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国際海洋情報(2023年3月16日号)

1.英国政府:CCS技術開発に年間10億ポンドを投資へ

英国政府の財務大臣は、3月15日にclean energy resetとして炭素回収貯留(CCS)技術に対して、今後20年間に200億ポンド(約3.3兆円)を投資し、2030年までに2000万から3000万トンのCO₂を回収貯蔵し、最大で5万人の新規雇用を創出することを発表する。200億ポンドは政府の資金だけではなく、英国民がエネルギー代金の一部として負担する。英国政府は、現在小型モジュール原子炉(SMRs)開発の公募を実施しており、近日中に結果を発表する予定。英国政府は2035年までの電力脱炭素化を目指しており、同年には、総電力の70%は太陽光発電と風力発電によって供給される予定だが、再生可能エネルギーについては新たな政策は発表されない見込み。

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Evening Standard (3/16)


2.バイデン政権:アラスカの新規Willow石油開発を認可

バイデン政権は、北極圏の6.47万㎢の海域と陸域を自然保護区にすると発表した翌日の3月13日に、反対意見が強いアラスカのWillowと呼ばれる大規模な新規石油掘削事業を認可した。米国内務省による試算では、アラスカで最大の石油開発事業者であるConoco Phillipsは、連邦政府が保有する最大の未開発地である9.3万㎢の国家石油保留地に、80億ドル(約1.06兆円)を投資して、3本の油井を掘削し、今後30年以上の期間に、約6億トンの石油を生産し、66基分の石炭火力発電所の排気に相当する約2.78億㎥のCO₂を排出する予定。アラスカ州議会といくつかの先住民政府、およびアラスカ州のNorth Slope群の住民は、本事業によって新たに約2500人の新規雇用が生まれるとともに、連邦政府は170億ドル(約2.26兆円)の収入が得られ、米国のエネルギー安全保障を強化するとして、今回の決定を支持している。今回の決定の前に内務省の土地管理局は、2月に本事業に関する環境影響評価して、開発する油井の数を5基から3期に削減することに加え、本事業に伴う直接・間接の排気や地域の野生生態系への影響について深刻な懸念を表明していた。

原文

CNBC (3/16)


3.世界のGHG総量の約1/6が食物廃棄物から発生

世界のGHGの総排出量の約1/3はFood Systemから排出され、さらにその約半分が食料廃棄物から排出されている。SDGsの目標の一つに、食料の生産と供給から発生するfood lossの量を、全世界で2030年までに半減するという目標があるが、国連食糧農業機関によれば、世界で生産される食物の約1/3は毎年廃棄され、この食料廃棄物から発生するCO₂の量は2017年の実績で93億トンと、同年において米国とEUから排出されたCO₂の合計排出量とほぼ同じ量を排出した。Nature Food誌に発表された研究では、肉食を半分にすることや食料廃棄物をごみとして埋め立てる代わりにcompostすることによって、食料廃棄物から排出されるCO₂の量が削減可能であるとされている。

原文

Carbon Brief (3/16)


4.欧州議会:CO₂削減目標とcarbon sinksの拡大に合意

3月14日、欧州議会は2030年までに1990年実績比でGHGの排出量を55%削減するというFit for 55パッケージの一環として、2つの法律を承認した。第1の法律は、現在EU排出権取引制度の対象となっていない道路交通・建物の暖房・農業・廃棄物処理などの分野からEU全体のGHGの約60%が排出されているが、これらの分野から排出されるGHGを2005年実績比で、2030年までに削減する目標を30%から40%に全体として引き上げる一方で、デンマーク・フィンランド・独・ルクセンブルグ・スウェーデンなどの先進国は50%削減という高い目標を掲げる一方で、旧東欧のブルガリアには10%削減といった各国の事情を反映した削減目標について合意した。2番目の法律は、欧州の森林・湿地などを拡張して、大気中から吸収するCO₂の量から、大気中に放出するCO₂の量を差し引いた純吸収量を、現在の実績に比べて約15%拡大して、2030年までに3100万トンに拡大することに合意した。具体的な方法としては、古い森林を再生し、新たな森林を創生し、泥炭地に水を供給して湿地に変え、土壌中により多くの炭素をため込むために、農耕の方法を変えて、土地を耕す回数を減らすことなどが考えられる。

原文

Reuters (3/16)