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December 2014: Southern Philippines

1) ブキドノン州でバス爆発、10人死亡、42人負傷
9日午後6時ごろ、ブキドノン州マラマグ町の幹線道を走っていた路線バス内で爆発があり、乗客ら10人が死亡、42人が負傷した。同町では11月6日にも、同じ運行会社のバスを狙った爆発事件で4人が負傷しており、バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)のメンバー1人が書類送検された。
現場は中央ミンダナオ大学から約30メートルの場所で、乗客の多くが、午後の授業を終え帰宅途中の学生だった。
国家警察の調べでは、爆発物は車内の左後方部分に仕掛けられた手製爆弾。現場検証で81ミリ迫撃砲弾の破片や、起爆に使ったとみられる携帯電話が見つかった。警察は過去の犯行などから、BIFFの犯行とみて捜査を続けている。
BIFFは、反政府武装勢力モロイスラム解放戦線(MILF)の離脱者らで構成される。政府とMILFの和平プロセスに反発し、国軍拠点への襲撃などを繰り返している。
2) バンサモロ基本法案がフィリピン語に
2016年の新自治政府創設を柱とするバンサモロ基本法案がこのほど、フィリピン語に翻訳された。担当した大統領府フィリピン語委員会(CFL/CWF)が10日、首都圏ケソン市で開かれたフォーラムで発表した。
英語で書かれた同法案を成立前に翻訳した理由について、同委員会は「(2015年上半期に実施が見込まれる)住民投票前に、法案の内容をよく理解してもらうため」と説明した。
ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)で多く話されている他の言語にも翻訳する案もあったが、予算不足で着手できていないという。
フィリピン語版は、政党アナック・ミンダナオ代表のハタマン下院議員を介して、正式に国会にも提出される予定。
フィリピンでは公用文書やビジネス関連の文書は英語で書かれるのが一般的。国語は首都圏およびカラバルソン地域で話され、話者数の多いタガログ語を基礎にしたフィリピン語だが、各島々、民族によって200以上の言語があるとされている。
3) 大量虐殺事件の証人ら3人が銃撃され負傷
マギンダナオ州で2009年11月、自治体や報道関係者計58人を虐殺したとして、同州のアンダル・アンパトゥアン元知事らが殺人罪に問われた裁判で、検察側重要証人の同州サリボ町の元町長ら男性3人が10日、同州内を移動中に武装集団に銃撃され負傷した。
同裁判をめぐっては、証人殺害が相次いでおり、11月にも同州で重要証人2人が銃撃され、死傷したばかり。
調べでは、元町長一行は車列を組みシャリフアグアク町に向かって、ギンドゥルガン、タラヤン両町の境界を走行していた際、道路脇に待ち伏せしていた武装集団に銃撃された。元町長の護衛らが応戦し、数分間の銃撃戦になった。
4) 公設市場で爆発相次ぎ、民間人約30人が死傷
19日午後5時45分ごろ、マギンダナオ州パラン町ポブラシオン2村の公設市場で爆発があり、8歳の少女を含む少なくとも7人が負傷した。
国軍の調べでは、3人の男性が手投げ弾を市場内に投げ込み、爆発が起こった。爆発前には3人と別の人物が口論をして騒いでおり、爆発後には銃声も聞こえたという。
現場からは、手投げ弾の安全ピンと9ミリ口径拳銃の空薬きょう5個が見つかった。軍・警察は、逃走した3人の行方を追うと共に、犯行の動機を調べている。
また、大晦日の31日午後3時45分ごろには、コタバト州ムラン町の公設市場で爆発があり、少なくとも1人が死亡、25人が負傷した。
国家警察ムラン署の調べでは、何者かが爆発物が入ったかばんを市場の通路に放置した。通行人の多くが爆発に巻き込まれた。
同町では11月末にも、広場の飲食店前で爆発があり、2人が死亡、25人が負傷したばかり。コタバト州のメンドサ知事は、再発防止と犯人逮捕・訴追に全力を注ぐと表明した。
5) 「首都圏警察本部拘置施設も抜き打ち視察を」
