Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第392号(2016.12.05 発行)

編集後記

山梨県立富士山世界遺産センター所長◆秋道智彌

◆陸上で車を運転し、ガソリンが切れたらスタンドを見つけて給油すればよい。しかし、海上ではそうはいかない。海上での給油(バンカリング)はとくに遠洋を航行する船舶にとり、死活問題となる。ただし、海上での給油場所が公海であるのか領海、あるいはEEZであるのか、自国船なのか外国船なのかが大きな問題となる。国連海洋法条約でもEEZ海域におけるバンカリングの是非と合法性については明文化されていない。2009年、西アフリカのギニアビサウ共和国のEEZ海域においてパナマ船籍のヴァージニアG号が漁船に給油したとして、ギニアビサウ国は国内法に準拠してヴァージニアG号の拿捕と漁船没収を実行した。この措置にたいする判決が2014年、国際海洋法裁判所により下され、パナマの訴訟を基本的にしりぞける結審を下した。早稲田大学の河野真理子氏によると、沿岸国の国内法次第でEEZにおけるバンカリングをどのように受け止めるかが異なっている点がキーになるとして、今後のこうした問題にたいする国際法と国内法のすりあわせによる合理的な判断が注目されるという。海洋においてはさまざまな法律とその適用範囲が異なるので、海の「法の束」ゆえに一元的な問題解決は困難な面が多々ある。それだけに、日本の場合も海洋関連の法整備について高度な対応を実践面でもできるようにすべきであろう。
◆沿岸国と外国船だけの利害関係問題とは異なり、多くの国が連携して情報を共有するだけでなく、公開して便宜をはかりあうギブ・アンド・テイクの試みへの要請が浮上してきた。それは国際的なレベルでの大気・海洋観測にもとづく気象データの高度利用に向けたネットワーク形成の動きである。(国研)海洋研究開発機構の磯野哲郎氏は気象予報士でもあり、近年の温暖化やエルニーニョ現象が日本の南にあるアジア・太平洋地域における気象の動向と密接かつ動的にかかわっており、各国ごとの連携だけでなく広域に網の目を張った情報の交流が必須であるという。台風にしても日本だけの問題ではない。ベンガル湾の気圧配置やサイクロンの発生など、海と大気をダイナミックにとらえる技術と情報交換の進展を待ち望みたい。
◆三重県ではアサリ養殖の画期的な技術が導入されている。鳥羽磯部漁業協同組合浦村アサリ研究会代表の浅尾大輔氏は、自ら手掛けたアサリ養殖の技術を隠匿して事業を進めるのではなく、情報を広く公開して沿岸養殖の発展に資する試みを手掛けられている。瀬戸内海では貧栄養化、温暖化、ナルトビエイによる食害でアサリ漁は瀕死の状態にある。北海道・道東部の浜中においては客土を入れてアサリを増殖する試みもあるが、簡便な方法によって、採算を入れたうえで中型アサリの養殖に成功しておられる。海の情報の公開が全国に拡大すれば、こんな楽しいことはない。ただし、干潟や海浜環境は全国的に劣化してきたわけで、外国産のアサリを早朝に撒いて潮干狩りをする現状はうれしくない。なお一層の沿岸域管理と資源回復の方策が総合的に進められることを願わずにおれない。 (秋道)

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