柴山 信二朗
2015.05.01
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April 2015: Southern Thailand

1) 他管区からの駐留兵の撤退開始

2日、プラモートISOC第4管区報道官は、深南部駐留兵の定期異動を開始した、と述べた。駐留期間を終えた兵士の一部は、陸軍第2管区ではなく第4管区の兵士で補填される。この戦略の一部として、第15歩兵師団長がパタニー特別任務部隊副隊長に就いた。陸軍第2管区から来ている9人の武官は残り、第2管区から来てパタニー特別任務第21部隊に駐留している兵士の指揮を執る。21部隊はコークポー郡の治安維持を担当している。

2) トゥンヤーンデーン(トチュート村)事件の真相究明

2日早朝、パタニー 県ムアン・パタニー 郡で爆弾4発が爆発し、1人が怪我をした。4発中3発はビジネス街での出来事で、ほぼ同時に爆発し、多くの資産が被害を受けた。警察はトゥンヤーンデーン事件の報復行為と見做している。

同日、ウドムデート陸軍司令官は、トゥンヤーンデーン事件で無実の者が犠牲となったのであれば、軍は間違いを認めると、述べた。同陸軍司令官は、プラカーン陸軍第4管区司令官に同事件について 公平で妥協のない調査をするように命じた、とのことである。トゥンヤーンデーン事件真相究明委員会 は、ウェードゥーラーメー・マミンチ ・パタニー県イスラーム委員会委員長が委員長を務め、委員には宗教関係者、コミュニティー・リーダー、軍関係者、ファトニ大学関係者などが含まれている。治安部隊は、容疑者が先に発砲した、としている。

7日、トゥンヤーンデーン事件真相究明員会は、殺害された4人は武装勢力グループ・メンバーやその支援者ではない、との報告をおこなった。また、同委員会は同事件に関わった治安部隊関係者に法的措置を執るとや南部国境県開発戦略委員会の規則に則った賠償金を支給することを促した。一方、家宅捜索やその手順は適切であった、とした。なお、4人の殺害は非合法であるか、また、犠牲者の側に置かれた銃は誰のものであるのかは、証拠不十分のため明らかにされなかった。

8日、トゥンヤーンデーン事件真相究明員会の報告を受けたプラウィット 国防相は、トゥンヤーンデーン事件で4人の殺害に関わった治安部隊関係者には法的措置が執られるべきで、犠牲者への賠償はSBPAC (南部国境県行政センター)がおこなう、とした。一方、トゥンヤーンデーン・モデルを修正する必要はない、とも述べた。パタニー 県警察長官は、トゥンヤーンデーン事件の4人の殺害に関わる治安部隊関係者7人には殺人容疑がかけられ、法的措置が執行されるだろう、とした。

一方10日、トゥンヤーンデーン事件で拘束された22人中21人が釈放された。残る1人は薬物容疑で拘束されている。

23日、トゥンヤーンデーン事件真相究明委員会は、殺害された4人は武装勢力グループ・メンバーではなく、非武装であったとの結論を出した。それを受け、第41連隊 長および副連隊長4月20日付けの異動が決まった。

3) プリンス・オブ・ナラティワート大学学生への容疑

2日、2月20日に13人の負傷者を出したナラティワート県ムアン・ナラティワート郡の爆弾事件に関して、治安部隊の捜索によりナラティワート県の学生寮でプリンス・オブ・ナラティワート大学学生22人が拘束された。

6日、未だ釈放されずに拘束されている学生4人の釈放を求めて、容疑者が拘束されている第46歩兵部隊駐屯地(Ranger Regiment)で、約20人の学生グループが抗議活動をおこなった。プラカーン陸軍第4管区司令官によると、2人の学生は容疑を認めているという。

翌日、同県知事、同県警察長官、同県イスラーム委員会委員長が4人の学生の親族に説明をおこなったとのことである。

4) サムイ島爆弾事件と深南部紛争との関連

10日、サムイ島のセントラル・フェスティバル・サムイ・ショッピングモールで車両 に仕掛けられた爆弾が爆発し、外国人1人を含む7人が負傷した。爆弾がしかけられた 車両はヤラー県で盗難されたもので、深南部紛争との関わりが指摘された。一方、2015年2月1日にバンコクで発生したサイアム・パラゴン爆弾事件との関わりを指摘する声もあった。治安関係者によると、使用された爆弾の類似性から、政府は深南部の武装勢力の仕業である可能性を調査しているという。その一方で、深南部の武装勢力が活動地域を他地域に拡大する形跡は見られない、ともした。

12日、南部国境県問題解決委員会は、サムイ島爆弾事件は地域ビジネスや政治が要因にかもしれないが、爆弾の仕掛け方や 使用された車両から実行者は深南部の者かもしれない、との報告をおこなった。同委員会は南部地域の軍・警察で構成されている。捜査担当警官によると、警察は深南部の武装勢力の仕業と考えているとのことである。一方、政府や軍は政治的要因を疑っているとのことである。

16日、ウドムデート陸軍司令官は、サムイ島爆弾事件は深南部の武装勢力が紛争地域の拡大を図ったものである、との見方を示した。

翌日、軍のスラーターニー管区司令官は、深南部出身の警備員の一人がサムイ島爆弾事件に関与しているとの見方を示した。また、ソムヨット警察庁長官は、サムイ島爆弾事件への政治家グループの関与を証明する十分な証拠がある、とした。

一方18日、プラウィット副首相は、深南部の武装勢力のサムイ島爆弾事件への関与を否定した。

22日、深南部を基盤とするナットムッディーン元下院議員はサムイ島爆弾事件への関与を否定した。同日、パタニー県ムアン・パタニー郡で、サムイ島爆弾事件に使用された車両の売買を仲介したブローカーが逮捕された。同ブローカーは盗難された車両の持ち主を知っていた。元持ち主はすでに逮捕されている。

01 May 2015

SHINJIRO SHIBAYAMA 柴山信二朗

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