デリマ司法長官による2度の抜き打ち視察で、ニュービリビッド刑務所(首都圏モンテンルパ市)内の違法薬物の密造・密売や一部収監者の特別待遇、ぜいたく品の持ち込みがあらためて明らかになったことを受け、マギンダナオ州のマグンダダトゥ知事は21日までに、大量虐殺事件(2009年11月)の被告らが拘置されている首都圏警察本部の拘置施設(同タギッグ市)でも同様の視察を行い、違法行為を取り締まるよう要請した。
事件で妻や親類を失ったマグダダトゥ知事は、11月、12月と、マギンダナオ州内で事件の検察側重要証人が相次いで銃撃され、死傷したことを指摘。被告のアンパトゥアン元知事らが携帯電話やインターネットを使い、拘置施設内から同州の支持者に連絡を取っているとの情報があるとした上で、「遠隔操作で襲撃を指示することはできる。抜き打ち視察を実施すべきだ」と述べた。
6) MILF政党、次期統一選では新自治政府議会選のみに立候補へ
MILFのムラド議長は23日、2016年5月の次期統一選に向け発足準備を続けているMILF主体の政党「バンサモロ正義連合(United Bangsamoro Justice Party/UBJP)について、州知事や市長など地方自治体の首長選には候補を立てず、新自治政府の議会選に専念すると明らかにした。
政府とMILFの包括和平合意では、アキノ大統領の任期が終わる2016年までにバンサモロ新自治政府を創設し、同年5月の統一選と新自治政府議会選挙の同時実施を目指している。議員(60議席)の中から行政府の長を選出する「議院内閣制」が採用される。
UBJPはムラド議長を党首とし、5人の副党首が支える。政党としての要件を整備した上で、すでに10月に中央選管に登録申請を行った。
23日から25日にかけて、マギンダナオ州スルタンクダラト町で開かれた党の第1回大会には、各地から2万6千人以上が「ボランティア」として集まり(同議長談)、選挙に向けた草の根レベルでの組織活動を始めている。政党立ち上げや議院内閣制に関する勉強会、セミナーを開くためのタスクフォースも立ち上げ、国際協力機構(JICA)などの支援で、マレーシアや日本など同様の制度を採用している国への視察旅行も計画しているという。
ムラド議長は、政党立ち上げと2016年の選挙を「新たな闘争」と位置づけ、「議席を獲得できないということはあり得ないが、魔法は期待していない。過半数を取れるかどうかの闘いに向け必要な準備をしなければならない」と述べた。
7) 比共産党「2014年ミンダナオ地方で善戦」
フィリピン共産党系の統一戦線組織、民族民主戦線(NDF)のマドロス広報担当は26日、党創設46周年の記念式典で、2014年はミンダナオ島で「国軍襲撃を300件以上実行、46のゲリラ戦線を維持した」と述べ、同地方での活動に自信を示した。同地方の農村、工場、学校、コミュニティーで住民の支持、参画を拡大したと話す一方で、具体的な襲撃件数や国軍から押収した銃器の数、戦力や支持者の規模などについては明言を避けた。
2013年5月以来、中断したままとなっている政府とNDFの和平交渉については、「我々は再開に関心を示し続けている。政府が誠意の兆しを見せることを期待する」と前向きな姿勢を示したが、「和平交渉の有無に関係なく、軍事部門、新人民軍(NPA)による武力闘争は続ける」と強調した。

註:モニター記事内容は主に以下の現地報道機関のウェブサイトの記事を参考に、筆者が編集した。
日刊『まにら新聞』(http://www.manila-shimbun.com/)
Minda News(http://www.mindanews.com/)
Daily Inquirer(http://www.inquirer.net/)
Philippine Star(http://www.philstar.com/)
ABS-CBN News(http://www.abs-cbnnews.com/)
GMA News Online(http://www.gmanetwork.com/news/)
Manila Bulletin(http://www.mb.com.ph/)
Mindanao, December 2014
