山本一恵
2015.03.01
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January 2015: Myanmar

1) ミャンマーの大司教がカトリック教会枢機卿に

ミャンマーのカトリック教会大司教のCharles Maung Bo氏が4日、ローマ教皇フランシスコによって、枢機卿20人の1人に任命された。ミャンマーから枢機卿に任命されたのは初めて。

Charles Maung Bo氏は、1948年10月29日、マンダレー管区シュエボー地区の生まれ。62年からピンウールインで宣教活動に加わり、これまでラショー、パテイン、マンダレー、ヤンゴンなどで活動してきた。

フランシスコ教皇は、「新しい枢機卿たちは、ローマ教皇庁と世界のカトリック教会との絆を証明している」と述べた。

ミャンマーにカトリックが伝わって500年で初めての枢機卿誕生に、Joseph Maung Win神父は「ミャンマーでのカトリック宣教活動成果にとってすばらしいこと」と歓迎。Dominic Thet Tin司祭は「Charles Maung Bo大司教は、ミャンマーと他の国々のために最善の働きをしてくれるだろう」と語った。

http://www.irrawaddy.org/burma/burmas-catholics-pleased-first-cardinal.html
http://www.dvb.no/news/burmese-cardinal-appointed-to-vatican-burma-myanmar/47065
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/16587-myanmar-catholics-welcome-elevation-of-their-church-leader
http://www.irrawaddy.org/burma/burmas-new-catholic-cardinal-warns-religious-extremism.html
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/16551-pope-elevates-myanmar-s-archbishop-to-cardinal

2) レパダウン銅山開発巡る衝突で国家人権委員会が報告書

ミャンマー中部ザガイン地域で進められているレパダウン銅山開発を巡り、12月22日に警察機動隊の発砲で死者が出た問題で、ミャンマー国家人権委員会が14日、警察による不手際が原因だとする調査報告を発表した。

国営紙に15日、掲載された報告によると、委員会は、警察が騒動を鎮圧する際には、まず放水や催涙弾を使用するべきだが、今回は、それらの用意がなかったと指摘。「発砲するのは、最後の手段。指揮が不適切だったために、放水や催涙弾を使うというステップを経ずに発砲されたことがわかった」とした。

その上で、死亡したKhin Winさんの生存権が損なわれたとし、公開裁判による審議が行われるべきだと提言した。

報告に対し、Khin Winさんの弟は、現場レベルの警察のせいにするのは間違いで、高いレベルの政府の決定で取り締まりが行われたと反論。「委員会は、警察だけを非難するべきではない。彼らはもっと高いレベルの人物が関わっていることを知っているはずだ」とした。

http://www.irrawaddy.org/burma/human-rights-commission-faults-police-copper-mine-shooting.html
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/latpadaung/item/16949-letpadaung-manslaughter-charge-should-be-pursued-finds-inquiry
http://www.dvb.no/news/latpadaung-killing-police-slammed-for-conduct-burma-myanmar/47344
http://www.dvb.no/news/official-probe-launched-into-latpadaung-killing-burma/47018

 

3) 国連人権状況特別報告者がミャンマーを訪問

国連のミャンマー人権状況特別報告者・Yanghee Lee(李 亮喜)氏が1月7日から16日までミャンマーを訪問した。同氏のミャンマー訪問は2回目。ラカイン州のロヒンギャ難民キャンプや紛争の前線地帯であるシャン州北部を訪問したほか、国会議員、市民グループやジャーナリスト、宗教指導者や少数民族代表らと面会した。ヤンゴンのインセイン刑務所では、レパダウン開発を巡る抗議運動で拘束された政治囚とも面会した。

日程を終えてYanghee Lee氏は、「一部では、政府が改革を続けていることがわかった。他方で、前回の訪問(7月)以降、前進がみられない面もあった。たとえば、表現や集会の自由などが侵害されているのは明白で、これらの面では、改善された部分も後戻りしつつあり、最初の訪問時に指摘した後退のおそれが現実となりつつある」と述べ、政府に対して人権状況の改善に向けたさらなる努力を促した。

ロヒンギャについては、「基本的人権に差別があってはならない。何かの条件がつくものでもないし、譲歩はできない。ロヒンギャの権利は無条件で守られるべきだ」と指摘した。

Yanghee Lee氏の訪問にあたり、ミャンマー政府は、改革を行っているので、訪問の必要はないとの認識を改めて表明。大統領府高官のZaw Htay氏は6日、Mizzimaの取材に「ミャンマーに人権状況特別報告者は必要ではないし、国連でのミャンマーの人権問題に関する議論も必要はない」と述べた。

