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国際海洋情報(2023年3月14日号)

1.英国:化石燃料産業が再生可能エネ産業より多くの政府助成を受ける

英国の自由民主党が委嘱した調査によると、2015年から2021年まで英国政府が供与した助成額は化石燃料産業が約800億ポンドであったのに対し、再生可能エネルギー産業が600億ポンドと、化石燃料産業より、200億ポンド(約3.3兆円)も少ない助成しか受けていないことが判明した。2020年には、初めて、再生可能エネルギー産業に対する支援額が、化石燃料産業を上回ったが、2021年には、化石燃料産業に対する助成額が10億ポンド(対前年比10.7%)増えたのに対し、再生可能エネルギー産業に対してはわずか100万ポンド(対前年比0.01%)の増加にとどまった。下院事務局の調査では、化石燃料産業への助成金の1/5は、新たなガス田・鉱山の開発に対する助成であり、2021年には新たなガス田の開発に、対前年比20%増の20億ポンドが助成された。英国の化石燃料産業は、税制上の優遇措置や助成を政府から受けているにもかかわらず、再生可能エネルギーに対する十分な投資を行っていないと非難されており、例えば、Shellは2022年に320億ポンド(約5兆円)の収益を上げ、石油ガス事業には、100億ポンドの投資を行った一方で、再生可能エネルギーに対しては、30億ポンドしか投資していない。

原文

The Guardian (3/14)


2.英国:石炭の消費量の減少でCO₂排出量が3.4%減少

再生可能エネルギーの順調な増加や、気温が平年気温より0.9℃高く、さらに化石燃料価格が史上最高に達したため、2022年における英国国内で石炭と天然ガスの消費に伴うCO₂排出量はともに減少した。特に石炭の消費量は、対前年比15%の減少となり、1757年以来の最低を記録した。一方で、道路交通量がパンデミック以前の水準に回復し、航空輸送が対前年比2倍となったため、石油の消費に伴うCO₂排出量は増加したが、石炭・天然ガスの減少分が上回った。1990年と比較して、経済規模は75%拡大したにもかかわらず、CO₂排出量は49%減少した。英国政府発表の速報値によれば、2022年に英国全土で排出されたCO₂の量は、対前年比3.4%の1400万トン減少したが、2050年炭素中立を実現するためには、今後30年間、同量のCO₂排出削減を継続する必要があるので、建物・交通・農業分野からのCO₂排出量削減に取り組む必要がある。

原文

Carbon Brief (3/14)


3.欧州委員会:飲料業界が再生PETを優先使用することを拒否

PETボトルの回収率は約50%になるのに、PETボトルに占める再生PETの使用率は17%にすぎず、リサイクルされたPETの多くは、繊維業界などによって使用されている。PETボトルのように食品の包装材として使用するためには高品質のプラスチック材料が必要で、再生PETの多くを繊維業界などに使用されることによって、飲料業界は必要な再生PETを確保することが困難として、同業界は、拡大生産者責任(EPR)の基本原則に従い、昨年11月に欧州委員会が提案した「包装材と包装廃材に関する規則(PPWR)」を改正して、飲料業界に再生PETの優先使用権を与えるよう欧州委員会に要望している。欧州委員会は、飲料用のボトルと金属缶について、Deposit-Refund System(DRS)を導入して、既にリサイクル率やリサイクルの品質の向上を図り、回収されたボトルが、飲料産業に再利用できるシステムを導入しており、それ以上の優先権を飲料業界に与えることは、再生PET需要に関する市場競争を否定することとなるとして、飲料業界の要求を拒絶している。

原文

Euractiv (3/14)


4.中国最高人民法院:環境関連訴訟の取り扱いに関するガイダンスを発表

習近平国家主席は、2030年までに炭素の排出量をピークアウトさせ、2060年までに炭素中立化を図るという目標を最近再確認したが、中国最高人民法院は、同国の判事が環境関係の訴訟を取り扱う際に、開発と環境保護について均衡のとれた判断することなどを含む、環境問題関連訴訟の取り扱いに関する24条のガイドラインを発表した。さらに、CO₂排出枠の適用・大気汚染に関する責任・森林伐採など環境関係の訴訟で予想される11のモデルケースを示し、特に、近年訴訟が増えている炭素排出権取引に関する訴訟に力を注ぐように指示している。今回の措置は、2022年10月に開催された中国共産党第20回全国代表大会で表明された環境保護に関する宣言を実施するための重要なステップとして発表された。この宣言では、低炭素産業の振興・資源の市場原則による配分・環境被害の削減などが表明されている。

原文

Climate Change News (3/14)