Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第511号(2021.11.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆2007年に成立した海洋基本法は、海洋産業が「我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上の基盤である」(3条)ことを明記している。とりわけ、日本の貿易は海上輸送に依存しており、安定的な海上輸送の確保が社会経済の存立基盤であることは言うまでもない。
◆大坪新一郎前国土交通省海事局長から、自らが主導した「海事産業強化法」(2021年5月21日公布)の意義についてご寄稿いただいた。本法は新法ではなく、海上運送法、造船法、内航海運業法、船員法、船員職業安定法、船舶安全法の6本の既存法律の改正をまとめて行う「束ね法」である。本法の狙いは、供給側の造船業と需要側の海運業の双方において投資を促進し、好循環を創出すること。また内航海運の働き方改革を通じて、内航海運の取引環境の改善・生産性向上のため荷主や運航者の責任の強化を図っているとのこと。日本が抱える外航海運、造船、内航海運・船員の課題に対応する本法の活用を期待したい。
◆鮫島拓也海上保安大学校海上警察学講座助教からは、第2次世界大戦後に広く普及したレーダーとVHF無線機を基幹とするVTS(船舶通航支援等業務)の変遷と今後の展開についてご説明いただいた。2018年からIALA(国際航路標識協会)を中心に進められている海上交通管制の統一基準であるVTSガイドラインの改訂作業の重要な変更点は、VTSがこれまで提供してきた情報提供業務、航行支援業務、通航編成業務という3つのサービス区分をなくし、VTSが提供するのは海上情報、船舶交通の監視、管理、組織化及び航行援助からなる1つのサービスであることを強調し、VTSの役割についての共通認識を高めることにあるとする。ぜひご一読を。
◆2021年7月26日、第44回世界遺産委員会で、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産の登録が決定した。岩本千鶴鹿児島県環境林務部自然保護課奄美世界自然遺産登録推進室参事付から2015年度策定の「奄美群島持続的観光マスタープラン」のひとつである「世界自然遺産奄美トレイル」をご紹介いただいた。奄美トレイルは有人島8 島からなる奄美群島を結ぶ長距離自然歩道で、14エリア、51コース、総延長約550kmとのこと。新型コロナウイルス感染症の感染拡大も一息ついた今こそ、感染対策をしっかりしながら、美しい海を見渡せる道、巨木を見上げながら歩く道などを踏破し、奄美群島の美しい海や森を堪能していただきたい。(坂元茂樹)

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