事業紹介

1996年
事業

ベトナム金融財政政策改革支援プログラム

事業内容
この事業は、南東アジア協力基金の自主事業として1994年4月からスタートしました。事業の主な目的は、計画経済から市場経済への本格的な移行過程に突入していた当時のベトナムで、マクロ経済政策の中核となる金融財政政策の改革に資するため、ベトナムと日本双方で専門家グループによる共同研究を実施し、その結果を踏まえてベトナム政府に対する政策提言を行うことでした。ベトナム側専門家グループは、国家金融財政評議会(SFMC)の傘下に、大蔵省、中央銀行、政府物価委員会、共産党中央委員会経済部の専門家から組織されました。また、日本側専門家グループは、大学や民間シンクタンクの研究者ならびに第一線の銀行マン、証券マンから構成されました。政策研究は(1)マクロ経済安定(インフレの抑制)(2)銀行制度改革(3)資本市場創設という3つの主要テーマに絞られ、1994年以降、日越専門家の共同研究会が日本とベトナムで計7回開催されました。共同研究会では、戦後におけるわが国の経験を中心に、中国を始めとするアジア諸国の例などを引きながら熱心な議論が交わされました。1994年度と1995年度の終わりには、それぞれ1年間の研究成果の発表と政策提言を討議するため、箱根と東京においてシンポジウムが開催され、ベトナムからは政府物価委員会ニエム委員長(大臣・当時)、トイエン無任所大臣などが参加しました。 1995年3月には『Assistance Program on Reform of Finance and Monetary Policies for Vietnam』と題する報告書をまとめ、ベトナム政府ファン・ヴァン・カイ副首相に政策提言という形で提出しました。また、この報告書は英語とベトナム語双方で出版され、ベトナムや日本だけでなく、世界中の研究者や政府の政策担当者、国際機関の援助政策担当者に最新の資料として提供されました。また、1995年度には共同研究会と並行して、ベトナム国内の国営企業(業種は食品、流通、ホテル、ヘルスケアなど)労働者の賃金を直接面接によりサンプリング調査し、何が賃金を決定する要因となるかを統計的手法で分析しました。この調査の内容は1997年に出版された2冊目の報告書『Inflation Control, Fiscal and Monetary Policy Renovation in Transitional Economy in Vietnam:Lessons from Japan』の中にも収められていますが、この種のものとしては数少ない実施例だとの評価を得ています。
成果
事業の成果としては、
  • ベトナム国内の実情に応じた政策の提言を行い、かつ実際の立法化に結びついたこと
  • 日越双方の専門家の人的ネットワークが結成できたこと、特に日本側アドバイザーとして柿澤弘治元外務大臣、寺澤芳男元経済企画庁長官、行天豊雄東京銀行会長の協力を得たこと
  • ベトナム国内の政策担当者によって最新の報告書が作成され、それが日本ばかりでなく世界各国のベトナム経済専門家のための最新資料になったこと
などが上げられます。

事業実施者 笹川平和財団 年数 3年継続事業の3年目(3/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 4,695,908円