一方、Yanghee Lee氏の訪問中、ラカイン民族や、イスラム排斥運動を主導する僧侶・ウィラトゥ師らはYanghee Lee氏がロヒンギャを支援しているとして抗議運動を展開。会見当日の16日には、500人の僧侶や支持者らが、12月に国連総会で採択されたロヒンギャに市民権を与えることなどを求める決議に対しても非難デモを行った。

http://www.dvb.no/news/in-some-areas-i-have-not-observed-progress-since-my-last-visit-yanghee-lee-un-myanmar-burma/47446
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/16874-govt-repeats-call-to-un-to-dump-rights-envoy-position
http://www.dvb.no/news/un-rapporteur-to-examine-human-rights-in-arakan-shan-states-yanghee-lee/47086
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/16584-un-rapporteur-to-assess-human-rights-in-rakhine-shan-states
http://www.dvb.no/news/uns-lee-caught-rohingya-identity-politics-myanmar-burma/47211
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/16931-un-envoy-bemoans-travel-restrictions-on-citizens-in-idp-camps
http://www.irrawaddy.org/burma/arakanese-nationalists-hold-protest-un-rights-rep-visit.html
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/rohingya-issues/item/16643-rakhine-minister-warns-about-un-interference-in-rohingya-affairs
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/16639-un-envoy-meets-with-six-political-prisoners

 

4) 国連人権状況特別報告者をウィラトウ師が「あばずれ」などと非難

イスラム排斥運動を続ける仏教僧のウィラトゥ師が演説で、国連人権状況特別報告者のYanghee Lee氏について、氏がイスラム教徒に肩入れしているなどとし「あばずれ」などの呼称を使った。

演説は、16日、ヤンゴンのチャイッカサン広場で行われた。ウィラトゥ師は、たくさんの支持者を前に「このあばずれは、本当にきちんとした出自を持っているのか。単に国連のポジションにいるだけだ。我々の国にとっては、あばずれだ」などと叫んだ。

これに対し、国連人権高等弁務官のゼイド・ラアド・アル・フセイン氏は21日、「許し難い」とした上で、「このような個人攻撃に対し、ミャンマーの宗教及び政治指導者たちは、はっきりと非難するべきだ」との声明を発表した。

また、Yanghee Lee氏も22日、BBCのインタビューに対し、ミャンマー政府の対応を注視していると答え「世界中の女性の人権活動家は、性差別的な言葉に脅かされている。ミャンマーも例外ではない」と述べた。

一方、マンダレー地区の宗教省高官は22日、ウィラトウ師を訴追するとのうわさについて否定。また、大統領府報道官のZaw Htay氏も「我々は公式な抗議を受けていない。僧侶の問題なので、我々は直接、対応することができない」として訴追を否定した。

http://www.dvb.no/news/wirathu-calls-un-envoy-a-whore-burma-myanmar/47467
http://www.irrawaddy.org/burma/un-criticizes-sexist-language-burmese-monk-wirathu.html
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/17128-un-envoy-waits-for-myanmar-government-response-on-u-wirathu-tirade
http://www.dvb.no/news/officials-deny-plans-to-sue-wirathu-burma-myanmar-yanghee-lee/47627
http://archive-3.mizzima.com/mizzima-news/myanmar/item/17129-myanmar-government-unlikely-to-take-action-against-monk-after-whore-slur

 

5) 学生が新国家教育法反対デモを再開

「教育現場の自由が保証されていない」などとして、学生たちが新国家教育法に反対している問題で20日、百人以上の学生たちが、マンダレーからヤンゴンまでデモ行進を始めた。およそ650キロの距離を15日間かけ、各地の学生らと合流しながらヤンゴンを目指すという。同日、タボイからもデモ行進がスタートした。

11月に行ったデモの際、学生代表や政府要人、国会議員ら15人をメンバーとする協議委員会設立を要求。60日以内の回答を求め、デモを一時中断していた。デモ再開は、公式回答がないまま16日に期限が切れたため。デモは、他の地区にも拡大し、それぞれ別のルートでヤンゴンを目指した。また、僧侶も合流するなど運動は拡大していった。

これに対し、当局や警察は、学生たちの宿泊場所の寺に圧力をかけたり、通過する町の入口で、バリケードを張り阻止しようとするなどした。

一方、デモを受け、テイン・セイン大統領は20日、議会に対し、国家教育法の再審議をするよう求めた。これを受け、28日、アウン・ミン大統領府相や教育省高官らがネピドーで学生代表と会い、政府代表、国会議員代表、学生代表、教育専門家グループNNER(教育改革全国ネットワーク)代表からなる4者協議を2月1日開催することで合意した。

http://www.irrawaddy.org/burma/students-resume-protests-national-education-law.html

January 2015, Myanmar

KAZUE YAMAMOTO山本 一恵

APBI Monitor

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