事業内容
旧ソ連の崩壊後に独立したアゼルバイジャンでは、石油企業などの中・大規模の国有企業が経済の中心的な地位を占めており、国有企業の民営化などの構造改革と、生産性向上に向けた企業の経営システムの改革が急務となっています。このような背景の下、本事業は、国有企業の民営化あるいは企業経営の手法について、マレーシアの経験を学ぶ機会を提供し、企業の所有制度、組織、経営政策に関する政策提言を行うことを目的としています。
2003年度には、ハザル大学の教授を中心とした6人の研究グループを形成し、企業の統治構造に関する研究とマレーシアでの現地調査を行いました。
本年度は、04年4~12月にアゼルバイジャン国内の企業120社にアンケート調査を行い、企業会計情報を提供してもらうとともに、20社の最高経営者のインタビューを行いました。計5回の研究グループ・ミーティングでの分析の結果、アゼルバイジャンでは、企業が株式制度をとったとしても、小規模の個人あるいは家族による所有にとどまり、先進国で通用する企業支配構造モデルがそのままではあてはまらないことが明らかになりました。また、石油企業を中心とした国有企業が民営化を推進していても、株式制度が未整備で企業の経営者が支配的な株主となっており、従業員が一部の株を所有していることはあっても外部からの投資者はほとんどないということもわかりました。前年度に調査したマレーシアの国有企業の経営構造と比較しても、この傾向は顕著です。
05年2月16日には、企業支配構造の改善のための政策提言を行うために、「アゼルバイジャンにおける企業支配構造の課題」と題したワークショップをバクーで開催しました。ワークショップにはアゼルバイジャンの政府関係者、財界関係者、学者ら約30人を招待し、講師としてマレーシア経済研究所のモハメド・アリフ所長、韓国延世大学の金基永教授を招きました。研究グループは、①国際基準の企業会計制度の採択、②企業情報公開システムの構築、③外部監査制度の整備、④労使関係の法的再整備、⑤企業紛争関連の法的再整備、⑥司法における企業支配概念の教育などの政策提言を行いました。この提言を政府の経済開発省に提出したところ、同省の反独占局長から提言を真剣に受け入れるという返信を得ました。今後のアゼルバイジャンの企業支配構造改善の法整備につながる可能性が高くなったといえます。
事業実施者 |
笹川平和財団
Malaysian Institute of Economic Research(MIER)(マレーシア経済研究所/マレーシア)
Economic and Business Research and Education Center, Khazar University(ハザル大学経済経営研究教育センター/アゼルバイジャン)
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年数 |
2年継続事業の2年目(2/2) |
形態 |
自主助成委託その他 |
事業費 |
5,756,826円 |