笹川日中友好基金ではさまざまな研究活動を支援したり自ら企画したりしていますが、なかには、その成果を書籍などにして公刊したものがあります。ここではそれらの書籍をご紹介しています。
【原著】速水健朗『ケータイ小説的。“再ヤンキー化”時代の少女たち』原書房、2008年
速水健朗著/汪平,陈乐兵译《手机小说的秘密》南京大学出版社,2010年
【選者の評】日本の「ヤンキー」をはたして文化と呼べるかどうかはともあれ、ケータイ小説は、ケータイが生み出した人間関係を描いた小説だといえる。本書は、なかなか的確にケータイ小説の背景を抉りだし、今どきのティーンエージャーたちの生態を浮かび上がらせることに成功している。同時に、そこでなされるローカルコミュニティをめぐる分析は、現代の日本の若者たちの文化と生態について、興味深い視点をわれわれに提供している。
いまの時代、中国の若者たちもみな、ケータイ、MSN、ブログなどのネット文化に熱中している。そうしたネット文化は、いずれも文化にはちがいないが、「主流文化」に対して「別文化」(alternative culture)ないし「反文化」(counterculture)などといわれている。そのうちはたして、どれが良いもので、どれが悪いのか。あるいは、どう接するべきなのか。それが今日の大きな問題だといえる。
この本を読むことで、社会構造の変化とケータイ小説の背景が結びついて生まれた、現代のヤンキー文化がより深く理解できる。中国の読者にとっても、この本の内容を鏡に、中国の「ヤンキー」文化を正しく捉え、さらにはグローバルな視点から文化論を展開し、多文化共生の道を構想する機会とするにも格好の本といえよう。