区における報道局から派遣できる記者数を各地区ごとに3人までと規定を設け、合意文書に署名すると報道メディアとしてのカードが発行される。この各報道機関から一つの地区に3人までしか派遣できないとう規定について、暫定報道委員会は報道に制限を加えるものであるとして批判の声を挙げている。報道関係者からは「このような制限を加えるべきでない」、「今回の選挙は国内外からも監視団体が参加する重要な選挙である。公正な態度で臨むというならば、なぜメディアに規制をかける必要があるのか。抑圧的な態度はあるべきでない」などと批判が寄せられている。報道陣の人数に規制をかけようとする動きについては、人権団体からも批判が挙がっている。選挙管理委員会の説明によると、この規定は同委員会が独自に制定したものでなく情報省の規則に従ったものであり、同省の傘下にある選挙管理委員会が、独断で変更・修正を行なえるものではないという。以前の選挙においては、このような人数制限を行なう規制はなく、今回が初めて。

30日には、上記の点をめぐって選挙管理委員会と暫定報道委員会の代表者らが会合を行なった。会合の結果について、暫定報道委員会のチョーミンスェ総事務局長は、「以前に我々が理解していた『一地区につき記者3人』という文言は、『一地区につき記者3人のみ』という意味だとわかった。選挙法による規定があり、その規定を遵守したその外では好きな内容を報道できるはずだ。このような報道の自由が国内外の監視団体や報道陣に対して与えられるということは、同法律でも認められている。」と、この規定に反対の背景を説明した。

Daily Eleven—
  August 28,2015
Democracy—
  Vol.2, No. 233, August 31, 2015

10) 国会議員資格停止関連法に関する協議、延期へ

8月20日に行なわれた連邦議会において、国会議員資格停止関連法審議の延期について協議・投票が行なわれた。延期を支持する賛成票多数(賛成264、反対235)で審議の延期が決定した。同法案については、事前に法案委員会から早期決議を求める報告書が、議会とシュエマン議長に提出されていた。同委員会はこれまでにも三度同法案を可決するよう求める報告書を提出しており、今回で四度目の要請となった。前期までの国会審議のなかでは、14の政党から早期可決への反対意見が表明されており、該当する選挙区住民の1パーセントの提案で資格停止となるという憲法の規定が低すぎる数字で民主主義的でないという意見や、国会運営に支障をきたす可能性や審査委員会を設立すべきなどの意見も挙がっていた。20日の審議において、審議継続に賛成の軍人議員からは、「同法案を早急に可決することが選挙候補者のためにもなり、また国民からの信頼をより得ることができるだろう。よって、国民の意志が選挙により反映されるようにするため、同法案を今この時期に可決するべきである」という見解が提出されていた。一方、投票前の議論では、「諸外国では、同様の規定においては有権者の20、30パーセントを持って職務を撤回できるよう定めている。このように法案内容を変更すべきである。早急な可決を行なわず、選挙後の新政府、新議会において継続審議を行なうべきだ」という審議延期への賛成意見がみられた。

この法案は、2008年憲法第396条(b)項において「該当する選挙区の有権者のうち最低1パーセントが国会議員の職務からの解任を求める場合、その国会議員はその職務から解任される」という規定に関して詳細を定めようとする法案である。国民民主連盟(NLD)は当初からこの1パーセントという数字がきわめて低いことに反対しており、憲法改正の審議の際から1パーセントから20パーセントへ修正するよう求めていた。しかし、この点について憲法改正は承認されなかったため、現行どおりの規定に従って審議をしていく必要がある。

Daily Eleven—
 August 20, 2015
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Vol. 2, No.223, August 21, 2015

August 2015, Myanmar

HITOMI FUJIMURA藤村 瞳

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