Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第137号(2006.04.20 発行)
第137号(2006.04.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(総合地球環境学研究所教授)◆秋道智彌

◆ミクロネシアの中央カロリン諸島にあるサタワル島で20年ほど前に1年弱ほどの間、調査をした。島の人びとは全長8~10mの大型帆走カヌーにより島から島へと移動する遠洋航海術をもつことで知られる。人びとは航海にさいして、星や星座、風などだけでなく、魚や海鳥についての知識を活用する。たとえば、海上で方向を見失ったとき、アジサシやカツオドリなどの海鳥が飛んでいく方向に注意を払う。島があるかもしれないからだ。この島から沖縄の本部で開催された沖縄国際海洋博覧会場までチェチェメニ号という名前のカヌーが航海したのは1975年のことであった。そのカヌーは現在、大阪の国立民族学博物館に展示されている。

◆アジサシは渡り鳥である。山階鳥類研究所の尾崎さんによると、沖縄に飛来するベニアジサシがオーストラリアのグレート・バリア・リーフを越冬地とすることが確認されたという。サタワル島の航海者たちも太平洋を渡るアジサシを見たのだろうか。アジサシのような渡り鳥の保護には繁殖地と越冬地の両方を対象とすべきことは基本的な要件だ。いっぽうの地域で保護されても、移動先の生息地環境が劣化し、あるいは狩猟の対象とされては保護も実を結ばない。この問題には、国際法が未整備であることや、貧困と南北格差などが複雑にからみあっている。

◆サンゴ礁の保護についても、沖縄・阿嘉島臨海研究所の大森さんの指摘は重要だ。サンゴ礁の保護政策を進める上で、予測の不確実性を配慮し、予防的なアプローチと倫理的な判断を重視すべきことが提案されている。サンゴ礁の恩恵をうけてきた熱帯島嶼国の人びとは、サンゴ礁の喪失、温暖化による海水面上昇などにより、現在、生活の危機に直面している。先進国である日本とオーストラリアは、サンゴ礁の保護や管理のための研究や政策を進める指導的な立場にあることを自覚すべきであろう。沖縄のもつ新たな意味に注目したい。 (了)

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