大学改革が叫ばれ、関連する研究書が次々と出版される昨今、なぜ歴史なのか。それは、著者自身が書いているように、近代日本最初の大学設立から1918年の大学令公布までの40年あまりこそ、現在の高等教育制度の基底をなすからである。本書は単に大学形成史を紹介するだけでなく、豊富な資料をもって日本の高等教育の構造を明晰に描写している。
現在、中国の高等教育学においては、欧米、特にアメリカの理論や事情を紹介し、それを鏡に自国の現状を検討しようとする動きが盛んになりつつある。外国の理論や研究を取り入れることは無論必要であるが、その際に見落とせない国が日本である。 本書には、題名のイメージから想像できる以上の研究成果が凝縮されており、そこから日本の情報を読み取れるだけでなく、その研究方法にも学ぶべきものが少なくない。胡適の言うところの「大胆な構想に、慎重な証明」の具体例として、中国の教育研究、特に教育史研究にもたらす方法的影響も期待できる。