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週刊国際海洋情報(2023年3月31日号)

1.欧州委員会:Green Claims指令案を発表

欧州委員会が、2020年に実施した調査では、EU域内で「環境に良い」として宣伝されている商品のうち、53.3%の宣伝文句は、漠然・不正確なもので、40%は全く根拠のないものだった。このような状況を改善するために、欧州委員会は、3月22日、「greenwashingと不正確な環境面での効用」を判定する統一基準をGreen Claims 指令案として発表した。この基準に従えば、消費者は環境に良いと宣伝されて発売されている商品が、本当に環境に良い製品なのか明確に確認できるようになる。また、自社製品をより環境上持続可能性のあるものに改善しようと純粋な努力を続けている企業にとっては、自社製品をこの基準に適合させることにより、消費者に環境に優れた製品としてより簡単に認識・選択され、まがい物との不公正な競争をせずに売り上げを伸ばすことができる。こうしてこの指令案によって、製品の環境上の性能に関する情報について、公正な競争条件が確保することができる。

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欧州委員会 (3/24)


2.FuelEU Maritime initiative:欧州理事会と欧州議会が暫定政治合意

3月23日、欧州理事会と欧州議会は欧州委員会が提案していたFuelEU Maritime intiativeに対する修正案について政治的な暫定合意をしたところその概要は以下のとおり。①船舶は燃料中のGHGの割合を、2020年における水準(CO₂91.16g/MJ)から、2025年までに2%、2030年までに6%、2035年までに14.5%、2040年までに31%、2045年までに62%、2050年までに80%削減する。②適用対象となるのは、船舶から排出される全CO₂の90%を排出する5000GT以上の船舶で、EU域内の航海には100%、EU域外(EU海外領土も含む) との航海については50%適用される。③2028年までに、適用対象となる船舶のトン数を引き下げ、EU域外との航海に適用される比率の引き上げの可能性について再検討を行う。④非バイオ再生可能燃料(RFNBO)を使用する船主に対しては、排出するCO₂の量を相殺する形でのインセンティブを2925年から2034年の間、与える。⑤2030年までにRFNBOのシェアが1%を越えなければ、2034年までに再生可能燃料のシェアを2%に引き上げることを目標とする。⑥着岸中においては、陸上電源(OPS)の使用または、代替的なゼロエミッション技術の使用を、コンテナ船と旅客船については、主たるEUの港湾においては、2030年までに、その他のOPS電源が整備された港湾については2035年までに義務付ける。

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Offshore Energy (3/24)


3.2028年までにデンマーク=独間に水素パイプライン建設へ

ドイツの製鉄業をはじめとするエネルギー多消費型産業は、現在、化石燃料から生産された水素を60TWh消費しているが、今後需要が90 TWhに拡大する見込みであることを踏まえ、3月24日、両国政府は2028年までに、両国間を結ぶ陸上パイプラインを、EUのConnecting Europe Facility資金などを活用して建設し、独がデンマークで生産する水素を輸入することで合意した。デンマークは、グリーン水素の生産に必要な電解槽の能力を4-6GWまで増強して、水素の生産能力を20TWhまで引き上げる予定。独は既にノルウェーとの間でも水素を輸入するための海底パイプラインを建設することで合意している。

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Euractiv (3/27)


4.IMO ISWG-GHG 14の結果概要 (by UMAS)

3月20日から24日に開催されたIMOの第14回GHG中間作業会合における主要論点は以下のとおり。(詳細は原文参照)①どのように外航海運のlifecycle GHG排出量を計算するか?②IMOの削減目標に到達するための、段階的なGHG削減率をどのように設定するか?③削減を実現するためにどのような政策的選択肢(炭素/GHG課税や燃料の基準)を組み合わせ、具体化するか?(MEPC80では最終化できず、具体的な対策の決定にあと1-2年かかり、対策の実施は2年から4年後になる見込み)④MEPC80で改定される戦略の中で、途上国に配慮したjust and equitable transitionがどのように位置づけられ、中期的にどのように取り組んでいくか明示されるか?今回の会合では、Revised Strategy案の中で、意見が異ならない部分については、テキストの整理が進んだが、その他の議論がある部分については、7月のMEPC 80とその前週に開催される第15回GHG中間作業部会に持ち越された。

