山本 一恵
2015.04.01
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March 2015: Myanmar

1) 教育法修正問題を巡りデモを阻止された学生たちが各地でハンガーストライキ

新国家教育法の修正を巡り、1月からデモを続けていた学生側が、中部レパダウンで一時、中断していたヤンゴンに向けてのデモ行進を2日、再開することを決めた。

2月に政府代表との話し合いで合意した修正が、議会で承認されないままになっているため。

学生側のデモ再開決定に対し、警察は放水車を含む多数の警察車両でバリケードを築き阻止しようとしたことから、学生側は反発。100人以上の僧侶と学生たちが3日午後からハンガーストライキを始めた。

マンダレーやザガイン、モンユワなどレパダウン以外の地区のグループもハンガーストライキを実施すると宣言したという。

http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18334-students-monks-on-hunger-strike-as-police-block-march
http://www.dvb.no/news/students-monks-declare-hunger-strike-burma-myanmar/48893
http://www.dvb.no/news/students-face-off-aginst-police-in-letpadan-burma-myanmar/48884
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18369-students-defy-order-to-disperse
http://www.dvb.no/dvb-video/letpadan-tension-sparks-return-nationwide-education-protests/48943

2) デモ行進の学生を警察が強制排除に乗り出す

新国家教育法修正を巡り、学生側のデモ行進を警察が阻んでいる問題で5日、ヤンゴンで抗議デモを行った学生らに対し、警察が警棒で参加者を殴るなどの方法で強制排除を行い、数人が負傷。88年世代Peace and Open SocietyのNilar Theinを含む8人が拘束された。

強制排除の際、警察官のほか、赤い腕章を巻いた民間警備員も加わり、男が女性の首をつかまえ拘束するなどした。

このような暴力的な強制排除が、軍政時代の鎮圧を想起させるため、88年世代Peace and Open Societyのミン・コー・ナイン氏は「容認できない」と強く批判した。

民間警備員について、大統領報道官のYe Htutは、ヤンゴン地方政府が組織したものだとし、軍の翼賛組織「Swan Arr Shin」は含まれておらず、中央政府は関与していないと述べた。

一方、ヤンゴン地方政府は8日、抗議に訪れた88年世代Peace and Open Societyのメンバーらに対し「法に基づくもの」だと説明した。

ヤンゴンでの強制排除は、その後も散発的に続いた。

http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18448-protesters-attacked-beaten-and-arrested-in-yangon
http://www.dvb.no/news/rangoon-students-activists-released/48998
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18557-red-armband-crackdown-lawful-says-yangon-region-chief-minister
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18490-government-defends-rally-crackdown-as-police-arrest-more-protesters
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18636-police-move-fast-to-crack-down-on-yangon-protest
http://www.dvb.no/dvb-video/vdo-students-activists-beaten-police-put-rangoon-protest/48977

3) レパダウンで大規模な強制排除

一方、警察と学生側のにらみ合いが続いていたレパダウンでは、10日午後、約500人の警察官が強制排除に乗り出し、デモ参加者やジャーナリスト、住民ら約200人を警棒で殴ったり、学生側がヤンゴンまでの移動に使用するつもりだった車を壊したりしたほか、70人ほどが避難していた僧院や周辺の家にも踏み込み、デモ参加者を拘束した。

学生側の代表の一人、 Min Thway Thitさんなどによると、この日の午前中、バゴー地方当局は、ヤンゴンに向けて出発することを許可していた。しかし、その後、当局が、学生側が民主主義の象徴であるクジャクの旗を掲げてデモを行おうとしたため、強制排除が始まったという。

目撃者の証言などでは、少なくとも100人以上が負傷し、ジャーナリストや支援の市民らを含む127人が拘束された。

強制排除は6日も続き、学生5人が逮捕され、撮影中のカメラマンも拘束されそうになるなどした。

http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18603-police-beat-students-in-protest-crackdown
http://www.dvb.no/news/police-lash-out-at-students-in-letpadan-burma-myanmar/49100
http://www.dvb.no/dvb-video/127-students-arrested-in-letpadan-chaos-burma-myanmar/49124

