国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

国際海洋情報(2023年3月17日号)

1.独:2022年のGHG排出量は対前年比1.9%減少

独環境庁によれば、同国の産業部門から排出されるGHGが対前年比で10%減少したため、石炭火力発電への依存が高まったにもかかわらず、全体のGHG排出量も対前年比1.9%減少して、2045年までに炭素中立を目指すという国家目標に沿ったGHG排出量の削減を達成した。GHG排出量が増加したのは、発電部門と交通部門で、特に交通部門は国家気候法に定める削減目標を毎年達成できていない。産業部門の製造量は全体では、対前年比0.6%の減少にとどまったが、エネルギー価格の高騰によって、エネルギー多消費型の産業の生産量が大きく落ち込んだため、産業部門全体として、GHG排出量が対前年比10%減少した。発電部門については、2030年までに再生可能発電のシェアを全体の80%に引き上げるには、再生可能発電施設を現在の3倍に引き上げる必要があるが、現在の拡大のペースは、政府目標に比べて、大きく出遅れている。

原文

Euractiv (3/17)


2.英国:洋上風力発電の建設のために40億ポンドの投資が必要

英国政府と関係業界から構成される浮体式洋上風力発電タスクフォースは報告書を発表し、英国がclean energy産業の世界のリーダーになるためには、40億ポンド(約6480億円)の投資が必要で、国内の最大11の港湾を浮体式洋上風力発電施設の建設・保守支援のために改造する必要があるとしている。同報告書では、政府が迅速な対応を取れば、2040年までに最大で34GW分の浮体式洋上風力発電施設の建設が可能で、まずは、2030年までに5GW分建設するという高い目標を政府は掲げるべきとしている。また、浮体式洋上発電施設は1ポンドの投資あたり4.3ポンドの経済波及効果が見込まれるとも試算している。3月13日はウェールズ政府がケルト海に、浮体式洋上風力発電施設を建設することにより、ウェールズをclean energyの一大拠点とする計画を承認した。スコットランドには既にKardine沖に浮体式洋上風力発電施設が建設され、さらに北ハイランド沿岸の沖にも浮体式洋上風力発電施設を建設する計画がある。

原文

Aberdeen Live (3/17)


3.欧州委員会:EU電力市場改革案を発表

3月14日、欧州委員会は、①再生可能発電整備の加速化と天然ガス発電の段階的撤廃②乱高下する化石燃料価格に大きく影響されにくい電力料金③将来的な電力料金の上昇と市場操作から消費者をより良く保護④EUの産業をクリーンで競争力がある産業にするために、EUの電力市場の改革案を発表した。具体的には、いくつかの電力に関する規制を改正し、①化石燃料を使用しない発電事業者との長期間の電力購入契約を締結し、②再生可能エネルギー発電が天然ガス発電と比較した競争力を持つために、電力需要量を調整するdemand responseや蓄電などの技術を駆使したより柔軟な再生可能エネルギーの供給を促して、化石燃料価格の上昇の影響を減少させ、発電コストが化石燃料より安くなった再生可能エネルギーの発電コストを反映させる。再生可能発電を基本とするエネルギーシステムを構築することは、電力価格を低くするためだけではなく、European Green DealやREPowerEU計画に沿った持続可能で外国に依存しないエネルギー制度の構築のために不可欠である。

原文

欧州委員会(3/17)


4.欧州委員会:Net-Zero Industry Act案を発表

3月16日、欧州委員会は、EUにおけるクリーン製造産業の拡大と、EUがclean-energyへのスムーズな転換を図るために、Net-Zero Industry Act案を発表したところその概要は以下のとおり。①Net-Zero産業を始めるための行政手続き上の負担を削減し、許認可手続きを簡素化する。特に、化石燃料燃焼時に回収されたCO₂を安全に貯留する事業など、EUの産業の耐久性と競争力を強化するのに重要なNet-Zero戦略事業を指定・優先する。②全て電化することが難しいエネルギー多消費型産業から回収したCO₂を経済的に処理するために、石油ガス業界に応分の負担を求めて、2030年までに年間5000万トンのCO₂を戦略的なCO₂貯留施設に注入することを目標とする。③Net-Zero技術の普及促進を図るために政府公共機関による調達・競売参加の条件として、持続可能性・持久性要件を入れることを求める。④Net-Zero戦略事業に従事する技能を持った人材を養成するために、Net-Zero欧州プラットフォームの支援と監督のもとに、Net-Zero産業アカデミーを創設することを含む新たに技能労働者の育成を図る。⑤柔軟な規制の下で、革新的なNet-Zero技術を試験し、革新を進めるために、加盟国が法規制上のsandboxesを創設することを認める。

原文

欧州委員会(3/17)