海洋安全保障情報週報 2012年1月1日~1月7日

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1月 3日「ソマリアの海賊、インド籍船をハイジャック」 (Somalia Report, January 3, 2012)

ソマリアの海賊は 3日、ソマリア・プントランドのボサーソ港付近でインド船籍の家畜運搬船、MV Savina Al-Salaamをハイジャックした。該船の積荷は家畜 3,620頭で、ボサーソからオマーンに向かっていた。プントランド自治政府当局によれば、該船には、インド人乗組員 16人と共に、ソマリア人乗客 4人が乗船している。

【関連記事 1】「ソマリアの海賊、インド籍船を解放」 (Somalia Report, January 5, 2012)

船主側のプントランド代表が明らかにしたところによれば、ソマリアの海賊は 5日、インド籍船の家畜運搬船、MV Savina Al-Salaamを、インド人乗組員 16人と共に、身代金なしで解放した。解放の理由は不明だが、船主側代表は積荷の家畜の扱いに困ったからだと思うと語っている。該船は解放後、オマーンに向かった。

【関連記事 2】「EU艦隊、インド船救出、 9人の海賊容疑者拘束」 (Somalia Report, January 5, 2012)

ソマリアのプントランド自治政府当局が明らかにしたところによれば、EU艦隊は 7日、 NATO艦隊と共に、海賊に乗り込まれたインド籍船の貨物船、MV Shaahi Al-Qaasimiから、インド人乗組員 20人を救出するとともに、海賊容疑者 9人を拘束した。該船は 5日、ドバイからプントランドのボサーソ港に向かって航行中にハイジャックされた。消息筋によれば、この海賊グループは、 5日に解放されたインド籍船、MV Savina Al-Salaamのハイジャックに関わったとされる。

1月 4日「中国船襲撃事案、メコン川」 (China Daily, January 7, 2012)

メコン川のミャンマー領水域のワンプン港で 4日、4隻の中国船が襲撃される事案があった。人民日報の報道によれば、中国船は 3隻の貨物船と 1隻のタンカーで、2発のロケット弾を打ち込まれ、1発は水中に落ちたが、もう1発は船の近くで爆発した。中国は 2011年 12月から、流域 3カ国—タイ、ミャンマー及びラオスと共に、合同哨戒活動を始めたばかりであった。中国船は 2011年 10月にも襲撃され、中国人船員 13人が殺された。瀾滄江河川局によれば、河川海運が再開された 2011年 12月 13日から 2012年 1月 3日までの間、 1万 5,844トンの貨物が輸送された。また、2011年 10月までは、毎月平均 2万 4,280トンの貨物輸送があった。同局によれば、メコン川の国際貨物輸送船として登録されている 86隻の船舶の内、既に 3分の 2強が業務を再開しており、今回の襲撃事案は河川輸送の信頼性に大きな打撃となることはないという。

1月 4日「インドネシア海軍、高速ミサイル艇 24隻調達計画」 (The Jakarta Post, January 5, 2012)

インドネシア海軍の計画担当司令官補佐、スマルトノ海軍少将 (RADM Sumartono) が 4日に明らかにしたところによれば、海軍は、同国西部とスラウェッシ北部の浅海域に配備するために、24隻の誘導ミサイル搭載高速哨戒艇の調達を計画している。同少将は、リアウ諸島バンタム島にある民間造船会社、PT Palindo Marineの施設を訪問した際、この計画を明らかにした。PT Palindo Marineはすでに、2隻の誘導ミサイル搭載高速艇を海軍に引き渡している。同社の幹部は、高速艇の 45%を国産品で賄えると語っている。2隻の誘導ミサイル搭載高速艇は、長さ 30メートルで、最大射程 120キロの中国製 C-705対艦ミサイル、6連装 30ミリ近接対空システム及び 20ミリ砲 2門を搭載している。

1月 4日「中国海軍増強の狙い、米空母を中国近海から遠ざける—米紙論説」 (The Wall Street Journal, January 4, 2011)

