事業紹介

2010年
事業

日本・中東の相互理解のための情報発信

事業実施者 笹川平和財団 年数 3年継続事業の2年目(2/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 52,839,410円
事業内容
日本のエネルギー資源の85%を供給する中東は、日本にとって重要な地域である。最近では潤沢なオイルマネーにより、日本と中東のビジネス交流は盛んになりつつある。しかし、日本と中東との相互理解は必ずしも進んではいない。他方、中東の日本への関心は高いものの、日本製品や欧米経由による間接情報が中心であり、正確に伝わり難いことが多い。本事業は、自主・委託事業として、中東と日本の双方からの情報発信力の強化を図り、それぞれが直接情報を交換する場を設け、日本と中東の相互理解の推進を目的とする。
実施計画
3年継続事業の2年目として、以下を実施する。
  • 駐日中東イスラム諸国外交団セミナー(年4回)
    中東イスラム諸国駐日外交団を対象とするセミナーを開催する。各セミナーでは、日本人講師が日本の政治、経済、文化、社会等の分野でその都度適切なテーマを選定する。
  • 中東専門家招へいと中東情勢セミナー(年2回)
    トルコ国会議員、イラン外務省国際問題研究所所長らの専門家を中東地域より招へいし、情報発信に関する意見交換を行うと共に、トルコ情勢やイラン情勢などに関するセミナーを開催する。
  • 日本情報発信セミナー(年2回)
    イランとクウェートにおいて、現地の大学、シンクタンク、研究機関で日本の政治、経済、教育、環境などに関するセミナーを開催する。講師は日本よりそれぞれの分野の専門家を派遣する。
  • 日本情報のアラビア語Web site(www.alyaban.net)の維持・管理
    中東の対日理解を深化させるため開設したアラビア語サイトを維持・管理する。文字情報のみならず、映像や音声も活用しつつアラビア語で日本に関する情報を積極的に発信する。
  • 日本文化の紹介
    現代日本文化を中東イスラム地域に紹介するため、ヴィジュアル情報を掲載したアラビア語の資料を作成する。
実施内容・事業成果
1.駐日中東イスラム諸国外交団セミナー
 本年度は、日本と中東イスラム世界の相互理解を深めることを目的として、与野党の国会議員が各党の対中東政策や経済政策について講演を行いました(5月、10月 於東京)。
(左側より) 西村議員、末松議員

(左側より) 西村議員、末松議員

①「民主党と自由民主党の外交政策」

 5月10日に開催した第1回目のセミナーでは、元外交官でアラビストでもある末松義規衆議院議員(民主党)、および資源エネルギーの専門家で安全保障問題にも詳しい西村康稔衆議院議員(自由民主党)を講師に招き、両党の外交政策、特に中東イスラム世界と日本の関係についてお話いただきました。
講演会 (5月10日、日本財団ビル8F)

講演会 (5月10日、日本財団ビル8F)

 なお、本講演の模様は、活動紹介アーカイブス(http://www.spf.org/smeif-j/archives/index.html)で、一部抜粋したものが動画でご覧になれます。
(左側より) 河野議員、松原議員

(左側より) 河野議員、松原議員

②「民主党と自由民主党の経済政策」

 10月20日に開催した第2回目のセミナーでは、松原仁衆議院議員(民主党)および河野太郎衆議院議員(自由民主党)を講師に招き、国内の円高・デフレ問題に対する日本銀行の金融政策についての評価や、日本経済を活性化させるための方策について、両党それぞれの立場からお話いただきました。

 セミナーに出席した中東イスラム諸国の外交団は熱心に質問をし、活発な議論が交わされました。
講演会 (10月20日、日本財団ビル2F)

講演会 (10月20日、日本財団ビル2F)

  なお、本講演の模様は、活動紹介アーカイブス(http://www.spf.org/smeif-j/archives/index.html)で、一部抜粋したものが動画でご覧になれます。
2.中東専門家招へいと中東情勢セミナー
 本年度は、エジプト外交評議会議長、トルコ首相首席補佐官らを招へいし、エジプトやトルコ情勢に関するシンポジウムを開催しました。一連の活動の結果、日本の専門家やジャーナリストによる対中東理解向上に貢献することができました。
 パネル・ディスカッション  (6月15日、 日本財団ビル2F)

 パネル・ディスカッション  (6月15日、 日本財団ビル2F)

① メディア専門家招へい

 1990年の湾岸戦争以降、日本での中東地域に対する関心は急速に高まり、関連ニュースが報じられるようになりました。しかし、アラビア語という言葉の壁があるため、日本でアラブ・メディアが発信する報道に直接触れる機会は、これまで限られていました。

 中東イスラム基金では、エジプトを代表するアル=アハラーム新聞のカマール・ガバラ副編集長およびカタールの衛星放送アル=ジャジーラTVのムハンマド・シュケイル番組編集長を日本に招き、6月15日に日本財団ビルにおいて講演会「中東メディアを語る」を開催しました。両氏はアラブ・メディアの現状や影響力について講演したほか、中東情勢に詳しい日本のジャーナリスト3名とパネル・ディスカッションを行いました。

