Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第446号(2019.3.5 発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授♦窪川かおる

♦東日本大震災から8年になる。その間に地震研究はどこまで進んだのだろう。警戒されている南海トラフ地震に関連する情報が重点的に発信されており、2018年10月からは、(国研)海洋研究開発機構により南海トラフのプレート境界近傍での超深海掘削が実施されている。科学掘削としては世界最深となる海底下3,262.5mに達するなど地球深部探査船「ちきゅう」でしか得られない貴重な地質サンプルを得て、地層構造や物性データなどの分析が現在も続いている。入念な準備と最新の科学技術および熟練技能を投入した調査でもプレート境界断層に達するのは難しい。自然の謎を解くためにたゆまぬ挑戦を続けて欲しいと思う。
♦東北地方太平洋沖地震では、過去の地震に基づくモデル作成が十分ではなかったことが示された。地震の原因となるプレート固着状況の予測には現実的データとそれを使った数値モデルの開発が必要であるという。(国研)海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センターの小平秀一センター長より南海トラフ地震に対する取り組みを解説いただいた。進められているのは、海底での連続観察システムの開発、プレート構造・断層調査、プレート固着の推移の計算手法の開発などである。社会への発信にも苦慮されている。是非ご一読いただきたい。
♦沿岸部での自然災害の甚大化には、気候変動の影響がある。台風による高潮・高波に対する温暖化の影響を定量的に評価するには、発生個数の減少、強い台風の増加、代表経路の変化を捉えることが大切であるという。京都大学防災研究所の森 信人氏にご寄稿いただいた。森氏も過去の最大イベントの経験だけに頼らず、科学的な検討にもとづく変動を取り入れた長期評価を施すことの重要性を訴えている。長期モニタリング強化に対しての理解を望みたい。
♦種市高等学校の遠藤拓見校長より潜水士育成の歴史と海洋開発科の現状および海洋教育の実施についてご説明をいただいた。「南部もぐり」で知られる潜水業の近代化と地位向上を見据えて発足した養成機関は、現在の種市高等学校海洋開発科となり、潜水および土木の知識と技術を学ぶことのできる全国唯一の学科となった。さらに1952年の潜水科設置以来の卒業生は1,600名余となり、その半分以上が潜水士になっているという。これからも、少子化に負けずに海洋開発および建設業界への貢献を担っていただくことを願っている。(窪川かおる)

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