4) 警察による強制排除に国内外から懸念

警察や民間警備隊による強制廃除に対し、アメリカやEU、海外の人権団体が懸念を示すなど、国内外から批判の声が上がった。アメリカのブッシュ前大統領夫妻も、拘束された学生たちの即時釈放を求める声明を発表した。

一方、ヤンゴンでは、報道等で事態を把握した一般市民らが抗議の意思を示すため、13日、赤い腕章に対抗する形で白い腕章を配布するキャンペーンを開始した。19日をめどに18地区でキャンペーンを拡大する予定だとした。

一方、11日の国営紙の報道によると、テイン・セイン大統領はヤンゴンでの強制排除に関し、調査委員会を立ち上げることを指示した。強制排除のやり方が適切だったかどうかを調査するという。

http://www.dvb.no/news/burmese-react-to-brutal-suppression-of-student-protest-burma-myanmar/49137
http://www.dvb.no/news/international-voices-decry-police-crackdown-on-students-burma-myanmar/49066
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/world/item/18712-george-w-bush-condemns-myanmar-protest-crackdown
http://www.dvb.no/news/students-issue-white-armbands-to-protest-violence-burma-myanmar/49231
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18643-official-inquiry-to-be-held-into-protest-crackdown

5) コーカン武装勢力との内戦で、ミャンマー軍機の爆弾が中国領内に着弾、13人死傷

2月から続いているミャンマー政府軍とシャン州のコーカン武装勢力との衝突で、13日、ミャンマー軍機が投下した爆弾が、中国・雲南省南部に着弾、農作業をしていた5人が死亡、8人が負傷した。中国国営新華社通信が伝えた。

これに先立つ8日にも、中国側にミャンマー政府軍の砲弾が着弾。民家が損壊したばかりだった。

そのため、中国政府は、紛争地帯に戦闘機を派遣し、警戒に当たるとともに、劉振民外交部副部長が13日、Thit Linn Ohn在中国ミャンマー大使を呼んで抗議し、事態の調査と関係者の処罰、再発防止のための措置を求めた。

一方、ミャンマー政府は16日、国営紙で「深い悲しみ」を表明。その上で、爆弾は、コーカン武装勢力が政府軍から盗んだものではないかと指摘した。また、ミャンマー政府は、今回の事態について、両国で合同調査が行われると述べた。

http://www.dvb.no/news/china-sends-fighter-jets-to-burma-border-after-bomb-kills-four/49207
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/regional/item/18795-china-sends-fighter-jets-to-myanmar-border
http://www.dvb.no/news/kokang-conflict-red-cross-volunteer-succumbs-to-wound-burma-myanmar/49630

6) ラカイン州沖でフェリーが沈没、59人死亡

西部ラカイン州のチャウピューからシットゥエに向かっていた政府所有のフェリーが13日、沈没し、169人が救助されたが、17日現在で61人の死亡が確認された。

原因について、警察は「過積載の疑いがある」と述べた。

フェリーは、乗員含め214人が乗っていたことになっているが、実際にはそれ以上の人数が乗船していたとみられている。

一方、ラカイン地方当局の調査委は26日、船長含め数人の乗組員が酒に酔っていて、乗客への警告を行わなかったなどとする事故報告書をラカイン州議会に提出した。報告書は、乗組員らが義務を果たさなかったとして、処罰されるべきだと結論づけた。

http://www.mizzima.com/news-news-domestic/dozens-dead-myanmar-ferry-sinking
http://www.mizzima.com/news-domestic/strong-currents-hamper-search-ferry-victims
http://www.mizzima.com/news-domestic/ferry-sinking-death-toll-rises-52
http://www.dvb.no/news/govt-report-blames-drunk-captain-crew-port-authorities-for-arakan-ferry-disaster-myanmr-burma-rakhine/49667
http://www.dvb.no/news/arakan-ferry-death-toll-set-t-rise-mp-burma-myanmar/49226

