2013.03.19
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January 2013: Southern Thailand

2013年1月

CCTVカメラの破壊

 1月14日、ヤラー県の7郡で76台のCCTVカメラが破壊された。19日には同県ムアン・ヤラー郡で20台、28日にはパッタニー県トゥンヤーンデーン郡で12台のカメラが破壊された。

ナラティワート県バーチョ郡でのイスラーム教徒小学校教員殺害

1月23日、大勢の生徒の目前でイスラーム教徒の教員が殺害された。イスラーム教徒教員が殺害されるのは稀なことで、2004年に紛争が激化してから158人目の教員犠牲者となった

閣僚の担当部門 … 

11月28日、インラック首相はスカンポン国防相を治安および南部国境地域の担当に任命した。また12月には、チャルーム副首相が南部国境県問題解決政策・戦略オペレーション・センター所長に任命された。

警察関係

  2013年1月に南部国境地域に異動となる約150人の警官の募集が全国で行われた。当初、異動を自主的に申し出た警官が少なかったため、抽選で異動人事を決める予定であったが、同件が報道などで大きく取り上げられた後、1月3日の抽選日までに志願者が増加し、最終的に3人だけが抽選で選ばれることになった。抽選人事については、一部の警官から批判が出ていた。

    昨年12月には、警察が申請していた南部国境地域における紛争対策用の装甲車両購入費約6,600万バーツの予算申請が認められており、また、同地域の警官数と予算を増加する方針であることを公表していた。

    ディープ・サウス・ウォッチ(DSW)によると、南部国境地域には約17,000人の警官が駐留している。また、南部国境県行政・開発センター(SBPAC)によれば、2004年~2011年の間に、同地域で警官約280人が殺害され、約1,200人が負傷を負った。

ソンクラー県2郡の民政移管

     暴力事件が約半年間発生していないソンクラー県ナータウィー郡およびチャナ郡の統治担当を軍から内務省に移行する。

チャルーム副首相のマレーシア訪問

  1月8日~10日、チャルーム副首相はマレーシアを訪問し、ナジブ同国首相と会談をおこなった。出発前、同副首相は反政府武装グループへの財源やマレーシアへ逃れた反政府武装グループ・メンバーの扱いなど南部国境地域の紛争状況について会談したいとしていたが、成果は上げられなかったとされる。一方、マレーシア訪問中の同副首相が酔っぱらっている写真が公となり、同副首相も事実と認めたが、職務を終えた後のことだと弁明した。マレーシア訪問にはパラドンNSC長官、タウィーSBPAC長官が同行した。

    タイ・マレーシア政府会談は12月にもプーケットで外相会談がおこなわれ、国境問題、二重国籍問題、特別経済開発区設立などの共同開発についてなどが話し合われた。タイ政府は、両国を繋ぐ橋の建設のため、約2,100万バーツの予算を既に承認している。

マレー語放送

    SBPACの支援により運営されるマレー語衛星テレビおよびラジオ放送の開所式がおこなわれ、スリン前アセアン事務局長、アジズ・チュララーチャモントリー、タウィーSBPAC長官などが式典に参加した。局の運営には、地域住民の大いなる参加が期待されている。SBPACは局運営のスポンサーとして関わり、運営を管理するパネルの大半のメンバーは公的機関外の人々で構成される。マレー語放送の目的は、政府と地域住民の相互理解を促進することである。

    先月、ポンテープ教育相は南部国境地域ではタイ語、マレー語および英語で教育がおこなわれることが望ましい、と述べている。2015年に実現が目指されているAECを見据えた発言である。

<関連映像>

ロヒンギャ族

    ナラティワート県のゴム園で、数百人のロヒンギャ族の不法移民が隠れているのが発見された。ロヒンギャ族の密入国にはISOCの軍人の関与が疑われている。軍人の関与については、プラユット陸軍司令官も関与の可能性を認めた。

統計:2012年12月及び2013年1月の暴力事件

南部国境地域の紛争関連死傷者数
(2012年12月1日~12月31日)
事件数48件 単位(人)
死傷者数(25) 負傷者数(30)
仏教徒 ムスリム 不明 仏教徒 ムスリム 不明
6 18 1 16 14 0
出所:Deep South Watch

