事業内容
太平洋島嶼国の伝統的文化、慣習、遺跡は、長年にわたる植民地支配の下、その多くが破壊ないし放棄されてきました。しかし、近年になって独立を果たし、自立に努力する各島嶼国では、文化的アイデンティティの復活と資源の少ない環境の下での観光資源の開発という視点から、独自の文化の掘り起こしが改めて注目されるようになっています。そのため、これまでのような先進国の研究者への依存から脱却し、地元の専門家を育成することが急務とされています。
本事業は、島嶼国独自の文化遺産を保護するとともに、民族文化が島の人々に再評価されるよう、実地の訓練を通して考古学の専門知識を身につけた地元の専門家・遺跡記録者を育成することを目的に、域内では初めての試みとして開始されました。ハワイのビショップ博物館の考古学者や、日本ならびに太平洋島嶼国の考古学専門家が講師となり、太平洋島嶼国各国から選抜された研修生を対象に、遺跡発掘に関する講義と実地訓練、遺跡管理に関する現場視察と講義を行いました。
3年間で合計63人の研修生が本事業に参加しました。これが、新たな観光資源の発掘と観光業の振興による地元経済への寄与にもつながり、さらに地元の文化保護活動を行うNGOや博物館、政府の文化保護局等が観光産業の質的向上と収入の増加を自ら模索するきっかけにもなりました。
初年度の1996年にはタヒチ(ポリネシア地域)1か所にしか研修基地がありませんでしたが、97年度にはバヌアツ(メラネシア地域)とパラオ(ミクロネシア地域)にも新たに基地を設け、多くの地域から研修生を受け入れることができるようになりました。最終年度にあたる98年度には、以前から海洋考古学の授業を試みていたチュック(ミクロネシア地域)の高校に協力し、若者の歴史・文化教育への関心を高める事業も新たに展開しました。
本事業は、考古学分野において現地の人材育成を行う初めての試みとなりました。当基金がそのきっかけをつくったわけですが、当基金の助成終了後も引き続き日本政府が資金援助をすることになっており、継続的な人材育成が期待されます。
事業実施者 |
Bishop Museum, The State Museum of Natural and Cultural History/米国
|
年数 |
3年継続事業の3年目(3/3) |
形態 |
自主助成委託その他 |
事業費 |
8,606,250円 |