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国際海洋情報(2023年3月21日号)

1.ECSA:非バイオ再生可能燃料を戦略的Net-Zero技術として位置付けるべき

欧州船主協会(ECSA)がNet-Zero Industry Actについてコメントを発表したところその概要は以下のとおり。①海運業界は、エネルギー・食料等の貿易品の輸送を担う、欧州にとっての戦略的な産業であり、法案において、海運業界の国際的な競争力の強化を念頭に置くべき。②海運は最も脱炭素化が難しい業界であり、経済的に受け入れ可能な低・ゼロ炭素燃料・技術の拡大がポイントとなる。③従って、非バイオ再生可能燃料の生産技術を、法案において、「戦略的なnet-zero技術」と位置付け、同燃料の生産能力の速やかな拡大を図るべき。④洋上風力発電と炭素回収貯留技術が「戦略的なnet-zero技術」と位置付けられたのは歓迎する。

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ECSA(3/21)


2.ロイズ船級協会:燃焼前炭素回収システムを基本承認

Rotoboxは船舶の船上で熱触媒分解(TCD)過程を用いて、天然ガスの一部を水素と黒鉛に分解するシステムを開発し、ロイズ船級協会の基本承認(AiP)を取得した。システムで処理後のガスは、燃料電池や内燃機関やガスボイラーの燃料に混合して使用することができる。熱発生の仕組みにもよるが、このシステムを利用して、CO₂排出を最大100%削減することが可能となる。TCDを用いることにより、CO₂の排出削減ばかりでなく、微細粒子の排出削減やメタン漏出の削減にもつながり、CO₂は固体の形で貯蔵できるので、従来のCCS方式に比べて、回収したCO₂の貯蔵スペースも少なくてすみ長距離航海にも対応できるうえ、消費電力も少なくてすむ。本システムはLNG運搬船やLNG燃料船の更なる脱炭素化のための装置として適している。

原文

Offshore Energy (3/21)


3.原子力発電によって作られる低炭素水素の扱いで欧州諸国が対立

3月16日、オーストリア・デンマーク・ドイツ・アイルランド・ルクセンブルグ・ポルトガル・スペインの7か国は、大臣レベルでの共同書簡を欧州委員会の担当コミッショナーに提出し、原子力発電によって生産される低炭素水素・低炭素燃料をグリーン交通燃料として認めることを反対することを表明した。一方で、ブルガリア・クロアチア・チェコ・フランス・ハンガリー・ポーランド・ルーマニア・スロバキア・スロベニアの9か国は、再生可能エネルギー指令において、原子力によって生産される燃料を、グリーン交通目標から除外することを要求している。具体的には、グリーン交通燃料の拘束力を持った目標の達成率を計算するにあたり、分母から原子力から生産される燃料を差し引くことを求めている。仏政府は、同政府の要求は、再生可能水素の普及を制限しようとするものではなく、欧州で整備される電解槽の能力を十分に活用するため、再生可能電力ばかりでなく、原子力によって発電された電力も活用すべきであると説明している。

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Euractiv (3/21)


4.中国:2025年までに世界の1/3のリチウムを支配下に

リチウムは電気自動車のバッテリーを製造するために不可欠だが、UBS銀行が3月10日発表したところによれば、アフリカ諸国を含む中国が支配するリチウム鉱山の産出量は、2022年の19.4万トンから、2025年には70.5万トンに拡大し、この結果、世界シェアも24%から32%に拡大する見通し。中国国内ではレピドライトなどからリチウムが生産され、2022年には8.8万トン生産されたが、中国政府の継続的な支援を受けて2025年には、28万トンに生産量が拡大し、世界シェアの13%が中国国内で生産される見込み。

原文

Mining Weekly (Bloomberg)