原文

UMAS (3/27)


5.仏に欧州最大の海洋再生エネルギー試験センターが発足

浮体式洋上風力発電・潮汐発電・波力発電などの海洋再生可能エネルギー専用の欧州最大の試験センターが、EDF/RTE/Total Energiesなど官民の10の組織によって、仏に設置された。試験センターの名称は、OPEN-C Foundationで、Bordeaux/Mistralなど大西洋岸と地中海に面した既存の5か所の試験所から構成される。OPEN-C Foundationは、今後3年間で、第2世代の洋上風力タービンの5つの異なるプロトタイプ、洋上グリーン水素製造、浮体式太陽光パネルの実験などを実施する予定。各プロジェクトのリーダーにとっては、OPEN-C Foundationのような試験場を利用することによって、試験を実施するための許可を取ることが簡単になり、既存のインフラを活用し、試験場の海域のデーターも用意されているなどのメリットがある。試験場では、ブレード先端までの高さが350m以内、発電力20MW以内のタービンを同時に試験することが可能。

原文

Offshore Energy (3/28)


6.コンテナの過去3年間の利払い前・税引き前の利益合計額が以前の63年分の合計を上回る

Sea-Intelligence社が発表した、コンテナ海運業界の利払い前・税引き前の利益額(EBIT)の合計は、2022年に2080億ドルとなり、2021年の1640億ドル、2020年の240億ドルと合計した3年間のEBITの合計額は、コンテナ海運というビジネスが始まってから2019年までの63年間の合計EBITを上回った。複数のコンテナの指標が、既に過去数か月下降に転じ、底を打つ気配はないが、2023年のEBITの見通しについては、予測が割れているが、Drewry社は、2023年もコンテナ業界全体で150億ドルの利益を上げる見通しとしている。Xeneta社によれば、2023年はコンテナ業界にとっては、過剰船腹の管理が課題となり、欠航・係船・解撤などの選択肢を順次選択することになるとしている。Clarksons Research社によると、今年に入ってから現在までのコンテナ船の運航速度は前年同期比で3.5%既に減少している。

原文

Splash247 (3/28)


7.IRENA:CO₂排出量削減量が1.5℃目標達成に必要なpathwayを大きく離脱

国際再生エネルギー機関(IRENA)が、World Energy Transitions Outlook 2023 Preview報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①現在各国政府が計画しているNDCsなどのCO₂削減目標をすべて達成するPlanned Energy Scenario(PES)によっても、世界のCO₂排出量は、対2022年実績比で、2030年までに3%、2050年までに56%しか削減できず、地球気温の上昇を1.5℃以内に抑制するという目標から大きくかけ離れている。②2022年に全世界においてエネルギー転換に投資された金額はこれまでの最高となる1.3兆ドルとなったが、1.5℃目標を達成するまでには、年間5兆ドル以上、2050年までに合計150兆ドルの投資が必要となる。③1.5℃目標を達成するためには、2030年までに44兆ドルの投資が必要だが、PESに基づく投資額は29兆ドルにとどまる見込みで、化石燃料への投資を再エネ投資に振り替えることなどが必要となる。

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IRENA (3/29)


8.再生可能発電量:太陽光・風力を主体に2022年も対前年比10%増加

3月20日、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が、2022年の再生可能エネルギー発電について報告書をまとめて発表したところ概要は以下のとおり。①2022年末の世界の再生可能エネルギー発電能力は、対前年比295GW(9.6%)増の3372GWとなり、最も増えたのが太陽光発電で(+22%)、風力発電も9%増加した。この結果、再生可能発電量全体のシェアの内訳は、水力37%、太陽光31%、風力27%となった。②増加した発電量の90%は太陽光と風力で、地域的にはアジアだけで全体の59%を占めたが、そのほとんどが中国による再生可能発電の増加(+141GW)によるものだった。③同年中に世界で新たに増加した発電能力の83%が再生可能発電で、全体の発電能力に占める再生可能電力の割合も40.2%に上昇した。④非再生可能エネ発電量もアジアをはじめほぼ世界の全域で増加したが、北米地域だけ非再生可能発電所の大幅な解体が進んだ。

