2023.09.27
Ideas and Analyses
【講演会報告】米中対立の行方と国際安全保障環境の変化
笹川平和財団日米グループでは、8月22日(火)に、ハル・ブランズ氏(ジョンズ・ホプキンス大学)、ザック・クーパー氏(アメリカン・エンタープライズ研究所)をゲストにお招きし、講演会を開催しました。
ハル・ブランズ氏は、アメリカの戦略や冷戦史の分野で研究を重ね、近年は米中対立やアメリカの外交政策について数多くの論考・書籍を執筆し注目を集める専門家です。中国はピークアウトした時が最も攻撃的になりうることを論じた近著Danger Zone: The Coming Conflict with Chinaは邦訳版が出版され、日本でも話題となりました(『デンジャー・ゾーン:迫る中国との衝突』)。一方ザック・クーパー氏も、アジアにおけるアメリカの防衛政策、同盟、米中戦略競争などで数多くのレポートや論文の執筆、ポッドキャストに出演をしており、日米両国で注目されています。
本講演会では、まずハル・ブランズ氏より自身の著書の内容に基づき、中国が現在なぜピークアウトに直面しているのか、それによってなぜ米中競争のリスクが高まるのか、そして中国を抑止するために何が必要なのかなどについて、お話しいただきました。その後、モデレーターに慶應義塾大学の森聡氏、コメンテーターザック・クーパー氏をお迎えし、ディスカッションが行われ、来年の台湾での選挙が中国の政策に与える影響や核兵器の台湾有事における役割、戦略的曖昧性の是非など多岐にわたる論点について議論が交わされました。
講演会動画(オリジナル言語版・日本語通訳版)は下記よりご覧いただけます。
講演会動画(オリジナル言語版・日本語通訳版)
(1)収録日 | 2023年8月22日(火) |
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(2)講演者 | ハル・ブランズ氏(ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授) |
(3)コメンテーター | ザック・クーパー氏(アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)上級研究員) |
(4)モデレーター | 森 聡 氏(慶應義塾大学法学部教授) |
(5)本動画内使用言語 | 日本語/英語(オリジナル言語)、日本語(同時通訳音声を含みます) |
(6)主催 | 公益財団法人 笹川平和財団 |
*本講演会における議論は全て参加者個人の見解によるものであり、笹川平和財団、また参加者の所属する機関の見解を代表するものではありません。
動画(オリジナル言語版)
動画(日本語通訳版)
Hal Brands(ハル ・ ブランズ)
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)、ヘンリー・A・キッシンジャー グローバル・アフェアーズ特別教授。アメリカン・エンタープライズ研究所の客員研究員、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストも務めている。近著にThe Twilight Struggle: What the Cold War Teaches Us About Great-Power Rivalry、 Danger Zone: The Coming Conflict with China(邦訳版『デンジャー・ゾーン 迫る中国との衝突』マイケル・ベックリーとの共著)、The New Makers of Modern Strategy: From the Ancient World to the Digital Age.など。国防長官特別補佐官(戦略立案担当)、『米国国防戦略』評価委員会首席執筆者を務めた経験も持つ。また国務省の外交政策委員会のメンバーであり、情報機関や国家安全保障コミュニティにおいて、さまざまな政府機関や官庁と意見交換を行っている。フォーリン・アフェアーズ、アトランティック、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストなどに寄稿。外交政策や世界情勢について、政府、学界、民間企業などで幅広く講演を行っている。
Zack Cooper(ザック・クーパー)※コメンテーター
アメリカン・エンタープライズ研究所のシニアフェローを務め、米国の戦略、アジアの同盟関係や米中競争などを研究している。プリンストン大学講師、アーミテージ・インターナショナルのパートナーも務めている。戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア安全保障担当シニアフェローを経て現職。それ以前は、米国防総省および米国家安全保障会議のスタッフも務めた。スタンフォード大学で学士号、プリンストン大学で修士号と博士号を取得。International SecurityやSecurity Studiesなどの学術誌、ニューヨーク・タイムス、ワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナル、などで多くの論文、論説を発表している。また、アジアにおける米国の軍事戦略や軍事態勢、中国の威圧、地域の同盟国やパートナーとの米国の防衛協力などをテーマに、アジアに関するさまざまな研究を執筆している。Postwar Japan: Growth, Security, and Uncertainty Since 1945(CSIS/Rowman & Littlefield, 2017)、Strategic Japan: New Approaches to Foreign Policy and the U.S.-Japan Alliance(CSIS/Rowman & Littlefield、2014年)の共編者も務めた。
森 聡(もり・さとる)※モデレーター
1995年3月京都大学法学部卒。同大学大学院法学研究科及び米コロンビア大学ロースクール修士課程修了。外務公務員採用Ⅰ種試験で外務省入省。同省退職後、2007年に東京大学大学院法学政治学研究科にて博士(法学)。2008年より法政大学法学部准教授、2010年から2022年3月まで同教授。この間、米プリンストン大学(2014~2015年)及びジョージワシントン大学(2013年~2015年)で客員研究員。2022年4月より現職。現在の研究テーマは、米中関係・日米関係を含むアメリカのアジア戦略、先端技術と国防イノベーション、冷戦期アメリカの戦略史。主な著書に『国際秩序が揺らぐとき―歴史・理論・国際法からみた変容』(編著、千倉書房、2023年)、『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』(共著、東京大学出版会、2022年)、『「強国」中国と対峙するインド太平洋諸国』(共著、千倉書房、2022年)、『アメリカ政治の地殻変動』(共著、東京大学出版会、2021年)、『アフターコロナ時代の米中関係と世界秩序』(共編著、東京大学出版会、2020年)、『アメリカ太平洋軍の研究』(共著、千倉書房、2018年)『ヴェトナム戦争と同盟外交』(単著、東京大学出版会、2009年、日本アメリカ学会清水博賞受賞)ほか。