Myanmar map (Wikimedia commons)

7) レパダウン衝突で警察が僧侶らの告訴を拒否

ミャンマー中部ザガイン管区モンユワ市のレパダウン鉱山開発を巡る問題で、2012年に警察が放った白リン弾によるものと見られる攻撃で負傷したとして、僧侶2人が16日、警察長官と警察を管轄する内務大臣を告訴する意向を示した。

AP通信によると、僧侶のWithoda師は、ヤンゴンでの会見で、「恨みからではなく、正義のために告訴するつもりだ」と述べ、土地の強制収用による被害回復と、化学兵器使用に対する謝罪を求めた。

しかし24日、弁護士が明らかにしたところによると、警察は「誠意をもって任務を遂行している公務員を、告訴できない」などとして訴えを認めなかったという。

http://www.dvb.no/news/monks-injured-in-latpadaung-firebombing-sue-govt-burma-myanmar/49256
http://www.dvb.no/news/latpadaung-police-reject-monks-lawsuit-burma-myanmar/49504
http://www.mizzima.com/news-domestic/police-reject-lawsuit-over-monk-protest-burns-lawyer

8) ヘッドホンをつけた釈迦のポスター作成、バー経営者らに実刑判決

ヘッドホンを着けた釈迦の画像をFacebookに掲載するなどして宗教侮辱罪で起訴されていた、ニュージーランド人総支配人ら3人が17日、懲役2年6か月の重労働を伴った実刑判決を受けた。

判決に対し、アムネスティ・インターナショナルは、「ばかげている」とし、無条件で即座に釈放するよう求めた。

http://www.dvb.no/news/buddha-bar-trio-sentenced-to-2-5-years-with-hard-labour/49269
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18876-court-finds-vgastro-bar-trio-guilty-of-insulting-buddhism
http://www.dvb.no/news/blackwood-family-devastated-intend-to-appeal-yangon-rangoon-burma-myanmar-buddhism/49284
http://www.dvb.no/news/buddha-bar-storm-blackwood-solely-responsible-says-vgastro-owner-burma-myanmar-yangon/48909
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18367-nz-bar-manager-blamed-in-furor-over-buddha-image

9) 下院議会で出産制限法案と異教徒間の婚姻法案を可決

下院議会は19日、仏教徒の女性に関する異教徒間の婚姻に関する法案(婚姻法案)と出産制限法案を可決した。民族宗教保護法案として知られる4つの法案の一部。出産制限法案は、すでに上院議会で可決していて、まもなく、婚姻法案が上院議会で議論されるという。

異教徒間の婚姻に関する法案は、仏教徒の女性と他の宗教の男性が婚姻する際には、地方当局に許可を求めなければならないという内容。

出産制限法案は、ひとりの女性が出産する子どもの数を3年に1人に制限する内容。

上下両院で可決された出産制限法案は、大統領が公布する前に、上下両院の合同議会でさらに議論されることになっている。

http://www.dvb.no/news/controversial-marriage-population-bills-approved-by-lower-house-burma-myanmar/49373
http://www.dvb.no/news/race-protection-law-a-distraction-to-real-issues-icj-burma-myanmar/48899
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/18332-parliament-urged-to-reject-grossly-discriminatory-laws

10) 上院で国家教育法修正案を可決

新国家教育法について、上院議会は26日、教育分野の予算の増額などを盛り込んだ修正案を賛成多数で可決した。法案は下院でも審議される。

学生側は、自治組織の自由な設立や、国家予算の20%を教育分野にさくよう求めていた。しかし、自治組織の設立については、「協定に従うべきだ」とされ、予算については、明確な数値目標は盛り込まれなかった。

ヤンゴン地区選出のPhone Myint Aung上院議員は「学生側の主な要求は無視された」と述べた。その上で、自治組織の設立については「政府側となんらかの協定が結べなければ、現状と変わらない」と指摘した。

