ベトナム財務省の傘下にあるベトナム財務省所属財政アカデミー(以下、財政アカデミー)は、同国における財政改革の牽引役として、効率的かつ透明性のある中央・地方財政運営を進め、市場化・国際化に則した市場経済情報を広く普及させる役割を担っています。本事業では、東アジアの財政専門家の協力を得て、ベトナムにおける地方財務行政官の能力強化と、市場経済情報の普及能力向上を目指すため、財政アカデミーの専門家に対する研修プログラムや調査研究を実施しました。2006年度の事業の開始以降、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、タイなどから講師をハノイへ招き、研修ワークショップを開催しました。また、このトレーニングを受けた専門家が今度は講師となり、ベトナムの地方財務行政官を対象に研修を行いました。加えて、マレーシア、シンガポール、中国などの財政制度について学ぶための視察研修を実施しました。
最終年度にあたる本年度は、06～ 07年度の結果を踏まえ、引き続き地方財務行政官の能力向上および財務省関連市場経済情報の普及能力の強化を行う目的で、以下の活動を実施しました。08年5月にフィリピン、シンガポール、ベトナム国内から講師を迎え、ハノイ市の財務行政官や財政学者約50名を対象に、「財政・税制改革の課題」をテーマとする研修を実施しました。7月にハノイで開催した地方財務行政官トレーナーを対象にしたトレーニングには、初級50名、上級レベル40名が参加し、日本、マレーシア、タイの講師が「東アジア諸国の財政制度や税制政策の課題」に関する講義を行ったほか、ベトナム国内の専門家が同国の「歳出歳入改革法やインフレ」について講義しました。また、9月にホーチミンで、10月にニャチャンで、上級レベルの研修を受けた財政アカデミーのトレーナーを教官として、「地方財務行政官のための短期集中トレーニング」を開催しました。11月には日本の財政制度について学ぶため、東京への視察研修を実施しました。財政アカデミーの教官6名が来日し、財務省財務総合政策研究所をはじめ、一橋大学、政策研究大学院大学などを訪問し、地方財政制度の発展などについて学ぶとともに、日本の専門家と意見交換を行いました。09年2月には、市場経済情報普及専門家を育成するために、日本、マレーシア、タイなどから講師を迎え、ベトナム国内の専門家40名を対象に集中トレーニングを行いました。また、ベトナムの財政制度改革に関する議論を行うとともに、本事業の成果を広く周知することを目的として、海外からの専門家やベトナムの財務省関係者などを招き、「ベトナム財政制度」に関するワークショップを2月20日に開催しました。これらの一連の研修・情報発信能力強化活動を実施したことにより、ベトナムにおける中央・地方レベルでの財政運営と経済情報普及を担う人材の能力強化に貢献できました。