事業紹介

2015年
事業

アジア科学ジャーナリスト支援

事業概要

本事業は、カナダに本部を持つ世界科学ジャーナリスト連盟(WFSJ)への支援を通じて、アジアの科学ジャーナリストの人材養成と人的ネットワークの構築を図り、アジア全体の科学ジャーナリズムの向上と発展に寄与することを目的としています。

【事業計画】
 ➣ データジャーナリズム研修会の開催(於ソウル、福岡)
 ➣ 科学ジャーナリスト地域機構設立記念会合の開催(於ベトナム、インドネシア)

事業活動
事業実施者 世界科学ジャーナリスト連盟(WFSJ)(カナダ) 年数 3年継続事業の3年目(3/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 12,800,000円
アジアの科学ジャーナリストを対象にソウルと福岡で研修会を開催しました
6月8日から13日の間、データジャーナリズムをテーマにした研修会を、ソウルと福岡の両市で開催しました。ベトナム、フィリピン、インドネシア、ネパール、スリランカから10名の若手科学ジャーナリストが参加し、データジャーナリズムの考え方、実践的な技術と手法などを学びました。研修生らは、アメリカと日本から派遣された講師の指導を受けながら、統計資料などのデータを分析して、ハザードマップや肥満と栄養失調の地域比較表などを体験的に作成しました。

アジア科学ジャーナリストHP用①.pngのサムネイル画像アジア科学ジャーナリストHP用②.pngのサムネイル画像ソウルでの研修会は、世界ジャーナリスト会議(WCSJ)に合わせて開催されたことから、研修生らはデータジャーナリズムに関する本研修会のほか、WCSJが主催する講演会や分科会などの関連イベントにも積極的に参加し、科学ジャーナリズムへの理解を深め、世界のメディア関係者とのネットワークを広めました。

アジア科学ジャーナリストHP用③.pngソウルでの研修終了後、研修生らは福岡に移動しました。ここでの研修会は、世界科学ジャーナリスト連盟(WFSJ)のメンバー団体である「日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)」により企画されました。九州大学次世代燃料電池産学連携研究センター(NEXT-FC)水素エネルギー製品研究試験センター(HyReC)等の施設を訪問し、福岡県における水素エネルギーの開発・普及への取り組みを取材しました。また、明治から昭和の時代に日本の産業を支えた三池炭鉱跡や三池港も視察し、日本の技術やエネルギー変革の歴史などについて理解を深めました。

アジア科学ジャーナリストHP用④.pngアジア科学ジャーナリストHP用⑤.png

インドネシア科学ジャーナリスト協会の設立を記念した会合を開催しました

インドネシア科学ジャーナリスト協会(SISJ*)設立記念会合が、8月29日と30日にインドネシアのボゴール市において開催されました。SISJはインドネシア初の科学ジャーナリストのための組織です。中心メンバーは、2013年度より「アジア科学ジャーナリスト支援」事業に参加しているインドネシア人科学ジャーナリストたちです。本記念会合には約50名の若手を中心としたジャーナリストと、約30名の科学者が参加しました。
*SISJ:Society of Indonesian Science Journalists


インドネシア会合HP用①.png

記念会合では、科学ジャーナリズムの理論と手法に関するワークショップが実施されました。この内容は、東京やソウルで学んだ研修成果によるものです。このほか、環境・林業省や保健省、インドネシア科学院による国内における科学技術に関連する最新の調査研究や政策などについて講義が行われました。


インドネシア会合HP用②.png

また、日本科学技術ジャーナリスト協会(JASTJ*)の代表者2名が出席し、福島第一原発事故や環境ホルモンに関する報道などに関連した日本の科学ジャーナリズムを取り巻く論争について講義をしました。JASTJの歴史、活動内容や組織運営の方法、科学ジャーナリスト組織の役割などについてSISJとの間で経験を共有し、今後、持続的かつ自主的に活動を行っていくための意見交換も行いました。
*JASTJ:Japanese Association of Science and Technology Journalists


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ベトナムで科学ジャーナリスト会合を開催しました

9月25日と26日に、ハノイ市のベトナム・ジャーナリスト協会研修センター (VJATC)において、科学ジャーナリストを対象にした会合が開催されました。2013年度から東京・福島・福岡・ソウルの研修会に参加したジャーナリストにくわえて、ハノイ市において取材活動を行っているジャーナリストら約40名が参加しました。

今回の科学ジャーナリスト会合の主要目的は、①3年間の科学ジャーナリスト支援事業の成果を発表して、ベトナム人ジャーナリスト間で情報共有を図ること、②日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)の経験と教訓を学んで、将来のベトナム科学ジャーナリスト科学協会の設立に活かすこと、③新たな科学的知見を得て今後の報道に活かすこと、でした。


「科学ジャーナリスト会合プログラム」は、こちらを参照してください。


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過去3年間の科学ジャーナリスト支援事業では、2013年度のメンター(指導者)対象の研修会(於東京、福島)、2014年度のメンター指導によるメンティー(若手ジャーナリストの研修生)対象の研修会(於東京、福島)、そして本年度は韓国・福岡で研修会を行いました。科学ジャーナリスト会合では、これらの研修会で得られた成果、特に自然災害、原子力、保健などアジア地域共通の科学に関する重要課題とその報道方法、データジャーナリズムの考え方とその実践的な技術・手法などについて発表し、過去の研修会に参加できなかったベトナム人ジャーナリストの間で情報の共有を図りました。


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日本のJASTJから、講師として高橋真理子氏と引野肇氏が科学ジャーナリスト会合に参加しました。高橋氏は、福島の原発事故に関する報道を例に、科学ジャーナリズムの果たしうる重要な役割について発表しました。また将来、科学ジャーナリスト科学協会の設立をする際の参考として、JASTJの創設から現在に至るまでの20年間の歴史を振り替えながら、組織が自立的、持続的に活動するための方法について説明しました。さらに引野氏が、組織が持続するための資金の獲得要領について、JASTJの事例を参考にして具体的に発表しました。


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科学ジャーナリストには科学的知識が求められますが、今回の科学ジャーナリスト会合では、国立第1小児科病院感染症センターの医師を講師に招き、鳥インフルエンザとその爆発的感染(パンデミック)について学びました。同医師は、ベトナムの地方都市では鳥インフルエンザウイルスが依然として、伝染しやすい環境にあることを述べたうえで、その特徴的な症状、予防と対策などについて説明しました。


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