4日付けの米紙、The Wall Street Journalは、”China Takes Aim at U.S. Naval Might”と題する長文の論説を掲載し、中国海軍の増強の狙いが、米空母を中国近海から遠ざけることにあるとして、要旨以下のように論じている。

(1) 現在、バージニア州ニューポート・ニュースのドックで建造中の最新の空母、 USS Gerald R. Fordは、米海軍の優位をもう半世紀維持することを期待されていた。しかし、設計段階から 2015年と見られる就役までに間に、予期せぬ問題が生じた。即ち、それは、中国が成層圏を飛び、米空母甲板上で爆発させる新型の弾道ミサイルを製造していることである。1945年以来、米国は、西太平洋海域を支配してきたが、それは、それぞれが 9万 5,000トン—「4.5エーカーの動く米国領土」—の空母艦隊によるところが大きい。この間、中国は、中国近海を我が物顔に遊弋する米海軍戦闘艦を前にただ手を拱いているしかなかった。中国は今や、大々的な軍事力増強に励んでいるが、その狙いは、米空母を中国近海からできるだけ遠ざけることにある。両国とも、口には出さないが、軍事技術的優位を巡って鎬を削っている。

(2) 中国国営メディアによれば、中国の新型ミサイル、DF-21Dは、最大射程 1,700カイリで、移動する艦船を攻撃するミサイルである。米国の軍事専門家によれば、このミサイルは、米艦の対艦巡航ミサイル防御システムの迎撃角度より高い角度で、しかし他の弾道ミサイル防御システムの迎撃角度よりは低い角度で飛来するよう設計されている。一部の専門家は、米艦の防御システムが 1発や 2発のミサイルを破壊できたとしても、中国は、複数のミサイルの同時発射によって米空母を狙い、その防御システムを無力化することができよう、と見ている。 DF-21D—中国はまだ配備に言及していないが—は、米空母を中国沿岸から次第に遠ざけ、従って空母艦載戦闘機も中国領空への侵攻や、中国国境接近において航空優勢を確立することが益々難しくなろう。米海軍は、対抗策として、空母から発進できる航続距離の長い無人機を開発している。また、空軍は、太平洋を巡航できる無人爆撃機を求めている。

(3) 歴史を見れば、世界的な大国を目指す如何なる国にとっても、制海権の確保が必須の要件であった。中国の軍事力増強計画では、海軍力の拡充が柱となってきた。数年前までは、どんな突発事態にでも、米海軍の 11隻の空母から 1隻か数隻を派遣すれば、同盟国を安心させ、北京を抑制することができた。しかし今や、中国軍は、開発中の対艦弾道ミサイルに加え、米空母を攻撃できる潜水艦戦力を保持している。中国軍の軍事技術面での進展に伴って、軍の一部における発言ぶりにも変化が見られる。軍内のタカ派の将校や専門家は長い間、米国は中国を「第 1列島線」内に封じ込めようとしている、と非難してきた。彼らは今では、米国をハワイ当たりまで押し返し、中国海軍が西太平洋、インド洋、更にはそれ以遠の海域で自由に行動できるようにする、と豪語している。

(4) もちろん、中国が米海軍を正面から打ち負かすほどの実力と持つまでには長い道のりを要するが、米軍当局者によれば、中国の当面の戦略は、重要な島嶼や海域を確保するまで米海軍の到着を遅らせることである。中国の軍事力増強と米国防予算の削減という困難な状況の中で、一部の米軍高官は、最新の、 USS Gerald R. Fordのような空母に依存してきた米国の軍事戦略を見直す時期が来たのかもしれない、と憂慮している。空母に対する攻撃が成功すれば、最大で 5,000人近い将兵の生命が危険に曝される。これはイラクでの軍事行動での犠牲者より多い。米海軍大佐と退役海兵隊中佐が連名で海軍協会誌、 Proceedingsに寄稿した論文で、2人は、「Gerald R. Fordはネームシップだが、(2番艦がない)最終艦になるかもしれない。」と指摘している。(備考:この論文は以下を参照。 Captain Henry J. Hendrix, U.S. Navy, and Lieutenant Colonel J. Noel Williams, U.S. Marine Corps (Retired), “Twilight of the $UPERfluous Carrier,” Proceedings, May 2011, Vol.,137, pp.20-26.)

