海洋安全保障情報週報 2012年1月8日~1月14日
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1月 8日「フィリピン、南沙諸島への中国船の侵入に抗議」 (Reuters, January 8, 2012)
フィリピン外務省が 8日に明らかにしたところによれば、フィリピンは、2011年 12月に 3隻の中国船が南沙諸島のフィリピン管轄海域に侵入したことについて、中国に抗議した。外務省の声明は、「西フィリピン海における最近の中国の行動に対して深い憂慮」を表明したものである。外務省によれば、2011年 12月 11日と 12日に、南沙諸島の Sabina環礁周辺海域で 2隻の中国船と 1隻の海軍戦闘艦が視認された。Sabina環礁はパラワン島から約 124カイリ西方の海域にあり、フィリピンの集権的管轄権の及ぶ海域である。外務省は、「中国のかかる行動は、 2002年の行動宣言(DOC)の明らかな違反であり、同時に国連海洋法条約に対する違反でもある」と語っている。
1月 8日「ソマリアの海賊、マルタ籍船のタンカー解放」 (Somalia Report, January 8, 2012)
ソマリアの海賊は 8日、マルタ籍船のケミカルタンカー、 MT Olib G (6,400DWT) を解放した。海賊グループの話によれば、身代金は 300万米ドルで、該船に空中投下された。該船の乗組員は 18人で、グルジア人 15人、トルコ人 3人である。該船は 2010年 9月 8日、アデン湾の安全回廊(IRTC)でハイジャックされた。
1月 10日「米海軍、アジアで大幅増強なし—米海軍作戦部長」 (Reuters, January 10, 2012)
米海軍のグリーナート作戦部長 (ADM Jonathan Greenert) は 10日、オバマ大統領のアジア回帰はアジアにおける米海軍の大幅増強に繋がらない、米海軍は既にアジアに強力なプレゼンスを維持している、と語った。ワシントンで開催されたセミナーで、グリーナート作戦部長は、米海軍は現在、西太平洋に約 50隻の戦闘艦艇を展開させており、一方、中東海域には約 30隻を展開させているに過ぎないことを明らかにし、その上で、米海軍はオバマ戦略を検討しており、それに適合させていくが、極東海域における海軍力の大幅な増強はない、と述べた。
1月 10日「韓国造船業界、世界一奪還— 2011年統計データ」 (The Korea Times, January 10, 2012)
ロンドンの Clarkson Research Servicesが 10日に発表したデータによれば、2011年の韓国造船業界は、中国から世界一を奪還した。それによれば、韓国造船業界の 2011年の新規受注量は 1,355万補整総トン (CGT) で、中国の 920万 CGTを凌駕した。2011年の世界のCGTは 2,811万で、韓国業界の占める割合は 48.2%である。2010年の韓国のシェアは 31.2%であった。また、新規受注額でも韓国は 481億 6,000万米ドルで、中国の 192億米ドルより多かった。2011年の韓国業界は、LNGタンカーや浮体式施設など、高価格船が中心であった。一方で、受注残高は、 3,766万 CGTで、中国の 4,499万 CGTより少なかった。中国は、2009年と 2010年に新規受注量と受注残高で韓国を上回っていた。
1月 11日「ソマリア沖護衛船舶、 3年間で 4,400隻余—中国海軍派遣部隊」 (Xinhua, January 11, 2012)
呉勝利・中国海軍司令員が 11日に明らかにしたところによれば、中国海軍は、過去 3年間で 10次にわたるソマリア沖海賊対処部隊の派遣を通じて、409回の護衛任務を完遂し、 4,411隻の中国籍船と外国籍船を護衛した。また、この間、40隻の船舶を海賊の襲撃から救出し、海賊に襲撃されたり、(勾留から)解放されたりした 8隻の船舶を支援し、そして 4回にわたって外国船に人道的援助を提供した。更に、世界食糧計画(WFP)のソマリア向け支援船 4隻を護衛した。この 3年間で、中国海軍は、延べ 25隻の戦闘艦、22機の艦載ヘリ、及び 8,400人以上の将兵を派遣した。
1月 12日「ソマリアの海賊、スペイン海軍戦闘艦銃撃」 (EU NAVFOR Public Affairs Office, Press Release, January 12 and 13, 2012)
1隻の小型ボートに乗ったソマリアの海賊が 12日早朝、ソマリアのモガディシュ港近くで、EU艦隊旗艦、スペイン海軍兵站補給艦、 ESPS Patinoに接近し、軽機を発射しながら、乗り込もうとした。同艦は、世界食糧計画( WFP)の船舶護衛を終え、同港に入港しようとしていた。同艦が自衛のために反撃し、艦載ヘリを発進させると、海賊は攻撃を止め、武器を海中に投棄して降伏した。同艦の臨検チームがボートに乗っていた海賊容疑者 6人を拘束した。拘束された 6人の内、5人が負傷した。海賊の話では、7人が乗っていたが、攻撃中に1人が海中に落ちて行方不明になったという。臨検チームの調査では、それを裏付ける証拠はなかった。以下は、その時の様子である。
1月 12日「英海軍補給艦、海賊容疑者 13人を拘束」(The Telegraph, January14, 2012)
NATO艦隊所属の英海軍補助艦隊補給艦、RFA Fort Victoriaは 13日早朝、ソマリア近海を哨戒中、1隻の小型ボートを曳航する漁船(ダウ船)を発見し、同艦の艦載ヘリが該船前方に数回の威嚇射撃を行って停船させようとしたが、停船をしなかったため、ヘリから船体に 5発銃弾を撃ち込んだ。直後に 2隻の RHIBの乗った英海軍海兵隊チームがボートを拿捕した。海兵隊チームは、船内捜索で、最近ハイジャックされた商船のものと見られるライフジャケットの他に、ロケット推進擲弾筒や強襲ライフルなどの武器類を発見した。降伏した 13人のソマリア人海賊容疑者を拘束した。海賊は、このダウ船を母船として使用していた。以下は、その時の様子である。
動画は以下を参照;
1月 12日「ソマリアの海賊、インド船解放」 (Somalia Report, January 13, 2012)
ソマリアの海賊は 12日、マーシャル籍船のケミカルタンカー、 MT Fairchem Bogey (25,390DWT)を解放した。身代金は推定 800万米ドルとされるが、海賊は身代金の額を誇張しがちで、正確な金額は未確認である。消息筋によれば、前日の 11日、該船の上空でヘリがホバリングするのが視認されており、身代金投下のために飛来したと見られる。該船は、インドの船社の運航で、乗組員は 21人で、全てインド人である。該船は、2011年 8月 20日にハイジャックされた。ハイジャックされた時、該船は、オマーンのサラーラ港内において錨泊中で、港湾当局の停泊許可を待っていた。該船は、アデン湾を航行中は武装警備員を乗船させていたが、オマーンで下船し、ハイジャック当時は乗船していなかった。
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