著者四方田犬彦氏は映画評論家。戦後、玉音放送の神話化から始まり、李香蘭、力道山、寅さんなど、映画はさまざまな神話を構築してきた。では、歴史的現象はその時その時の映画の中で、どのように表象されてきたのか。そうした神話の構造の解明をめざし、映画の表象と心性に切り込んでいる。非常にユニークな映画論であり、日本映画史研究に一石を投じた書といえる。
また、中国には、こうした独特な視点から書かれた映画論がまだない。本書を翻訳することで、これまであまり知られていない日本映画の世界が一般読者に理解されるだけでなく、中国の映画界や映画研究界にも大きな示唆が与えられるのではないだろうか。