事業紹介

1999年
事業

ミクロネシア看護医療改善のための遠隔教育

事業内容
ミクロネシア地域では、限られた高等教育機関でのみ看護医療教育が行われています。これらの学校の卒業生は、300以上ある離島に戻り、医療のための基本的なインフラさえ整備されていない環境の中で、医療活動を続けています。設備の整った病院は、ミクロネシア地域ではグアムにしかありません。しかし、輸送手段が限られており、経済的な理由からも患者は離島に留まらざるを得ず、人命を守るための適切な処置を施すことができません。医師の数も限られており、人命救助から島民の健康管理に至るまで、看護婦1人で行っているという状態です。
本事業は、1970年代から太平洋地域の教育福祉利用に無料でサービスを提供している米国の衛星(PEACESAT)、ビデオ教材、インターネットなど、さまざまなメディアを利用し、ミクロネシア地域の文化的、物理的ニーズに合った遠隔教育開発と制度の確立を目指してきました。また、この3年間、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国の短期大学や病院など、関係団体の看護医療教育の人材や経験を生かしつつ、ミクロネシア地域の遠隔教育プログラムの質的向上を目指す試みを行ってきました。
勤労学生が学びやすいように、また島独自の文化、社会的特徴に適合するように、既存のコースを改善したり、新たなコースを設けるなど、さまざまな試みも行いました。
仕事を終えてから受講をする学生のためには夜間教室が開かれていますが、一番西のパラオと一番東のマーシャル諸島では3時間の時差があります。授業の終了時間が夜中になってしまうなど、多くの課題を克服しなければなりませんでした。特に、音声のみに頼る遠隔教育システムに学習者が適応できるよう、各受講サイトにコーディネーターを配置し、グアム大学本部と連携を強化しつつ、受講生の学習支援体制づくりに尽力しました。3年間での受講生は延べ300人にも達し、遠隔教育用教材も多く開発されました。
さらに、太平洋共同体事務局や世界保健機関(WHO)など、関係機関からも高い評価を受け、今後の支援、協力体制基盤を強化することもできました。また、本事業を実施したグアム大学の看護学科は、その実績が認められ、米国の大学審査委員会の承認を受けて学部へ昇格しました。ミクロネシア地域の看護医療教育のリーダーとして、より大きな期待が寄せられています。
本事業の経験は、遠隔教育の発展がIT技術のみに頼るものではなく、現場の人々の絶え間ない、地道な努力によるものであることを教えてくれました。

事業実施者 University of Guam/グアム 年数 3年継続事業の3年目(3/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 4,782,900円
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