2013年2月

夜間外出禁止令施行の是非

    2月5日に発生した果物商殺害事件など暴力事件が日常的となっている南部国境地域に夜間外出禁止令を施行する意向がある、とチャルーム副首相は公表したが、スカムポン国防相、パラドン国家安全保障会議(NSC)長官、ウドムチャイ陸軍第4管区司令官、アピシット民主党党首等は同案には賛成できない、とした。また、イスラーム宗教指導者やシーソンポップ・ソンクラーナカリン大学南部紛争・多文化研究所所長なども、地域住民の生活に多大な影響を与え、状況を悪化させるだけであると、注意を促した。一方、2月10日に起こった兵士殺害事件等を受け、インラック首相やプラユット陸軍司令官は同案に賛意を示したが、同首相は地域住民の意向を決定に反映させるために、タウィー南部国境県行政・開発センター(SBPAC)長官に住民の意向を調査するように指示した。

    その結果、16日に開催された南部国境県問題解決政策・戦略オペレーション・センターの会議では、夜間外出禁止令は現状では必要ない、と決定された。

非常事態宣言から国内治安維持法(ISA)への移行を検討

    パラドンNSC長官によると、非常事態宣言を解除し、国内治安維持法(ISA)を施行することが検討される。パッタニー県、ヤラー県、ナラティワート県の各知事、内務省およびSBPACが状況を調査し、非常事態宣言をISAに置き換えるべき地域を検討することになる。

軍の体制

    プラユット陸軍司令官によると、軍の体制は、本来この地域を担当する第4管区の部隊だけでなく、他の地域を担当している第1、第2、第3管区からも増援の部隊が派遣されている体制から、地域人材による防衛ボランティア・ユニットを増加させる体制にシフトしている。一方では、より多くの警官が配置される予定である。

バーチョ郡軍詰所襲撃事件

 軍服を着た反政府武装グループ・メンバー約50人~80人がナラティワート県バーチョ郡の軍詰所を襲撃した。治安機関は事前に襲撃を察知していたため、兵士側の死者は出なかったが、グループ・メンバー16人が死亡した。死亡者の中にはRKK地域リーダーで、多くの逮捕状が出されていたマローソー氏が含まれていた。

    タウィーSBPAC長官によると、死亡した16人の家族には人権に配慮した補償と精神面でのカウンセリングがおこなわれる。16人の葬儀には、多くの地域住民が参列した。その後、同事件の報復とされる事件が相次ぎ発生した。

<関連映像>
https://youtu.be/3ZfXltWjZd0
この動画には年齢制限が設けられており、YouTube でのみご視聴いただけます。

ワーダ・グループ

    チャルーム副首相が長を務める南部国境県問題解決政策・戦略オペレーション・センターのアドザイサーに、ワーダ・グループのメンバー9人が任命された。軍人や内務省の官僚の中には、ワーダ・グループは反政府武装グループと繋がりがあると考えている者もおり、治安情報が反政府武装グループに流れることを危惧する声もある。ワーダ・グループは南部国境地域に影響力を持つムスリム政治家グループで、様々な政党の政治家で構成されている。

PULOリーダー

    24日、カストゥリPULO議長のスウェーデンでのインタビューがテレビ放映された。

<関連映像>

インラック首相のマレーシア訪問

     28日、インラック首相はクアラルンプールで開催されたタイ・マレーシア年次会議に出席し、多方面にわたり協議をおこなった。

    民間企業による国境地帯への投資促進、通関手続きの簡素化、タイ・マレーシア・ビジネル・カウンシルの創設、若年者スポーツ分野における協力、の4分野でMOUが署名され、また、国境地帯の特別経済地区開発について話し合われた。更に、両国を結ぶ2つの橋の建設の必要性も確認された。経済協力に関しては、石油・天然ガス・ハラル食品について話し合われた。また、二重国籍問題、国際犯罪、受刑者受渡しプログラム、国外退去条約、人身売買防止、国境貿易について調査することが合意された。

BRNとの対話開始

      28日、クアラルンプールにて、パラドンNRC長官とハサン(Haji Hassan Taib)BRNマレーシア連絡担当官は和平対話開始の合意文章に署名した。合意は、「交渉」ではなく、「対話」であり、マレーシアは、「メディエーター」でなく、「ファシリテーター」である。最初の対話は3月下旬にマレーシアで行われる予定で、その後は2週間に1回のペースで開催されることになっている。

    同長官によると、対話開始の合意は、タクシン元首相とナジブ首相の私的話し合いの成果であり、タイ政府は全ての反政府武装グループと同様の対話を行いたい、とも述べた。

<関連映像>

註:上記内容は主に以下のWEBサイトの記事を参考に、筆者が編集した。

Bangkok Post (http://www.bangkokpost.com/)
Deep South Watch (http://www.deepsouthwatch.org/)
Deep South Journalism School (http://www.deepsouthwatch.org/dsj)
The Nation (http://www.nationmultimedia.com/)
Matichon Online (http://www.matichon.co.th/)

HITOMI FUJIMURA藤村 瞳

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