2008年
事業
事業実施者 | 笹川平和財団 中国社会科学院社会科学文献出版社(中国) | 年数 | 2年継続事業の2年目(2/2) |
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形態 | 自主助成委託その他 | 事業費 | 12,657,500円 |
日本と中国の関係は、中国の経済発展によって、ますます互いになくてはならない存在になっています。しかし一方で、歴史認識問題や東シナ海の中間線や尖閣諸島の問題、食品衛生問題などがきっかけとなって、相互不信が生まれる場面もまたよく目にします。 そういう問題が発生したとき、わたしたち日本人には、戦後日本が世界平和に果たしてきた役割や、中国の発展のためにしてきたことを中国人は知らないのではないか、という思いがわきます。 一方、中国人にしてみれば、日本人は中国人の日本人に対する根本的な感情について理解していないのではないか、という思いがあるのかもしれません。 そうした認識のギャップについて、たがいにもっとよく理解する必要があるのではないかと、わたしたちは考えました。もちろん、日中で考え方に違いがあってもいい。しかし、それがどう違うのかを理解しておこう、という意味です。
そこでわたしたちは、2007年度開始の事業のひとつとして、1978年から2008年の日中関係を中国側ではどうみているのか、ということをあきらかにする事業に着手しました。 具体的には、中国社会科学院を中心に、近現代の日中関係史を専攻する中国人研究者を集め、この30年の日中の交流実態を整理・総括する研究会を組織し、その取りまとめ役をおこなう中国社会科学院社会科学文献出版社に対して助成することにしたのです。 ちなみに、2006年秋は、安倍晋三首相が訪中して、胡錦涛主席と会談し、数年間冷え込んでいた日中関係に改善の兆しが見えかけていたころでした。
安倍-胡錦涛会談 (画像は中国駐日本国大使館のサイト)より
2007年度に中国社会科学文献出版社が中心となって、中国で、日中関係に詳しい専門家や研究者を集め、研究チームを立ち上げました。
メンバーは、中国社会科学院の3つの機関(近代史研究所、中日歴史研究センター、日本研究所)や、天津師範大学、南開大学、北京大学、北京師範大学、南京大学などに所属する研究者たちで構成されました。
その研究チームのなかでもコアとなるメンバーが集まって、2007年4月、6月、8月の3回、ワークショップを開催しました。そして、この一連の研究成果を『中日友好交流三十年』として編集、出版する準備が進められました。
そして、2008年3月にはその初稿が完成しました。
2008年3月 初稿段階の『中日友好交流三十年』
6月には北京郊外で合宿会議を開き、主要執筆者ら30名が集まり、内容について検討を行いました。
2008年6月1日合宿会議
その後、秋まで編集作業が行なわれ、校正とリライトが繰り返されました。
2008年11月、中国人研究者らによる1年数ヶ月にわたる共同研究の成果として『中日友好交流三十年』(中国語、全3巻)が、中国で出版されました。
この本の特徴はいくつかあげることができますが、なかでも、日中平和友好条約締結から30年の日中交流の実態について、網羅的にカバーしているという点に高い価値があるといえます。
また、著者たちによれば、この本を中国で出版する意義のひとつは、一般読者に日中関係の基本的だけれど知られていない諸事実を提示することだったということです。
つまり、アカデミックな議論を行なうというより、むしろ、日中関係の全体像を一般向けにわかりやすく提示することに主眼があり、その意味で中国初の本です。
『中日友好交流三十年』の出版報告会を2008年11月に北京で行いましたが、日本でも、この出版にあわせて、2009年3月23日に日本財団ビルで「日中関係シンポジウム」を開催しました。
このシンポジウムには『中日友好交流三十年』の主要執筆者も中国からお呼びし、また日本の中国研究の先生がたにもお越しいただいて、本の構成に合わせて政治、経済、文化という分野ごとのセッションで、この30年の日中関係から現在の話題まで活発な議論を行いました。
『中日友好交流三十年』は中国語で書かれています。わたしたちはそれを日本でも広く読まれるように、日本語版の製作準備を2008年秋ごろから進めました。