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August 2014: Southern Thailand

深南部問題関係者の国家立法議会(NLA/ソー・ノー・チョー<タイ語略称>)議員選出
7月31日夜に公示されたNLA議員で、深南部問題にかかわりのある人物には以下のような人々が含まれる。
- アヌサーン・スウァンモンコン氏(元パタニー県上院議員/C.S.パタニー・ホテル・オーナー)
- ニポン・ナラーピタックン氏(元パタニー県知事)
- キティ・インタラソン氏(陸軍副参謀長(報道部門)/元陸軍第4管区副司令官)
- ニパット・トーンレック氏(国防省顧問団長/元国防相副事務次官/プアタイ党政権時和平対話タイ側代表団メンバー)
- ワリット・ロージャナパックディー氏(陸軍第4管区司令官)
- パーヌ・ウタイラット氏(SBPAC事務局長)
- シリチャイ・ディトタクン氏(国軍参謀長/元陸軍参謀長/元ISOC事務局長)
- サコン・チューンタラクン氏(NCPOオペレーティング・センター長/元陸軍第4管区司令官)
- アックサラー・クゥートポン氏(陸軍参謀長/ISOC事務局長)
- アーシット・ピタッククムポン氏(チュララーチャモントリー *タイにおけるイスラーム教最高指導者)
- アカニット・ムーンサワット氏(陸軍司令官顧問/NSC顧問)
アカニット氏は再開される和平対話のタイ側代表団代表を務めると囁かれている。同顧問はプアタイ党政権時の公開された和平対話に反対を表明していた。このため、武装勢力は同顧問の代表団代表就任に懸念を表明している。また、同顧問以外にも、公開形式の和平対話に批判的な人物が少なからずNLAメンバーに選出された。
なお、タイのムスリム代表として政治ポストには就けないとし、アーシット氏はNLA議員就任を辞退した。
和平対話方針
1日金曜夜の定例TV放送で、プラユット陸軍司令官/NCPO議長は、NCPOは公式・非公式に和平対話をおこなうが、対話に参加する武装勢力側の人物が本当のリーダーであるか否かを見極める必要がある、と述べた。また、武装勢力の規模に関わりなく全てのグループが対話に参加するべきだ、とした。NCPOは開発、法規、不公正な扱いなどの全側面について対話したい、としている。BRNは、紛争の要因としてアイデンティティ、宗教、正義、歴史を挙げている。
一方9日、南部紛争解決を推進する委員会の委員長であるウドムデート陸軍副司令官との会談後、タウィンNSC事務局長は、和平対話は今月中に再開される予定である、と述べた。ファシリテーターであるマレーシアには、BRN以外のグループとも対話できるように要求しているという。また、18日には、プラユットNCPO議長/陸軍司令官はウドムデート陸軍副司令官、ウァリット陸軍第四管区司令官を含む軍幹部、タウィンNSC事務局長と和平対話について会議を開催した。
タイ側の和平対話推進体制は3段階(管理・統制レベル、和平対話代表団、草の根レベル)で構成され、4つのチーム(和平対話、法規、政治、暴力事件)がサポートする体制となる。和平対話のタイ側代表団メンバーは代表を含め未だ決まっていない。
また、NCPOはマレーシアに特使を派遣し、和平対話の継続について話合いをおこなっており、マレーシアのファシリテーターの治安関係機関への変更と対話内容に自治を含めないことを求めている。更に、非公式に対話をおこなっているとのことである。
武装勢力会見
1日の報道によると、武装勢力は、バンコクの準備が整えば和平対話を再開する準備があると公表し、軍により設置された新たな委員会は動きが鈍く、NCPOはファシリテーターに未だ何の接触もしていない、と非難をした。若い世代で和平対話に賛成する者はいなかったが、対話は危機的状況を打開する可能性のある方法の1つだと判断して、和平対話に参加し、さまざまな可能性を探ることにしたとも述べた。
カーリーヤー・ヤーラーペー(Kariya Yalapae)(マレー語名:Sakariya bin Abdul Wahab)氏の死去
2日、マレーシア・クランタン州の村落で、ヤラー県にあるタンマウッタヤー・ムーラニティ学校の元宗教教師でBRN主要メンバーと見做されていたカーリーヤー・ヤーラーペー氏が心臓疾患のため死去した。同氏はBRNの若者組織であるDKPのリーダーと思われていた。遺体は生まれ故郷のヤラー県ムアン・ヤラー郡ター・サープ行政区に移送された。
紛争資金の送金
マネー・ロンタリング取締局(AMLO)によると、過去3年間の深南部への送金に紛争関連のものは含まれていなかった。2014年度には約400億バーツの送金があり、その額は過去2年間より減少している。紛争への資金提供容疑で約4,000人がブラック・リストにのっているという。紛争資金の送金をおこなう金融機関には100万バーツの罰金が科せられ、金融機関のマネージャーには5年から10年の禁固刑が科せられる。
パタニー解放軍(Patani Liberation Army (PLA))
治安機関はPLAの動きを注視している。パタニー統一解放機構(PULO)から分裂した新PULOと関わりがあるとされるPLAは、武装勢力メンバーの勧誘と訓練をおこなっているとされる。
2014年1月~2014年8月の暴力事件(別表参照)
註:上記内容は主に以下のWEBサイトの記事等を参考に、筆者が編集した。
Bangkok Post (http://www.bangkokpost.com/)
Deep South Watch (http://www.deepsouthwatch.org/)
Deep South Journalism School (http://www.deepsouthwatch.org/dsj)
Isra News Agency (http://www.isranews.org/)
Matichon Online (http://www.matichon.co.th/)
National News Bureau of Thailand (http://thainews.prd.go.th)
The Nation (http://www.nationmultimedia.com/)


タイ深南部(南部国境地域)での主な出来事(2014年8月)
帝京平成大学 講師