事業紹介

2015年
事業

002 温暖化・海洋酸性化の研究と対策

酸性化が進むと、炭酸カルシウムの骨格を持つ生物(造礁サンゴ・貝類など)の殻が溶けるなど、私たちの身近な沿岸域の環境にも影響が出てくる可能性があります。今後、笹川平和財団では、国内外の専門家とともに、このような課題に関する調査研究を進めてまいります。

事業概要

地球温暖化と海洋酸性化は着実に進行しています。今後、貝やサンゴなど石灰殻を持つ海洋生物や人間社会への影響も心配されます。こうした海洋の危機について、調査研究し、その成果を社会に発信します。

事業実施者 笹川平和財団 年数 1年
形態 自主助成委託その他 事業費 11,200,000円

笹川平和財団では、今年度、新たに「温暖化・海洋酸性化の研究と対策」についての調査研究を開始しました。
2012年の「国連持続可能な開発会議(RIO+20)」の合意文書「The Future We Want」にて「海洋酸性化と気候変動が海洋・沿岸の生態系と資源に与える影響に取り組むイニシアチブへの支援を求める」ことが記されるなど、温室効果ガスの増大に伴う海域への影響について、温暖化だけでなく海洋酸性化が新たな課題として注目されはじめています。


The Oceans Day at RIO+20の写真

海洋の酸性化とは、一般的に弱アルカリ性(pH=約8.1)である海洋に、二酸化炭素が多く溶け込むことでpHが下がる(酸性化する)現象のことを示します。図に示すように、季節や場所によって変動がありますが、気象庁の長期間の観測からも、外洋域における酸性化の傾向が明らかになってきています。
酸性化が進むと、炭酸カルシウムの骨格を持つ生物(造礁サンゴ・貝類など)の殻が溶けるなど、私たちの身近な沿岸域の環境にも影響が出てくる可能性があります。
今後、笹川平和財団では、国内外の専門家とともに、このような課題に関する調査研究を進めてまいります。


各季節における平均的なpHの分布図(出展:気象庁ホーム-ページ)

専門家会合の開催について(2015年11月12日)

気候変動の影響に対処するためには、温室効果ガスの排出抑制等による「緩和」だけでなく、避けられない影響に対して「適応」を進めることも重要となります。このような認識のもと、先月(2015年10月)、政府により「気候変動の影響への適応計画」の案が取りまとめられました。

この適応計画案では、海面養殖について、高水温耐性等を有する品種開発に言及するほか、海洋酸性化による貝類養殖への将来的な影響懸念が示されています。 また、造礁サンゴについては、「生育に適する海域が水温上昇と海洋酸性化により2030年までに半減し、2040年までには消失する」という、ある予測シナリオに基づく検討結果を紹介するなど、将来的な懸念が示されています。

このような海域環境等への影響可能性を踏まえ、どのような対策が必要になるのか、2015年11月12日に専門家会合を行い、必要な取り組みについて検討をしました。

GFF02_03.JPG

専門家会合の様子

GFF02_04.jpg

サンゴ分布の将来予測(将来の日本近海の潜在的なサンゴ分布可能域を予測した結果)

(出展:国立環境研究所ホーム-ページ)

スウェーデンにおけるワークショップ開催(2015年11月24~25日)

2015年11月24日~25日にスウェーデンで開催された「海洋酸性化が生態系や社会に与える影響に係るワークショップ」(Effects of ocean acidification on ecosystems and human societies)に、角田主任研究員が参加しました。

会場は、ノーベル賞の発表が行われるスウェーデン王立科学アカデミーで、国際的な海洋酸性化の専門家や経済学者等の40名の参加のもとで行われました。

スウェーデン王立科学アカデミー環境委員会や国際プロジェクトであるIMBER(海洋生物地球化学・生態系統合研究)等の共催によるワークショップで、海洋酸性化の現状を踏まえ、その海洋生態系や社会経済への影響を議論するとともに、国際的な連携方策等について話し合われました。角田主任研究員は、日本での研究動向や財団での検討状況について講演を行いました。

GFF02_05.JPG GFF02_06.jpg GFF02_07.JPG

国際シンポジウム「海洋における温暖化と酸性化~現状と今後の対応策~」(2016.2.17)

間社会が排出する二酸化炭素は、地球温暖化をもたらすとともに、海水中に溶け込むことにより海洋酸性化を進行させます。海洋における温暖化と酸性化は、2012年の国連持続可能な開発会議(リオ+20)の成果文書や2015年9月に発表された国連持続可能な開発目標(SDGs)などに取り上げられている喫緊の課題、我が国での対応は必ずしも十分ではありません。

世界でこの分野の議論をリードする著名な研究者を招いて開催した本シンポジウムでは、約130名の学識、行政、企業、一般からの参加者を得て、これらの重要課題について、国内外の状況を共有し、我が国で取り組むべき検討課題や対応策について、活発な議論が行われました。