Aye Maung上院議員は「学生側の要求は半分認められた」とし、「学生側の主たる要求のうち、4、5点は盛り込まれなかった」と話した。

一方、レパダウン地区での警官隊による強制排除で逮捕された学生や支持者ら80人の裁判が25日行われ、11人が釈放され、69人は拘束されたままとなった。

http://www.dvb.no/news/upper-house-passes-watered-down-education-bill/49603
http://www.mizzima.com/news-domestic/upper-house-debates-controversial-education-law
http://www.dvb.no/news/sixty-nine-charged-for-rioting-in-letpadan/49559
http://www.dvb.no/news/nner-govt-abused-its-power-is-haunted-by-history-burma-myanmar/49300
http://www.dvb.no/news/students-authorities-are-breaking-agreement-burma-myanmar/49266
http://www.dvb.no/news/students-boycott-parliament-briefing-burma-myanmar/48962
http://www.mizzima.com/news-domestic/student-activists-arrive-court-hearing
http://www.dvb.no/news/letpadan-students-appear-in-court-burma-myanmar/49529

11) ラカイン軍と政府軍が10年ぶり衝突

ミャンマー西部で29日未明、政府軍とアラカン軍(AA)との衝突が発生した。両軍の衝突は10年ぶり。

ラカイン軍は、カチン独立軍の本拠地カチン州ライザを拠点としていたが、ここ数か月でラカイン州に戻り始めていた。

ラカイン軍の情報をFacebookで伝えているラカイン情報局によると、週末に起こったKyauktaw Townshipでの衝突で、政府軍兵士2人が死亡、2人を拘束したほか、政府軍の武器を押収したという。

ラカイン軍に負傷者は出なかったという。

http://www.mizzima.com/news-domestic/arakan-army-claims-capture-tatmadaw-captain-fighting

12) 政府と少数民族組織が停戦協定締結に原則合意

ミャンマー政府の連邦和平構築委員会(UPWC)と少数民族16グループからなる全土停戦調整チーム(NCCT)の7回目の会合が17日から開かれ、両者は30日、停戦協定を締結することで原則合意した。会合後の記者会見で、NCCTが明らかにした。

チン民族グループのリーダーで、NCCTの代表でもあるLian H. Sakhong氏は記者会見で、「我々は原案のすべてについて討議し、問題はなくなった」と述べた。しかし、実際に協定に署名するかどうかは、今後、カレン州のHpa-anで会議を開き協議するという。

また、これまで障害となっていた、少数民族の武装解除、連邦軍の創設、自治権に関する問題などについては、今回の協定案には盛り込まれず、調印後、政治対話で解決を図ることになった。

協定締結の合意を受けて、31日、テイン・セイン大統領が立ち会い、軍司令官や与党議員、少数民族代表らが停戦案を支持すると署名した。

停戦協定締結で政府側と少数民族側が合意したことについて、オブザーバーとして出席していた、国連事務総長の特別アドバイザーのVijay Nambiar氏は、「60年以上の内戦を経て、ミャンマー政府と16の少数民族武装勢力が停戦協定締結で合意したことは、歴史的で意義あることだ」と声明を発表した。

http://www.dvb.no/news/historic-ceasefire-agreement-reached-burma-myanmar/49711
http://www.mizzima.com/news-domestic/govt-and-ethnic-groups-agree-landmark-draft-peace-deal
http://www.mizzima.com/news-domestic/un-special-adviser-welcomes-ceasefire-agreement-draft
http://www.dvb.no/news/ceasefire-draft-greeted-with-cautious-optimism-burma-myanmar/49729
http://www.dvb.no/news/four-ceasefire-points-left-to-resolve-says-ncct-delegate-burma-myanmar/49577
http://www.mizzima.com/news-domestic/us-govt-welcomes-draft-ceasefire-deal

March 2015, Myanmar

KAZUE YAMAMOTO山本 一恵

APBI Monitor

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