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IRENA (3/29)


9.EUエネルギー担当大臣会合:CO₂を排出する新車販売を2035年から禁止

独がe燃料を使用する内燃機関自動車についての例外措置を勝ち取った結果、3月28日、EUエネルギー大臣会合で、新車販売に関するCO₂排出削減について、最終合意に達した。具体的には、新車については、対2021年実績比で、2030年までにCO₂排出量を55%以上削減し、2035年までにCO₂排出量ゼロが求められる。欧州委員会は、e燃料だけを使用する内燃機関自動車について、具体的にどのように2035年以降も販売を認めるかに関する規則を秋までに提案する予定。e燃料は炭素回収技術によって回収されたCO₂を原料として生産されるので、内燃機関で燃焼時にCO₂を発生しても、炭素中立とみなすことができる。ポルシェとフェラーリは重たいバッテリーを搭載する代わりにe燃料を使用することを支持していが、フォルクスワーゲン・ベンツ・フォードなどはEVを支持している。

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Reuters (3/30)


10.米エネルギー省:国内の洋上風力発電の設置を加速化する戦略を発表

3月29日、米国エネルギー省(DOE)は、2030年までに30GW、2050年までに110GWの洋上風力発電所を設置するというバイデン大統領の公約を実現するための、「洋上風力発電戦略」を発表した。30GWの洋上風力発電施設を整備することによって、1000万戸の家庭の電力を供給し、7.7万人の雇用を創出し、年間120億ドル(約1.6兆円)の民間直接投資を呼び込むことができる。戦略で示された4本柱の概要は以下のとおり。
①着床式風力発電施設の拡充により、現在の発電コストである73ドル/MWhから2030年までに51ドル/MWhまで引き下げる。②さらに浮体式洋上風力発電施設の展開を踏まえ、2035年までに45/MWhまで引き下げる。③以上のような大規模洋上風力発電によって発電された電力を送電するための信頼でき、気象海象条件にも強い送電方法を併せて整備する。④大規模に電化と脱炭素化を進めるために、洋上風力発電による電力を活用したコジェネを拡大する。

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DOE(3/30)


その他のニュース

1.再生可能エネルギー
 (ア)洋上風力発電
  ①中国
   最初の遠洋洋上浮体式浮力発電プラットフォームが稼働へ 原文(3/29)
2.エネルギー転換
 (ア)石炭の取り扱い
  ①中国
   新規石炭火力発電所が経済的に優位性の無い重荷となる可能性 原文(3/24)
 (イ)再生可能エネルギーの割合
  ①米国
   2022年の発電量:再生可能エネルギーが石炭・原子力を上回る 原文(3/30)
 (ウ)新たな化石燃料の開発
  ①英国
   海洋エネルギー業界が北海の石油ガス開発への新規投資を減らす 原文(3/29)
 (エ)グリーン産業振興策
  ①EU
   首脳会合:グリーン・デジ技術のリーダーとして米中と競争 原文(3/27)
3.気候変動緩和対策
 (ア)エネルギー節約・効率化
  ①電化製品・ボイラーのエネルギー効率の向上
   米国:エアコンと空気洗浄機のエネルギー効率基準を引き上げ 原文(3/24)
4.気候変動
 (ア)メタン
  ①自然界からの排出
   湿地からのメタンの放出量が増加 原文(3/27)
5.海洋環境
 (ア)油濁汚染
  ①ロシアの影の船隊のリスク
   ロシアの石油を運ぶ老朽タンカーの危険性 原文(3/28)
6.陸上交通の脱炭素化
 (ア)内燃機関車の新車販売の禁止
  ①E燃料使用の可否
   ECと独がe燃料のみ使用する内燃機関新車の販売継続に合意 原文(3/28)
 (イ)EV充電施設
  ①EU
   代替燃料インフラ規則について理事会と議会が暫定合意 原文(3/30)