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国際海洋情報(2023年3月22日号)

1.中国の海外石炭火力事業からの撤退は経済的な理由

2006年から2021年にかけて、中国は世界で最大の海外石炭火力発電事業の資金供給国で、20を超える国における合計で約54GW分の石炭火力発電所建設計画に関わってきた。しかし、同期間中に中国が公表した51の海外石炭火力発電事業のうち、実際に稼働にこぎつけたのはわずかに1件だけで、25の事業計画が凍結され、8件については事業計画が破棄された。その理由について、中国の復旦大学の研究者がScience誌に発表した論文によれば、中国政府が環境面に配慮した結果というよりは、経済・金融上の理由であることがわかった。具体的な理由としては、計画された国の経済成長が進まず、エネルギー需要の見通しを下方修正せざるを得なかったケースや、世界の投資家が石炭火力発電事業への投資を絞ったため、2017年から2020年までの間に、資金調達コストが平均して38%も上昇したことが主たる原因となっており、2020年には海外の石炭火力発電事業計画の発表が全くなかった。

原文

SCMP (3/22)


2.オランダ政府:500MWの洋上グリーン水素製造施設の建設計画を発表

オランダ政府は、再生可能エネルギーを利用して、2030年までに陸上で4GWの水素を製造する目標を持っているが、それに加えて、3月20日、フローニンゲン沖の北海の風力発電施設と連結した500MWのグリーン水素を生産する大型洋上施設を建設し、2031年から運用を開始すると発表した。製造された水素は、既存の天然ガスパイプラインを利用して、陸上に輸送される。

原文

Reuters (3/22)


3.ポーランド政府の要請で原料炭がEU重要原材料リストに残る

欧州委員会は、2011年から、欧州のグリーン・デジタル産業、防衛・宇宙産業にとって重要な素材を、重要原材料としてリストし、4年間ごとに見直しているが、3月16日に、EUの重要原材料法案が発表されたのと同時に、重要原材料の具体的なリストも改定された。原料炭は風力発電のタービンに使用される鉄鋼などの生産に不可欠で、ポーランドは原料炭の欧州最大の生産国であるので、原料炭が重要原材料のリストに残るよう欧州委員会に働きかけて、受け入れられた。リストに残ったことにより、原料炭の生産に対して、今後EUの資金支援も受けやすくなる。重要原材料法案は、2030年までに、重要原材料の採鉱の10%以上、加工の40%以上、リサイクルの15%以上をEU域内で行うこととし、特定の第3国(中国・トルコ)に対する依存度を65%以下に削減することを定めている。

原文

Euractiv  (3/22)


4.バイデン大統領:ESG投資に関する規則を守るために初めて拒否権を行使

労働省は、1.5億人の年金生活者のために、合計で12兆円(約1580兆円)の資金を運用する年金基金のファンドマネージャーが、投資先を決定し、株主としての権利を行使するにあたり、環境・社会・会社統治(ESG)の要因を考慮しやすくする規則を制定したが、これに対し、議会共和党と民主党のManchin議員などが、この規則によって、ファンドマネージャーが運用利益より、リベラルな考えを優先することを許容するとして、この規則を無効とする法案を3月1日に上院で可決した。この法案に対して、バイデン大統領は、共和党の法案は、民間の投資に不当に介入するもので、年金生活者の利益を害するとして、初めて拒否権を行使した。

原文

Reuters (3/22)