 6月17日には、同志社大学との共催による講演会を京都で開催し、学生や社会人など約200名が参加しました。両氏はこのほかにも、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科を訪問し、小杉泰教授の研究会で中東メディアの現状や政治的役割について発表しました。
 
 講演会 (6月17日、同志社大学)  / 研究会 (6月18日、京都大学)

 講演会 (6月17日、同志社大学)  / 研究会 (6月18日、京都大学)

② エジプトから有識者を招へい
 
 エジプト外交評議会からムハンマド・シャーキル議長(元駐英大使)およびワヒーブ・エルミニアーウィ評議員(元駐日大使)を招へいし、12月2日に講演会「エジプトの政治情勢」を開催しました。

 シャーキル氏には、原子力および核兵器を含む大量破壊兵器、中東における原子力発電の平和利用の必要性、イランの核問題に対するエジプトの立場、中東地域を非核兵器地帯にすることの重要性についてお話しいただきました。エルミニアーウィ氏には、2011年に外交関係樹立75周年を迎える日本・エジプト両国の歴史的関係や、中東和平問題などの地域の課題解決に向けて両国が果たすべき役割について持論をお話しいただきました。また11月28日に行われたエジプト議会選挙の最新情勢や、今後実施される大統領選挙に関する説明も行われました。
 
講演会 (12月2日 日本財団ビル2F)、 (左側より) エルミニアーウィ評議員、シャーキル議長

講演会 (12月2日 日本財団ビル2F)、 (左側より) エルミニアーウィ評議員、シャーキル議長

 なお、活動紹介アーカイブス(http://www.spf.org/smeif-j/archives/index.html)で、エルミニアーウィ氏のインタビューを動画でご覧になれます。
③ イラク情勢講演会

 1月20日に、ルクマン・フェーリ駐日イラク大使と大野元裕参議院議員を迎えて、講演会「イラク情勢」を開催しました。

 ルクマン・フェーリ大使には、イラクの歴史や経済などに関する基本情報、2003年のイラク戦争前後の現地の状況、2010年3月に実施された国民議会選挙、現政権の国内外政策、未来に向けた復興への動きなどの幅広い分野についてお話しいただきました。イラクの専門家でもある大野元裕議員には、今後のイラクが直面するであろう4つの課題をご指摘いただくと共に、与党の立場から日本の対イラク復興支援についてお話しいただきました。
 
講演会 (1月20日 日本財団ビル2F)、 (左側より) 大野元裕議員、ルクマン・フェーリ大使

講演会 (1月20日 日本財団ビル2F)、 (左側より) 大野元裕議員、ルクマン・フェーリ大使

 なお、本講演の模様は、活動紹介アーカイブス(http://www.spf.org/smeif-j/archives/index.html)で、一部抜粋したものが動画でご覧になれます。
イブラヒム・カルン・トルコ首相首席補佐官

イブラヒム・カルン・トルコ首相首席補佐官

④ トルコ首相首席補佐官招へい

 トルコは、2002年に公正発展党が政権に就いて以降、従来のEUとの関係を保ちつつ、急速に発展する経済を積極的に活用しながら、官民一体で中東などの周辺諸国と新たな関係を構築しています。

 今回、初来日のイブラヒム・カルン博士(トルコ首相首席補佐官)を迎えて、1月26日にホテル・ニューオータニで講演会「トルコの東方外交:理想と現実」を開催しました。第一部では、米国ジョージタウン大学特別研究員でもあるカルン博士より、冷戦後の国際情勢の変化や、グローバル化した経済・治安問題が各国へ及ぼす影響と今後の課題、トルコの役割や政策についてお話しいただきました。

 第二部では、キム・ファル・パング・マレーシア外交戦略研究グループ部長および間寧アジア経済研究所地域研究センター中東研究グループ長をパネリストととして招き、エルドアン首相が推進する「トルコのルック・イースト政策」の可能性についてパネル・ディスカッションを行いました。
 
(左側より) イブラヒム・カルン博士、キム・ファル・パング氏、間寧氏

(左側より) イブラヒム・カルン博士、キム・ファル・パング氏、間寧氏

 なお、本講演の模様は、活動紹介アーカイブス(http://www.spf.org/smeif-j/archives/index.html)で、一部抜粋したものが動画でご覧になれます。
3.日本情報発信セミナー
 本年度は、テヘランで国際問題研究所(IPIS)との共催による「日本・イラン間の相互理解セミナー」を開催しました。セミナーへは、日本からの専門家として、田代秀敏ビジネス・ブレイクスルー(BBT)大学教授、関岡英之拓殖大学教授、佐々木良昭SPFアドバイザーらが参加しました。
4.日本情報のアラビア語Web site(www.alyaban.net)の維持・管理
 日本情報をアラビア語で発信するサイト「アルヤバンネット(www.alyaban.net)」を通じて、日本のニュース(毎日5本)、ニュース解説、日本人の考え方に関するエッセーなどをアラビア語に翻訳で発しました。同サイトの開設により、中東イスラム諸国の人々は、日本情報をアラビア語で入手できるようになり、彼らの対日理解を深めることに貢献できました。
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