1月 5日「米海軍、海賊容疑者 15人拘束、イラン人漁民救出」 (U.S. Naval Forces Central Command Public Affairs, Press Release, January 6, 2011)

米海軍第 5艦隊の USS John C. Stennis空母打撃群に属する誘導ミサイル駆逐艦、USS Kidd (DDG 100) は 5日、アラビア海北部で海賊の人質になっていたイラン人漁民 13人を救出した。米中央軍の発表によれば、USS Kiddの艦載ヘリが、イラン国旗を掲げた漁船(ダウ船)、FV Al Molaiに、海賊の小型ボートと見られる船が横付けされているのを発見した。同時に、ダウ船の船長から海賊の人質になっているとの通報があった。 USS Kiddの臨検チームが該船に乗り込み、15人の海賊容疑者を拘束するとともに、13人のイラン人漁民を救出した。イラン人漁民によれば、ダウ船は、ほぼ 40〜45日間にわたって、ペルシャ湾全域で海賊の「母船」として利用されていた。以下は、その時の様子である。

The Kidd’s VBSS team boarded the Iranian-flagged fishing dhow Al Molai and detained 15 suspected pirates, who were holding a 13-member Iranian crew hostage for several weeks. Source: U.S. Naval Forces Central Command Public Affairs, Press Release, January 6, 2011

1月 5日「韓国現代重工、 FLNGPコンセプト・モデル公表」 (gCaptain, January 5, 2011)

韓国の現代重工は 5日、浮体式 LNGプラント (Floating Liquefied Natural Gas Plant: FLNG)のコンセプト・モデルが完成したことを公表した。ドイツのガス・エネルギー会社、 Linde AGとの共同によるもので、 FLNGは、洋上でガスを生産、液化し、LNGタンカーに直接積載できる。The Hyundai FLNGは、年間 LNG生産可能能力が 250万トン、長さ 335メートル、幅 70メートル、高さ 35メートルの船体に約 19万 3,800立米の LNG貯蔵能力を持つ。世界で最初の FLNGの開発は、Royal Dutch Shellの ‘Prelude’ FLNGで、年間 360万トンの LNG生産能力を持ち、西オーストラリア沖合約 200キロの海域に設置されることになっている。‘Prelude’ FLNGは、韓国のサムスン重工で建造され、2017年に完成が予定されている。(備考: ‘Prelude’ FLNGについては、OPRF海洋安全保障情報月報 2011年 5月号1.5海運・造船・港湾参照。)

1月 5日「中国最大の洋上風力発電、 3月完成予定」 (UPI, January 5, 2012)

5日付、UPIの報道によれば、中国最大の風力発電メーカー、龍源電力が江蘇省南通市の(黄海に面した)如東県沖合に建設している風力発電施設は、同社の担当者によれば、「特に場所の選定、計画・設計、建設及び維持管理の面で、中国における洋上風力発電開発の指針となる」という。施設の建設は、2009年 6月に 3億 9,700万米ドルの資金で始まり、3月に完成が予定されている。第 1段階の発電能力は 150メガワットである。この施設は如東県沖合の潮間帯(干潮時には海面上にあるが、満潮時には海面下に没する)に建設されており、中国最大の洋上風力発電施設となる。これまで、上海の Shanghai East Sea Bridge Offshore Wind Farmが中国で唯一の商業用洋上風力発電施設で、 2010年 6月以来、 102メガワットの発電能力で営業している。中国気象台によれば、中国は、東部と南部の沿岸域の工業地帯沿いで、最大 750ギガワットの潜在的洋上風力発電能力があるという。これは陸上の潜在的風力発電能力の 3倍である。現在の中国の風力発電能力は、全発電能力の 1.5%を占めるに過ぎない。中国は 2020年までに 30ギガワットの洋上風力発電能力の建設を目指しているが、専門家は、この目標達成には、5メガワット発電能力を持つ洋上風力発電タービン約 6,000基が必要になると見ている。

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